「なんで、御萩のパートナーだったお前が襲撃犯なんだよ、ユニィ!」
「ユニィがユスグさんの?」
初耳の情報にアズキは驚き、改めてユニィを見上げる。
ユニィは言った。
「これが現在のマスターから与えられた指示だからです」
「って事はなんだ? お前はもう御萩のメダロットじゃないって言いたいのかよ!」
赤城くんの言葉を受けて、ユニィは一度間を置いてから、
「っ、そうです」
言葉の節々から、彼女がかつてのマスター、つまりユスグさんを今でも大切にしているのが痛いほど伝わる。
同時に、いまユニィはユスグさんのためにやむを得ず悪の道を進んでる事も。
ただ赤城くんは真に受けて激昂したようで、
「つまり貴様は」
赤城くんが怒りをぶつけようとする。その後ろから、
「まだ心はスグのパートナーのままなのね」
神宮寺さんが言った。
バグスティンクの背中に乗って身を護りながら、クワトロさんと一緒に合流してきたのだ。
「シルコ様」
ユニィの声が、一瞬涙を堪えた嘆きに変わった気がした。
神宮寺さんは続けて、
「ねえ教えて。いまのパートナー、いまユニィにこんな事させてる人は誰なの?」
「言えません」
「ならロボトルよ!」
って、いきなり極端な事を言いだした。
「私が勝ったら、いまユニィを苦しめてる人の事も、組織の名前も、いまスグがどうしてるのかも全部教えてもらうわ」
『馬鹿、何言ってるのよざこマスター』
マゼンタキャットが言う。
『いまのアンタ、暴走が怖くて私を出せないんじゃなかったの?』
「あっ」
『メダロットなしで、どうやってロボトルするのよ』
マゼンタキャットに言われて意気消沈する神宮寺さん。
さらにアズキは、
「しかも、ユニィに倒されたら屋敷内でも暴走してしまう」
って、情報共有のために言った。
「さっき窓を攻撃したのも、ホカリスエットを暴走させるのが目的だったし、実際私やキクナは別のホカリが暴走した瞬間を見せられてる」
「それ、ユニィは何て言ったの?」
「それが」
アズキはユニィのとった言動を簡単に伝えると、
「ユニィがたしかにそう言ったのね」
神宮寺さんが聞き返す。
アズキがうなずくと、
「そう。だったら、メダロット転送!」
さらに怯えるどころか、神宮寺さんはあっさりマゼンタキャットを転送してしまった。
「え、なぜ?」
誰よりユニィ本人が驚くと、神宮寺さんは何故かすっきりした顔で、
「私、ユニィの性格知ってるもの。ユニィがそういう事言って実例まで見せたって事は、逆に敷地内では本当に他の方法で暴走はないって」
「つまり、私たちの推測は大正解だったという事ですか? 反例を見せた事がむしろ証拠になったと」
スタッグが確認をとると、
「そう。だってユニィってばスグに似て真面目で頭が固いもの」
神宮寺さんは言い切った。
だからって、他の全員にとっては「ユニィに倒されたら暴走させられる」というリスクが先にくるのに、神宮寺さんは「他では暴走しない」と安心するなんて。
「まったく、どんな神経してやがるんだよ。オレたちのリーダーは」
さすがの赤城くんにとっても予想外だったようで、乾いた笑いを浮かべては、
「ならオレも参加だ。あんなやつ、二対一でぶっ叩くぞ。ブルーティス」
「いいえ、モッチーズ全員で袋叩きですので三対一です」
クワトロさんもロボトルに参加する気満々。
ユニィは言った。
「結果的には、話が早くて助かりました。私も元々ロボトルで決着をつけるため前線に出張ったつもりでしたから」
直後ユニィの周りにホカリスエット二体とライブラが三体。計五体のメダロットが姿を現して、
「ただし、私は単独ではなく五体ですけど」
いや、ユニィは嘘をついている。
ホカリスエット二体、ライブラ三体、ここにユニィ本人を含めると六体になるのだ。一体多い。
騙し通せてるつもりなのか、ユニィはそのままアズキに向かって、
「途中で暴走したホカリスエットが何名か消えたのを察知したのはさすがでした」
「もしかして、この二体がそれ?」
「はい。正確には撤退させて回収したのではなく、このロボトルのために暴走メダロットの中から特にメダルの強い四体を選別して待機させていたのです」
と、アズキとキクナの推測に正解を述べてからユニィは言った。
「人間サイドは各自一機ずつで五対五はいかがでしょう? この提案に乗ってくださるなら、ロボトル中にあなた方を暴走させない事を約束します」
「信用できるかよ」
赤城くんが言う。
たしかに相手は五対五と言ってるが、実際はユニィを含めて六体なのだから信用できるわけがない。アズキだってさすがに疑いの目を向ける。
しかしユニィは続けて、
「合意しないなら、この場で適当に誰かを暴走させて味方につけるまで」
と、脅してきた。
「それと、私が勝ちましたらアズキ様は私とご同行をお願いします。断った時はここで初めて皆様のメダロットが全員暴走を始めるものと思ってください」
そういえば、このユニィは最初からアズキがターゲットだと言っていたのだ。
神宮寺さんが言う。
「なら、私たちが勝ったら、なんで先生まで誘拐するのかも教えて」
「もちろんです。いま私がどこまでマスターから与えられたプロテクトをすり抜けて喋られるか分かりませんが、可能な限りは話します」
と、ユニィが返事。
っていうか、ちょっと待って。この調子だと神宮寺さんの同意だけで勝手にウォッカが、
「ハロー。きたよ」
きちゃった。
しかも、昔放送されたクソアニメみたいにライブラのうち一体が顔面を引っ張って剥がすと中からいつものツンドルが姿を現すというシチュエーションで。
つまりユニィの中ではホカリとライブラが二体ずつで、本当に五対五のロボトルを申し込んでるつもりで話していたのだ。
実際、
「まさかフク様があそこまで信用してなかった理由って」
と、ユニィは本気でショックを受けている。
ウォッカは言った。
「合意とみてよろしいかい? これよりスタッグ・キクナ・モッチーズ連合チーム対暴走メダロット軍による五対五のロボトルを行うよ」
という話で、まだ自陣営では神宮寺さんしか合意してないのにロボトルする事が確定してしまった。
まあ、ロボトルを拒否する一番の原因は解決したからいいものの。
「ユニトリース、参ります」
樹から下りたユニィは、律儀にホカリスエットやライブラと隊列を組んで言った。
一方、こちら側もスタッグを中心に、ブルーティス、バグスティンク、マゼンタキャット、そしてメダメイドが対峙する形で並び立つ。
「あれ?」
アズキはキクナに、
「ユディトじゃないの?」
「チームロボトルですからね、無闇にエースを出せばいいというものではないでしょう」
「でも」
「それに、今回はメダメイドでないと不味い事になりそうな気がしまして」
一方のユディトは、ロボトルに参加しないヤマジローや他の味方ホカリスエットと徒党を組んで、残りの暴走メダロットの駆除に回っていた。
キクナはいった。
「メダメイド、多分大役より貧乏くじが似合う事になりそうですけど、任せてもよろしいですか?」
「敵にホカリが二体。そういう事ですよね? もう大体予想がつきました」
メダメイドはすでにげんなりした態度を見せながらも、
「了解しました」
急に雨が降り出した。
お風呂の時、クワトロさんは晴天と言ってたけど、どうやら嘘から出た実になってしまったらしい。
もしくは、最初から夜明けまでには雨が止むという意味だったのか。
「オーケー、リーダーが誰かも確認したよ」
ウォッカは言いながら、一度ユニィとスタッグの間に立って、言った。
「それじゃあ始めようか。ロボトルファイト」
メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。
[機体名]
ユニトリース
[型式番号]
TMZ-KLN-TS01
[性別]
女
[パーツ]
◆頭部:ロザリオ(設置/ヒーターPC//4回)
◆右腕:シュートシルバー(射撃/ライフルC/ねらいうち)
◆左腕:ローズシューター(射撃/ガトリングC/CF)Hv
◆脚部:クリスクロス(二脚/ウェイレイ)
●HV:0/0/1 合計:1/1
[使用者]
[備考]
当作品のオリジナル。KLN型のTSメダロット。
モチーフは銀の弾丸で魔を祓う武装シスター姿の女性化ユニトリス(性能的にはユニトリスC)。
名前の由来はユニトリス+リース(花冠)であり、ローズリース(薔薇の花冠)にするとロザリオ(頭部パーツ名)という意味になる。
(ローズは左腕パーツの名前にも使われ、ユニトリスCの必殺技がメダローズである点も含めて意図的なもの)
ユニトリスCと比べて脚部がウェイレイに変更され、頭部パーツを一回使用するだけで脚部補正がフルパワーになる他、TS前より攻撃性能が重視されている。
外見は薔薇のリースをかぶり、パイプがリースから下に伸びてシスターベールを表現。首にはロザリオのネックレスが飾られている。
胴体は架空のシスターや女神官が着てそうなローブ姿。
右腕に銀の銃を内蔵し、左腕は先が銃口のブーケになってる杖を握っており、この左腕がヘヴィパーツとなっている。