メダロットHERMIT   作:CODE:K

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9-5 Strike Enemy5

 

 ウォッカが樹の上に退散し、チームロボトルが開始された。

 直後だった。ユニィを含めた敵五体全員の瞳が赤から緑に変わったのは。つまり暴走時のオーロラクイーンと同じ色である。

 

「どうやらマスターは、私にフェアな勝負さえさせてくれないようです」

 

 ユニィが落胆しながら言った。

 

「暴走プログラムの強化モードがオンになりました。これで私たちはメダルのリミッターが一部外れ、通常より高い性能でロボトルが可能となります」

 

 言ってから、ユニィは右腕を構え、

 

「かわりに私も暴走の影響を一部受けます。力加減は不可能と思ってください」

 

 銀の弾丸を発射。

 一撃はブルーティスの右腕を正確に貫き、

 

「うあっ」

『右腕パーツ、重度ダメージ』

 

 赤城くんのメダロッチから通知が鳴る。

 

「い、一撃でこれかよ」

 

 驚く赤城くん。同時にマゼンタキャットがはっと気づいて、

 

「そういえば、私も暴走中普段よりも高いスペックで動いてた気がするわ。暴走の副産物だと思ってたけど」

「副産物なのは正解でしょう」

 

 スタッグが言いながらホカリスエットに向かって駆ける。

 

「ただ、相手はその副産物さえコントロールする技術を持っていたのだと思います。実際、赤い瞳の暴走メダロットはそこまで強化されてるとは思いませんでした」

 

 で、右腕のソードを展開して、

 

「先にクロスファイアを封じます。協力をお願いしま、ひぁっ」

 

 斬りつけようとした矢先、ライブラのアンチシー攻撃が波紋状に地面を這ってスタッグを襲い、咄嗟に跳躍。

 

「分かったわ」

 

 スタッグに応じたのは神宮寺さん。

 指示を受けてマゼンタキャットがスタッグの後ろを追い、同時にバグスティンクも両腕の発射口をホカリスエットに向けた。

 

 しかし、二体のライブラが上下二種類の波紋で牽制攻撃を仕掛けてきて、しかも妙に攻撃から次の攻撃に入るまでの時間が短く、

 

「これでは」

「近づけないっ」

 

 スタッグとマゼンタキャットが苦い顔して言いながら、実際ホカリスエットに接近しきれずにいる。

 キクナがメダロッチから情報を確認し、

 

「やっぱり、ライブラはあの個体でしたか」

「どういう事?」

 

 アズキが言うと、キクナはまずメダメイドをふたりの下に向かわせて、

 

「メダテック社が近々NGシリーズという新世代メダロットを出すのはご存知ですよね?」

「うん」

「NGシリーズには当然いくつか新技術が導入されますけど、実はFSLイベントの裏であるサブスキルの動作テストにTMZも協力する契約をしたそうです」

 

 キクナはいった。

 

「そのサブスキルの名は『速射』。威力が下がるかわりに充填、冷却効率を飛躍的に上げる。つまりはその名の通り早撃ちです」

「つまり、それをあのライブラが持ってるってこと?」

「はい。あのライブラはパーツチューニングによって速射を試験的に搭載した機体です」

 

 という説明を受けると、

 

「ふぅん、そういう事なら」

 

 マゼンタキャットが、回避も防御も放棄してライブラの攻撃を浴びながら強引にホカリスエットの下まで接近する方法に出る。

 しかし、ライブラ相手に手間取ってる間に相手はすでに片方がクロスセットを完了し、もう片方がマゼンタキャットにクロスファイア。オーロラを発射した。

 マゼンタキャットは回避も防御もできず、

 

「しまっ」

「マゼンタちゃん!」

 

 神宮寺さんの悲鳴。しかし、ここでメダメイドが割り込んで左の盆でクロスファイアを受け止める。

 

「メダメイドさん」

 

 スタッグが一度ほっとしかける。けど、

 

『左腕パーツ機能停止、脚部重度ダメージ』

 

 キクナのメダロッチから鳴る通知に、全員が事態の深刻さを思い知った。

 間違いなくバグスティンクの装甲板よりも盾として機能するはずだったメダメイドの左腕が一撃で粉砕され、貫通した脚部まで破壊寸前に陥ったのだ。

 

「バグスティンク、ビーム発射」

 

 さらにバグスティンクがビームで攻撃するも、ホカリスエットは脚部でガードしたうえ破壊に至らない。

 おそらく一度チャージ行動を取って出力を上げて放っただろうに。

 

「そんな」

 

 思わず呟いてしまうクワトロさん。

 けど、

 

「ブルーティス、ドッグチョーカー起動!」

「うおおおお! 狼〇風風拳!」

 

 ここでブルーティスが攻撃に入った。

 

 最初に攻撃を受けてから、ずっとフリーだったおかげでライブラの妨害もなくビームに耐えた直後のホカリスエットに接近すると、まずは体当たり。

 さらに胴体から粒子が吹き上がると急加速し、両腕でホカリスエットを何度も何度も高速で殴りつける。

 

 その様子は、赤城くん・ブルーティスお得意の漫画の真似とはいえ、たしかに狼〇風風拳だった。

 

「オレをフリーにしたら痛い目見るぜ」

 

 上手く奇襲が成功し、得意げな笑顔で言う赤城くん。

 しかし、ブルーティスのラッシュ攻撃をもってしても、脚部の破壊はできたが両腕の破壊には至らない。でも、

 

「十分です」

 

 キクナが言った。

 ホカリスエットの頭部はヘヴィパーツなので、脚部を失った事で相手の動きに大きなペナルティがかかるのだそう。

 

 さらにブルーティスのドッグチョーカーはブレイクラッシュという全パーツに攻撃する技なので、間違いなく両腕や頭にもダメージが入っている。

 しかも相手がヘヴィパーツ持ちだと威力の上がる重力属性なので、申し訳程度では済んでないはず。

 

「これで」

「まずは一体」

 

 マゼンタキャットが追い打ちのサンダー攻撃で動きを止め、スタッグが喉にソードを突き刺した事で、やっと一体目のホカリスエットが機能停止。

 

「ぐっ」

「ぅあ」

 

 けど、その間もライブラはずっと波紋を飛ばして攻撃し続けてたので、一撃の威力は低いとはいえマゼンタキャットとスタッグにダメージが溜まっていく。

 スタッグが一度よろめいてから、

 

「マゼンタさん、いけますか?」

「当たり前よ。残りのホカリスエットはあと一体。それさえ倒してバグスティンク対ユニィに持ち込めば」

 

 マゼンタキャットは言いかけて、

 

「え、ユニィ? どこ?」

 

 辺りを見渡した直後だった。

 

「駄目よ」

 

 マゼンタキャットの背後から、右腕の銀の銃口を後頭部に突き付けながらユニィが言うのだ。

 

「私をフリーにしたら痛い目見るわ。先ほどフク様も言った事でしょう」

 

 言われて、マゼンタキャットとスタッグ、さらにお互いのマスターまでもが「あっ」となった。

 ホカリスエットを警戒しすぎて、最初の一撃を最後に動きが無さ過ぎたせいでブルーティスだけでなくユニィまで誰も警戒してないフリーになっていたのだ。

 

 すぐ攻撃しないのは、まだ充填が終わってないのか、暴走の影響で奇襲に成功した愉悦に浸ってるのか。

 マゼンタキャットが声を震わせて、

 

「闇討ちなんて、らしくない戦術取るじゃない」

「不意打ち、だまし討ち、奇襲は立派な戦術。以前クワトロ様に教えていただきました」

 

 ユニィが右腕の銃で撃とうとする。

 しかし、

 

「マゼンタキャット、頭部パーツ使用」

 

 神宮寺さんの指示によってマゼンタキャットがモビルブーストを使用。

 味方全員に猫の目を思わせる動体視力を与え、自身もその恩恵を使ってステップを踏みユニィの攻撃を避けようとする。

 

 が、ユニィは引き金を引かず、かわりに一歩踏み込んで、

 

「フェイントくらい使え。マゼンタ様がユスグによくそう言って説教してたわね」

 

 と、マゼンタキャットの避けた先に左腕のブーケを突き付けた。

 

「あとフク様からもうひとつ。長砲やガトリングの零距離射撃は浪漫」

 

 今度こそ、ユニィは銃口のブーケから弾丸の雨を一斉に発射した。しかも至近距離につき弾の全てがマゼンタキャットに襲い掛かる。

 はずだったが、

 

「メダメイド!」

 

 キクナの指示。それより早くメダメイドはマゼンタキャットを突き飛ばし、かわりに自分の体で全ての弾丸を受け止める。

 

 メダメイドのガード技は左腕の盆だけではない。

 頭部パーツだって、光学ガードという立派な味方を庇うためのガード技なのだ。

 

 メダメイドが息も絶え絶えの声で言う。

 

「仕事は果たしました」

「ありがとうございます。メダメイド」

 

 キクナが返すと、メダメイドは微笑む。ふたりの作戦では、ホカリスエットの攻撃を全て受けきる予定だったのだろう。

 しかし、現実は無情にも、

 

「でも、ちょっと、だけ。……貧乏くじを引くの、早すぎ……ませ、か? まだ……ホカリスエットの、攻……げ」

「まずはひとり」

 

 ユニィがメダメイドの眉間に二発撃ち(ダブルタップ)

 すでに事切れる寸前の喋りだっただろうに、心のない追い打ちに最後の言葉さえ言い切らせてもらえずメダメイドは倒れて、

 

「メダメイド機能停止だよ」

 

 レフェリーであるヴェーラから残酷な言葉が告げられたのだった。

 

 なお、メダルハッチからメダルが弾かれる事はない。

 ユニィは言った。

 

「まだ暴走はしないので安心してください。約束通り、そちらのリーダー機が機能停止し、アズキ様が約束を拒んだ時のみ暴走は起こります」

 

 直後、二発目のビームがもう片方のホカリスエットを襲う。

 

 いや厳密には三発目だったらしい。

 他のみんながユニィに翻弄されてる間も、クワトロさんとバグスティンクは冷徹に残りのホカリスエットと戦い続けていたのだ。

 

 前のホカリがビーム一撃では脚部を破壊できなかったのに、今回のホカリはビームで脚部を破壊されていた。

 つまり、アズキが見てなかった間に、すでに彼女はビームを一度当てており、今回の二撃目で脚部を破壊したと推測できる。

 

 が、ここでクワトロさんは言うのだ。

 

「スタッグさん、フクさん、シルコさん。後はお願いします」

 

 神宮寺さんから聞いた事がある。

 クワトロさんは、人前では神宮寺さんと呼ぶけど、二人きりの時はたまにシルコと名前で呼ぶのだと。

 

 ここであえて名前呼びにした意味はすぐ理解した。

 それだけ強い想いをまだ生き残ってるメンバーに託したからだったのだ。

 

 

 だって。

 

 

 ホカリスエットは脚部が破壊されたと同時にクロスファイアの準備が完了し、バグスティンクにオーロラを放出していたのだから。

 

「バグスティンク、装甲板を前に展開」

 

 クワトロさんは抵抗するも、ホカリスエットのクロスファイアを防ぎきれず、

 

『脚部パーツ機能停止、頭部パーツ中度ダメージ』

 

 頭部の破壊は免れた。

 けど、ホカリスエット同様にヘヴィパーツの頭部を持ったバグスティンクが元々鈍足な戦車脚部を破壊された事で、その推進力、充冷のほとんどを失う。

 

 それは今回のロボトルにおいて戦闘不能も同じであった。

 





メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。

[機体名]
ライブラ(業務用ver)
[型式番号]
TMZ-LBR-00
[性別]

[パーツ]
◆頭部:エターナリー(守護/重力ガード//4回)
◆右腕:ハーモニー(射撃/アンチエア/速射)
◆左腕:アグリメント(射撃/アンチシー/速射)
◆脚部:クールヘッド(浮遊/スプレマシー)
●HV:0/0/0 合計:0/0
[使用者]
TMZ関係者(モブエージェント、研究員、防衛システム等)
[備考]
TMZ社から製造・販売されているTMZ-LBR-00ライブラの自社使用版。
現在、社内限定のパーツチューニングによって、作中時点では未発表の新サブスキル「速射」が試験導入されている。
これはメダテック社と連携した動作テストを兼ねており、使用感や実戦データはメダテック社に送信されている。
なお、メダロットHERMIT内では時系列の関係で上記の設定に留まっているが、
正気山脈先生の小説「メダロットSAGA」の時系列ではFIGHT.12までの間にTMZ社公式HPよりLBR-00ライブラのアップデートパッチが公開。
市販機でもパーツチューニングによって速射の導入が可能という状態になっている。
[速射]
正気山脈先生の小説である「メダロットSAGA」にてFIGHT.09から登場したオリジナルサブスキル。
攻撃の威力が下がる代わりに充填・冷却効率が上がる。
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