メダフォースを使い、光の翼を生やしたスタッグ。
「いきます!」
スタッグは言うと、光の翼をスラスターのように使い、高速で駆け回りながらユニィの体を二度三度と斬りつけた。
「疾い!」
驚くユニィ。それだけではない。
「マスター、ビームの充填が急に完了しちゃった」
バグスティンクが言ったので、クワトロさんは慌ててメダロッチを操作し、
「し、指定箇所にビーム発射!」
って指示。バグスティンクがビームを発射すると、ホカリスエットの頭部を一気に破壊してしまう。
「体が軽い」
次に反応したのはマゼンタキャット。
ホカリスエットが機能停止したのを確認すると、
「これなら」
と、光の翼で飛行するように跳躍し、一気にライブラの懐に飛び込んで腕を突き出し、電流を流し込む。
サンダー攻撃で停止状態にされたライブラの一体はその場で上空から地面に落下し、頭部を打って機能停止。
「ブルーティス、アンタも何かやりなさいよ。今なら何でもできるわよ」
マゼンタキャットの言葉を受け、ブルーティスはここぞと跳躍し、
「ファイヤー昇〇拳!」
と、残りのライブラに格闘ゲームの技を真似たアッパーをぶつける。
ブルーティス本人は、
「炎、出ないですよ!」
って言ってるけど、実際は光の翼から撒かれた粒子がブルーティスの腕を包み込んで波〇拳を纏ったような昇〇拳になっていた。
しかも昇〇拳は一撃でライブラの脚部を破壊し、こちらも上空からの落下ダメージで機能停止。
マゼンタキャットは言った。
「良かったじゃない。炎が出てたら雨で消火されて逆にライブラ倒せなかったかもしれないもの」
「そ、そうでした!」
あっと気づくブルーティス。
まあ、ふたりの会話はともかくとして、アズキたちは瞬く間にユニィを除く敵機を全員撃破してしまったのだ。
スタッグの使ったオーバードライブは、味方全員の充填・冷却性能を上げるとメダロッチには記載されてたのだけど、まさかこれ程だったなんて。
「これで残るはあなただけです」
スタッグは言いながら光の翼で宙を舞い、ユニィの後ろに回り込んで後頭部を斬りにかかる。
しかし、この攻撃はユニィが咄嗟に左腕のブーケで防御し、片腕の破壊は成功したが機能停止は防がれてしまう。
「スタッグさん、失礼とは思いますがロボトルのルールは覚えておられますか?」
ユニィはすぐ後ろに向き、スタッグと対峙しながら言った。
スタッグは、
「どういう事で」
と、言いかけた言葉が途中で止まる。
ユニィの体も、スタッグと同じような赤い光に包まれ始めたからだ。
「もしかして、あなたも」
スタッグが驚く。ユニィは言った。
「ロボトルのルールは相手を全滅させる事ではありません。リーダー機を倒す事がロボトルの勝利条件になります」
赤い光はユニィの全身を包んだまま。
しかしスタッグやバグスティンクとは違い、光の大半が彼女の首にかけられているロザリオのネックレスに収束されていく。
十字架を真っ赤に染め上げ、膨張し、フォースの光は彼女の胸元で赤く巨大なクロスを生み出す。
「これで終わりです。グランドクロス・ローズ!」
ユニィから、真っ赤で巨大な十字の光がスタッグに放たれた。
しかも、光はただ相手を貫くのではなく、薔薇の茨みたいにスタッグを棘で刺しながら絡みつき、十字架の磔にしてから、棘が一斉に爆発する。
「ーーーっ!!」
相当な激痛だろう。スタッグが声にならない悲鳴をあげた。
そのうえ、ユニィの体から赤い光が消え、メダフォースによる攻撃自体が終わったにも関わらず、十字架は残り続け、光の茨がスタッグに絡み続ける。
ユニィは十字を切った。
「ああ、神よ。私は罪人でもない方にこのような処刑を行ってしまいました。どうか全てが終わった後、私に裁きをお与えください」
「スタッグ!」
アズキは呼びかけた。メダロッチからはまだ通知が出されてない。だから機能停止してないと思ったのだ。
スタッグは一度意識を飛ばしてたように見えたが、アズキの声に反応すると薄目を開けて、
「あ、ずき」
「よかった」
ほっとするアズキ。
これにはユニィも「まだ動いてるなんて」と驚く。しかし、
「言ったはずです。これで終わりですと」
ユニィは言った。
「私のメダフォースはただダメージを与えるだけの技ではありません。相手にファイアとウェーブの症状を与え、一切の慈悲無き拷問に処する技です」
「あ、だから無事だったんだ」
アズキは呟く。
「ファイア症状を与える、炎を扱うメダフォースだから雨で威力が弱まって、スタッグは機能停止にならなかったのかなって」
「あっ」
ユニィが驚くのを見てアズキは続けて、
「うん。いまので本来はもっと威力の出るメダフォースと分かった。次に戦う時は気を付けないと」
「次なんてありません!」
と、ユニィは右腕の銃をスタッグに向ける。
「雨で即死を免れようとも、私の勝利は確実です」
「果たしてそうでしょうか?」
スタッグは息も絶え絶えの声で言った。
実際、メダロッチで確認しても頭部パーツ以外は機能停止、残った頭部もファイア症状による継続ダメージで今も減り続けている。
なのに、ユニィは気づいてるだろうか。
いま、アズキとスタッグは揃って挑発的な発言をして、相手の意識をこちらに集中させようとしてる事に。
スタッグは言った。
「そういえば、あなたの目的はアズキだそうですね」
「それがどうかしましたか?」
「私の事を勝手にアズキに恋してると決めつけてましたけど、実際そういうあなたはどうなのですか?」
もうファイア症状で頭部ダメージ九九パーセント。
意識を保つのもやっとだろうに、スタッグは会話を続ける。
ユニィは意図が分からず、
「何を言いたいのですか?」
「あなたのほうこそ、現マスターの命令を良い事にアズキに如何わしい事に及ぼうと企んでるのではありませんか?」
「なっ」
赤くなるユニィ、とアズキ。
アズキは素で、
「え、まさか私を連れ去るってそういう意味だったの?」
「違います!」
さらに神宮寺さんまで会話に入って、
「如何わしい事って何ですか?」
「えっと、赤城くんがボウショウさんに聞いて」
アズキは言った。
なお暗にクワトロさんは駄目だと伝えたつもりでもある。
ところで。
アズキはユニィに、
「それで。えっと、その、ユニィの今のマスターって男性、女性?」
「女性ですけど」
という事は、もしかしたらワンチャン。
「アズキ?」
「ごめんなさい」
スタッグに睨まれ、アズキはすぐに謝る。
「もう、何ですかあなた方は!」
痺れを切らしたように、ユニィが力強く言った。
「人を勝手に破廉恥メダロット扱いして。私はバグスティンクとは違います」
なぜかバグスティンクに流れ弾が飛ぶ。
「命乞いにしても、少しでも生き長らえるための悪あがきにしても、時間稼ぎはもう十分でしょう」
見ると、相当おちょくられたせいか、顔は真っ赤でスタッグに向けっぱなしの銃口はぷるぷる震えている。
怒りと羞恥で錯乱してる中で、なんとかスタッグに照準を合わせる事で精一杯。
周囲の様子は一切目に入ってないようだ。
「リーダーであるあなたを倒して、そろそろこのロボトルも終わりにします」
直後、スタッグは僅かに笑みを浮かべる。
「はい。もう十分すぎるほど時間を稼がせていただきました」
なぜなら、
「リーダー機は私ではありませんから」
「え?」
直後だった。
スタッグとアズキが時間稼ぎしてる間に、ウォッカも避難していた樹の頂上まで登りきったマゼンタキャットがさらに跳躍する。
ユニィはすぐ気づいて、
「まさか、本当のリーダー機は」
翼の力を借りて高く跳び上がったマゼンタキャットは、その場で猫のように体を丸め回転しながら電流を自ら浴び、全身に電気を纏いだす。
「あ。ああっ、こ、この技は」
アズキの記憶が正しければ、これはスタッグが彼女と戦った時も見せた、おそらく彼女にとっての決め技。
本来、アズキやスタッグより付き合いが長いだけあり彼女も知ってる行動らしい。
マゼンタキャットは光の翼でさらに激しく回転し、全身の電気を高めながら飛び蹴りの姿勢に入り、
「だ、だめ、これは、これを受けたら」
ユニィが慌てて右腕の銃で撃つも、マゼンタキャットを包む電気が全て弾きながら、
「エレクトリック・サンダー・キック!」
ユニィに向けて真っすぐライダーキックを放った。
光の翼で降下速度も高めた彼女必殺の一撃は、見事ユニィの胴体に当たり、
「きゃああああああっ!」
超威力のキックと同時に、マゼンタキャットを包む電気が全てユニィに流れ込んで、
「そうよ。真のリーダー機は私だったのよ」
マゼンタキャットが言ったところで、
「リーダー機、機能停止。これによって勝者はアズキ・キクナ・モッチーズ連合チームとするよ」
ウォッカがロボトル終了を宣言。
いつの間にか雨は止んでいた。