メダロットHERMIT   作:CODE:K

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9-8 Strike Enemy8

 

 戦闘後のリビングにて、

 

『ごめんなさい。その内容もプロテクトがかかってました』

 

 メダロッチ越しにユニィは、神宮寺さんたちの質問に返事した。

 

 ユニィはマゼンタキャットのキックをくらって、無事に機能停止してくれた。

 しかしハッチが開かなかったので、こちらで強引にメダルを回収した後、神宮寺邸にあった予備のメダロッチに搭載。

 

 現在はテーブルの上に置かれた状態で、みんなの質問にひとつひとつ答えてる形である。

 しかし、

 

「これも駄目なの?」

 

 神宮寺さんがしょんぼりしたように、ユニィは現在のマスターが施したプロテクトによって、ほとんどの質問に答えられずにいる。

 とはいえいくつかの情報は得られた。

 

 まず今回の襲撃は、博物館でメダロットの暴走に関わった神宮寺さんたちの口封じが最大の目的。

 アズキを連れ去ろうとした理由は、マスターが個人的に欲してるから。おそらくこれも、過去に暴走メダロットと関わった人間の口封じだろう。

 

 間違いなく破廉恥な目的ではないとユニィに強く断言された。

 

 とはいえ、これはまだ予想できた範疇。

 一番の朗報は、御萩ユスグがまだ生きていると分かった事だ。ただし装置の中で眠らされ、いまも意識を取り戻してないらしい。

 

 あとは、

 

「お前のマスターと組織の名前を教えてくれ」

 

 と言った赤城くんの言葉に、

 

『マスターの本名はプロテクトがかけられてますが、組織内ではダイマトウと呼ぶよう徹底されています』

「組織の名前は」

『名前は暫定的にしか存在しません。ダイマトウという研究者が個人的に立ち上げた小規模の研究施設。と伝えるようにプロテクトされています』

 

 つまり、組織に関しては虚偽の情報である可能性が高そうだ。

 もちろん、ここから更に踏み込んだ話はプロテクトによって喋れない。それでも収穫としては想像以上ではないだろうか。

 

「とはいえ焦る必要はないでしょう」

 

 クワトロさんが言った。

 

「プロテクトでしたら、ロボロボ団やTMZが解除していただけると思いますから、全ての情報を聞き出せるのも時間の問題だと思います」

 

 とはいえメダルがTMZに引き渡される事は多分ないだろう。こちらもブルー博士の問題でロボロボ団のほうが現状信頼できるという異常事態にいるのだ。

 神宮寺さんは納得し、

 

「確かにそうね。それにスグの無事は確認できたもの、安心したらお腹がすいてきちゃったわ」

 

 なんて言い出す。しかし、

 

「ごめんなさいお嬢様」

 

 出せる食事が無いとボウショウさんは言った。シェフが作ってる最中に襲撃が起こったので、全ての調理が一時中断。

 しかも怪我人を救急車で運ぶ際、シェフの大半が避難のため同乗してしまい、いま料理を作れる人がいないらしい。

 

 神宮寺さんが「どうしよう」としょんぼりする中、アズキは駄目元で言ってみた。

 

「あ、ならキッチン借りてもいいですか?」

「え?」

「私でよければやってみますけど」

「先生、お料理できるの?」

 

 驚く神宮寺さんに、アズキはちょっと恥じらいを覚えながら、

 

「まあ、えっと、その、今は色々あって教師やってるけど実は元々パティシエになるのが夢だったから」

「でしたら私もキッチンに入ります」

 

 ボウショウさんが言った。

 

「屋敷では料理担当ではありませんけど、これでも一児の母ではありましたから」

 

 といった流れで、元々材料の仕込みが殆ど済んでたのもあって、三〇分前後で料理は完成。

 

「できたよ」

 

 と言って、ふたりで料理をテーブルに並べていく。

 

「す、すげー」

 

 赤城くんが驚いてくれたけど、別に大袈裟な事はしていない。

 

 テリーヌは元々シェフが冷蔵庫で冷やしてたものを出しただけだし、キッシュもすでに切り分けてあった野菜をアズキが勝手に使っただけ。

 ステーキ用の肉は神宮寺さんと客人の三人分しか用意されてなかったので、ボウショウさんがサイコロ状にして玉葱と一緒に炒めて大皿料理にした。

 

 後はボウショウさんが味噌汁を作り、アズキがカナッペの具を変えてデザートとして出した。そのくらい。

 

「アズキさん、そのドリンク」

 

 最後にアズキが人数分のグラスを運ぶと、キクナがすぐ気づいて、

 

「もしかしてモヒートですか?」

「うん、プールで飲んだノンアルコールのを再現してみたんだけど」

「まさか、ここに繋がるとは思いませんでした」

 

 キクナがくすりと笑った。

 

 みんなでプールに行った日、わざわざ珍しいドリンクを注文したのは自分で飲んで、舌で味を盗むためだったのだ。

 パティシエになりたいと思ってるアズキだからこその、密かな趣味である。

 

 ユニィが言った。

 

『そういえば、当時から外で美味しいものを食べた後は、よく孤児院のキッチンを借りて再現しようとしてたそうですね』

「え、それもユスグさんが言ってたの?」

『はい。とても美味しかった、また食べたいとよく仰ってました』

 

 たしかに孤児院でもキッチンを借りて色々やった覚えはあったけど、ユスグさんも試食してたとは思わなかった。

 彼女に関する思い出が殆どないアズキは、改めて罪悪感を覚える。

 

 その日の夕食は大好評で、席の半分が子供の食卓だったのに、残した人はゼロ。大皿料理も含めて完食だった。

 

 

 

 当日の深夜。

 

 食事には参加せず、敷地の警備に当たっていたロボロボ団ふたりは懐中電灯を片手にみんな寝静まった屋敷内を歩いていた。

 雨が再び降りだしたので、慌てて雨宿りに入ったのもある。

 

「いやぁ、アズキさんの差し入れ美味しかったロボね。ハムとチーズとトマトをバゲットで挟んだ即席サンドイッチ」

「ボウショウさんの味噌汁も絶品だったロボ。水筒で渡されたから熱々のままで」

 

 さすがに満腹とはいかなかったが、悪役の身で温かい手料理にありつけた感動にお腹をさすりながら、うきうき気分で廊下を進む。

 が、ここで。

 

「ん?」

 

 ロボロボ団のひとりが違和感を覚えた。奥のフロアから人の気配を感じたのである。

 

「誰ロボか?」

 

 屋敷の構図からトイレやお風呂では無い事は間違いない。

 

 ふたりが息を潜めて進むと、物置部屋でひとりの人間が立ってるのを見つけた。

 フード付きのローブに仮面姿のため、顔は一切分からない。しかしロボロボ団の目に背はさほど高くないように映った。

 

「そこの不審者、止まるロボ」

 

 ロボロボ団は言うが、仮面の人間は無視してさらに奥に進む。懐中電灯を照らすと、その先にはメダルを失ったユニトリースが放置されていた。

 

(まさか)

 

 ロボロボ団が推測した内容は当たった。

 仮面はユニトリースのメダルハッチを開けると、中にメダルを挿入してユニィを起動する。

 

 ロボロボ団は慌てて、

 

「き、緊急事態ロボ。この事を早くお嬢様に報告して」

 

 直後、ユニィの銃弾がロボロボ団の体を貫いた。

 

「あっ」

 

 と倒れるロボロボ団。

 残りのひとりも恐怖で、

 

「うわああああ」

 

 とその場から逃げようとしたが、背中から銃弾を受けてやはり倒れる。

 

「また私は神に許されない事を」

 

 ユニィはその場で懺悔を口にして祈りを捧げるが、仮面は罪悪感を欠片も見せずロボロボ団に近づき、それぞれに注射器で薬物を注入する。

 

「何をしてるのですか?」

「ロボロボ団ならこれでも生きてる可能性がありますから、前後の記憶を飛ばす薬物を注入しました」

 

 仮面は言った。女性の声だった。

 

「このまま神宮寺邸に捕まったほうがあなたにとっては幸せだと思いますけど、組織はそれを許しません。今のうちに脱出をお願いします」

「レイア・フォルマージ。私はあなたを恨みます」

 

 ロボロボ団は奇跡的に無事だったが、薬物のせいで仮面との接触前後の記憶は何一つ覚えてない事が判明。

 こうして、アズキたちはユニィの脱出を許してしまうのだった。

 

 

 

「へえ、今日は随分と帰還が遅かったじゃない」

 

 ある地下施設にて。

 

 ダイマトウと自称する女性は戻ってきたユニィをあざ笑うように言った。

 髪は肩まで伸びたツインテールで、寝着の上に白衣を羽織っている。

 

 瞳は虚ろのようにもギラギラ輝いてるようにも映り、ユニィは彼女を見る度にこう思うのだ。暴走メダロットを擬人化させるとこんな目をしてるのだろうかって。

 

「すみませんでした。任務に失敗し捕まってしまい、レイア様の協力がなければ」

 

 と、ユニィは言いかけるも、ダイマトウは言った。

 

「別にいいわ。もう戻ってこないと思って廃棄の方法を考えてた程だもの。帰還してくれただけで十分よ」

 

 改めてユニィは自分が帰還させられた現実を恨んだ。このまま捕虜になってれば、神宮寺やアズキの味方になれたかもしれないというのに。

 

「それで、褒美の話でしょう?」

「え?」

「相手があまりに情報を掴んでくれないから、君をわざと捕虜にして情報を小出しで与える。ちゃんとユニィは任務を達成してくれたじゃない」

 

 ダイマトウは壁に設置されていたスイッチを押す。

 直後、壁は扉だったかのように開いて、奥から巨大なカプセルが姿を見せた。

 

 中は培養液で満たされ、ひとりの意識がない少女が、底に搭載されたカブトメダルと連結する形で機械に繋がれている。

 御萩ユスグであった。

 

「さあ、報告してあげるといいよ。今日あった全ての事をね。ちゃんと彼女の耳に届いてるかは知らないけど」

 

 ダイマトウが言うまでもなくユニィは駆け寄り、カプセルにしがみつく。

 

「マスター! あぁ、ユスグ、ユスグ。今日も無事だったのですね」

 

 ユニィは泣きじゃくるような声で言うのだった。

 

「信じられますか? 今日、アズキ様にお会いしました。ええ、あのユスグがよく話してくださったアズキ様です。あなたが惚れるのも分かるほど素晴らしい御方でした。シルコ様にマゼンタ様、フク様も相変わらず元気でいらっしゃいました。ああ、見せてさしあげたかったです。今日起きた事を全て。あ、そうでした。今日、アズキ様がお料理を作られてましたよ。ユスグが仰る通りとても上手で、みんな美味しい美味しいって。ああ、ユズグ。目を覚ましてください。早く元気な姿を皆さまにお見せください。誰もが、誰もがあなたを助けるために頑張って、あんなに頑張っていらっしゃるのに。

 …………ああ。ああ、神様、どうして神は私にだけは何も授けて下さらないのでしょうか。私だって、あなたの、マスターの力になりたいと何度も何度も思ってるのに。どうしてマスターを危険に陥れた側で動かなくてはいけないのですか。……ああ、会いたい。私も会いたい、目を覚ましたあなたに。ユスグ、ユスグ、ユスグ、ユスグゥぅぅうううああああああああああああ!!!!!!」

 





これで第9話は終了になります。
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