メダロットHERMIT   作:CODE:K

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10-2 future2

 

「ありがとう、キクナ」

 

 アズキは言いながら、赤城くんとは反対に性別が男確定と分かってるのに、その姿を見る事に危険を覚えて視線を外す。

 原因は、今日のキクナの服装があまりにやばいからであった。

 

 まず第一に、今日のキクナは地雷系ファッションである。

 

 ベースはパステルピンクの肩出しブラウス。胸元にはリボンやフリルが装飾され、多少の露出を出しながら非常に可愛らしいデザインに見える。

 しかしよく見ると下に網のインナーを着ており、素肌を程よく隠しながら独特のエロスも演出。キクナが言うには防水仕様だとか。

 

 黒のスカートと白いストッキングで絶対領域も確保しており、ガーターベルトも完備。わざと狙ったと分かる、あざとさの塊じみた可愛さに満ち満ちてるのだ。

 

「でも、よくこんな姿で来る気になったね」

 

 アズキが言うと、キクナは笑顔をつくり、

 

「何のことですか?」

 

 と返事。近くで会話を聞いてた神宮寺さんが、

 

「通杭先生の私服って本当可愛いですよね。あーもう、また負けたー」

「すげぇよな。オレと違って、これで本当に男なんだってさ」

 

 赤城くんも素直に可愛らしいと受け取ってるらしい。多分クワトロさんは「そうですね」と返しつつ、今日のキクナが地雷の塊な事実に気づいてると思うけど。

 

「で、アズキさん。どうしましたか?」

 

 改めて確認してくるキクナ。

 地雷だけに下手に触れるだけで踏んだも同じだったのだとアズキは気づいた。

 

 神宮寺さんと赤城くんが分かってないせいで、あくまでグループ内では深い意味なく可愛らしい私服扱いになってしまってるのだ。

 

「お嬢様、バーベキューセットを調達してきました」

 

 ボウショウさんが戻ってきた。

 食材はスタッグが抱え、ボウショウさんは食材が濡れないよう傘をさして彼女を中に入れている。

 

 しかし、彼女たちの光景にアズキは、

 

「あれ?」

 

 と声を出した。

 女性が二名増えていたのだ。

 

 片方は色白の肌に黒いラテックス製のボディスーツで身を包んだ、長い銀髪に赤目の蠱惑的な雰囲気を漂わせた女性で、アズキの知り合いである。

 

 もう片方は、背丈からみて生徒たちよりひとつ年上という程度だろうか。

 髪は腰まで届いた黒のロングで、頭を飾ったリボンの結び目がウサギの耳みたいに突き立っている。

 

 で、服装はという時点でアズキは気づいた。

 

 彼女が着てるのはアズキも通う高校指定のブラウスとスカートで、一目で生徒会と分かる特別製の女子制服を肩にかけていたのだ。

 つまり教え子どころかアズキと同じ高校の生徒、それも生徒会役員である。

 

 直後、キクナと赤城くんが驚いた声で言った。

 

「お姉ちゃん?」

「姉さん!?」

 

 というのも、知り合いの銀髪の女性は通杭ノリカといい、キクナの姉でアズキとは同級生の関係にあった。

 で、赤城くんがもう片方に向かって姉と呼んだという事は、

 

「アズキ、問題が発生しました」

 

 スタッグが食材をテーブルに置きながら言った。

 

「この度、田村崎一族の継承権第一位、本家の長子である田村崎マイカゼさんと食事をご一緒する事になってしまいました」

「えっ?」

 

 いま、なんて? そんなやり取りしてる間にマイカゼ様と思われる女性はこちらに向かってきて、

 

「やあ。君がアズキ君だね」

「は、はひ」

「一応初めましてかな? 私はマイカゼ。妹のフクがお世話になってると伺ってるよ」

 

 と、握手を求めてきた。

 アズキは震えた手で応じながら、

 

「い、いい、いえ、むしろ私の方が助けられてますというか何というか」

「今日はノリカ君と遊びに来たら偶然みんなを見かけてね。せっかくだからボウショウに頼んでご一緒させてもらったんだ」

「そ、そうですかマイカゼ様」

「様はやめて欲しいな。対等なクラスメイトなのだから、せめてさん付けにしてくれると嬉しいのだけど」

 

 へ?

 

「いま、なんと?」

 

 アズキが混乱してると、横からキクナの姉で同級生のノリカが、

 

「おや? アズキさんはまだご存じなかったのですか? まあ今のところ今年度はまだ一度も出席してないのですから知らなくても当然ですけど」

 

 と、これはキクナの姉だと感じさせる素敵な笑顔で言った。

 

「今年、アナタとマイカゼさんは同じクラスですよ。去年に引き続きワタシにショウイチさんも同じクラスですけど」

「う、うそ?」

「フフッ、驚いてますね。まあ無理もありませんか。任務で学校に来れなかったせいで、今年度の自分のクラスが魔境だった事を知らなかったのですから」

「おいおい、私がいるだけで、どうして魔境になるのかな?」

 

 マイカゼ様が言うも、ここでキクナが、

 

「アズキさんにとっては魔境だと思いますよ? 職場目線で言えば上司どころか社長よりも上の立場の人間がクラスメイトでよろしくしてきたのですからね」

 

 ってにこにこ。

 アズキは言った。

 

「キクナ、知ってたのこの事実?」

「一応ですけどね」

「そういう君もだよ。キクナ君」

 

 マイカゼ様は、今度はキクナに向かって、

 

「突然君から連絡が来なくなって私も寂しかったんだぞ。ノリカ君に確認しても仕事上の理由だとしか答えてくれないし」

「その結果、積もりに積もった不満が爆発して、今日キクナが外出してる内にワタシも強制連行されたわけです」

 

 ノリカは言った。

 ただまぁ、アズキは内心少しだけ安心した。

 

 マイカゼ様は言葉遣いこそ尊大だけど、声域が高く緩やかで優しみのある話し方をするのだ。背丈もあって子供が背伸びをしているような印象である。

 反面、おかげで風貌も教え子よりは上という程度に幼く映り、マスコットのように可愛らしくてアズキ好み。

 

 さらにテーブルに座ると足を組み、スカートの下からスパッツを晒しつつ適度に筋肉質で引き締まった美しい脚を見せてくれる。

 レズとしてもロリコンとしても、アズキにとっては危険な存在なのだった。

 

 生徒を置き去りに高校生組だけで会話してたせいだろう。神宮寺さんが痺れを切らして、

 

「そういえば、紅下先生たちが本当は高校生だったって本当なのですか? フクが言ってたのですけど」

「え、それは」

 

 アズキは焦る。この事実を生徒に伝えないのも立派な任務のひとつなのだから。

 

「まあ、こうなってしまった以上は仕方ないですね」

 

 キクナは観念した様子で、

 

「事実ですよ。本来僕は高一で、アズキさんは高二。TMZが裏で手を回してくれたおかげで僕たちは高校に在籍したまま教師として潜入していました」

 

 との言葉にクワトロさんが心配そうに、

 

「それって、私たちの学校側もご存知なのですか?」

「ある程度は掴んでると思いますよ。ですけど行方不明事件から臨時の担任が次々に辞めていって学校がお手上げだったからこそ、黙認するしかないようでして」

「進級は大丈夫なのかよ?」

 

 赤城くんの問いに、キクナは続けて、

 

「定期試験で上位をキープする事が条件になってます。ですから連休明けに僕もアズキさんも揃って数日欠席すると伝えてありますよね?」

「授業受けてないのに? 大丈夫なのかそれって」

「何とかしますよ。元々僕もアズキさんも成績優秀なほうですから。とくにアズキさんなんて、神宮寺さんの家に泊まった日でも夜遅くまで勉強してましたし」

 

 と説明され、アズキは顔を赤くしながら、

 

「まあ、みんなと別れたくないから、頑張ってます」

「毎晩毎晩、本当に勉強頑張ってるのですよ。アズキはこれでも」

 

 スタッグからの要らない援護射撃。アズキがさらに羞恥で縮こまってると、

 

「それでは、そろそろ始めますね」

 

 ボウショウさんが食材を焼きだした。

 ここでマイカゼ様が。

 

「何はともあれ今日は楽しもうじゃないか。人数が増えた分、お肉の量もいつもより多めにもらえたからね」

「マジか? よっしゃあ」

 

 喜ぶ赤城くん。あくまで人数に比例してなので、ひとりが食べれる量は変わらないという事実は、たぶん言わない方がいいと思う。

 が、ここでクワトロさんはのたまいやがった。

 

「ところで皆さん。こういう焼肉には野菜汁が必要だとは思いませんか?」

 

 出してきたのは一束の紙コップと、大型ペットボトルに入った、所々が極彩色な緑色の液体。

 

「ひえっ」

 

 赤城くんが仰け反った。

 アズキは、液体を指して、

 

「え、なにあれ?」

「以前、クーがあるテニヌ漫画を参考に作った野菜ドリンク。死ぬほど不味いんだ」

「うわっ」

 

 ってアズキが軽めに反応してると、さらに神宮寺さんが、

 

「先生、甘くみちゃ駄目ですよ。死ぬほどって誇大表現でも何でもないですから」

 

 えっと、どういう事? まさかテニヌ漫画って最近テレビでアニメ化もしたあの。

 

「大丈夫です。今回はちゃんと改良しましたから」

 

 クワトロさんが言うけど、あの神宮寺さんでさえ信じられないようで、

 

「ロボロボ団、一名来て」

「ロボッ」

「あのドリンク、一杯飲んであげて」

「はいロボ」

 

 どこからかロボロボ団を召喚。クワトロさんから紙コップでドリンクを一杯受け取って飲むと、

 

「ロボーーーーッ!」

 

 ホカリスエットのクロスファイアを受けた時と全く同じ動作、同じモーションで倒れるロボロボ団。

 クワトロさんは、狼狽えながら、

 

「で、ですから言ったじゃないですか。今回はちゃんと()()するように改良したと」

「じゃ、じゃあ私はこれで失礼しようかな。フク、久々に会えてお姉ちゃんも嬉しかったようん」

 

 なんて逃げようとするマイカゼ()()の肩をアズキとキクナのふたりがそれぞれ掴んで、

 

「マイカゼ様、知らなかったのですか? モッチーズからは逃げられない!!」

 

 まずはアズキが言い、さらにキクナが、

 

「アズキさんのクラスではモッチーズを名乗るあの三人がルールらしいのですよ。僕たちが所属する学校で言うならミス研が掌握したクラスみたいなものです」

 

 ミス研の説明については割愛。ただモッチーズを部活か校内組織に引き上げ生徒会に対抗できるレベルになった厄介者たちと表現しておく。

 さらにキクナは姉のノリカに向かっても、

 

「お姉ちゃんも逃げられないですよ?」

「キクナはワタシに死ねと?」

「ルールですから」

 

 にこりと笑う。

 こうして地獄が始まった。

 





今回登場しました「田村崎マイカゼ」「通杭ノリカ」はそれぞれ身内から提供頂いたキャラクターです
使わせていただき、ありがとうございました
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