メダロットHERMIT   作:CODE:K

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10-5 future5

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 歓喜が絶頂に達し、吼える赤城くん。

 ボウショウさんが狼狽えながら、

 

「あのフク様? どうしてあのような下種めいた台詞に興奮なさってるのですか?」

「どうしてって当たり前だろ。ボウショウはオレの元メイドなのにメダロットZEXALを知らないのかよ」

 

 興奮したまま赤城くんは言う。

 ボウショウさんは、

 

「あまり詳しくないですけど、少しだけでしたら」

「なら分かるだろ。たしかにフォーマスは最初ゲスキャラ担当だったけど終盤めっちゃ熱い漢になるんだよ」

「は、はあ」

「特に、互いに一番のファンと言い合った神代ショウガが敵のリーダーになっちまった時の激熱神回ロボトル。うわー思い出したらまた見たくなった」

 

 赤城くんが今度は苦悩のあまり頭を抱える。

 これを見たノリカは満足そうな顔で、

 

「まさかここまで好反応とは思いませんでしたけど、やってみるものですね」

 

 しかしロボトルとしては、アズキサイドにとって絶望としか言い様がない状況だった。

 

 相手の防壁が強すぎてトングや串に塗った毒を流せない。普通に武器として戦ってもフォースを奪われるついでに回復されてしまう。

 でもって、いまのスタッグは攻撃パーツも無ければ素手で殴るより威力が出せそうな事ができる姿形さえしていない。

 

 あるとすればタックルしながら角で頭突きだけど、角も際立って鋭い形はしてないし、そんな戦法取ったら頭を狙ってくださいと言ってるようなもの。

 本当に「どうすればいいんだよ」状態だった。

 

「大丈夫です。アズキ」

 

 スタッグが立ち上がった。

 

「私は、まだ負けてません」

「おおっ」

 

 大盛り上がりする赤城くん。

 

「やっぱり、ボロボロになりながら、まだ負けてないと言って立ち上がるのは王道だけに最高だよな」

 

 と、赤城くんが喜ぶ中、スタッグはさらに両手で毒トングを構えたポーズを見せ、

 

「しかもサンライズ立ちだァッ!!」

 

 赤城くんが再び歓喜の絶頂に到達。

 

「私が負けたら、負けを認めてしまったら」

 

 スタッグは叫んだ。

 

「私もアズキが野菜汁を飲む姿が見たいと認めてしまう事になります!」

「台無しだよチクショー」

 

 嘆く赤城くん。

 

「ほんとだよ」

 

 アズキも同意。

 そのうえノリカまで、

 

「これは、さすがのワタシも同情しますよ」

 

 と言ってくれる事態に。

 

 スタッグの左腕から乳白色の粒子が放出された。

 左腕パーツのチャージリペアである。スタッグは今から攻撃しますってポーズを取りながら実際は受けたダメージの回復を選んでいたのだ。

 

 さらに続けて今度は右腕パーツが充填を開始する。こちらの技も同じくチャージリペアだ。

 

「なるほど、回復し放題なのは相手も同じ、という事のようですね」

 

 ノリカは納得した様子を見せてから、

 

「全快される前にこちらから仕掛けますよ。ポリドリ」

「御意」

 

 ポリドリが両腕で槍を握り向かってきた。

 一撃目は槍による斬撃。スタッグは飛び退って回避。しかし、これでスタッグのフォースが増加した事でノリカが意地悪く笑う。

 

「いただきますよ、そのフォースも」

 

 ポリドリは槍を片手に持ち替えながら、一歩踏み込んで大きく一突き。

 これもスタッグは避けたように見えたが、槍はそのまま横薙ぎに続いて今度こそヒット。

 

「うあっぁあああ」

 

 スタッグの呻き声と共に再びフォースが吸収されていく。

 ここで右腕の充填が完了してスタッグがチャージリペアを使用するが、全快には至らない。

 

「はぁっ、はぁっ」

 

 人間みたいに息を切らせ乳を揺らしながら、スタッグは何度でも毒トングを構える。

 

 けど、相手の得物は槍である。

 武器に搭載された技を使わなくても、リーチの違いを活かして適当に振り回されるだけでスタッグは攻撃の射程内に入る事さえできない。

 

 スタッグ自身は回避能力の高い熟練したメダルだけど、今は見るからに鈍臭いと分かるボディのせいで軽やかに動く事さえ一苦労といった様子。

 あの過剰な爆乳も動きづらさに一役買ってるように映った。

 

 だからか。スタッグは最終的に強引でも相手の懐に入る手を選んだらしい。

 槍に切り刻まれながら、それでも急に接近し始めたスタッグにノリカは一瞬驚くも、

 

「ポリドリ、アイテルフリュ」

「させません!」

 

 相手が左腕を突き出そうとしたが、それよりも早くスタッグが毒トングを振りかぶる。

 ついに毒トングが相手に当たるかと思ったが、相手は冷静に飛び退ったせいで結局当たらず、再び槍に有利な距離を取られてしまう。

 

 しかも強引に動いたせいだろうか、スタッグの体が一瞬よろめいてしまい、

 

「そこです。ポリドリ!」

 

 当然、相手はここぞと槍で斬りかかる。

 

(回避は無理。それどころか)

 

 アズキは、スタッグの様子から攻撃がクリティカルヒットすると予想した。

 

 けど、スタッグは咄嗟に毒トングで相手の槍を受け止めようとする。

 今更だけど、スタッグが使ってるトングはメダロットのパーツでもなければ武器でもない。ただの調理器具である。

 

 結果、毒トングはポリドリの槍によって簡単に折れ曲がり、逆に野菜汁が塗り込まれた先端がスタッグの胴体に突き刺さった。

 直後。

 

『力が欲しいか』

 

 アズキのメダロッチから、スタッグでも通知用の音声でもない、完全に第三者の機械音声が鳴りだした。

 

「これは」

 

 スタッグにも聞こえてるらしい。

 機械音声は、続けて言った。

 

『野菜汁を受け継ぎし少女よ、力が欲しいか?』

「だ、誰ですかあなたは」

 

 けど、スタッグの言葉には応じず、まるで「はい」と答えたかのように機械音声は言うのだ。

 

『ならば、尻をさしだせ』

 

 って。

 しかも言われたスタッグは急に冷静になると、脚部から毒串を一本抜き取って、

 

『力が欲しければ、尻を挿しだせ』

 

 声に従って、串の金輪を尻で挟みだした。

 

(あっ)

 

 アズキは気づいた。

 

(間違いない。このネタはケ〇バトラー。真似すれば腰と社会的な尊厳が死ぬやつだ)

 

 メニーミルクのドレスは今だけかもしれないけど軟質装甲だったようで、装甲をパージしなくても普通に金輪を巨尻の谷間に押し込んで連ケツできた。

 で、ケッ闘(ロボトル)再開。

 

 毒串を尻で挟んだ事で、普段はドレスで隠れがちなメニーミルクのデカケツが一気に主張し始め、とても性的に映る。

 だけでなく、スタッグの動きは急に俊敏なものに変わった。

 

 ポリドリが槍を振るうと、スタッグは後ろを向いてケツを突き出し、相手の攻撃を串で弾き返す。

 しかも串はトングのように折れ曲がる事なく、逆に相手の頭上をバク宙しながら串の先で反撃。攻撃はポリドリに当たった事で、ノリカのメダロッチが鳴る。

 

『頭部パーツ、重度ダメージ』

「えっっっ?」

 

 ノリカは本気で困惑してるようだった。当たり前である。どうして肉や野菜を刺してた串で軽く切られただけで重症に近いダメージが出るのだろう。

 たとえ野菜汁が塗られていたとしても。

 

 けど、頭部に大ダメージが入ったのは事実だったらしい。今度はポリドリのほうが立ちくらみを起こし、そのまま一度倒れてしまったのだ。

 

「ポリドリ!」

 

 ノリカの声に応えるように、ポリドリは首を大きく横に振ってから立ち上がった。

 しかし、彼の両腕はぶらりと垂れ下がり、幽霊のようにふらふらとよろめきながら動いている。

 

 アズキは嫌な予感がした。

 もしかしてポリドリにも野菜汁が効いて、何かの死亡シーンを再現し始めたのでは。そんな気がしたのだ。

 

 一方のスタッグは、

 

「アズキ、教えてください」

 

 と、こちらにケツを向けながら言った。

 

「これは何ですか? どうして尻で串を持つと力がわくのですか?」

 

 知らないよそんなの。

 アズキは本当は、いや本気でそう返事するつもりだった。けど口から出た言葉は、

 

「体内を巡るエネルギー『フォース』。それは下腹部にある丹田で練り上げられる」

 

 という妙な説明だった。

 アズキは自分でも「いやそんなはずないでしょ」と突っ込みを入れたいのに、

 

「フォースこそが強さの源。そのフォースをより濃くより純粋に扱う方法。丹田に最も近く最も強いパーツで戦うメダロットこそが」

「ケツメダロット、なのですね」

「うん」

 

 いま、自分たちは何の会話をしてるのだろう。たぶんアズキだけでなく、一見頷いて納得しているスタッグも同じ事を思ってるに違いない。

 

「でしたら」

 

 と思ったら、スタッグは本気でいまの会話から何かを掴んだらしい。

 

 スタッグは一度バーベキュー場に戻ると、自分の右腕パーツから牛乳瓶を模した部分だけをパージ。

 本来なら充填によって乳白色の粒子をため込むはずだった部分に、なんと武器の細工に使った紙コップの野菜汁を直接流し入れ出したのだ。

 

「スタッグ、何やってるの?」

 

 驚くアズキにスタッグは牛乳瓶を腕に装着し直して言う。

 

「野菜汁を直接相手に噴射します。ケツメダロットになった今の私のスピードなら、多分ポリドリさんに当てる事ができます」

「いや、ほんとに何言ってるの?」

 

 今度こそアズキは本音を伝えられた。

 たしかに戦術そのものはスタッグならやりかねない発想ではある。

 

 けど、ナチュラルに自分をケツメダロットと認識するのは、普段のスタッグなら絶対にありえない。

 

「やめたほうがいいよスタッグ。これ以上やると」

 

 社会的に死ぬ。正気に戻った後の羞恥とか、一生からかわれるネタにされるとか、そういった方面で。すでに腰が筋肉痛で死ぬ程度で済む段階を超えている。

 

 けど、

 

「いきます」

 

 スタッグは再びポリドリに飛び掛かった。

 ケツを向けたまま、普段のセーラースタッグが正面向いて走るより速いバック走で詰め寄って、ケツの串で斬りつける。

 

 ポリドリは手に持った槍で払いのけてはいるが、どこか驚いてるようにアズキの目には映った。

 だって、先程まで自らの槍で蹂躙できていた相手が、ケツで串を挟んだ途端、ただの調理器具で互角の戦いを始めてきたのだ。

 

 きっと訳が分からないに違いない。

 アズキだって、訳が分からない。

 

 で、ついに一本の串がポリドリの槍を弾き飛ばす。

 

「今です!」

 

 スタッグは跳びながら、ここで再び体を相手の正面に向けると、右の手首を引っ込めて牛乳瓶の飲み口を砲門として構え、

 

「野菜汁砲、発射」

 

 本当にあの野菜汁を、ポリドリの頭部に直接放出。

 同時にポリドリは左腕でアッパーを繰り出し、ディスチャージの効果もあってスタッグをフォースもろとも高く上空に殴り飛ばす。

 

「スタッグ!」

 

 アズキが叫ぶ中、スタッグは叩きつけられるように地面に倒れ、挟んでいた串がケツから外れた。

 串は粉々に砕け散り、

 

『脚部パーツ、右腕パーツ機能停止。頭部パーツ中度ダメージ』

 

 メダロッチからも通知が鳴った。

 一応、頭部は機能停止していない。だけどメニーミルクの頭部はヘヴィパーツなので、脚部が破壊された事で移動速度にデメリットが課せられる。

 

 なので事実上、スタッグはもう。

 ポリドリが仁王立ちしながらつぶやいた。

 

「終わった、何もかも」

「あっ」

 

 アズキとノリカは同時に反応した。いまポリドリが野菜汁によって誰の最期を再現させられていたのか気づいたからだ。

 一方のスタッグは立ち上がるも、脚部と右腕が機能停止した自分とまだ五体満足のポリドリを見比べて、

 

「参りました」

 

 と、自分の負けを認めた。

 スタッグは握手を求めながら、

 

「さすがポリドリさんですね。負けました」

 

 ポリドリは応えようと手を伸ばす。しかし元ネタ通り彼の手はスタッグに触れる事なく、その場で倒れてしまう。

 ウォッカが言った。

 

「力〇徹、ではなくポリドリ機能停止。よって、この勝負はスタッグの勝利とするよ」

 

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