メダロットHERMIT   作:CODE:K

54 / 103
10-6 future6

 

 ロボトルが終わり、バーベキュー場に戻ってみると、キクナ、ボウショウさん、赤城くんの三人は普通にバーベキューを楽しんでいた。

 

「あら? 罰ゲームはどうされたのですか?」

 

 ノリカが言ったところ、

 

「中止になりました」

 

 キクナは言った。続けて赤城くんも、

 

「思えばさ、首謀者のクーも乗り気だったリーダーもリタイアしたんだし、正直もう野菜汁なんて飲む必要ないんだよな」

「ですのでクワトロさんや神宮寺さんが復活する前にバーベキューを楽しんでしまおうという意見で満場一致しまして」

 

 と、先ほどまで野菜汁を飲む順番を賭けてロボトルしていたふたり相手にさらっと言うキクナ。さらに、

 

「おふたりも二本目いかがですか? 串はまだ残っておりますから」

 

 なんて勧めるボウショウさん。

 まだボロボロな姿のスタッグは言った。

 

「私たちは一体何のためにロボトルをしていたのでしょうか? ポリドリさんも酷い目にあったわけですし」

「酷い目にあわせた張本人の台詞とは思えないですね」

 

 キクナがにこりと笑顔で言う。

 本来ならアズキはマスターとしてスタッグの味方をするべきだろうけど、今回はさすがにポリドリに対する同情のほうが強くて何も言えない。

 

 が、ノリカは言った。

 

「いえ、ポリドリも案外楽しんでいたと思いますよ? スタッグさんがケツメダロットになったおかげで」

「そ、その話はやめてください」

 

 スタッグが顔を真っ赤にして頼み込む。

 案の上、ケツメダロットは恥ずかしい記憶として強く刻まれてしまったらしい。

 

 さらにここで、ノリカのメダロッチから、

 

『ククッ』

 

 といった笑い声。間違いなくポリドリの反応である。

 ノリカはフフッと笑って、

 

「どうやら本当に愉快なひと時だったようですねぇ。メダロッチの中とはいえ、龍の本性を隠しきれず表に出してしまう程には」

 

 そういえば、ポリドリはボディこそ騎士の姿をしているけど、中のメダルはドラゴン系列のものを使ってると聞いた事がある。

 という事は普段見せてる寡黙な性格は本来のドラゴンらしい性格を隠すためだったりするのだろうか。

 

 ノリカがいった。

 

「まあ野菜汁で明〇のジョーの登場人物を演じさせられた事には、間違いなく尊厳破壊レベルに不快で屈辱でお怒りでしょうけど」

「そこまで、ですか」

 

 スタッグが呟いて、

 

「ポリドリさん、本来はどんな性格なのでしょうか。気になりませんか、アズキ」

「うん」

 

 アズキが頷くと、キクナのメダロッチから、

 

『いやぁ知らない方が幸せですよ? あの性格の悪さは相当なものですから』

 

 オフィニクスことユディトが言った。

 これにノリカが反応。

 

「あら、あなたの性格も相当に悪いと思いますけど?」

『まさかそんな。私ほど性格の綺麗なメダルはこの世のどこを探してもいないと思いますよ?』

「ふふ、ならそういう事にしておきましょうか」

 

 ノリカは二本目の串を食べ終えた。もちろん野菜汁は飲む必要ない。

 

 

 

 その後、最初に復活したのはマイカゼさんだったので、自然とバーベキューは高校生組を中心とした集まりと化していった。

 

「そういえば、定期試験の時はふたりとも高校に来て参加する予定と聞いたけど、間違いないかな?」

 

 と言ったマイカゼさんにキクナは頷いて、

 

「そうですね。特に僕は入学式も参加できませんでしたから、正真正銘その日が初登校日です」

「制服はどうする気だい?」

「もちろん女子制服で来る予定ですけど、どちらも用意してありますからその日の気分ですね」

「あまり手遅れな子を増やさないでくれると嬉しいのだけど」

 

 手遅れというのは、もちろんキクナの容貌で男性という事実に性癖や脳が破壊された人たちの事である。

 で、マイカゼさんはアズキに向かって、

 

「小学生は、さすがにそんな上級者は量産されてないよね?」

「ノーコメントです」

 

 アズキは言った。つまり手遅れという意味である。

 次はノリカからだった。

 

「それで実際のところ、おふたりの勉強は進んでいますか? 先ほどは大丈夫と言っていましたけど」

「正直、厳しいものがありますね」

 

 キクナが言った。

 

「自宅の勉強だけでもおそらく授業について行けてる自信はあります。ですから平均より上なら確実に取れると思うのですけど、上位をキープとなると」

 

 ここにアズキも続いて、

 

「やっぱり高校に行かないと時間が圧倒的に足りないと思う。教師としての仕事や勉強もあるわけだから」

「教師の勉強?」

 

 食いついてきた赤城くんに、アズキは一度伝えようか迷ったけど、この子ならまあいいかと思う事にして、

 

「まあ生徒に授業を教える側だし、翌日授業する内容は生徒のどんな質問にも答えられるように自分でも勉強して、教えやすいように資料の準備もしたり」

「ふへぇ」

 

 って驚く赤城くんにスタッグが、

 

「アズキは本来教師適正ゼロに近い臆病なコミュ障ですから、他の教師の倍は真面目に綿密に準備して、それでやっとあの様で済んでるわけです」

 

 それ褒めてるの?

 けなしてるの?

 

「たしかに先生って授業はド下手糞だけど、毎日最後に授業内容を纏めたプリントを渡してくれて、あれがすっごい分かりやすいんだよな」

「う、あ、ありがとう」

 

 まさか褒められるとは思わず、アズキは顔を真っ赤にして動揺。

 マイカゼさんが言った。

 

「その上で高校の勉強もやってるんだよね?」

「まあ」

「確かにそれはオーバーワークだね。ちゃんと進級できるか私も本気で心配になってきたよ」

「でしたら今度勉強会でもどうでしょう?」

 

 と、ノリカが言ったので、

 

「効率が上がるならお願いしたいかも。一応、教師の仕事がストップしてるゴールデンウィーク中が勉強に時間割く最大のチャンスだから」

 

 アズキが軽く懇願するとキクナが、

 

「それでしたら、アズキさんの勉強会にはショウイチさんも招集したほうがいいですね」

 

 帯刀ショウイチ。

 

 去年もアズキとクラスメイトだった男子生徒で、詳しい事は知らないけど幼少期に親を失い通杭家に引き取られて一緒に住んでるらしい。

 とはいえ又聞きや偶然に耳に入った情報をアズキなりに整理した結果なので、実際に正解かはまだ分からないのだけど。

 

 キクナは続けて言った。

 

「彼でしたら、授業内容や教師の性格から試験で出されそうな問題も分析してるでしょうから、きっとアズキさんの力になれると思います」

「あ、それは助かる」

 

 アズキはそれが苦手だったので、どうしても今まで勉強は効率の悪い正攻法しか無かったのだ。

 ノリカが言った。

 

「どうですか? せっかくですからキクナも一緒に勉強会でも」

「いえ、今回はお断りさせていただきます」

「まあ、学年がひとつ違いますからねえ」

「それもですけど、僕も今の内に同じ学校に入学した知り合いの同級生と何名か接触したいのですよ」

 

 とキクナは言う。ノリカは冗談半分に、

 

「おや、この時期に遊びですか?」

「そうですね。とびきり可愛いコーデを見せて高校デビューで正気に戻りかけた子の脳をもう一度破壊したり」

 

 キクナは冗談に乗ってから、

 

「というのもいいですけど、実際はノートをコピーしたり授業内容を聞いたりですね。やりたい事は先ほどショウイチさんをお薦めした理由と同じです」

 

 つまり複数人から見聞きした情報から教師の傾向を割り出そうとしてるのだ。

 

 さすがはキクナ。

 本当に頭が良い人間は発想からして違う。

 

「あ、先生たちずるい!」

 

 ここで神宮寺さん、さらにクワトロさんも復活。

 ふたりも、さすがにここで野菜汁ゲームを再開する気は起きなかったようで、残り最後の短い時間だけ、みんなでバーベキューを楽しんだ。

 

 その後、小学生組はボウショウさんの奢りという形で牛乳ソフトクリームをみんなで食べてから、今日は解散となった。

 帰りの車は、キクナだけマイカゼさんやノリカ側の車に乗る事になったので、今回はアズキが助手席に座って自宅まで送迎。

 

「今日はありがとうございました」

 

 最後に車の外からボウショウさんに頭を下げて、

 

「じゃあ先生、スタッグちゃん、またねー」

「うん、またね」

 

 まだまだ元気いっぱいな神宮寺さんと挨拶を交わしてから「ただいま」と帰宅。

 雨天の中でロボトルしたので、アズキもスタッグも少くとも一度は雨に濡れてるのを理由に、義母から許可をもらってスタッグと一緒に自宅の風呂に飛び込んだ。

 

 アズキは体を洗いながら、

 

「そういえばスタッグ、実は私もメニーミルクにはひとつ思い出があってね」

「何ですか?」

「まだ両親が生きてたころの話なんだけど」

 

 アズキは語り始めた。

 

「ショッピングモールでね、たぶんセールか新商品だったと思うんだけど試飲の牛乳を配ってくれるメニーミルクがいたのよ」

「はい」

「当時は私も小さかったから特に変な感情は抱かなかったんだけど、いつも美味しいミルクを飲ませてくれるお姉ちゃんって記憶に残ってて」

「いい思い出ですね」

 

 未だボディがメニーミルクのままスタッグが言った。

 なお壊れたパーツはスラフシステムとかいう機能のおかげですでに完全修復している。

 

「ただね、ある日事件が起きたのよ」

 

 アズキは言った。

 

「いつも母と買い物してるお昼前だったかな。メニーミルクのお姉ちゃんの前にちょっと薄汚れたおじさんが現れてね、言ったのよ」

「何をですか?」

「君のおっぱいが飲みたいって」

 

 スタッグが急に無言になった。

 

「で、お姉ちゃんの胸倉を掴んでドレスを剥がそうとした時点でおじさんは取り押さえられたから、お姉ちゃんの胸が露出する事はなく無事だったんだけど」

 

 アズキは当時の悲しさを思い出しながら、

 

「その日を最後にメニーミルクのお姉ちゃんは見なくなっちゃってね。新しい試飲担当のメダロットも男型で、間違いなく中のメダルも別人に代わってた」

 

 どんなメダロットだったかは覚えてないけど、両手指はあるけど得物を持ってたか、とにかくゴツい印象だったのは覚えてる。

 

「あのころは、ただ悲しいとしか感じなかったけど、今になってみると私も分かる気がするのよ。私もお姉ちゃんのおっぱい飲みたかったなって」

 

 で、スタッグに向かって言うのだ。

 

「だからね、スタッグ」

「嫌です」

「こんな事、スタッグにしか頼めないから」

「絶対、嫌です」

 

 今にもボディソープを投げつけようするスタッグに向かって、アズキは頭を下げて頼むのだった。

 

「お願い! 一生のお願い、おっぱい飲ませて!!」

 

 ボディソープと風呂桶とバスチェアがアズキに投げつけられた。

 





第10話はあともう一回だけ続く予定です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。