アズキの通う高校では、定期試験は平日丸々一週間つまり五日間かけて行われるのだけど、警戒していた事件は木曜日。
四日目の早朝に発生した。
「それではメダロッチやタブレットなどの電源を切ってください」
今日も五人はマイカゼさんの車で登校。
本鈴が鳴り、試験用紙を持ってきた担任が教室に入ってきて、こう言った直後、
『アズキ、ロボロボ団の反応を探知しました』
メダロッチ越しにスタッグが言った。
「紅下さん、メダロッチの電源を切ってください」
担任は機械的に注意するも、
「ごめんなさい。でも今まさにロボロボ団が何か悪事をやらかそうとしてる可能性が出てきたわけで」
「しかしねぇ、君。わたしたちとしては、君たちの試験を担当する立場にいるのだから」
ここで帯刀くんは立ち上がり、
「よく喋る」
元ネタ通り銃口を向けて担任を撃つ。という事はせず、かわりに帯刀くんはこの場で担任に自分のタブレット画面を見せ、電源を切る操作をしてみせる。
が、エラーが発生してタブレットの電源はオフにならない。
「見ての通りだ。すでに奴らは校舎内に何かしら干渉をしている。おかげで切りたくても電子機器の電源を切る事ができない」
「そんな」
「これではカンニングし放題で試験をする事もできないはずだ」
帯刀くんはアズキ、ノリカ、マイカゼさんに視線を向ける。
アズキたちがそれぞれ頷くと、帯刀くんは言った。
「ホームルームの時間も合わせて、試験開始まで二〇分ある。それまでに俺たちだけで事態を解決するぞ」
「了解」
アズキは言い、三人は同時に席から立ち上がる。
担任は焦りながら、
「待ちなさい、君たち。危険だ。大人しくセレクトが到着するのを待った方が」
「私はTMZエージェントです。だから一応、ロボロボ団を取り押さえる権限は、セレクトと同じ程度には持ってる、から」
アズキは言った。しかし自信無さそうな言い方になってしまったのでマイカゼさんが、
「彼女の言ってる事は真実だよ。ついでに私たち三人もTMZから正式に今回の事件解決のために動く権利を一時的に与えられてるからね」
「時間がありません。行きましょう皆さん」
ノリカの言葉に頷いて、アズキたちは一斉に教室を飛び出した。
廊下では、早速ロボロボ団二匹と遭遇し、
「スタッグ転送」
アズキは即座に純正セーラースタッグの姿でスタッグを出して、
「ロボロボ団ならメダロット三原則を無視して攻撃できるはず。スタッグ、とりあえず片方を左腕のハンマーで気絶させ」
「もう片方を尋問ですね。分かりました」
アズキが言い終える前に、スタッグはロボロボ団に襲い掛かる。
「な、なんで生徒が廊下に出てくるロボ」
「話が違うロボ、め、メダロット転送ロボ」
ロボロボ団は慌ててゴーフバレット、ではなく今回はコフィンバットを出してきたが、スタッグは関係なく右腕のソードで敵の首を刎ねる。
今回は暴走メダロットではないので機能停止した二機からメダルがちゃんと弾き出され、
「まさかセレクト? セレクトが何故ここにロボ。出動したロボか? 自力で出動を?」
と、勘違いしかけたロボロボ団にスタッグが腹パン。
「私はセレクトではありません」
一匹を気絶させると、スタッグはもう一匹の喉元にソードを押し当て、
「ひっ」
「帯刀さん。尋問をお願いします」
指名された帯刀くんはロボロボ団の前に立ち、
「おい」
「ひゃい、ロボ」
「貴様の首があのメダロットと同じになりたくなければ、この学校で何をしようとしてたのかを教えてもらおう」
「そ、それはロボ」
ロボロボ団が言いかけた直後だった。
『ローボロボロボ』
校内放送によって、明らかに神宮寺さんと思われる声が鳴り響いた。
神宮寺さんは言った。
『私はロボロボ団幹部のシラタマ!』
『その部下、ピッツァ!』
「あー。部下その二、アンコロ』
『今回の定期試験。その最終日に必要なデータは全てロボロボ団がいただくロボ! 生徒のみんな喜ぶロボ、これで明日の試験は丸々無くなるロボよ!』
ちなみにピッツァと名乗ったロボロボ団はクワトロさんで、やる気無さそうに名乗ったアンコロは赤城くんらしい。
変声機を使ってなかったので、アズキは言った。
「あ、これ間違いなくモッチーズたちの声」
「ほんと、勘弁して欲しいな」
マイカゼさんが失意のあまり脱力する。
「話を続けよう」
帯刀くんが冷静なまま言った。
「貴様たちはなぜ定期試験のデータを盗もうとした」
「し、シラタマ様が言うにはアズキ先生という方の負担を軽くするためだそうロボ」
ロボロボ団は未だ喉元のソードにビビりながら、
「これで試験が無くなれば万々歳、失敗しても最悪試験用紙一枚手に入れば先生に答えを渡してるようなものだから目的達成したようなものロボって」
このロボロボ団が言うには、本当は初日の夜には試験データを全部アズキに渡すはずだったらしい。
しかし初日は校舎内の装置に巻き込まれてメダロッチが使えなくなり、やっと解除されたと思ったら生徒が帰宅を始めたので慌てて撤退。
二日目は完全に対策したので、アズキたちも知ってる通り試験時間中に堂々と潜入し、試験の日程や段取りなどの情報を入手。
ロボロボ団一匹が捕まり、セレクトに通報されて撤退した時には、後は試験問題の実データを入手する寸前まで行ってたのだとか。
「ただ、ここでシラタマ様が、せっかくだからもっとド派手にいこうと方向転換を言い出してロボ」
と、ロボロボ団は言った。
三日目は中途半端で面白くないし、最終日にデータをアズキに渡したところでどうにもならない。
なので、四日目に堂々とデータを奪いに行って軽く賑やかしてから、最終日に使われる試験問題のデータを後で送ろうという作戦になったらしい。
あわよくば残りの試験そのものを中止に追い込むつもりで。
「いや、中止にはならないだろう。後日改めてはあるだろうが」
帯刀くんは言うけど、
「シラタマ様は想定してなかったみたいロボ。アンコロ様も指摘しかけて『あーもういいや』と諦めた次第でロボ」
赤城くん。すでに突っ込むのも疲れた状況だったのは分かるけど、もう少し頑張って欲しかった。
ノリカが横から、
「それで、ロボロボ団はもう試験問題のデータは回収した後なのでしょうか?」
直後だった。まだ続いていた校内放送から、
『あのー、シラタマさん』
『なにロボ、クーちゃ、じゃなくてピッツァ』
『あの言い方だと犯行予告になってしまって、まだデータ回収前なのがバレてしまうのではないでしょうか?』
『あっ』
どうやら、まだデータは回収してないらしい。
シラタマは慌てて、
『だ、大丈夫よきっと。この緊急事態だもの、普通はみんなデータが奪われた後だって勘違いしてくれるロボ』
『大丈夫じゃねーよ!』
赤城くん改めアンコロが強い声で言った。
『クーじゃなかったピッツァ。お前わざと放送繋がったままなの気づいて今の言っただろ! おかげで学校の関係者全員にバレちまったぞ』
『ご、ごめんなさい。シラタマさんが切り忘れてたのを見て、面白そうだったからつい』
喋り方は本当にすまなそうに言ってるのが相変わらずたちが悪い。
『そういうのはいいから、さっさと通信切って職員室に急ぐぞ!』
アンコロの言葉を最後に、今度こそ校内放送は終了した。
マイカゼさんが、
「つまり、私たちも職員室に向かえばいいわけだね」
「最短距離で向かえば道中でキクナとも合流できるはずだ」
帯刀くんが頷く。
(赤城くんも詰めが甘いよね)
アズキは思った。クワトロさんの行動を叱りながら、自分だって「職員室に行く」っていう情報を漏らしちゃってるのだから。
スタッグがまだソードを当てたまま、
「なら、急ぎましょう皆さん」
「うん」
アズキは頷きながらロープでロボロボ団たちの拘束を終え、二匹を自分たちの教室に放り込む。
キクナは階段で一階に下りた辺りで合流できた。
職員室とは逆方向に進んでいたところから、どうやらアズキたちと合流を優先して動いていたと思われる。
キクナはいった。
「お姉ちゃん、ショウイチさん、無事でしたか?」
「ええ、キクナも無事のようですね」
ノリカが返事。一方、帯刀くんのほうは、
「キクナ、職員室がどうなってたか分かるか?」
「はい。先に近くの廊下まで覗いてみましたけど、ロボロボ団が数名いましたです。如何にも、という感じで」
「そうか」
帯刀くんは頷き、
「なら予定通り、職員室は無視して別の場所を探すか」
「え?」
と、アズキが反応すると、キクナが言った。
「あれは引っ掛けですよ。わざと職員室に行くと嘘の情報を与えて、実際に向かったら囮のロボロボ団と戦わされるという、戦力の消耗と時間稼ぎを狙う作戦です」
「アズキさん、本職であるアナタが見え見えの罠に引っかかってどうするのですか」
呆れた様子のノリカ。
「うぅっ」
アズキは項垂れて、
「スタッグも気づいてたの?」
「はい。……当然じゃないですか」
返事に妙な間。しかも顔を背けていった。
どうやらスタッグも引っかかってたらしい。
「大丈夫でしょうか、アナタたちコンビは」
不安を口にするノリカ。
今度はスタッグとアズキ、二人揃って項垂れてるとマイカゼさんが双方の肩を叩いて、
「まあまあ。私も騙されたんだから大丈夫だよ」
と言ってくれた。