メダロットHERMIT   作:CODE:K

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11-4 mocheese of the resurrection4

 

 ここで帯刀くんのメダロッチから音声が鳴った。

 

『ご主人様、ロボロボ団の方々は生徒指導室に向かってると分かりました』

「そうか。わかった」

 

 返事する帯刀くん。

 アズキが「え?」てなってると、

 

「教室にロボロボ団を放り込んだ時、尋問の続行と有事の対応を兼ねてアルバを待機させておいた」

 

 アルバとは帯刀くんのメダロットである。

 たしかFNG型。機体名マンセマット。

 

 黒いボディに白い翼を持ち、頭上に深紅のリングが浮いている、堕天使をモチーフにした男型メダロットだったはず。

 目はクリアレッドのバイザーで覆われ、右腕に一つ、左腕には三つある金色の砲門からそれぞれ強力なビームを発射する飛行メダロットという印象だ。

 

 アルバは続けて、

 

『二日目にロボロボ団が捕まった時点で、教師の方々は試験問題を含めた重要データを生徒指導室に避難させていたそうです』

「しかし、それもロボロボ団は把握していたわけか」

 

 帯刀くんは頷いて、

 

「アルバはそのまま捕虜の監視を続けてくれ。何かあったらこちらからサインを出す」

『了解しました』

「という事らしい。俺たちも急ぐぞ」

 

 ってみんなに指示する帯刀くん。

 

(なんか、私どころかキクナよりもTMZに向いてる気がする。帯刀くんって)

 

 アズキは考えながら頷き、みんなで生徒指導室のある三階まで階段を上る。

 

 直後だった。

 一本のビームがスタッグの脚部に当たり、

 

「きゃあああっ」

『脚部パーツ、機能停止』

 

 スタッグが痛みで悲鳴をあげると同時に、メダロッチから通知が鳴った。

 

「大丈夫、スタッグ」

 

 アズキは脚を破壊されたスタッグを支えながら、ビームを撃たれた方角を見る。

 ビームを撃ったのはひとりのロボロボ団。いやロボロボ団の黒タイツに身を纏いピッツァを名乗るクワトロさんとバグスティンクだった。

 

 彼女が立っていたのは、三階から生徒指導室に向かう場合には必ず通る廊下の突き当り。しかも一直線とはいえ階段からはかなり遠い場所である。

 

「まさか、あの位置から狙って撃ったのか?」

 

 さすがの帯刀くんも驚く。アズキは頷いて、

 

「あの子がクワトロさん。改めて言うけど実力は明らかに小学生離れしてるし、メダロットを使った射撃も半端じゃなく上手いよ」

「そのようだな。あれだけ離れた位置からビームでメダロットの脚を狙って当てるのは、まさに狙撃手でないと不可能だ」

 

 再びバグスティンクからビームが発射される。

 

「アズキ!」

 

 咄嗟にスタッグはアズキを突き倒し、自身は右腕で防御するも、

 

『右腕パーツ、機能停止』

 

 今度はその右腕を破壊されてしまった。しかも、ビームの軌道からして元々狙ってたのはスタッグの頭部。

 防御しなければ腕どころかスタッグ本体が機能停止していたかもしれない。

 

「ここは僕に任せてください」

 

 キクナが、アズキたちの前に立って言った。

 で、オフィニクスのユディト、さらにメダメイドを転送して、

 

「いくら強くてもビーム主体の相手なら僕のメダメイドでどうにかできます。彼女は僕が抑えますから、皆さんは遠回りですけど二階から向かってください」

 

 確かに誰かがクワトロさんに付き合うとしても、彼女を横切って廊下の奥に進むのは難しそうである。

 幸いアズキの学校には全階と繋がってる階段が数か所存在するので、二階から奥に進んだ先にある別の階段を上るルートでも生徒指導室に向かう事は可能だ。

 

 けど、この廊下にクワトロさんを配置しているという事は、相手も二階から生徒指導室に向かうルートを想定してる可能性は高い。

 しかも最悪な事に「なら一階から」ルートは職員室の横を通る必要があり、結局ロボロボ団と遭遇してしまう。

 

 帯刀くんは言った。

 

「キクナ、職員室前の廊下にロボロボ団はどれだけいた?」

「室内外含めて()()()()です」

 

 ここでキクナが曖昧な表現を使うという事は、突破は困難だと言ってるようなもの。

 

「仕方ない。二階から向かうか」

 

 結局、アズキよりずっと頭の回る帯刀くんでさえ他の手段は想定できなかったらしい。

 さらに、クワトロさんとは逆方角の廊下からもロボロボ団が数匹こちらに向かってきた。早くしないと二階に下りる事さえ難しくなってしまう。

 

「いやはや、これは彼らの相手も私たちがしなければなさそうですね」

 

 ユディトが言った。

 そこにメダメイドが、

 

「自信が無いなら引っ込んでもいいんですよ?」

「そうですねぇ。メダメイドに泣き言を漏らさせず事態を収める自信だけはどうにも」

「漏らさないわよ!」

 

 と噛みついてコント開始。思わず聞き入ってしまいそうになったが、

 

「おい、早くしろ!」

「早くしてください、アズキ」

 

 帯刀くんとスタッグに言われ、慌てて皆の後ろに続く形で階段を下りる。

 途中、

 

「一旦スタッグはメダロッチの中に戻した方がいい」

 

 帯刀くんが言った。

 

「脚が破壊されたままだと動きが鈍って足手纏いになる。スラフシステムで回復するまで戻しておけ」

「そうですね。お願いします、アズキ」

 

 スタッグも自分から提案に乗った以上、アズキの立場で無理強いする気はない。

 

「わかった」

 

 と、アズキは一旦スタッグをメダロッチの中に回収。

 

 二階に下りた。

 やはりアズキたちが二階ルートを通るのは想定内だったようで、最初は二匹だったロボロボ団が今では四、五匹ほど徘徊している。

 

「出番ですよ。ポリドリ」

「御意」

 

 ここでノリカは槍を持つ銀の騎士、ポリドリを転送。

 ポリドリは遠慮なく敵の後頭部を槍で叩いて、ロボロボ団を一匹闇討ちで倒す。

 

「うわあ」

 

 ってマイカゼさんは反応するが、

 

「よし。このまま奥の階段まで強行するぞ」

 

 帯刀くんの指示に皆は頷き、ポリドリを含めた五人で廊下を全力疾走。

 

「出たロボ! メダロット転送ロボ!」

 

 ここでアズキたちに気づいたロボロボ団がコフィンバットを出すも、引き続きポリドリが槍で敵メダロットを薙ぎ払いながら進んでいく。

 コフィンバットの武器は格闘攻撃だったのもあって、射撃攻撃を行うゴーフバレットと比べて射程の問題で楽に感じた。

 

 そのままポリドリは、敵機を撃墜していき、時にはロボロボ団を直接殴り倒し、奥の階段に辿り着く。

 

「行くぞ」

 

 帯刀くんの指示に従い、全員で階段を駆け上がった。

 この階段から三階に上ると生徒指導室は目の前だったはず。

 

 しかし、

 

「来たか」

 

 三階に辿り着いてすぐ、アズキたちはひとりのロボロボ団に声をかけられた。

 

 全身黒タイツ姿になった赤城くん、アンコロが生徒指導室の扉を護る門番のように立ち塞がっていたのだ。

 しかも、当然ブルーティスは転送済。

 

 赤城くんは言った。

 

「悪いけど、ここから先はオレが通さな」

「アルバ!」

 

 ここで帯刀くんが廊下の窓を開け、空から待ち構えていた一体の飛行メダロットがビームを発射。

 ブルーティスは防御もできず外からの攻撃をまともに受けて、

 

『頭部パーツ、機能停止』

 

 赤城くんのメダロッチから残酷な通知が鳴ってしまった。

 

「おっ、オレの出番があああああっ!!」

 

 赤城くんが嘆く中、改めてアルバと呼ばれたメダロットが室内に入り、

 

「入らせてもらう」

 

 帯刀くんは生徒指導室の扉を開け、みんなで中に入っていくのだった。

 

 

 実はアズキ、生徒指導室の中は初めて見たのだけど、思ってたのと違い結構広いという印象だった。

 

 一言で言うなら会議室。

 中央に四角く大きなオフィステーブルが設置され、椅子も生徒が座る教室の物ではなく職員用だ。

 

 しかし、いま席に座ってるのは数匹のロボロボ団で、さらに神宮寺さんことシラタマが、扉を開けたばかりのアズキたちから見て正面奥の席に座っている。

 現在神宮寺さんは、学校指定とは別のタブレットにUSBメモリを差し込んで何かの操作が終わるのを待ってる様子だった。

 

 神宮寺さんは突入してきたアズキたちを見ると驚いて、

 

「え? もう来ちゃったの?」

「あ、えっと、うん」

 

 アズキは頷く。帯刀くんは一歩前に出て、

 

「貴様がシラタマだな? 学校から盗んだデータとやらを返してもらおう」

「えっとちょっと待って、もう少しでコピーが終わるから」

「それを返せと言っている。それとコピーしたデータも当然削除してもらう」

「駄目よ。それを削除しちゃったら先生に渡せないもの」

 

 アズキは内心、この場でコピーなんてせずメモリを直接盗み出せばよかったのではと思った。

 そうしていたら、今ごろ彼女は撤収まで完了してしまい、アズキサイドは任務失敗になってただろうからだ。

 

 しかし、彼女はしなかった。

 多分、欲しい物以外の重要データも入ってるだろう物を丸ごと盗んでしまう事は、神宮寺さんにとっての「コミカルな悪役」の一線を越えてしまうからだろう。

 

 アズキは言った。

 

「シラタマ、ううん神宮寺さん。私、そのデータ要らないという話なんだけど」

「え、どうして?」

「だって、それカンニングでしょ? それも色んな人に迷惑をかけた大々的な」

「でも先生、定期試験を上位キープしないと駄目なんでしょ? だったら」

 

 神宮寺さんは言うけど、

 

「だからって悪事に加担したら退学どころか逮捕だよ」

「え?」

「神宮寺さんはロボロボ団だから逃げきれてるだけで、普通これ私にその気がなくても受け取った時点で犯罪だから」

「あっ」

 

 やっと神宮寺さんは気づいたらしい。というか、今まで気づいてなかったの?

 しかし、じゃあこれで事件は解決とはならず、

 

「だったらプランB、試験問題のデータを公開して定期試験自体を中断させちゃえば」

「それも無理。仮に私が担当の教師だったらゼロから徹夜で試験問題を作り直して予定通り執行するだろうから」

「えっ?」

「あと定期試験を中断させても、今週中に終わらなかった分を来週に繰り越すだけだから無駄だよ?」

 

 ショックで口をあんぐりとさせる神宮寺さん。

 帯刀くんが言った。

 

「これで分かっただろう。貴様のやってる事は全て無駄だと。大人しくメモリを返してもらおう」

「嫌よ! だって五日間もテストなんて先生もみんなもくたくたになるに決まってるもの。だったら全部ナシにしちゃったほうがいいじゃない」

 

 それでも、神宮寺さんは諦めてくれない。

 

「ならば仕方ない」

 

 帯刀くんは「こうなる事」を予想していたとばかりの態度で、

 

「アルバ。そこのタブレットを破壊しろ。メモリを巻き込んでも構わない」

「えっ!?」

 

 この場の全員が驚く。アズキは言った。

 

「待って、そんな事したら取り返すはずだった大事なデータが」

「あれはダミーだ。ここに来る前、すでにアルバが担任から情報を得ている」

 

 帯刀くんは断言。

 

「大事なデータをただ別室に移動させて放置するわけがないだろう。本物は校長が大事に保管しているか、またはクラウド上に保存してあるはずだ」

 

 言われてみると、確かにという他はない。

 アルバが左腕に搭載された三つの砲門を神宮寺さんのタブレットに向ける。

 

 神宮寺さんは慌てて、

 

「待って、待って。このタブレット、高かったのよ? 小学生に対して温情は無いの?」

「一応、小学生に対して最低限の思いやりくらいは持ってるつもりだ」

「じゃあ」

「だが貴様は、ただのロボロボ団だ。問題ない」

 

 アルバの砲門からワイドビームが放たれ、神宮寺さんのタブレットは無残にも破壊されてしまうのであった。

 





今回登場しました「マンセマット(アルバ)」は正気山脈先生から提供頂いたオリジナルメダロットです
使わせていただき、ありがとうございました
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