「うわーん」
タブレットを失い、最早聞き慣れた泣き声をあげる神宮寺さん。
可哀想だけどやってる事は悪戯では済まない犯罪行為だったので、アズキとしては何も言えない。
『全校生徒、教師にご連絡します』
程なくして校内放送が流れた。しかもロボロボ団ではない。
『先ほどカンニング防止のため各機器の電源を強制的に切る装置が無事に作動しましたので、当初の予定通り試験を開始します』
どうやらロボロボ団の電源を切れなくする機能もタブレットから起動していたらしい。
つまり、この時点でアズキたちの目的はほぼ全て達成したも同然であった。
後はセレクト到着を待って、ロボロボ団を引き渡すのが正しい対処法だとは思うけど。
「えっと、泣きたいのは分かるけど、そろそろ撤退指示出した方がいいと思うよ」
アズキは言った。
「私たちはしてないけど、誰かがセレクトに通報してないはずがないから、そろそろやってくる頃かも」
「そ、そうね」
神宮寺さんは涙を堪えて、未だ起動したままのメダロッチから通信機能を使い、
「総員、撤退開始ロボ。ピッツァとアンコロも、もう大丈夫だから。セレクトが来る前にみんな逃げて」
と指示を出した。
アズキはほっとしながら、
「じゃあ、神宮寺さんも早く。今からなら小学校も遅刻で済むはずだから。それとも逃走まで私も手伝ったほうがいい?」
さすがに教え子を逮捕されたくないので、ちょっと過保護に言ってみたアズキ。
しかし神宮寺さんは、
「ううん。私はまだやる事があるから」
って言うと帯刀くんに向かって、
「先輩! で、いいのかな? えっと紅下先生のお友達ですよね? お名前は」
「帯刀ショウイチ」
愛想悪く帯刀くんが名乗ると、
「ありがとうございます」
神宮寺さんは丁寧に一度感謝を述べてから、
「私は手札から魔法カード《ウォッカ召喚》を発動します」
なんか別のカードアニメみたいな事を言いだした。
直後、テーブルの上に魔法陣みたいな模様が浮かびだし、
「ナマスカール。合意とみてよろしいかい?」
そんな演出とは全く関係なく天井の床が開いて、魔法陣の上にいつものツンドル。
神宮寺さんは言った。
「帯刀さん、ロボトルよ。ロボロボ団として来たんだもの、ここでロボトルもしないで帰るわけにはいかないロボ」
「つまりタブレットを破壊されたうえロボトルにも負けて泣きながら逃げ帰らないと気が済まないわけか」
「ちょっと違うロボ。私が勝ったらタブレット代弁償して!」
「断る」
帯刀くんは後ろを向いて、
「俺にロボトルを受けるメリットが無い。それより事件は終わったんだ。早く教室に戻らないと一時限目の試験に間に合わなくなる」
「だからウォッカを呼んだのよ。公認レフェリーの前で勝手に合意を撤回していいの?」
「そもそも合意していない!」
そういえばそうだった。
アズキもウォッカが現れたらもう逃げられないって認識でいたけど、まだウォッカも合意を確認してる段階だから普通に断ってよかったんだ。
というか、
(ちょっと違うという事は、何となく泣きながら逃げ帰る可能性も想定してる気がする)
神宮寺さんのスタイルからして、そこまで恥晒しながら撤退してこそロボロボ団とか思ってそうなのだ。
なお、アズキたちのメダロッチも全て起動したままである。
ロボロボ団に対抗する以上、こちらも学校側の装置が起動した中で動けるように細工してあるのだ。
幸いにも学校が用意した装置の精度はあまり高くなかったので、ウォッカも素で妨害を突破して入り込んだのだろう。
「メリットはあると思うぞ」
ここで、本来扉の番人だったのに出オチした赤城くんことアンコロが部屋に入ってきた。隣にはスラフシステムで復活したブルーティスも一緒だ。
「姉さんたちもダミーとはいえ学校の備品をぶっ壊したんだろ?」
「そういえば、確かにね」
頷くマイカゼさん。赤城くんは続けて、
「だったら負けた方がタブレットとUSBメモリの両方を弁償するっていうのはどうだ? というか、オレにもそのロボトル一枚噛ませろ」
と言い出した。アズキはそんな赤城くんの姿に、
(うわっ)
と、思わず全身黒タイツの肢体をガン見してしまう。
学校だと男子と偽ってる赤城くんだけど、今はタイツが肌に密着してるせいで少しだけ膨らんだ胸がしっかりと強調されていて、すごく性的だ。
部屋の前では出オチの衝撃で見逃してたけど、これはやばい。
なんて思ってたら、
「はあ、はあ、でしたら、私も参加します」
さらにクワトロさんことピッツァまで現れた。走ってきたのか少し息が切れており、
「うわっ」
アズキは、今度はしっかり声に出して反応してしまった。
他は標準なのに胸だけアンバランスに大きなクワトロさん。そんな彼女が全身黒タイツになった結果、こちらも凄い事になっていたのだ。
密着した布地を胸が押し上げ、食い込んで、谷間どころか胸の輪郭が余すことなく露わになっている。
さらにタイツがいい具合に体を引き締めてるおかげで見事なロケットおっぱいが出来上がり、はぁはぁと息する姿で色気がさらにやばい。
「なっ」
これには帯刀くんも顔を背けずにはいられない。
で、その様子を見たノリカが、普段の妖艶な笑顔のように見えてどこか不機嫌そうに、
「おや、ショウイチさんもですか? ふふ、相手は小学生ですよ?」
「う、五月蠅い。分かってる」
と返事しながらも動揺する帯刀くん。アズキはうんうん頷いて、
「分かる。小学生であの爆乳は反則という話よね。語らえる仲間ができてよかった」
「俺は見てない。何も見ていない」
言いながらも、アズキと同じく女性免疫が低い帯刀くんでは見て反応した事を隠しきれてない。
とにかく。これでクワトロさんレベルになると、ロリコンではなくても十分性的に映る事が判明した。
と、ここでアズキのメダロッチから通信が入り、
『アズキさん、聞こえますか?』
「キクナ?」
『すみません。負けてしまいました』
「え」
アズキは驚き、ちょうど姿を見せたクワトロさんに向かって、
「もしかして、キクナに勝ってここまで来たの?」
「はい。ギリギリの勝負でしたけど」
クワトロさんは言った。
「ですので、このロボトル私もシラタマさんの側につきます」
「まさかキクナが負けるなんて」
さすがのノリカも驚いてる模様。
当たり前である。一度クワトロさんと戦った経験があるアズキでさえ、キクナが負けるとは思わなかったのだから。
赤城くんが、
「よし、これでモッチーズ全員集合だな。オレを出オチにした事、後悔させてやる!」
「言いたい事はそれだけかい?」
マイカゼさんがにこっと笑った。
直後、赤城くんが「ひっ」と怯えだす。
アズキは気づいた。
いま、マイカゼさんは赤城くんにすごく怒ってるって。
「どうしてこんな事したんだい? ロボロボ団が犯罪なのは知ってるはずだよね?」
「わ、分かってる。けど、モッチーズの付き合いで」
「フク?」
マイカゼさんは言った。
「少し、頭冷やそうか?」
「あ、あががが」
ガクガク震える赤城くん。
なぜだろう。普段マスコットみたいなマイカゼさんから、メダロットのフリーズ攻撃なんて目じゃない程の恐ろしい冷気を感じる。
こんな流れの中、クワトロさんが、
「それで、結局ロボトルはどうしましょうか?」
「俺たちが勝ったら、USBメモリもロボロボ団が破壊した事にしろ」
帯刀くんは言った。
「その条件も付けるなら、三対三のチームロボトルで受けてやる」
「乗ったわ」
快諾する神宮寺さん。
いや、赤城くんまだ震えてるんだけど。
帯刀くんは、
「アズキ、スタッグのパーツはそろそろ回復しているな?」
『はい』
かわりにスタッグ本人が返事すると、
「ならTMZエージェントとして付き合ってもらう。俺とスタッグで奴らを叩くぞ」
さらにノリカも、
「三対三ならもう一名必要でしょう。こちらの三人目はワタシとポリドリで構いませんか?」
一方マイカゼさんは、
「そうしてくれると助かるよ。私はロボトルは苦手だからね」
と言ってロボトルを辞退。
しかし、
「ただ、ひとつ要望を言わせてもらうと、フクにはしっかりお灸を据えてくれると助かるよ」
「わ、分かった」
帯刀くんは気圧されながら、高校生組を代表して、
「と、とりあえず俺たちはこのふたりと組んでロボトルを受ける事にする」
「ハラショー、了解だよ。じゃあ、これより高校生チーム対モッチーズによる三対三のチームロボトルを行うよ」
と、ウォッカは言った。
「メダロット転送」
アズキは言ってスタッグを転送。同時に相手もオーロラクイーンとバグスティンクを出してきた。
どうやら神宮寺さんは、ロボロボ団のシラタマとして動いてる時は基本オーロラクイーンを使うらしい。
正直、全員集合したモッチーズと戦うのは初めてだったのでマゼンタキャットできて欲しかった。
今回も互いのメダロットが並び立って対峙する中、ウォッカが間に入って、
「それじゃあ始めようか。ロボトルファイト」
ロボトルが始まった。
高校生サイドは、
「アルバ、マリシャスリング」
「ポリドリ、フリュスヘルム」
帯刀くんとノリカがそれぞれ頭部パーツの使用を指示し、スタッグもチャージ行動に入って脚部から粒子を放出しだす。
一方の相手側は全パーツ攻撃技のメダロットが二体もいるため、バグスティンクこそチャージ行動を行うも、
「オーロラクイーン、アイスよ」
「こうなったらもうヤケクソだ! ブルーティス、ケモノアギト起動!」
「うおおおっ! 爆熱ッ! ドッグフィンガー!!」
オーロラクイーンがポリドリに粉雪混じりの冷風を飛ばし、ブルーティスは早速犬の顔を模した左腕でアルバに飛び掛かる。
先にパーツの充填が完了したのはアルバ。
頭上のリングが輝き、深紅の光が周囲に広がると、ポリドリとスタッグの頭上にも粒子で再現されたリングが浮かび上がった。
直後、オーロラクイーンの粉雪がポリドリに当たりそうになるが、リングから深紅の光がポリドリに降り注がれ、推進力が底上げされる。
おかげでポリドリの回避行動がギリギリ間に合い、命中しかけた粉雪はカスリ程度に留まった。
ポリドリの左腕に軽く氷が付着するも、氷漬けにはならずに済んで、
「助かりました。ショウイチさん」
ノリカが言った。
アルバのマリシャスリングは、ドミニオンという技に分類される。
この技は味方全員に攻撃成功率を上げるレーダーサイトと、これまで何度も使ってきたたいちせいぎょを同時に与えるという強力な能力を持っている。
今回も、このたいちせいぎょによってポリドリは現在のフィールドでも動きやすくなり、結果的に回避能力の上昇にも繋がったのだろう。
続けて起動したのはポリドリのフリュスヘルム。
味方全員の肩から蝶の翅を思わせる透明なケープが伸びた。こちらもガードブーストとヒーターを同時に与え、防御機能と充填・推進力を併せて高める技である。
技の分類としてはガードヒーターに該当。
「あっ」
が、ここでスタッグが反応。
ふたりの支援を受けた事で、逆に脚部から放出された粒子が止まってしまったのである。
スタッグが使う残像は一応コンシールというプラス症状に分類されるのだけど、メダロットはプラス症状を同時に四つまでしか保持できないのだ。
それ以上のプラス症状を受けると古い順に消滅してしまう。
結果、今回はレーダーサイト、たいちせいぎょ、ガードブースト、ヒーターと四つのプラス症状を貰った事でコンシールが切れてしまったのだった。
(味方の支援が頼もしすぎるとこういう事も起きるんだ)
しかもスタッグの頭部パーツが持つステルスもプラス症状なので、味方から貰った支援を保持するとスタッグは持ち味の半分を活かせなくなってしまう。
「問題ない」
が、帯刀くんは言った。
「スタッグは元々アルバやポリドリより安定性の高いメダロットだ。そのまま俺たちのロボトルの潤滑を担ってくれればいい」
「帯刀さん」
「分身やステルスが必要な時は俺が指示する」
「はい」
頷くスタッグ。その裏でアルバはブルーティスの攻撃を普通に回避。
帯刀くんは宣言した。
「総指揮は俺が執る。ノリカ、アズキ、スタッグ。このロボトルすぐに終わらせるぞ。パーフェクトゲームだ」
メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。
[機体名]
マンセマット
[型式番号]
MDT-FNG-00
[性別]
男
[パーツ]
◆頭部:マリシャスリング(補助/ドミニオン/なし/3回)
◆右腕:ヘイトレッドガン(射撃/ハイパービーム/狙い撃ち)
◆左腕:グラッジライフル(射撃/ワイドビーム/なし)
◆脚部:エンゼルフェザー(飛行/ファストチャージ)
●HV:0/0/0 合計:0/0
[備考]
当作品のオリジナルメダロット(正気山脈先生提供)。
堕天使型のメダロット。名前の由来は、ラテン語で『憎悪』『敵意』を意味する名を持つ天使マステマから。
ボディカラーはブラックを基調としているが、翼は白で頭上には深紅のリングが浮いている。アイカメラはクリアレッドのバイザーで覆われている。
また右腕に一つ、左腕には三つの砲門が装備されており、銃身は金色となっている。
両腕は強力な光学属性の射撃攻撃パーツで纏められており、状況に応じて使い分ける事が可能。
さらに頭部パーツの使用によって如何なる戦況でも自由自在に飛び回り、敵機の隠蔽行動を無力化できる。
弱点としては、純正では武器が光学属性であるため、光学属性を無効化する守護パーツを使われると攻撃の手が止まってしまうこと。
[ファストチャージ]
当作品のオリジナル脚部特性。
ロボトル開始時に二つ以上の光学属性武器を装備している場合、CGを30%チャージした状態で開始する。
ただし、初手にチャージ行動・メダチェンジ・メダフォースは使用不可となる。
(提供者様からのコメントより)