メダロットHERMIT   作:CODE:K

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12-7 年下のボク7

 

 イブ当日。

 アズキが指令室に入ると、モニター越しのブルー博士とは別に、

 

「やっほー。アズキちゃん久しぶりー」

 

 と言って手を振るフィーアさんがいた。そういえば義母も昨日から日本に帰国していて正月まではこちらに滞在してるのだった。

 フィーアさんは嬉しそうに、

 

「聞いたよー。ついにセーラースタッグのマスターになるんだって?」

「いや、まだ決まったわけでは」

「そうなの? でも大きな進歩だよ。大進歩」

 

 ここでブルー博士が、

 

『いまセーラースタッグは模擬戦の途中だと思います。フィーアさん、アズキさんを訓練場に案内してあげてください』

「はーい」

 

 と言ってフィーアさんはアズキの手を掴み、

 

「あっ」

「じゃあ、レッツゴー」

 

 赤くなるアズキの手を引っ張りながら指令室を出て行った。

 

 

 訓練場と教えられた扉の先は、まずコントロールルームになっていて、ここからガラス張りの扉を開けた先がロボトル用の広いフロアという構造になっていた。

 コントロールルームには数人の研究員が待機していて、彼らの席のひとつにフィーアさんが座る。

 

「よかったー。まだ模擬戦前みたいだね。ギリギリセーフ」

「待ってたんですよ。あなたたちを」

 

 研究員が返事。そのうちひとりがアズキに向かって、

 

「あなたが紅下アズキさんですね」

「は、ひゃい」

 

 突然呼ばれて、緊張しながらアズキが返事すると、研究員は笑って、

 

「あちらにいるのがセーラースタッグ。あなたのメダロットになる子ですよ」

 

 と、ロボトル用のフロアに立つ一体の女型メダロットの後ろ姿を指して言った。

 彼女がセーラースタッグらしい。

 

 事前情報によるとKWG型らしいのだけど、一見するとセーラー服を着たお尻が大きめなツインテールの少女といった外見でSLR型に見える。

 しかし良くみると後頭部のうなじにセンサーが搭載され、ツインテールと併せてクワガタの目と角になってると分かった。

 

 研究員がコントロールルームから、

 

「セーラースタッグ、準備はいいですか?」

「はい。いつでも構いません」

 

 背を向けたままセーラースタッグはうなずく。

 直後、彼女に対峙する形で三体のメダロットが転送された。水瓶座をモチーフとしたAQR00アクエリアスである。

 

「それでは、テストロボトルを開始します」

 

 研究員が宣言。直後、セーラースタッグはアクエリアスのうち一体に飛び掛かる。

 

「アクエリアス、スプレンダー起動」

 

 研究員の指示を受け、狙われた機体とは別のアクエリアスが頭部パーツを使用した。

 フィーアさんが言う。

 

「アクエリアスの頭部パーツはチャージプラントと言ってね、チャージ行動を取る時のフォース増加量を増やすプラントを設置するんだよ」

 

 たしかプラントとは味方にプラス効果を与える装置の事だったはず。

 フィーアさんは続けて、

 

「さらに、アクエリアスの脚部特性はウェイレイ。これは設置されてるプラントの数だけ攻撃力をアップする能力を持っててね」

「いま、チャージプラントとかいう装置は五つ設置されましたけど」

「そうそう。つまりアクエリアスはこれで三体とも攻撃能力がぐーんと上がっちゃったんだよ」

 

 とフィーアさんが言ってる間に、セーラースタッグは右腕からソードを出してアクエリアスを斬りつける。

 

『アクエリアスB、防御失敗。右腕パーツ機能停止』

 

 コントロールルームから通知が鳴るも、研究員は言った。

 

「アクエリアス、攻撃開始」 

 

 研究員の指示を受けたアクエリアスたちが両腕の水瓶から水流を一斉に放出し始める。

 しかしセーラースタッグが脚からフォースを放出しながら横に跳ぶと、彼女がいた位置に半透明の残像が残り、水流はすべて残像のほうを貫く。

 

「おー、やるねー。あれだけの攻撃をたった一回の回避行動で全部防ぐなんて」

 

 うんうんと感心するフィーアさん。

 

 続けてセーラースタッグは左右にステップを踏みながら移動する。

 ステップを踏む度に半透明の残像が設置され、アクエリアスたちはなんとか本体に狙いを定めようとするが、最終的には残像を攻撃してしまう。

 

「すごい」

 

 アズキは呟いた。

 セーラースタッグは残像を残しながら、ロボトル用のフロア内を走り回り、アクエリアスの水流を避け続ける。

 その姿が、アズキの目には彼女がフロア内を軽やかに踊ってるかのように映ったのだ。

 

 で、相手が水流を撃ち尽くしたところを一気に迫り、左手の甲を回転させてアクエリアスを殴りつけ、

 

『アクエリアスA、機能停止』

 

 さらに、別のアクエリアスにソードを振るって、

 

『アクエリアスC、左腕機能停止』

 

 って一気に攻撃に入っていく。

 

 また、ソードで斬られたアクエリアスCの左腕だった水瓶がティンペットからはじけ飛ぶと、セーラースタッグはそれをキャッチ。

 アクエリアスBが残った左腕の水瓶をセーラースタッグに向けるが、ここで彼女は先ほど拾った水瓶を投げつける。

 

 見事に当たったアクエリアスBはよろけ、その間にセーラースタッグは相手に接近し、左腕の甲をヨーヨーのように射出して、

 

『アクエリアスB、機能停止』

 

 投げ当てた結果、二体目のアクエリアスも機能停止した。

 が、ここでアクエリアスCが水流を放出。残像も全て消えた後だったので、攻撃は真っすぐセーラースタッグに向かっていったが、

 

「ステルス起動」

 

 セーラースタッグが言った直後、彼女はフロア内から姿を消し、アクエリアスCの水流も壁に当たって終わる。

 アクエリアスCが辺りを見渡してセーラースタッグを探すも、突然ぴたっと動きが止まった。

 

 何事かと思ったら、アクエリアスCの首に亀裂が入り、頭が床に転がり落ちる。

 同時に、アクエリアスCの背後から姿を現すセーラースタッグ。

 

『アクエリアスC、機能停止。全機、機能停止につき当模擬戦はセーラースタッグの勝利となります』

 

 コントロールルームから通知が鳴った。

 この時、頭を失ったアクエリアスCがその場で崩れ落ちたのだけど、アズキはここで初めてセーラースタッグの姿を正面から見る事になる。

 

 直後、アズキは目を奪われた。

 セーラー服越しに映る胸部装甲からは薄い膨らみが見られ、その体も華奢に映り、

 

「うわー。噂通り、ほんとじゃじゃ馬みたいな戦いするねあの子」

 

 と、フィーアさんが言うけど、とてもフロア上を暴れまわり、敵の首を刎ねるような戦い方をする子には思えない。

 ご尊顔もSLR型やBLZ型に近く、凛々しさより可憐という言葉が似合うデザイン。

 

 アズキは下腹の辺りがきゅっと熱くなるのを感じた。

 なんだろう、この気持ち。

 

 しかし、そんな可愛らしく綺麗なメダロットが行った戦い方は、フォーアさんが言った通りじゃじゃ馬そのもの。

 

(こんな可愛い子が、あんなスタイリッシュなロボトルをしたの?)

 

 正直、少し信じられない。ステルス中に入れ替わったのではと疑う程には。

 研究員たちが言った。

 

「ご苦労様。模擬戦はこれで終了だよ」

「少し報告があるからコントロールルームに来てくれないかい?」

「わかりました」

 

 セーラースタッグは頷き、ロボトル用フロアからこちらに向かって歩いて来る。

 アズキは、

 

(わ、わ、ちっ、近づいてきた)

 

 訳が分からないけど明らかな動揺。この様子を見てフィーアさんが、

 

「どうしたの? やっぱり怖い?」

「あ、えっと、その」

「分かるよー。あんな普通じゃないロボトル見せられたらびびっちゃうよね。結果的には今日は挨拶だけにして正解だったかなー?」

 

 って勘違い。

 

(あれ、勘違い?)

 

 ここでアズキは、少なくとも自分がセーラースタッグに恐怖を覚えたわけではない事を自覚する。

 セーラースタッグがコントロールルームに入ってきた。

 

「失礼します。模擬戦、ありがとうございました」

「わわっ」

 

 アズキは慌ててフィーアさんの背中に隠れる。

 しかし、フィーアさんは椅子に座ったままキャスターを使って鮮やかに横移動してしまう。

 

「え?」

 

 盾を失ったアズキ。

 逃げ場所はない。

 

 そこにセーラースタッグは真っすぐこちらの下に向かってきて、

 

「紅下アズキさんですね」

 

 セーラースタッグは言った。

 

「初めまして。この度、あなたのパートナーメダロットになりましたセーラースタッグといいます。よろしくお願いします」

 

 手を差し出すセーラースタッグ。

 

「あ」

 

 ここで、アズキは初めて自分の気持ちに気づいた。

 

「えっと」

 

 どうして下腹が熱くなるのか。彼女が近づいてくるほど動揺するのか。

 それでいて、なんでメダロット相手なのに自分が恐怖を覚えていないのか。

 

「そ、その」

 

 気づくと、アズキはセーラースタッグの握手を受けながら、大きな声で言っていた。

 

「す、好きです。付き合ってください!」

「嫌です」

 

 一瞬にして、彼女のアズキに向けた目が不審者を見る目に変わる。

 スタッグの「嫌です」はここから始まるのだった。

 

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