メダロットHERMIT   作:CODE:K

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2-5 君は完璧で究極のKWG5

 

「バグスティンク機能停止。よって勝者はスタッグとするよ」

 

 ロボトルの決着が確認されると、Ms.ウォッカは一歩前に出ていった。

 アズキは、

 

「ふうっ」

 

 と、無事スタッグの勝利で終わったことに心から安堵する。

 

 まさかここまで苦戦するとは思わなかった。

 というより、油断したこちらも悪いけど、真剣ロボトルでカモられそうな雰囲気のあるクワトロさんがここまで実力者だったのが想定外すぎたのだ。

 

 スタッグはクワトロさんの前に立つと、

 

「お手合わせありがとうございました」

「い、いえ」

 

 クワトロさんは慌ててぺこぺこ。

 

「こちらこそ、いきなり勝負を申し込んでごめんなさい」

 

 どうやらロボトルが終わって普段の大人しいクワトロさんに戻ったらしい。

 スタッグは続けて、

 

「良い経験をさせてもらいました。正直勝てたのが奇跡と思える試合でしたので、私も次回までに対策を考えなければなりません」

 

 たぶんスタッグの本音だろう。

 勝ったのはこちらなのに、まるで「次は負けない」と言ってるようだった。

 

「ふふ、そんな御謙遜なさらず。負けたのはこちらなのですから、私たちこそ次までに対策を考えないといけないのに」

 

 クワトロさんは微笑む。

 

「努力家さんですね、スタッグさんは」

「マスターがあのような方ですから、私が頑張らないといけなくて」

 

 待って。

 生徒の前で教師の評価を下げることを言わないで欲しいんだけど。

 

 とはいえ言い返せずアズキが目で訴えるに留まってると、クワトロさんが気づいて、

 

「これは大変そうですね」

 

 一体この言葉はどちらに向けていったのだろうか。

 

「はい」

 

 スタッグは自分に向けてと受け取ったようだけど。

 ここで、ウォッカがアズキに歩み寄って、

 

「ハラショー。ところでいいかい?」

「え?」

「改めて勝者の権利だけど」

「うん。あの子からパーツは何も奪わない方向でお願い」

 

 アズキがいうと、

 

「その後だよ」

 

 と、ウォッカ。

 

「君が小学生から何でも一つ強要させる完全に犯罪(プリストゥプリェーニエ)な権利は、あくまで口約束扱いでいいかい?」

 

 言いかた!!

 

「なら言い換えようか。ロボトル協会としてパーツの与奪をルールと定めてる以上、個人の一存で無関係な命令権を協会公認にはできないんだ」

 

 しかもまた心を読まれてる。

 というか、

 

「あっ」

 

 ここでアズキは「そうだった」と思い出した。クワトロさんに勝ったらおつぱいを好きにしていいと承諾を得てしまったのだった。

 いや正確には何かひとつ言うこと聞いてもらう権利なのだけど。

 

 おっっっ関連からの流れなので、相手もそのつもりで提案したのだろうし。というかロマンティクスしたいと言ったら受け入れてくれるの?

 

(あっでも避けれるなら避けたいよね普通)

 

 でもせっかくの厚意を無駄にするのも嫌という話。

 

「一体どうすれば」

 

 スタッグとクワトロさんが未だ談笑する中、アズキは必死に煩悩と煩悩と理性と煩悩の狭間で頭を悩ませ、

 

 

 

「で、魔女っ子が産まれたってわけ」

 

 とアズキはいった。

 

 職員室。

 放課後の仕事も昼休憩に入る中、アズキは今朝と同じくエージェントとして報告を行うため応接間にいた。

 

「似合ってますよ。スタッグさん」

 

 対面に座るキクナはニコニコ、いやニヤニヤと彼女を見ていう。

 というのも、いまのスタッグはボディが丸々FSL型、魔女っ子メダロット「ファンシーエール」なのである。

 

 ピンク色の可愛らしいコスチュームに身を包み、右手で握るのは魔女の定番である箒。

 よく見ると、ツインテールの髪は根元がスラスターかつ先端はリボンに模したプロペラであり、胸と左腕はコックピット。

 

 箒と二本の足はスラスターでスカートは主翼と、各部分に戦闘機を思わせる意匠が施されている。

 魔女っ子の定番マスコットは、左腕の操縦席に座っていた。

 

「まさか、こんな事態になるとは思いませんでした」

 

 スタッグが不満を漏らす。

 

 あの後。

 クワトロさんに対しての命令権で散々悩んだ末、アズキはふと欲望の矛先をスタッグに転ずるという自称名案に辿り着いたのだ。

 犯罪をせずに済むという解放感もあって、

 

「可愛いメダロットのパーツ一式を貸してほしい」

 

 と、命令権を行使。

 理由を聞いた結果クワトロさんは快諾し、

 

「でしたら、とっておきを用意します」

 

 といって渡されたのがファンシーエールであった。

 

「まあ、これでマスターが生徒に変な命令をするのを避けれたと思えば我慢できる範疇ではありますけど」

 

 言いながらスタッグは箒を手でくるくる回す。その様子にキクナは、

 

「気に入ったのですね?」

「いえ、そういうわけでは」

「気に入ったのですね?」

 

 にこにこ。

 このキクナという人だけど、小柄で清楚な見た目に反してかなりいい性格してるのだ。

 

 スタッグは諦めて、

 

「まあ、こちらの鈍器は好きですけど」

 

 それ鈍器じゃない。

 魔女の箒。

 

 アズキは心の中で指摘するも、性格のせいか突っ込みの言葉は頭に浮かんでも口から自然とは出てくれない。

 とはいえ箒は設定で実際は硬い機械のパーツなので間違ってはいないのだけど。

 

 この箒が本当に殴るタイプのパーツだとアズキが知るのはまた別の話。

 

「まあ、魔法少女スタッグちゃんは後々また弄るとして」

「やめてください」

 

 というスタッグの抵抗を無視してキクナは話題を変え、

 

「初日早々生徒たちのトラップに引っかかってあげて、盛大な笑いを勝ち取ったそうですね。いいスタートダッシュですよ」

「初手スリップ、逆走、コースアウトの間違いでしょ」

 

 アズキはげんなり顔でいうも、

 

「いえいえ、おかげで可愛い女子生徒たちがたくさん打ち解けてお喋りしてくれたじゃないですか」

 

 真実は舐められた副産物ではあるのだけど、物は言いようである。

 というか、

 

「待って、どうして女子限定?」

 

 アズキは基本こっちの趣味は隠してるつもりだったのだ。仮にレズバレだけならともかく、ロリコンと知って小学校送りにするのは真面目に考えてありえない。

 しかしキクナは、

 

「お近づきになりたかったのですよね? 小さな女の子に」

「待って? キクナどこまで知ってるの?」

「うーん、どこまでとは何のことでしょうか?」

「そんなの、人がレズでロリコンの気あるの隠し、あっ」

 

 言ってる途中でアズキは気づく。キクナがボイスレコーダーをにぎってたことに。

 

「これで言質、ですね」

 

 なんていうキクナにアズキは激しい動揺のあまり、

 

「あうあうあうあうあ」

「ちょうど他の先生が誰も聞いてない中で良かったですね」

「あうあうあうあうあ」

 

 って頭を真っ白にしてると、

 

「ていっ!」

 

 スタッグが箒の先でアズキの手を殴った。

 

「痛ぁっ」

 

 アズキは声をあげるも、おかげでパニックからは一旦脱出。

 スタッグがいった。

 

「そもそも、分かってるならどうして犯罪者予備軍を小学校に放り込んだのですか? 普通は事前に任務に就く候補から外すところと思いますけど」

「うーん、といわれましても」

 

 アズキは偶然だけど見逃さなかった。

 言われたときキクナが一瞬、にこりとしてたのを。

 

「キクナ、もしかしてあなたがこの任務を提案したの?」

「なにをですか?」

「平日の学校に潜入する手段の提案、人員の推薦、その一から十すべてだけど」

「うーん、さすがに違います」

 

 キクナは否定はするも、

 

「彼女は子供の相手が好きみたいだからご褒美を兼ねて機会を作ってあげませんか、なんて上司がいうものですから。僕はつい快く支持しただけです」

 

 ほぼ黒に近いグレーだった。

 しかも真の黒幕がキクナのさらなる上司とくればアズキに歯向かう手段はほぼない。

 

 アズキはいった。

 

「芋粥こわい」

「昔話が混ざってますよ」

 

 スタッグはつっこみを入れた。しかも、どちらの意味も微妙に間違っている。

 

「とはいえ、ほぼ分かりきった事態ではありますけど、しばらくはロボロボや行方不明者の情報を聞き出す以前のようですね」

 

 キクナはいった。

 

「アズキさんには当分の間は生徒との関係づくりを頑張っていただきます」

 

 

 

「思った通りでした」

 

 その頃、アズキたちの教室にて。

 本来ならいまは誰もいないはずの場所で、机に腰かける神宮寺シルコと彼女に話しかけるクワトロ・チーゼスの姿があった。

 

 クワトロはアズキたちと接したときの顔とは違う、ひょうきんにはしゃいだ姿をみせ、

 

「ロボトルをしかけて分かりました。やっぱり強かったのはメダロット側だけ。紅下先生は完全に素人で間違いありません」

 

 という報告に神宮寺はにやりと笑って、

 

「あ、やっぱりアッチは雑魚雑魚?」

「はい、ざこざこです」

 

 クワトロは笑みを向け返す。

 

「終始メダロットの独断に任せきりでしたね。被弾しても心配するばかりで自分で逆転の手を考えようともせず、自分のメダロットのことも把握できてなくて」

 

 さらに、

 

「スタッグさんも紅下先生には不釣り合いなほど強いせいで、先生を全く頼ってないようですし」

 

 これらの現状をクワトロは総評し、

 

「仲が良いだけで息が合ってませんね。連携不足です」

「葛切のときも同じだったわね」

 

 神宮寺はつぶやく。

 葛切とはパーフェクトロクショウを使った男子のことで、偶然にも連携不足という評価はスタッグの思う「彼が勝てない理由」と同じであった。

 

 スタッグはアズキにも同じ傾向がある事には気づいていた。

 だからロボトルの後、アズキに彼の敗因を質問して気づかせようとしてたのだけど、まさか自分も同じであるとは気づいてない。

 

「という事で神宮寺さん、調査の報酬に脱ぎたての下着をお願いします」

「脱ぎたてねー」

 

 神宮寺はその場で脱ぐ素振りだけみせて、

 

「ってあげないわよ!」

「えー? 駄目ですか? 先生にシルコさんのお汁付きプレゼントしようと思ったのに」

「駄目にきまってるじゃない。それにお汁なんてついてないからっ」

 

 神宮寺は友人の質の悪い冗談に全力で付き合ってから、

 

「って、先生に?」

「はい。紅下先生ですけど私の胸ばかり見てましたので」

「へぇ」

 

 神宮寺は嫉妬を込めた半眼でクワトロの胸部を一度眺めるも、

 

「いい手、思いついちゃった」

 

 すぐ、挑発的な笑みに変わる。

 神宮寺は机から降りた。

 

「次は私が先生に遊んでもらっちゃおっと。このクラスは私たちモッチーズが中心って先生にも分からせてあげないと」

 

 このまま連敗してもらいますね先生。

 心の中で勝利宣言する神宮寺。

 

 が、

 

「はい。私のかたきを取ってください」

「えっ?」

「えっ?」

 

 神宮寺は目を点にして、

 

「えっとクーちゃん? もちろん先生には勝ったのよね?」

「いえ、負けました」

「えーーーっ」

 

 神宮寺は驚き絶叫する。

 実は彼女、メダロッターとしての実力はクワトロよりずっと下なのだ。

 

 さっきまでの顔は何処へやら。神宮寺は慌てふためき、

 

「ど、どうしようクーちゃん。このままだと私も負けちゃうわ。ねえ一緒になにか対策考えてーっ!」

 

 なんて助けを求める。

 クワトロはうっとり顔で言うのだった。

 

「ほんとは本人が一番ざこざこなお汁ちゃん。ざこざこかわいい」

「ざこじゃなーい!」

 





これで第2話は終了になります
次回更新は来月中旬~下旬に行えるように現在準備中です
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