今回、正気山脈先生の小説「メダロットSAGA」のオリジナルメダロットが登場しますが、戦闘描写や各種パーツ諸々の情報は当小説オリジナルとなっています。
今後「メダロットSAGA」内にて該当メダロットの戦闘描写が発生し、不都合が生じた場合は「メダロットSAGA」の描写に合わせさせていただきます。
「ティナさん、春日くん、待って」
アズキはふたりに向けて呼びかけたが、ふたりは外に出るとすぐ全力疾走し始めた。
逃げるという点から見ても、残念ながら先ほどの万引きは現実だったのだろう。
「スタッグ、ふたりを止めて!」
アズキは走って追いかけながらスタッグを転送。
「はい」
外に出たスタッグは、すぐに左手の甲をヨーヨーとして投げ飛ばし、
「うわっ」
春日くんが驚く中、スタッグはワイヤーをふたりの腰に巻き付かせて拘束。
アズキはふたりの前に立つと、
「もう逃げられないよ。ふたりとも」
「なんで先生がこんなトコにいるんだよ」
春日くんが言うけど、
「それはこちらの話。こんな時間に子供だけで外にいるのも問題だけど、さっきのあれ万引きでしょ? どうして」
アズキが言うと、ここでティナさんが、
「メダロット転送」
拘束されたまま自分のメダロットを呼び出す。
現れたのは、青いカマキリのような姿をしたWMS型シックルカッターで、両腕の鎌でスタッグのワイヤーを切ろうとする。
すぐにスタッグはヨーヨーを回収し、ワイヤーの切断を逃れるが、これでふたりはスタッグの拘束から解除されてしまい、
「逃げるぞ」
春日くんが言うも、アズキはすぐ、
「今ここで万引きですって叫んでもいいんだけど?」
「できるのか、先生?」
睨みつける春日くん。彼は、アズキにそんな度胸がない事を知ってるのだ。
「うっ」
とアズキは反応するけど、その隣でスタッグが、
「私ができます」
「チッ」
舌打ちする春日くん。
「なら、ボコるしかないですね」
ティナさんが言った。直後、彼女はシックルカッターに指示を出して、いきなり両腕の鎌でスタッグに攻撃を始めてくる。
「え、ちょっと」
さすがにロボトル前から生徒のメダロットに攻撃されるとは思わず、驚くスタッグ。
とはいえ相手の攻撃はしっかりと避けながら、
「あの、さすがに喧嘩っ早くないですか?」
「どうしてですか? あなたを機能停止にすれば叫ばれる心配もなく逃げれるのですから、攻撃するのにレフェリーを待つ必要はありませんよ?」
これにはアズキも驚く。まさか彼女のほうが春日くんより過激で攻撃的な性格をしてるとは思わなかったからだ。
ティナさんは言った。
「ホウジもメダロット出して? せっかく新調したのだから、試運転にもちょうどいいでしょ?」
「しゃあねえな。来い! ランドオーカー!」
と言って、春日くんもメダロットを転送する。
現れたのは、おそらくTOT型メダロット。黄土色でリクガメをモチーフにしてると思われ、他の亀型と同じく脚部は戦車で、両腕にレーザーを装備している。
しかし亀型といえば有名なシリーズのひとつだというのに、このメダロットには見覚えが無い。これは一体。
思った矢先、アズキの頭にひとつの推測が浮かび上がった。
「え、もしかしてNGシリーズ?」
「その通り。これが俺の愛機、最新型のTOTメダロットだ」
まさか、こんな形で早速NGシリーズのメダロットと戦う事になるとは思わなかった。
ここで近くに設置されたマンホールの蓋が開き、
「ク・チョルトゥ。合意前に攻撃を開始するのはルール違反だよ」
と言いながら、中から
「まあ、それはそれとして、これよりスタッグ対藤稔ティナ・春日ホウジによるロボトルを始めるよ」
「合意するかは確認しないのですね」
スタッグは呟いてから、
「アズキ、大丈夫ですか?」
「うん。少なくとも公認ロボトルの最中ならふたりが逃げる事も無いだろうから」
と言いながらアズキはふたりに向けて、
「春日くんとティナさんも、いいよね?」
「私はどちらでもいいですよ? 公認でもルール無用の非公認でも」
ティナさんの言葉に、
「何かやばそうだから公認でお願いします」
アズキは言うのだった。
こうして、改めてレフェリーの下、ロボトルが開始。
「ランドオーカー、チャージだ」
「シックルカッター、シックルシェイプ」
互いの一手目はスタッグと春日くんがチャージ行動、ティナさんは頭部パーツを使用。
直後、スタッグは脚部から、相手のメダロットからは全身から、それぞれフォースが放出される。
メダロッチで確認したところ、シックルカッターの頭部パーツはマゼンタキャットも使うモビルブースト。つまり回避力を上げる技だと判明。
「シックルカッター!」
ティナさんの指示で、シックルカッターが両腕の鎌を向けてスタッグに襲い掛かってきた。
が、相手が鎌を振り上げたと同時にスタッグが横に跳ぶと、いつもの残像が出現し相手はそれを切り刻む。
代わりに相手の横に回り込んだスタッグはソードを一振り。
『左腕パーツ、中度ダメージ』
ティナさんのメダロッチから通知が鳴る。
「ランドオーカー、ビッグレーザーだ!」
今度は春日くんのメダロットが右腕パーツを構えた。
スタッグは相手を一瞥してすぐ回避の姿勢に入るが、ここでなんとランドオーカーはスタッグに接近してきたのだ。
「えっ」
驚くスタッグ。まさか零距離射撃でもする気なの?
予想外の行動にアズキも反応できず、相手はスタッグの至近に詰め寄り、
「攻撃開始だ!」
叫ぶ春日くん。直後ランドオーカーは格闘戦でもするかの距離から、複数の光線を集束して一本の大きなレーザーのように放ってきたのだ。
反応が遅れたスタッグは、なんとか回避行動をとるもレーザーがわずかに拡散して、脚部にかすりダメージを受けてしまう。
「よしよし。冷却が済み次第、もう一度いくぞ。ランドオーカー」
春日くんは得意気に眼鏡を人差し指で押し上げた。
「アズキ」
一方スタッグは、
「相手のレーザー。飛距離はどこまでありましたか?」
「え、あっ」
言われて気づく。そういえば先ほどのレーザー、スタッグが避けた分もそこまで遠くに飛んでなかった気がする。
(むしろ)
アズキはすぐメダロッチから情報を確認し、
「スタッグ。相手の右腕はショットレーザーと判明。たぶんNGシリーズの新技だと思う。すぐに情報を共有するから」
といってアズキは確認したデータをスタッグに送信する。
ショットレーザーとは、通常のレーザー攻撃に乱撃特性を加えたもの。ただし攻撃の対象は最も近い距離にいるメダロットになると記載されていた。
説明から見ても飛距離はほとんど無いと思っていいだろう。
もう一度見ないと確信はできないけど、スタッグなら後ろに跳んで避ける事も可能かもしれない。
「気に食わない。ホウジのメダロットが先に攻撃を当てるなんて」
ティナさんが不機嫌そうに言った。
「シックルカッター。ランドオーカーを押し退けながら接近。今度こそ攻撃を当てて」
今度はシックルカッターがスタッグに迫ったきた。
この時、ランドオーカーは道を譲ろうとしたが、相手は命令通りそんな味方を腕でどかしながら前進。
で、シックルカッターは両腕を振り回して何度も何度も鎌で切ろうとするが、スタッグは残像を作りながら全て避けきる。
春日くんは、この様子を肉眼とメダロッチ越しに映るランドオーカーの視界双方を通して眺め、
「おい、ティナ。相手の残像はメダロットのアイカメラから見ると本体と同じ姿に映ってしまうらしい」
「何やってるのシックルカッター。ちゃんと当てて」
「メダロットのセンサーに頼ったら駄目だ。照準を合わせたつもりでも、残像を置いて移動されただけでセンサーは相手の移動を感知しないで残像を狙ってしまう」
「シックルカッター!」
しかし、ティナさんは春日くんのアドバイスを全く耳に入れない。
(何だろこれ)
一見不良っぽい春日くんは味方と連携しようとしてるのに対し、肝心のティナさんは一切春日くんと息を合わせようとしない。
今まで学校で見てきたティナさんは猫を被ってたという事が、今日の一連を通して痛い程に伝わる。
「ティナァ!!」
ついに春日くんは怒鳴るけど、ティナさんは言った。
「だったら、残像も本体も全部狩ればいいだけでしょう?」
「あ゛?」
「あっち狙って、いや、やっぱこっち。なんて指示してシックルカッターを混乱させるよりは、そのほうが確実だと判断しただけ」
シックルカッターがさらに激しく腕を振り回し始めた。
しかも、心なしか一振り一振りの精度が上がった気がする。
「ねえスタッグ、なんだか相手の動きが」
アズキが呟いたところ、スタッグは言った。
「おそらく、相手は残像と本物の区別がつかなくて焦ってたのだと思います。ですけど残像も本体も全て攻撃すればいいと分かって、迷いが無くなったものと」
ああ、とアズキは納得したと同時に、
(え、それってやばいんじゃ)
とも思う。
実際、スタッグは一度右腕のソードで反撃を試みたが、四本ある脚のひとつで受け止められ、逆に鎌の一撃がスタッグの右腕にかすってしまった。
それ以後、スタッグは回避行動に集中して相手の猛攻が終わって冷却状態に入るのを待っているように見える。
実際、アズキの目にもシックルカッターはそろそろ息切れに陥るように映った。
今は限界を超えて攻撃してるが、おそらくこれ以上長続きはしない。
が、ここで春日くんが、
「よし。冷却、充填どちらも完了。俺たちもいくぞ、ランドオーカー」
再びスタッグに接近するランドオーカー。ここで攻撃役が彼に移り、シックルカッターに休憩されてしまうとかなり危ない。
しかしティナさん側は攻撃の手を休める気もなく、味方と連携する気ゼロ。
おかげで、春日くんとランドオーカーは位置取りにもひと苦労し、やっとシックルカッターの邪魔にならず、かつスタッグを狙える場所を確保すると、
「ビッグレーザー、発射!」
春日くんが叫んだ。
しかし直後、スタッグは相手の攻撃に合わせてランドオーカーの右腕を蹴り飛ばす。
結果、相手は照準が大きくズレたままレーザーを発射。しかも味方を無視して動いていたシックルカッターがレーザーの軌道上に飛び込んでしまう。
すでに冷却に入らないと不味い状態だったシックルカッターは、防御も回避もできず味方のレーザーを思いっきり浴びて、
『左腕パーツ、機能停止。脚部パーツ、中度ダメージ』
ティナさんのメダロッチから通知が鳴る。
「あ、馬鹿!」
驚く春日くん。この隙にスタッグは敵機から一度離れると、近くに設置されていた三角コーンを掴んで、相手に投擲。
シックルカッターの頭に三角コーンが被さってしまい、相手は視界を塞がれパニックを起こした状態で残った右腕の鎌を振り回し、
『脚部パーツ、ダメージ発生』
ランドオーカーを攻撃してしまい、今度は春日くんのメダロッチから通知が鳴ってしまう。
さらにスタッグは、暴れるシックルカッターに背後から左ストレートをぶつけ、脚部パーツを機能停止に追い込んだ。
「ホウジ?」
静かに睨むティナさん。春日くんは慌てて、
「お、俺のせいかよ。お前がちゃんと距離を取ってれば」
マスター同士が責任を押し付けあってる間に、スタッグは右腕からソードを展開。
シックルカッターを斬ろうとする。
しかし、
「チッ、ランドオーカー! シックルカッターを護れ!」
春日くんが指示した結果、ランドオーカーがスタッグの前に立ちはだかり、頭部でこちらの一撃をかわりに受ける。
調べた結果、ランドオーカーの頭部はチャージガードという防御パーツだった事が分かった。
「ティナ、ここは俺が食い止める。お前はその間にシックルカッターを安全圏に避難させろ」
「分かった」
ここでやっと、味方の指示に従ったティナさん。
しかし、ここで彼女が行った「安全圏に避難」はこの場の誰もが考えない、常識外れな行動だった。
「シックルカッター、パーツ転送」
ティナさんがメダロッチを掲げると、シックルカッターの機能停止した脚部と左腕のパーツが分解され、一度ティンペットの姿をさらす。
その後、RPT型アズールーラーの脚部パーツと、CLA型カネハチまーく2の左腕パーツが新たに装着された。
なんとティナさんは、ロボトル中にメダロットのパーツを変更するという明らかなルール違反をやってきたのだ。
メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。
今回は「メダロットSAGA」のオリジナルメダロットにつきほぼ全文転載とさせていただきます。
[機体名]
ランドオーカー
[型式番号]
MDT-TOT-NG01
[性別]
男
[パーツ]
◆頭部:ギガントシェル(守護/チャージガード/なし/5回)
◆右腕:ビッグレーザー(射撃/ショットレーザー/なし)
◆左腕:デッカレーザー(射撃/ハイパーレーザー/狙い撃ち)
◆脚部:コークタンク(戦車/デザートタイプ)
●HV:1/1/1 合計:3/3
[備考]
NGシリーズ初のTOT型メダロット。モチーフは砂漠地帯に生息するリクガメ、名前は陸を意味する『
両腕が光学射撃武器、頭部はチャージゲージを利用した防御行動というパーツ構成がされている。
右腕のショットレーザーは通常のレーザー攻撃である事に加え、乱撃特性によって敵の守護パーツの機能を削る事ができる。ただし、攻撃の対象は最も近い距離にいるメダロットとなる。
さらに左腕パーツは高い威力故に敵の防御を突破し、大打撃を与えるレーザー攻撃。
頭部の機能で味方へのサポートもこなしつつ、これらを利用して相手を確実に仕留めるのがランドオーカーの戦術である。
(以上、メダロットSAGA FIGHT.12より転載)
正気山脈先生の小説「メダロットSAGA」のオリジナルメダロット。