メダロットHERMIT   作:CODE:K

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14-3 この道わが旅3

 

「これにて、生徒たちのソロ演奏を終了します」

 

 最後の一名が演奏を終え、ピアノの先生がステージに立って言った。

 

「思ったよりレベルが高かったな」

 

 タコスが言った。

 アズキはうなずく。

 

「うん」

 

 最初は赤城くんがおかしいだけで、子供たちの発表会レベルだと思っていた。

 

 しかし、ティナさんを皮切りに終盤からは中高生の生徒たちが現れ、レベルの高い演奏を始めたのだ。

 もしかしたら、中には本気でプロを目指してる人もいたのかもしれない。それなら、終盤組の熱量が違う練習を見てティナさんが早々にプロを諦めたのも頷ける。

 

「あれ?」

 

 アズキは思った。

 

「生徒たちのソロは終わっちゃったけど、まだ今日の演奏会って続いてるんだよね?」

 

 今日ホールにいる大半は、自分たちの子供が演奏するのを見届けるのが目的だったに違いない。

 だとすると、今日のメインイベントはもう終了しちゃったのではないだろうか。

 

 ピアノの先生は言った。

 

「では続けて演奏ロボトルに入ります」

「演奏ロボトル?」

 

 アズキはパンフレットを確認。

 しかし紙には「ピアノ演奏と一緒にみんなでロボトルを楽しもう」としか書かれてない。

 

 ここで再び扉の先からティナさん、さらにソロで赤城くんの次に演奏していた小二か小三くらいの女の子、秋サルミちゃんと運命を弾いた男の子が現れた。

 ピアノの先生は、

 

「これはピアノ演奏に合わせて、ご来場いただいた皆様と一緒にロボトルを楽しもうというイベントになります」

 

 この言葉を聞いて、ホール内が少しだけ盛り上がる。

 

「まずはチュートリアルとして、こちらのサルミちゃんとトウガくんでロボトルを行おうと思います」

 

 先生はティナさん以外のふたりを指して言った。

 

「そして負けたほうはステージを降り、次の挑戦者を生徒、来場者様問わずホール内の全員から募集し、ステージに上がってロボトルしていただきます」

 

 つまり勝ち残り戦ってこと?

 

「勝者は暫定チャンピオンとしてステージで次の挑戦者と戦います。最大三回戦っていただき、見事全勝した方のために景品も用意しました」

「一種のガンスリンガー大会みたいなものか」

 

 タコスが言った。

 

「説明するより、まずは実際にロボトルをしてみましょう。三人ともよろしいですか?」

 

 先生が言うとティナさんはピアノに座り、サルミちゃんはセーラーメイツ、トウガくんはハシムコウをそれぞれ転送。

 今回は非公認ロボトル扱いらしくウォッカは姿を見せず、

 

「それでは、ロボトルファイト」

 

 先生が直接審判役を行った。

 直後、ティナさんが演奏を開始する。曲はロボトルファイト! まさかピアノで、この会場でロボトルといえばコレっていう定番BGMが聴けるなんて。

 

「おおっ」

 

 と、曲もあって周囲が盛り上がる中、実際にロボトルするふたりはまだ幼すぎるせいで互いに左右の腕から銃弾を撃ちあう単調な試合に。

 最後は頭部にも攻撃パーツを持つハシムコウの勝利に終わった。

 

「うわーん、負けちゃったー」

 

 泣きながらステージを降りるサルミちゃん。母親らしき人が彼女を抱きしめる様子がアズキの目に映る。

 ピアノの先生が言った。

 

「サルミちゃん残念でした。それでは、ホールの皆様。我こそはトウガくんと戦いたいという方はステージに上がってきてください」

「先生、上がりませんか?」

 

 神宮寺さんが言ったが、アズキは断って、

 

「ううん。私はまだいいや」

 

 正直、サルミちゃんが相手だったら立ち上がりたかったけど、相手は男の子なので今回は警備に専念する。

 まあ実際は、勝者がサルミちゃんでもアズキは臆病が発動してステージには立てなかったと思うけど。

 

 結局、ステージに駆け上がったのはひとりの女子生徒だった。

 しかもアズキは彼女を知っている。教え子のひとりだ。

 

「お名前を教えてください」

 

 ピアノの先生がマイクを渡すと、彼女は滑舌の良く活気がある声で、

 

鼈甲(ベッコウ)メアです。サルミとは家が近所で、今日は彼女の誘いで演奏会に来ました」

 

 って言うと、マイクを持ったままサルミちゃんの家族に顔を向けて、

 

「サルミー。君の仇は私が必ず取るから」

 

 って大きく手を振った。

 で、そんな彼女が転送したのはセーラーマルチ。

 

 そのまま次のロボトルがスタートしたが、今回はモッチーズもいるアズキのクラスの女子生徒。

 

 まずは頭部パーツのレーダーサイトを使って射撃精度を上げつつ、ステージ上を動き回って単調な攻撃しかしないハシムコウの銃弾を避けていく。

 逆にセーラーマルチは脚部特性エイムの効力もあって移動しながらの射撃を確実にハシムコウに当てていき、

 

「ハシムコウ機能停止。メアちゃん、宣言通りサルミちゃんの仇討ちに成功しました」

 

 ピアノの先生は言って、周囲に歓声があがる。

 メアちゃんは一度やったーと喜ぶも、すぐトウガくんの前に立つと手を出して、

 

「でもトウガくんもいいロボトルだったよ。またやろうね」

 

 と、相手のフォローも忘れない。

 トウガくんは、

 

「は、はいっ!」

 

 女の子相手で少し恥ずかしいのだろう。握手を受けると、赤くなった顔を隠すようにしてステージを降りた。この気持ち、すごく分かる。

 が、そんな彼と入れ替わりにひとりのスーツ姿の子が、まだ次の挑戦者を募集してないのにステージに上がって、

 

「メアが相手なら、オレが行ってもいいよな?」

 

 赤城くんだった。転送したメダロットはもちろんブルーティス。

 

「あーっ!」

 

 席から叫ぶ神宮寺さん。

 

「フクずるい! 次は私が出ようと思ったのにー」

「悪いリーダー。でも、これはオレのプライドの問題でもあるんだ」

 

 赤城くんが言った。

 

「オレ、モッチーズの中じゃ最弱だろ? だから最近舐められてる気がしてよ。実際この前だって二回も雑にやられちまったし」

 

 この前がどこを指してるかは分からないけど、高校に襲撃した時は、たしかに一回目は不意打ちで出オチのように処理しちゃってはいる。

 アズキ自身も味方だと頼りになるけど、敵に回ったブルーティスが脅威だった記憶はあまりない。

 

「だからさ。まずメアを倒して自信をつけて、次の試合でリーダーも倒すつもりだ」

「フク、言ったわね」

 

 対戦相手のメアちゃんを無視して、ステージの赤城くんと席を立った神宮寺さんが互いに目で牽制しあう。

 メアちゃんが言った。

 

「あのー。勝手に私を倒せる前提で話を進めないでくれると嬉しいんですけどー」

「あ、ごめん」

 

 赤城くんは慌ててメアちゃんに顔を向け直し、

 

「悪いけど本気で倒しに行くからな。メア」

「むしろ本気で来なかったら逆にコテンパンにしてあげるから」

 

 今度はメアちゃんと目で牽制しあう赤城くん。

 

 ここで、ティナさんは現在の曲を演奏し終えて、次の曲に入る。いや、赤城くんに合わせてBGMを変えたのかもしれない。

 ティナさんが演奏し始めたのはBEAT UPだったからだ。

 

 赤城くんが、

 

「おっ、ティナもいい選曲してくれたじゃないか」

「似合うわよね。フクくんとブルーティスに。このBGM」

 

 メアちゃんは同意しながらも、

 

「でも、この曲の中で退場してもらうんだけど」

 

 と、挑発。最早ピアノの先生が宣言するまでなくロボトルが始まった。

 

「セーラーマルチ。バリアブルヘアー!」

「はい」

 

 まずメアちゃんは先ほどと同様に頭部パーツのレーダーサイトから入る。

 一方ブルーティスは全パーツが攻撃技のため、

 

「うおおおっ! 竜○旋風脚!」

 

 早速ブルーティスはお得意の漫画の真似である跳躍回し蹴りを放った。

 

「きゃっ」

 

 攻撃はセーラーマルチにヒット。

 ブルーティスはゲームのように空中で連続スピンはできないので、一度着地してから跳躍回し蹴りを繰り返し、セーラーマルチにダメージを重ねていく。

 

「大丈夫セーラーマルチ。後退して距離を取りながらパテリィバルカンでマシンガンを撒いて」

「分かりました」

 

 指示を受け、セーラーマルチは右腕を構えながら後ろに跳ぶも、

 

「遅い! ブルーティス。ギ○ラクティカマグナム!」

 

 叫ぶ赤城くん。指示を受けたブルーティスは、後退しようとするセーラーマルチに追い打ちで飛び掛かり、全力で相手を殴り飛ばす。

 

「きゃあああっ!」

 

 弧を描くように宙を舞って倒れるセーラーマルチ。

 フィニッシュブローにはならなかったが、殴られた時点で右腕は機能停止し、さらに床に倒れた衝撃でセーラーマルチは脚部まで機能停止してしまう。

 

「とどめだ。ブルーティス」

 

 赤城くんが指示すると、ブルーティスはその場で左手を構えた。

 ケモノアギトによるドッグフィンガー。つまりパワーハンマーの充填に入ったとメアちゃんは気づくと、

 

「私の負けです」

 

 と言った。

 

「えっと、勝者は赤城フクカゼに決定です!」

 

 ピアノの先生がマイクで言うと、周囲に再び歓声があがった。

 アズキはびっくりしながら、

 

「ブルーティスって、真正面から戦うとあんなに強かったんだ」

「当たり前よ。だって私たちモッチーズの一員だもの」

 

 言いながら神宮寺さんが立ち上がる。

 今から、彼女はその赤城くんに勝負を挑む気なのだ。

 

 空気を読んでか、神宮寺さんの他にステージに上がる挑戦者はいなかった。

 セーラーマルチをメダロッチに回収し、ステージを降りるメアちゃん。そんな彼女が、逆にステージに上がろうとする神宮寺さんの横を通った時、

 

「フクくんってすごく強かったのね。正直、あの子ならワンチャン勝てると思ってたわ」

「本っ当に、フクって周りから真っ当な評価されてなかったのね」

 

 メアちゃんの呟きに、神宮寺さんは心底落胆したように返事した。

 

「でも、これで分かったでしょ? フクってば本当はすごく強いのよ。私だって勝てるか分からないくらいには」

「ええ。頑張ってね、モッチーズのリーダーさん」

「もちろんよ」

 

 笑顔の返事はない。彼女にしては珍しすぎるほど真面目な顔で、神宮寺さんはステージに上がった。

 赤城くんは神宮寺さんが前に立つと、

 

「そろそろ、オレが勝つ日があってもいいよな? リーダー?」

「簡単には勝たせてあげられないわ。だって私は、モッチーズのリーダーだもの」

 

 再び、今度はステージの上で互いに目で牽制しあうふたり。

 同時に、転送されてはブルーティスに対峙するマゼンタキャット。

 

 ここでピアノの先生がマイクを片手に神宮寺さんに近寄って、

 

「邪魔しちゃってごめんなさい。お名前を教えていただけますか?」

「神宮寺シルコです」

「ありがとうございます」

 

 ピアノの先生は律儀に一度頭を下げると、

 

「それでは、赤城フクカゼ二戦目。挑戦者、神宮寺シルコ。ロボトル開始です!」

 

 モッチーズ対モッチーズのロボトルが始まった。

 

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