「マゼンタちゃん。まずは」
「分かってるわ」
ロボトル開始直後、マゼンタキャットはまずモビルブーストの使用を試みる。
しかし、
「ブルーティス! 先手必勝だ!」
「うおおおっ! 飛○疾風脚!」
普段の跳躍回し蹴りとは違い、ブルーティスは飛び足刀蹴りで攻撃してきた。
「くっ」
マゼンタキャットは回避行動でかすりダメージを受けながらも直撃は避け、当たった脇腹を抱えながら自身の眼を赤く光らせる。
モビルブーストが発動したのだ。これでマゼンタキャットは名実共に猫の目を思わせる動体視力を得て回避力がアップ。
「マゼンタちゃん。スタンガンでまずは確実に電流を入れて」
「それも分かってるわ」
指示を受けたマゼンタキャットは、電流を放ちながら右腕を突き出すとする。けど、彼女はすぐ腕を引っ込めた。
直後、ブルーティスはサマーソルトキックを放ち、マゼンタキャットの腹部にヒットしてしまう。
「マゼンタちゃん!」
心配そうに神宮寺さんは言うも、
「平気よ」
マゼンタキャットは腹部のダメージで膝をつきながら返事。
「でもモビルブーストを使ってなかったら危なかったわ」
「もしかして右腕を」
「ええ、やられるところだったわね」
言いながらマゼンタキャットは立ち上がり、体を横にそらす。
ブルーティスが追い打ちで殴ろうとしていたからだ。
結果、今度こそブルーティスの攻撃は完全に回避され、逆にマゼンタキャットの右腕が突きつけられる。
で、サンダー攻撃が完全に決まった。
「ぐああああっ」
流し込まれる電流に悲鳴をあげるブルーティス。
こうなってしまうと、一度攻撃を受けるか体の電流が抜けるのを待つまで一切の行動や回避が行えなくなってしまう。
しかし、残念ながらマゼンタキャットは動けない相手を仕留めるにはパワーが足りないメダロットである。
マゼンタキャットはブルーティスの左腕を両手で掴んで、さらにサンダー攻撃。
「があああっ」
ブルーティスは左腕にダメージを受けるが、機能停止までは行かずサンダー症状も解除されてしまう。
「飛び退け、ブルーティス」
「うっ、ぐううっ」
一旦後ろに跳んで距離をとるブルーティス。でも、
「休ませる暇なんてあげないわ。マゼンタちゃん!」
元々マゼンタキャットはスピードに関係する脚部特性を持ってる分、後退するブルーティスより前進する彼女のほうが速いのは間違いない。
セーラーマルチ戦で彼が追い打ちした時のように、今度はブルーティスが飛び掛かってきたマゼンタキャットから逃げきれず、
「もう一度スタンガン」
神宮寺さんの指示と共に、ブルーティスは再びマゼンタキャットの右腕から放たれる電流を受けてしまう。
「が、ぁっ」
また動けなくなったブルーティス。
神宮寺さんは言った。
「技真似には技真似よ! マゼンタちゃん、ラ○トニングプラズマ!」
「は?」
マゼンタキャットが反応。
「なにそれ? 私、そんなのできないんだけど」
「元ネタではたしか、一瞬の間に光速パンチを無数に出して、あまりの速さで光の筋が見えてたわ」
「できるわけないじゃない。そんなの」
「気分の問題よ!」
絶句するマゼンタキャット。
神宮寺さんは、
「とりあえず叫びながら連続でパンチ。狙いはブルーティスの左腕よ」
「ああもう了解。ラ○トニングプラズマ!」
マゼンタキャットはヤケクソでブルーティスを殴りまくる。
しかも相手は動けないせいで、攻撃は全部命中し、
『左腕パーツ、機能停止』
赤城くんのメダロッチから通知が鳴った。
マゼンタキャットは、
「これでいいの?」
「ありがとう、マゼンタちゃん」
元ネタと違い、マゼンタキャットは両手で殴っていたが神宮寺さんは満足そう。
赤城くんが言った。
「くっそー。オレたちのお株を奪いやがって。しかも左腕狙いって事はオレたちの必殺、ドッグフィンガーを封じやがったな」
「もっちろん」
肯定する神宮寺さん。
しかも彼女は左腕狙いと言ったが、パンチ自体はちょくちょく他のパーツにもヒットしたので、ブルーティスは全身にダメージを受けてる様子。
「だったら、右ストレートでぶっ飛ばす! ブルーティス、ギ○ラクティカマグナムだ」
「マゼンタちゃん! もう一度スタンガンで動きを止めて」
双方から指示を受けたメダロットたちは同時に飛び掛かり、相手に向けて右の拳を突きつける。
で、互いの拳はまるでクロスカウンターの構図みたいに相手に当たり、
「がっ」
まずブルーティスが電流を浴びて動けなくなるも、
「に゛ゃあああっ」
左肩に全力のブローを受けたマゼンタキャットは、弧を描くように宙を舞い、ステージに倒れる。
さらに、
『左腕パーツ機能停止』
今度は神宮寺さんのメダロッチから通知が鳴った。
予想以上のダメージだったのだろう。神宮寺さんは慌てて、
「マゼンタちゃん! マゼンタちゃん! 平気?」
「慌てないで。左腕がやられただけよ」
マゼンタキャットが立ち上がる。
一方ブルーティスは元から倒れはしてないが、今回もサンダーによって一切の行動ができなくなってる様子。
神宮寺さんは言った。
「これ以上ダメージ調整してる余裕は無さそうね。マゼンタちゃん」
「やるのね、あれを」
「うん」
うなずく神宮寺さん。
この会話の意味を赤城くんが察して、
「くるか、あれが!」
「いくわよ」
跳び上がるマゼンタキャット。
彼女はピアノ、壁と立て続けに足場として使いながら高く高く跳躍。
上空で猫のように体を丸め回転しながら電流を自ら浴び、全身に電気を纏いだして、
「あっ」
アズキも神宮寺さんの狙いに気づいた。
彼女はここでアズキも何度か見たオリジナルの必殺技を用いて、一気にブルーティスを機能停止に追い込む気なのだ。
マゼンタキャットは空高い位置から飛び蹴りの姿勢に入り、
「エレクトリック・サンダー・キック!」
ブルーティスに向けて真っすぐライダーキックを放った。
彼女必殺の一撃は、動けないブルーティスに見事ヒットし、キックの威力と同時にマゼンタキャットを包む電気が全てブルーティスに流れ込む。
「うわあああああああ!」
悲鳴をあげるブルーティス。
赤城くんが叫んだ。
「ブルーティス! もし耐えたら、電流を逆に利用してドッグチョーカー。頭部パーツで体当たりだ!」
「お願い。これで機能停止して!」
逆に神宮寺さんは必死に願う。
結果は、
「ギ○デイン!」
ブルーティスの体から粒子が吹き上がった。同時に赤城くんのメダロッチから、
『右腕、脚部機能停止。頭部パーツ重度ダメージ』
ブルーティスがギリギリ無事であった事が伝えられる。
「そんな」
驚くマゼンタキャット。
「うおおおおおおおおおおっ!」
ブルーティスは吠え、マゼンタキャットに襲い掛かった。
すでに脚部が機能停止し、推進力が大きく下がってるはずなのに、胴体から吹く粒子が未だ残るブルーティスの電流を巻き込んで加速に利用。
同時にすでに動かないはずの両腕も粒子で強引に動かし、本当は持ってない大剣を両手で握り、今にも剣を突きつけようというモーションから、
「ギ○ブレイク!」
肩、いや全身でマゼンタキャットに体当たりした。
さらにお返しとばかりにブルーティスは残りの電流を粒子で作り出した衝撃波と一緒にマゼンタキャットに叩きこんで、
「にゃあああああっ!」
マゼンタキャットはステージを弾き出され、ホール内の壁に叩きつけられる。
彼女が壁から剥がれ、床に倒れた時、メダロッチが通知するより先に彼女からメダルが弾き出された。
「そんな」
神宮寺さんがショックで茫然とする中、
「マゼンタキャット機能停止。勝者は赤城フクカゼに決定です!」
ピアノの先生がマイクで叫び、会場が今日一番の歓声に包まれる。
なんと赤城くんとブルーティスは、機能停止ギリギリとはいえ自分たちのリーダーである神宮寺さんを倒してしまったのだ。
「え、勝ったのか? オレ」
当然、赤城くんも最初は事実を頭で認識しきれずぼーっとした反応を見せるが、次第に状況を正しく理解すると、
「いよっしゃああああああああっ!」
その場で跳び上がり、全身で喜ぶ。
逆に神宮寺さんは、
「あーもう。うそーっ! 負けたーっ!」
癇癪を起したようにその場でじたばたし、大声をあげるも、数秒後にはすっきりした顔で、
「でも、逆にこれで良かったかも。赤城フクカゼは弱くないのよって証明できたもの」
神宮寺さんの言葉に赤城くんが、
「お、おいリーダー。まさかわざと負けたのか?」
「そんなわけないでしょ。八百長でフクの強さを証明しても意味がないもの。全力で勝ちに行ったつもりよ。だから」
神宮寺さんは赤城くんに抱き着いて、
「すっごく悔しいけど、おめでとうフク」
「ありがとう、リーダー」
この日。
赤城くんは次のロボトルでも勝利し、無事に三連勝の景品をゲットした。
ティナさんは三戦目のBGMにStrike Enemyを弾いたが、結局赤城くんが一番苦戦したロボトルは二戦目の神宮寺さんとの戦いだった事は間違いない。
赤城くんの後もイベントはもう少し続いたが、結局三連勝して景品の獲得に至ったのは他にいなかった。
余談だけど、アズキたちは結局最後まで演奏ロボトルには参戦していない。
こうして、最後にピアノの先生がステージの前で今日演奏してくれた生徒たちにプレゼントを贈り、今日は何の問題もなくイベントが終了するのだった。
ホールの片づけも終わり、関係者も来場者も全員帰宅した後、
「失礼します」
暗くなったホール内に、ユニトリースのユニィが入ってきた。
「今日行われたピアノ演奏の計測結果が出ました」
「報告してくれる?」
返事したのは、椅子も片付けられた中、ステージを玉座のように腰かけていた博物館所属の研究員、間桐ミチコ。
ユニィは言った。
「はい。ダイマトウ様」
って。
「計測結果、演奏ロボトルの一部熱戦中にレッドゾーンを観測」
「へえ」
間桐ミチコ、いやダイマトウは口元だけで笑い、
「それは面白い結果ね。現状ではまだ調整が必要とはいえ、ピアノの音響でメダロットを暴走させられる可能性が出てきたわけね」
「いえ、それが」
ユニィは否定し、
「レッドゾーンに到達したのは、ロボトル中に演奏していたひとりの人間が発する脳波でした」
「人間の脳波?」
ダイマトウは驚き、今日手に入れたパンフレットを確認する。
「たしか演奏者は藤稔ティナ。これは興味深いわ。一度調査する必要がありそうね」
と言ってダイマトウはステージから離れ、
「今すぐ研究室に行くわよ。そこで詳しい観測結果を教えて頂戴」
ダイマトウは言うのだった。
これで第14話は終了になります。