メダロットHERMIT   作:CODE:K

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15-2 不可思議のカルテ2

 

 さすがに教師同士が教室内でロボトルするわけにはいかないので、場所を変える事になったアズキたち。

 一旦外に出て、校内を歩いてたところ、

 

「あ、ここなんて良さそうですね」

 

 トウコ先生が指したのは学校のプールだった。

 プールはまだ水が張ってなかった。しかし最近掃除したのだろうか、プールの底は綺麗になっており、少しだけ水で塗れている。

 

 メダロットの基準からすると、一応水辺フィールド扱いになるだろう。

 

「プール、かあ」

 

 アズキは思った。スタッグが潜水対応だったら、メダチェンジでかなり有利になってたのだろうなって。

 

「一応確認するけど。トウコ先生のメダロットは何ですか?」

「あ、はい。でしたら先にお互い転送しましょうか」

 

 トウコ先生が言ってきたので、アズキはスタッグを転送する。

 

 一方、トウコ先生が転送してきたのはSRU型。

 青龍をモチーフにしたロンガンだった。脚部は二脚なのでプールを選んで一方的に相手の有利なフィールドになる事はないだろう。

 

「これがユスグちゃんをモデルにしたメダロット、セーラースタッグですか」

 

 トウコ先生はスタッグを眺めて、

 

「性能はソニックスタッグと同じって本当ですか?」

「基本的には。ユスグさんの動きをそのスペックで再現してるって聞いたけど」

 

 アズキは言った。

 まあ基本ソニックスタッグというのも、変形すると潜水型になるので完全に同じとも言い切れないのだけど。

 

「それで、フィールドはプールで大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫」

 

 アズキが言うと、

 

「あ、アズキ」

 

 スタッグが慌てて、

 

「ロンガン相手に水辺フィールドは危険です」

「え、どうして?」

「それは」

 

 スタッグが言いかけるも、ここでウォッカが間に入って、

 

「ハラショー。これよりスタッグ対トウコのロボトルを始めるよ。フィールドはプールの底一面。メダロッターはプールサイドから指示を出して欲しい」

 

 と言った。しかも露骨にプールから逃がさないといった意思を感じる。

 

「ごめん。もう決まっちゃったみたい」

 

 アズキが言うと、

 

「苦戦か敗北は覚悟してください」

 

 スタッグは言った。しかも負けを覚悟とは珍しい。

 ウォッカの指示に従って、アズキとトウコ先生はプールサイドに立って、メダロットたちはプールの底に降りる。

 

「うらー。それではロボトルファイトだよ」

 

 ロボトルが始まった。

 

 水辺フィールドは、二脚にとって地形相性が最悪である。

 とはいえ今回は相手も二脚なので、特に問題はないと思ったのだったけど、

 

「いきます」

 

 水に塗れた床が滑るせいか、普段よりバランスの悪い動きでスタッグはロンガンに迫り、ソードで斬りつける。

 が、相手も動きがおぼつかなかったおかげで攻撃は命中。

 

 ロンガンは右腕にダメージを負ったが、

 

「遠慮なく行かせてもらうのです」

 

 トウコ先生は言った。

 

「ロンガン、メダチェンジ」

 

 って。

 直後、スタッグが負けを覚悟しろと言った意味が分かった。

 

 先生の指示を受けたロンガンはその場で変形を始め、潜水型メダロットになったのだ。

 スタッグと同じ、二脚から潜水に変形するタイプ。しかもスタッグと違って、ちゃんと二脚・潜水の両方に対応したメダルを使ってるに違いない。

 

「ロンガン、ドライブA」

 

 指示を受けたロンガンは、先程とは打って変わって流れるように床を移動し、スタッグの後ろに回り込む。

 で、両の爪から赤い粒子を放出させながら切り裂きにかかってきた。

 

 スタッグは何とか最初の右の爪を避け、左の爪も避けたけど、最初の二発は牽制だったようで、最後に両腕で掬い上げるような一撃を受けてしまう。

 

「きゃああっ」

 

 下から上に爪で裂かれ、スタッグのセーラー服を模した装甲がめくりあがった。

 

(え? あれ、パージ可能なの?)

 

 アズキは驚いたと同時に、装甲の内側から薄い胸を覆うブラジャーのようなパーツを初めて視認。

 スタッグは一度床に倒れてから、顔を赤くしながらめくられた装甲を元の位置に戻しながら、

 

「あ、アズキ。見ましたか?」

「えっ、えっと、その」

 

 アズキは返事に困るが、こんな狼狽えた態度、肯定として見られるに違いない。

 あたふたとアズキは視線を逸らしてから、

 

「スタッグのセーラー服って、脱がす事できるんだ」

「ふ、普通はできません」

 

 スタッグは言った。

 

「多分相手のメルト攻撃のせいです。おそらく私のパーツを溶解して、本来剥がせないものを剥がせてしまったのでしょう」

 

 言いながらスタッグは立ち上がって胸元を押さえる。

 

 メルトとは、相手に継続ダメージのマイナス症状を付与する攻撃技である。

 おかげでスタッグのセーラー服はいまも少しずつ剥がれていき、アズキも今日初めて見た服の内側が露わになっていく。

 

 スタッグは、顔を真っ赤にしながら睨んだ。

 

「これもあなたの作戦ですか? 鬼殺トウコさん?」

「ち、違うのです」

 

 トウコ先生は慌てて、

 

「まさかセーラー服の内側まで精密にデザインされてるとは思わなくて、ごめんなさい、なのです」

「とりあえず、この勝負はすぐに終わらせます」

 

 言いながらスタッグはステルスを使用。

 見えなくなったところで、今度はスタッグがロンガンの背後に回り込み、甲を回転させた左腕で相手の後頭部を殴りつける。

 

 メダチェンジ前だったら今の一撃で頭部ワンパンもありえたかもしれない。

 

 しかし、いまのロンガンはメダチェンジ形態。

 装甲が一体化してるせいで機能停止には至らなかった。

 

「ロンガン、もう一度ドライブAなのです」

 

 再びロンガンの両腕から赤い粒子が放出すると、スタッグもすぐチャージ行動を行い、脚からフォースを放出して残像を作り出せる状態になった。

 

 けど、今回は残像でデコイは出せても、地形相性の差で機動力が追い付かず、ロンガンは残像を切り裂いてそのまま本体に爪を伸ばす。

 スタッグは完全な回避には至らず、それでもカスリダメージに留めたが、

 

『左腕パーツ、重度ダメージ』

 

 あくまでカスリだったのにメダロッチから通知が鳴った。

 確認すると継続ダメージで想定以上に全身の装甲がダメージを受けている。このままでは次にどの部位を攻撃されてもパーツは破壊されてしまうだろう。

 

「アズキ」

 

 スタッグは言った。

 

「私もメダチェンジを使います。よろしいですね?」

「あっ」

 

 とアズキは思った。

 

 たしかにスタッグのメダルは潜水に適性を持ってないけど、あくまで地形相性の面ではロンガンと対等になれる。

 さらにメダチェンジ後のスタッグはアンチシーを持ってるので押し切れるかもしれない。

 

 なにより、パーツを破壊されてしまったらメダチェンジはできない。変形するなら今しかない。

 

「お願いスタッグ」

「分かりました」

 

 今回は先にステルスする余裕なんてなく、スタッグはその場でM字開脚。

 スカートがめくり上がって、黒のぱんつを周囲にさらす。

 

「えっ?」

 

 顔を赤くするトウコ先生。

 

 そのままスタッグの腕が収納され、首がスライドして彼女のツインテールがフロートに変わる。

 こうしてスタッグは水上機の特徴を持った潜水艦にメダチェンジ完了するのだった。

 

 トウコ先生が顔を真っ赤にして、

 

「は、破廉恥なのです。何なのですか、このメダチェンジは」

 

 と激しく狼狽えた。

 

「こんな変態機能を孤児院の子をモデルにしたメダロットに搭載するなんて、TMZ社は悪魔なのです」

「いや、まあ、うん」

 

 否定はできない。

 さらに、アズキ自身も戻る時のモーションは見た事があっても、実は人間態から潜水艦に変形する瞬間は初めてだったので、現在赤面中なわけで。

 

「いきます!」

 

 ただトウコ先生が冷静を欠いたのはスタッグにとって好都合だったのかもしれない。

 

 まずスタッグは変形が完了したと同時に、背景に溶け込むように黒いボディの輪郭が曖昧になる。

 メダチェンジしたスタッグの脚部特性であるチェンジアクセルによるもので、彼女は変形と同時に自分自身にモビルブーストを付与するのだ。

 

 さらにトウコ先生がロボトルに集中し直す前に、潜水艦の左側からヨーヨーが錨として射出された。

 彼女のドライブC攻撃、アンチシーだ。

 

 ヨーヨーはロンガンの体に食い込み、高速で回転して相手の体を破壊していく。

 しかも相手は潜水型。間違いなく致命傷に近いダメージは期待できるはずだったが、

 

『ロンガン、重度ダメージ』

 

 トウコ先生のメダロッチから通知。残念ながら一撃で機能停止までは不可能だった。

 しかも相手はメダチェンジ中なので、破壊されて使用不可能になったパーツはなく、

 

「あっ、ロンガン!」

 

 ここでトウコ先生は意識をロボトルに向け直す。

 応えるようにロンガンも、

 

「平気です。想定通り相手がクワガタメダルなら、潜水脚部は上手く扱えないはず。ここままメルトで押し通します」

「はい。お願いします」

 

 再びドライブAで攻撃するロンガン。しかし今回スタッグはフロートで相手の爪を弾きながら艦体を横移動させて回避に成功。

 たぶんモビルブーストが上手く機能したのだろう。

 

 それでも、

 

「ロンガン!」

 

 スタッグが次の攻撃に入る前に、ロンガンは再びドライブA。

 両の爪で何度も何度もスタッグを裂き、メダロッチから見ても継続ダメージと併せてスタッグの装甲がどんどん削られていく。

 

 アズキは叫んだ。

 

「スタッグ、耐えて!」

「分かってます。あと少しで、二度目のアンチシーが」

 

 もちろん相手側も、

 

「ロンガン、押し通して!」

「うおおおおっ!」

 

 このまま相手を機能停止まで削り切ろうとするトウコ先生とロンガンの声がアズキの耳に届く。

 で、ついにメダロッチから見てスタッグの装甲がゼロになろうとした直後だった。

 

「間に合っ」

 

 スタッグが言い切るより先に、二度目のヨーヨーがロンガンを殴りつけた。

 それでもロンガンは爪をスタッグに届かせようとしたが、ヨーヨーは錨のようにロンガンの装甲の隙間に食い込み、そのまま真後ろの壁まで叩きつける。

 

「がっ」

 

 勝負は決まった。

 背中から衝撃を受け、ロンガンの体からメダルが弾かれた事によって。

 

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