「ねえスタッグ? たまには原点に戻って本当のSLR型でも」
『嫌です』
今日も
もちろん、今回も着せ替えの話であり、SLR型つまり正真正銘のセーラー服女学生メダロットになってみないかという話である。
「いいじゃない。元々SLR型みたいなものだから」
『嫌です』
「ちょっとだけ、ちょっとだけという話だから」
『嫌です』
「あのシリーズって水色の縞々が見えやすいそうなのよ。だから」
『だからこそ、余計に嫌です』
なお水色の縞々とは、下着のこと。
メダロットだから本当に穿いてるわけではないけど、スタッグが好き好んで股間部分の装甲を見せるわけがない。
『そもそもですね、アズキ』
スタッグは、深ーい溜息を吐くように言った。
『早朝から発情しないでください』
今日も教師として小学校に出勤である。
現在、アズキは職員室。
時計の針は午前七時を指したばかり。生徒が登校する前に到着するはずが少し早くしすぎたらしい。
校舎に生徒どころか、職員室でさえアズキ以外に誰もいないのか静寂そのもの。
なのでアズキは、自分の席で本日行う授業の準備を行いながら、他人に聞かれてたら不味い雑談を堂々と交わし、
「おはようございます」
「ひあっ」
いないと思ってた他の教師に背後から挨拶されアズキは驚く。
「お、おはようございま」
慌てて挨拶しながら相手を確認。
アズキは、
(ほっ)
となった。相手はキクナだったからだ。
「おはようキクナ」
言い直しながらアズキは息を整える。
他の教師だったら白い目で見られ、一切の信用をなくし、最悪校長なり教育委員会に報告されて学校を追い出されるかもしれない。
けど、同じ任務で潜入してるキクナなら、そういった心配は要らないし、何よりアズキの趣味や性癖もすでにバレている。
そもそも、直前まで駄弁ってた内容を聞かれてたとは限らな、
「それで、SLR型の水色の縞々がどうされましたか?」
「うっ」
限らないはずがなかった。
思えば相手はキクナなのだ。スタッグと喋ってるのを知ったうえで、こっそり近づき内容を把握してから驚かすよう挨拶してきた可能性だって十分にある。
しかも、
「キクナその服って」
「どうですか? 小学生相手ですから普段からスーツは堅苦しいですし、かといってカジュアルすぎる服も駄目ですから、この選択もありと思ったのですけど」
って本人はいうも、今日のキクナの服装はフリルのついた純白のブラウスにハイウエストコルセットの吊りスカート。
言い換えるなら、
「それ、童貞を殺す服よね? 昔ネットで流行った」
「正解ですよ」
キクナはにこりと笑って、下からこちらを覗き込む仕草。
長い髪がほのかになびく。
「似合ってますか?」
「うん」
正直、すごく似合ってる。
しかもキクナのチョイスしたスカートはピンク色で、これがよくある白と黒の組み合わせより甘ロリな感じを強く出してるのだ。
こんな姿から、あざとくも可愛いにきまってるポーズ。
反則である。
「もしかして、挑発してからかう目的で着てきた?」
「うーん、そういうわけではないですけど」
キクナはいうも、目と口が肯定してるようにしかみえない。
これで性別は男なのだ。
悪質にも程がある。
「勘弁して。いや、もう、ほんと」
アズキがいうと、察したキクナは真面目な態度に切り替えて、
「どうしましたか?」
「ちょっと、ある生徒の行動に悩んでて」
ここでアズキはふと思い至り、
「そういえば、キクナって学年主任よね? ちょっと助け借りてもいい?」
と、手持ちの資料から写真付きの生徒名簿をキクナにみせる。
「教室に隠しカメラでも設置して、授業中この子を監視してみて欲しいのよ」
アズキは、生徒名簿の中から神宮寺シルコを指していった。
一時限目の授業が始まった。
教室でアズキは机に座る生徒たちの前で、
「このように、九ページからは日本とドイツによるロボトル世界大会という架空の物語が書かれてるのだけど」
と、まずは国語の授業を行う。
「途中、ドイツ代表のメダロットがいきなり巨大化するという、まあ普通は不可能なシーンがあるの。これを見た日本代表の反応はどれという話なのだけど」
アズキは黒板に三択の問題を書いていく。
「一、おいロボトルしろよ。二、デカ過ぎんだろ。三、ヲノレディ〇イド! じゃあこの問題を」
生徒たちに顔を向けた時だった。
アズキは見てしまったのだ。神宮寺シルコさんが、机から少し引いた椅子に片足座りをする姿を。
しかも彼女はミニスカート。
アズキの視界に神宮寺さんの下着が否応なしに飛び込んだ。
「え、えっと」
アズキは必死に首をそらす。
数日教師として顔をあわせた印象として、やはり彼女は自分の可愛らしさを自覚したメスガキだった。
髪は今日もワンサイドアップのセミロング。他の生徒と比べて明らかに色っぽく華やかさがあり、性癖上アズキにとって存在自体が目に毒で危険な子である。
アズキはなんとか呼吸を整え、
「じゃあ、赤城くん」
と、教壇側のドアから近くに座る男子生徒を指定。
「はい」
眼鏡をかけ知的な印象を覚えるその男子は立ち上がり、
「二番です」
「正解」
アズキはいった。
ちらっと神宮寺さんに横目を向けると、彼女はすでに片足座りをやめ普通に授業を受けていたがアズキの視線に気づくと、
「にやっ」
って挑発的な笑みを返す。
間違いなく、神宮寺さんはわざとアズキに見せていたのだ。
二時限目の授業は算数。
「今日は小テストを行うけどいい?」
「えーっ」
アズキの宣言に、クラス中の生徒からブーイングが入る。
「うん。嫌なのはすごく分かる。私だって生徒の立場なら同じ反応してたから」
アズキはいってから、
「算数ってね、暗記すればいい授業と違って今まで習った積み重ねが大事なのよ。だからみんながどれだけ覚えてるのかを確認させてほしい。という話」
最前列の生徒に用紙を配ると、生徒たちはそれぞれ後列に回していく。
アズキはいった。
「今日のテストは間違えても成績に影響しないから安心して。制限時間は二〇分。スタッグ、タイマーをお願い」
『わかりました』
スタッグはメダロッチ内のアプリを起動し、言われた時間にタイマーをセット。
「それじゃあ始めて」
テスト開始。生徒たちは一斉に用紙に向き合いだす。
中には、まだ担任を舐めてるのか単に不真面目なのか問題を解く気のない生徒もいる。
けど、アズキが教室内を歩いて生徒の様子を近くで確認し、
「ヒントいる?」
不真面目な生徒に話しかけると、大抵の子は慌ててテストを受けはじめてくれた。最終的にテストに手をつけない生徒は三人ほど。
初日に教師の威厳を全損したのを考えると、想定以上に上手くいっている。
クワトロさんや前の授業で指名した眼鏡の赤城くんも順調に問題を解いてる様子だし、パーフェクトロクショウの男子も苦戦しながら頑張ってくれてる。
ただ、
「先生」
ここで神宮寺さんが小さく挙手。
(うっ)
嫌な予感しながら、アズキが彼女の下に向かうと、
「どうしたの?」
「ごめんなさい、この問題が分からないんですけど。ヒントもらってもいいですか?」
って神宮寺さんは言いながら、自らのスカートをめくりだす。
アズキはすぐ首をそらして、
「えっと、この公式は」
なんとかヒントを伝えてからすぐに退却。
しかし、こんな至近距離からエッチな挑発をされたせいで、アズキの心臓は激しく高鳴り次第に過呼吸まで起こしてしまう。
仕方なくアズキは教卓に椅子を置いて、タイマーが鳴るまで体を休めた。
彼女の挑発は今日に始まったことではない。
教師として潜入して二日目にはもう、彼女はアズキに下着を見せ続けていた。
当然ガン見するわけにもいかず、そうでなくてもアズキの反応が相手にバレてる以上いつ脅迫されるかという恐怖もある。
結果、こうして溜まった欲求不満の矛先はスタッグに向いて、早朝の「スタッグをSLR型にして水色の縞々を思う存分拝みたい」に繋がったのだ。
三時限目、四時限目の授業でも神宮寺さんの挑発は続いた。