メダロットHERMIT   作:CODE:K

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16-1 愛は果てしなきバイオレンス1

 

「スタッグ?」

『駄目です』

 

 今日も紅下(コシタ)アズキが話を投げかけたところ、腕時計型デバイス『メダロッチ』から拒絶の返事が鳴った。

 

「だってこれ、果たし状だよね? 私、悪い事なんて何もやってないよね?」

『だからって無視するわけにもいきません』

 

 突然だけど。

 ある日アズキはいつものように出勤して職員用ロッカーを開けたところ、手紙が一枚入ってるのを見つけた。

 

 手紙には、

 

『今日の放課後、校舎裏で待ってます。ひとりで来てください』

 

 とだけ書かれており、差出人は不明。

 もちろん思い当たる節もないので、現在どうしようかとあたふたしていたのだ。

 

「どうしたのですか?」

 

 ここで、アズキは後ろから声をかけられた。

 ただし普段のパターンと違って、キクナの声ではない。

 

 振り返ると、立っていたのは髪をヘアクリップで留めたアップヘアの優しそうな女性教師。

 教育実習生で、現在アズキのクラスで副担任をしている鬼殺トウコ先生だった。

 

「あ、トウコ先生」

 

 アズキは早速手紙を見せて、

 

「さっき、ロッカーに入ってたんだけど」

 

 と、手紙を手渡す。

 トウコ先生は読むと、

 

「これってもしかして」

「うん」

「ラブレターじゃないですか?」

「そう、って、え?」

 

 アズキは目を丸くして、恥ずかしがるだけの思考も追いつかないまま、

 

「どう見ても果たし状じゃないの?」

「それだと、もっと殺伐とした書き方になるのではないでしょうか? それに先生、誰かに果たし状出される心当たりでも?」

 

 ううん、とアズキは首を振ると、

 

「でしたら、誰かがアズキちゃんに好意を持ってロッカーに入れたのかもしれませんよ?」

「待って。それこそまさに果たし状以上に心当たりが無いという話で」

 

 ここでやっと、トウコ先生の解釈が頭で理解してきてアズキは羞恥で頭が一杯になる。

 

「他の教師で親しい人とかいないのですか?」

『残念ですけど、現在深い交流があるのはキクナさんとトウコさんだけです』

 

 喋れなくなったアズキのかわりにスタッグが返事し、

 

『それに教師がこんな甘酸っぱいラブレターを送るとも思いませんけど。字も手書きで、小学生のものと思われますし』

「そうですか」

 

 トウコ先生は改めて文字を読んで確かにと納得。

 

「となると、残念ですけど先生が生徒と、それも小学生と交際するわけにはいきませんから断らないといけませんね」

「だから待って、どうしてラブレター前提で話が進むの?」

 

 さすがに今度はアズキが反応。

 トウコ先生は、

 

「だってアズキちゃん、先生って感じがしなくて、少し頼りなくて護ってあげなくなる感じの女の子で、男子受け良さそうじゃないですか」

「へ? 男子」

 

 言われてアズキは「あ」となる。

 今更だけど、アズキはレズでロリコンである。なので完全にラブレターだとしたら相手は女子小学生を想定していたのだ。

 

 そっか。普通告白するのは異性からという話だよね?

 不思議な事に、女の子からの告白という線が消えたと分かって、アズキはちょっとだけ冷静になった。

 

「あ、そうなのです」

 

 トウコ先生は両手をぱんと叩いて、

 

「こういう時こそ協力体制なのです。クワトロちゃんを頼ってみるのはどうでしょうか? なのです」

「クワトロさんを?」

「筆癖から誰の字なのか分かるかもしれないのです。それに分からなくても相手が同級生なら放課後までに相手の正体を探すのも手伝ってくれるかもしれません」

「たしかに」

 

 クワトロさんはモッチーズでも一番曲者で警戒は怠れないけど、一応協力的な子だ。

 特に曲者だからこそ何か普通の小学生では期待できないレベルまで何か分かるかもしれない。

 

「なら、お昼休み辺りにでも接触してみるのです」

 

 トウコ先生の言葉にアズキはうなずいた。

 

 

 

「これ、神宮寺さんの字ですね」

 

 で、そのお昼休み。

 早速クワトロさんと接触して手紙を見せたところ、クワトロさんは言い切った。

 

「神宮寺さんの?」

 

 アズキはきょとんとして、

 

「って事は、放課後モッチーズとして何かする気?」

「いえ、私は何も聞いてませんから今回は神宮寺さん単独の犯行です」

 

 さらっと犯行と言い切ったクワトロさん。

 

「ですから、何をする気なのかは私も分かりません。ごめんなさい」

 

 クワトロさんはすまなそうに頭を下げ、

 

「でも、わざわざ先生のロッカーにお手紙なんて、何をする気なのでしょうか。確かに、いつも突拍子の無い行動をする子ではありますけど」

 

 と、今回は彼女も考え込む。

 

「とりあえず対策を考える必要はあるよね」

 

 アズキは言った。

 クワトロさんはうなずいて、

 

「そうですね。彼女の中ではセーフでも世間的には余裕でアウトな事もありますから」

「高校襲撃とかね」

「あの時はごめんなさい」

 

 クワトロさんがぺこりと頭を下げる。

 

「高校襲撃?」

 

 ここで何も知らなかったトウコ先生が反応。

 

「あ、えっと」

 

 ここで実は神宮寺さんはロボロボ団でとか言えるはずもなく、アズキが返事に困ってるとクワトロさんが説明してくれた。

 アズキが高校の定期試験で教師として一週間ほど学校を休む日があり、アズキの正体を知ってたモッチーズが応援しに高校に無断侵入したと。

 

 ロボロボ団の活動とか一切省きつつ嘘ではない言葉にトウコ先生は信じて、

 

「え、そんな事があったのですか?」

 

 と驚く。

 

「は、はは」

 

 アズキが苦笑いしかできずにいると、先生は「でも」と言って、

 

「生徒にとても慕われてるのですね、アズキちゃんって」

「まあ、ありがたい事に」

 

 と、アズキはクワトロさんに視線を向けて、

 

「クラスの中心のモッチーズがサポートしてくれたから、何とか受け入れてもらってます」

「私も三人のおかげでクラスに溶け込ませてもらえました」

 

 トウコ先生は言ってから、アズキと一緒に頭を下げて、

 

「ありがとうございます」

「そ、そんな。私たちは神宮寺さんを中心に好き勝手にやってるだけですから」

 

 ここで感謝されるとは思ってなかったようで、今回のクワトロさんは本当に慌てふためいてる様子だった。

 

「とりあえず、対策はどうしましょうか?」

 

 話を逸らすようにクワトロさんが言う。

 トウコ先生は、

 

「改めて、これが普通にラブレターの可能性はないのですか?」

「そ、その可能性は一切ありません!」

 

 珍しく、本気で必死に否定するクワトロさん。

 で、大声をあげてしまった事にあっと気づいて、

 

「ごめんなさい」

 

 と謝る。

 

「改めて、仮にそうだとしても。普通、の可能性は低いですね。仮にラブレターでも何かろくでもない事をした上で、になりそうですから対策は必要です」

 

 クワトロさんが改めて言うと、

 

「そうですか」

 

 と、トウコ先生。

 

「とりあえず手紙の内容から名目上はアズキちゃんひとりで向かう必要がありますよね? 現状それを私とクワトロちゃんが隠れて見守るは大前提でしょうけど」

「そうですね。その上で紅下先生に送信機を持ってもらいましょう」

「メダロッチにアプリを入れる形ですか?」

「いいえ、メダロッチだとバレる可能性がありますからモッチーズが所有している専用の送信機を使います」

 

 さらっと、モッチーズが変な物を持っていると発覚した瞬間だった。

 

「色々言いたい事はありますけど、とりあえず分かりました」

 

 トウコ先生も、指摘や突っ込みは後回しの様子。

 

「あ、そうだ」

 

 ここでアズキはふと思い出し、

 

「赤城くんには連絡入れておく? 協力してもらえそうなら助かるけど」

「やめておきましょう。もし神宮寺さんの協力者だった可能性を考えて」

「あ、そっか」

 

 今回は偶然クワトロさんが味方だっただけで、赤城くんも今回の神宮寺さんに関わってないとは限らないのだ。

 トウコ先生が、

 

「それでは送信機は採用の方向で、その上でパターンをいくつか考えてこの場合はどう行動するか考えてみましょうですよ」

「分かりました」

 

 クワトロさんがうなずいた。

 

 

 

 で、放課後。

 クワトロさんから受け取った送信機を胸ポケットに隠し、校舎裏に向かうと本当に神宮寺さんが待っていた。

 

「神宮寺さん、お待たせ」

 

 声をかけるアズキ。神宮寺さんは慌てて振り向いて、

 

「あ、先生」

 

 一瞬ぱっと笑顔になるが、いつもは抱き着いてくるのに今日はしがみつく様子なく「あれ?」って表情に変わり、

 

「先生、手紙出したの私だって教えましたっけ?」

 

 あ、そうだった。

 アズキはクワトロさんから教えてもらったので、本来なら相手が神宮寺さんだと知らないのが普通なのだった。

 

「え、あ、えっと」

 

 アズキは一度慌てふためいてから、

 

「ま、まあ色々あって気づいちゃった」

「そうですか」

 

 淑やかな笑顔だった。普段と違って可愛いというより楚々可憐な印象を覚えたが、彼女らしくない。

 

「どうしたの、こんなところに呼び出して」

 

 アズキが言うと、

 

「あの先生、誰にも言ってませんよね?」

「え?」

「クーちゃんとかフクとか、私が今日、ここに先生を呼び出したって」

 

 ごめん話しました。とは言えず、アズキは一拍置いて頑張って、

 

「う、ううん。言ってない」

 

 なんとか嘘をついた。

 

「よかった」

 

 しかも、今日の神宮寺さんには嘘が通じた様子。やっぱり、いつもと様子がおかしい。

 どうしたんだろう。

 

「ねえ神宮寺さん、何かあったの?」

「え?」

「あ、えっと、何か様子がおかしく見えて」

 

 アズキが言うと、やはり神宮寺さんは似合わない作り笑いを浮かべて、

 

「そうですか?」

 

 なんて言う。で、そのまま神宮寺さんは言うのだ。

 

「それよりも本題に入りますね。紅下先生、私とロボトルしてください」

 

 って。

 





サブタイトルはアニメ「宇宙の騎士テッカマンブレード」の第一OP「REASON」内の歌詞「愛は 果てしなきバイオレンス」より
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