メダロットHERMIT   作:CODE:K

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16-2 愛は果てしなきバイオレンス2

 

「ロボトル?」

 

 予想していたどの展開とも違う言葉に、アズキは聞き返す。

 

「はい。私のメダロットはこれです」

 

 といって神宮寺さんが転送したのは、いつものマゼンタキャット。

 いや、左腕パーツがオーロラクイーンの物に変わっている。

 

「ずっと、伝えたかった言葉があったんです」

 

 神宮寺さんは言った。

 

「本当は、この前の演奏ロボトルのときにフクに勝って、先生にも勝って、三連勝の景品を貰いながら言いたかったのですけど、フクに負けちゃったから」

 

 言いながら神宮寺さんは顔を逸らす。

 彼女はいま、何を考えてるのだろうか。

 

「それでタイミングを逃しちゃって。だから勝敗は関係ありません。ロボトルを介して、先生に伝えるきっかけと勇気をもらえたらって」

「えっと、よく分からないけど」

「あ、でも手加減はしません。だから普段の私もシラタマの私も全てを総動員して、先生とスタッグちゃん相手に勝つつもりです」

 

 神宮寺さんの真意が分からない。

 どうしてロボトルを介して、きっかけを作って、勇気をもらって、アズキに何を伝えようとしているのか。

 

 けど、本気でスタッグに勝とうとしてる意気込みは伝わった。

 多分いまから戦うマゼンタキャットは、いままで何度か戦った彼女の中で一番強いのだろうという予感もある。

 

「分かった」

 

 アズキはうなずき、スタッグを転送する。

 

「スタッグ、行ける?」

「大丈夫です。手加減はしません。本気でいきます」

 

 彼女の覚悟はメダロッチ越しでもスタッグに伝わってたらしい。

 スタッグもまた、余裕も慢心もなく本気の本気でマゼンタキャットに対峙する。

 

 なぜだか、今回はウォッカが現れなかった。勝敗は関係ないと言ったから公認ロボトルとは判断されなかったのか、それとも別に理由があるのか。

 神宮寺さんが言った。

 

「それじゃあ、今回はレフェリーなしみたいですから、私と先生が同時にロボトルファイトと言ったらロボトル開始でいいですか?」

「分かった」

 

 アズキはうなずく。

 で、

 

「でしたら早速。せーの」

 

 神宮寺さんの言葉に合わせてアズキは一緒に、

 

「ロボトルファイト!」

 

 と言い、ロボトル開始。

 

 スタッグはまずチャージ行動に入り、脚からフォースを放出する。

 一方、マゼンタキャットは早速こちらに飛び掛かり右腕を突き出そうとしてくるが、スタッグは残像を置いて横に跳ぶ。

 

「マゼンタちゃん、フリーズ!」

 

 が、ここでスタッグの避けた方角にマゼンタキャットは左腕を突き出し、粉雪を飛ばしてきた。

 

「あっ」

 

 スタッグは反応したがもう遅い。なんとか両腕を盾にガードを行うも、フリーズショットを受けた事で四肢が氷漬けになってしまう。

 

「さっきの右腕はフェイントですか」

 

 スタッグが言うと、神宮寺さんは「うん」と肯定し、マゼンタキャットが、

 

「さすがにあんたと何度もロボトルしてるもの。残像込みでも少しくらいあんたの動きは把握できるようになってきたわ」

 

 で、マゼンタキャットはすぐに追撃なんてせず、スタッグが動けないのを良い事に頭部パーツを使用。

 モビルブーストによって、まず自分の眼を赤く光らせて猫の目を思わせる動体視力を付与して回避力を上げてから、

 

「マゼンタちゃん、ラ○トニングプラズマ!」

「またそれ? ああもう」

 

 サンダーと違って防御もできないスタッグ目掛けて、両腕でめちゃくちゃに殴りつけてきた。

 けど、おかげでスタッグは氷漬けから逃れて動けるようになり、

 

「スタッグ、大丈夫?」

「はい。まだまだ平気です」

 

 と、アズキに返事したスタッグは残像のフェイントを入れながらマゼンタキャットに接近し、右腕のソードで斬りつける。

 

「マゼンタちゃん!」

「分かってるわ」

 

 しかし、マゼンタキャットは後ろにステップを入れて回避してしまう。完全にスタッグの動きが読まれてるのを感じた。

 さらに相手は再び左腕を構えて粉雪、フリーズショットを発射。

 

「わっ」

 

 とスタッグが驚く間に、今度は全身を氷漬けにされてしまう。

 

「スタッグ!」

 

 アズキは叫ぶも、今回は頭部も氷漬けになってるせいでスタッグからの反応はない。

 マゼンタキャットは右腕でスタッグを閉じ込めてる氷に触れると、そのまま電流を放出。氷が弾けると同時にスタッグの全身に電流が流れたようで、

 

「ああああああっ」

 

 スタッグの悲鳴が響いた。

 

(強い)

 

 アズキは今回のマゼンタキャットを相手に本気で思う。

 スタッグ相手に戦い慣れてきたのもあるだろうけど、何が彼女をここまで強くしているのか。

 

「あっ、っ、このっ」

 

 スタッグは敵の懐に踏み込んで右腕のソードで横薙ぎ。

 ついにスタッグの攻撃がマゼンタキャットに入るが、

 

「大丈夫よマゼンタちゃん。私たちはもう四発も攻撃を当ててるんだから、優勢は変わらないわ」

 

 神宮寺さんが鼓舞し、応じるようにマゼンタキャットは右腕を突き出す。

 

 電流の射程からも離れるため、スタッグはこの場に残像を残しつつ、後ろに大きく跳んで避けるも、続けてマゼンタキャットは左腕を構える。

 メダロットの視界からは残像もしっかり本物のように映ってるだろうに、相手は正確に本体向けて粉雪を放ってきた。

 

 なんとか、このフリーズショットは気合で避けるも、

 

「これは想像以上に厄介ですね」

 

 スタッグが言った。

 

「至近距離からは格闘攻撃のサンダーの危険があり、フェイントと分かっても避けて距離をとれば射撃攻撃のフリーズショットが飛んでくる」

「うん。純正のマゼンタキャットかオーロラクイーンだったらともかく、格闘と射撃両方持ちの遠近両用がここまで強いなんて」

 

 アズキがうなずくと、

 

「何か策はありますか? アズキ」

「え?」

 

 アズキは驚いた。普段全て自己判断でロボトルを行い勝ってしまうスタッグが、自分に指示を仰ぐなんて。

 

「ごめん」

 

 しかし、現在のアズキは具体的な対策なんて浮かんでない。

 正直に謝ると、

 

「分かりました」

 

 と言ってスタッグは、

 

「ステルス起動」

 

 頭部パーツを使用して姿を消す。

 神宮寺さんは、

 

「警戒して、マゼンタちゃん」

「分かってるわ」

 

 言いながら辺りに気を配るマゼンタキャット。数秒後、スタッグはそんな彼女の真後ろから首を刎ねようとソードを振るうが、

 

「そこ!」

「分かってるわ!」

 

 マゼンタキャットは前方に跳んで回避。

 

「まだです」

 

 しかし、スタッグはさらに左手の甲を回転させるとヨーヨーとしてマゼンタキャットの背中に投げつけ、

 

「にゃあああっ!」

 

 今度は彼女が悲鳴をあげた。

 マゼンタキャットは一度地面に倒れ、転がりながら起き上がり、

 

「やっぱり、残像を読めるようになったからって上手くいかないわね」

 

 対して神宮寺さんは、

 

「当たり前よ。スタッグちゃんは残像なしでも強いメダロットだもの。私たち、ずっとずっと見てきたでしょ」

「そうね」

 

 スタッグはさらに追い打ちをと、マゼンタキャットに右腕のソードを突き出す。

 が、相手は赤い眼でスタッグを捉えると、瞬時に体を反らして回避。

 

 モビルブーストが効いて、スタッグの攻撃が当たらない。

 スタッグは言った。

 

「強くなりましたね、マゼンタさん」

「負けっぱなしは趣味じゃないのよ」

 

 マゼンタキャットは言いながら再び右腕で何度も殴りつけ、その全てをスタッグは避ける。しかし距離が開いたら途端に粉雪が発射され、

 

「っ」

 

 スタッグは回避しきれずカスリダメージを受ける。

 肘に氷が付着したが、今回は氷漬けにはならない。

 

 逆にスタッグも右腕のソードで反撃するが、モビルブーストによるマゼンタキャットの赤い眼が全てを捉え、回避してくる。たまに当たってもカスリ程度。

 互いに有効打の入らないロボトルが続いていた。

 

 そんな一挙一動をアズキはしっかり目で捉え、頭の中で分析する。

 スタッグがアズキを頼ったのだ。ならばこちらも、パートナーとして応えなければならない。

 

 で、

 

(あ、しまった)

 

 アズキは気づいてしまった。

 

「スタッグ、もう二度とサンダーかフリーズ状態になっちゃ駄目。キックがくる」

「あっ」

 

 と、スタッグが気づくと同時に、

 

「気づかれたわね」

 

 マゼンタキャットが呟いた。

 彼女たちにはメダフォースではないがエレクトリック・サンダー・キックという必殺技がある。

 

 一見互いにちまちま小さなダメージを与えあってるロボトルに見えていた今回。

 しかし、実はすでにスタッグのダメージは彼女の必殺キックで機能停止するボーダーラインに入っていたのだ。

 

 互角に見えた勝負は、実は完全なる相手優勢。

 どうにかしてキックを封じるか、逆転の一手を考えなければこちら側に勝機はない。

 

 アズキたちが気づいた途端、ロボトルは防戦一方に変わった。

 

 スタッグの動きが回避重視にシフトしたので、サンダーやフリーズショットがヒットする事はない。

 けど、スタッグも踏み込んで攻撃する事がなくなったので、マゼンタキャット側もこちらの攻撃を回避しやすくなってしまった。

 

(どうすれば)

 

 いまのマゼンタキャットは闇雲に攻撃すれば遠近両用の停止症状を必ずぶつけてくる。

 

 アズキは何か策がないか考える。

 けど、浮かんでくるものは何もない。

 

「アズキ」

 

 ここでスタッグが言った。

 

「危険を承知で試してみたい事があります。よろしいですか?」

 

 何か作戦が浮かんだのだろうか。

 どちらにしても、いまのアズキには何も策がない分、スタッグに賭けるしかない。いつもの事だけど。

 

 アズキは言った。

 

「うん、お願い」

「分かりました」

 

 スタッグはうなずくと、相手のキックに気づく前のように、敵に踏み込んで右腕のソードで斬りかかる。

 

「マゼンタちゃん」

「分かってるわ」

 

 神宮寺さんの指示を受け、マゼンタキャットはソードを赤い眼で捉えて回避し、やはり右腕を突き出す。

 スタッグは後ろに跳んで回避。しかし距離を取った事でマゼンタキャットは左腕を構える。ここまでは前と同じ展開だ。

 

 が、ここでスタッグは再び接近。

 突然、至近距離に入られた事でマゼンタキャットはフリーズショットを撃つタイミングを逃し、ここをスタッグは左腕の甲を回転させて殴りつけた。

 

「にゃっ」

 

 勢いよく殴られた事で、マゼンタキャットは地面に倒れる。

 で、神宮寺さんのメダロッチから、

 

『右腕パーツ機能停止』

 

 通知が鳴った。

 確かに危ない賭けではあった。再び接近したところを、相手が改めてサンダーで攻撃してきたら、きっとスタッグはアウトだっただろう。

 

 で、一度流れに乗ったスタッグの攻撃は止まらない。

 

「ステルス起動」

 

 スタッグは再び姿を隠すと、数秒後マゼンタキャットの背後から頭部を目掛けて攻撃を仕掛ける。

 が、マゼンタキャットは一瞬の気配を察知して後ろに跳んで粉雪を飛ばした。

 

 しかしスタッグの行動は、いつものソードではなく、わざわざステルスまで使って、途中で拾ったのだろう砂利の投擲。

 マゼンタキャットのフリーズショットは、スタッグのかわりに投げつけられた砂利を氷漬けにし、その間にスタッグはもう一度接近し直す。

 

 改めて、スタッグのソードはマゼンタキャットの喉に突き付けられて、

 

「にゃ、かはっ」

 

 マゼンタキャットから血を吐くような呻き声。直後、胴体からメダルが弾き出されて、

 

『頭部パーツ、機能停止』

 

 と、神宮寺さんのメダロッチから、彼女の敗北を告げる通知が鳴ったのだった。

 

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