メダロットHERMIT   作:CODE:K

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17-4 DARK NIGHT4

 

「木之本さん、どうしてここに」

 

 アズキが言うと、木之本さんはこちらに顔を向けて、

 

「あなたは確か、博物館にいた」

「スタッグのマスターの、紅下アズキです」

「暴走メダロットの出現を確認したから急行した。それだけよ」

 

 木之本さんは言って、

 

「ところで、あなたの暫定暴走メダロットは?」

「スタッグのこと?」

「そうよ」

 

 アズキの問いに肯定する木之本さん。

 

「目の前のメダロットがスタッグさんです」

 

 キクナが会話に入って言った。

 木之本さんは、

 

「あなたは?」

「TMZ所属の通杭キクナです」

「そう」

 

 と、木之本さんはすぐキクナから視線を外し、

 

「ヴァリス」

 

 指示を出す。直後、ヴァリスはスタッグに向けて左腕から銃弾を放つ。

 しかしスタッグは避けながら接近し、右腕のソードで攻撃。ヴァリスは脚部でガードし、この様子を見て木之本さんは、

 

「確かに、この動きはあのメダロット。暫定暴走メダロットがついに本当に暴走したか」

「というより、暴走プログラムを仕込まれたみたいで」

 

 アズキは言うけど、木之本さんは、

 

「外的要因による暴走はよくある事よ。あの時のオーロラクイーンもそうだったでしょう?」

「それでも、メダルを破壊するんですか?」

「一度暴走したメダルは二度と戻らない」

「オーロラクイーンのメダルはちゃんと自我を取り戻しました。いまも元のマスターの下で活動しています」

 

 つまりは、

 

「だからスタッグのメダルを破壊するなと?」

 

 木之本さんは言った。その通りである。

 けど、彼女は当然、

 

「断るわ」

 

 と言うのだ。

 

「特に今回の暴走メダロットは人間を優先的に狙ってる。躊躇してたらあなたたちが殺されるわ」

「うっ」

 

 その通りだ。現在クワトロさんはメダロットではなくアズキとキクナを優先的に攻撃しろと指示している。

 

 何より、すでにアズキ自身、腹に傷を受けてるのだ。

 こんな場面でメダルを破壊しないように、なんて甘えた事を言ってられないのは間違いない。

 

 間違い、ないのだ。

 アズキだけじゃない。躊躇ってたらキクナも犠牲になる可能性がある。でも。

 

「また、あなたですか」

 

 クワトロさんが言った。ここで木之本さんは彼女に気づいて、

 

「あなたは確か、バグスティンクの」

「こんな事になるのでしたら、事故を装ってこっそり始末するべきでした」

 

 直後、物陰から無数の赤い光がこちらに向けられる。

 

「邪魔をした以上、今回はきっちり排除させていただきます」

 

 同時に、周囲から複数のメダロットが姿を現したのだ。

 アズキの視界に映る限り、相手は獅子座モチーフのLEO型レオ、蟹座モチーフのCNC型キャンサー。数はそれぞれ五体ずつ。

 

 どれも目が赤く光って暴走している。

 

「え、こんなに?」

 

 アズキが反応する中、

 

「レオ、キャンサー。総攻撃開始」

 

 クワトロさんが指示すると、レオからミサイルが、キャンサーからナパームがそれぞれ人間を狙って撒かれ始める。

 

「ちっ」

 

 木之本さんは舌打ち。

 同時にヴァリスは銃弾でミサイルやナパームを次々と撃ち落としていき、

 

「ふたりとも、逃げなさい」

 

 木之本さんは言った。

 

「さすがに、この数を相手にあなたたちを庇いながら戦い続ける事は不可能よ」

「嫌!」

 

 アズキはつい即答して、

 

「ここであなたに任せたら、スタッグが殺される」

「そのスタッグにあなたが殺されてもいいの?」

 

 木之本さんの返事に、アズキは何も言えない。

 キクナが、

 

「アズキさん。逃げましょうですよ」

「キクナ、でも」

「これだけの数のメダロットとなると、彼女のメダロットと僕のメダメイドでもアズキさんを庇いきれません。現に」

 

 と、話してたまさにその時、ヴァリスが撃ち落としきれなかったミサイルがアズキに向かってきて、メダメイドが冷却を終えた左腕で再びアズキを庇う。

 しかし光学武器と違って攻撃自体を無効化はできず、たとえ僅かでもダメージを受けているのが分かった。

 

「スタッグさんの攻撃もガードしていただけあってメダメイドは消耗しています。左腕のガードパーツが壊れる前に逃げないと僕たちの命がありません」

 

 なお、そのスタッグはヴァリスと交戦中だ。

 スタッグはアズキの下に向かおうとしてるが、それをヴァリスがブロックしているように映る。

 

 さらにバグシールドがヴァリスにビームを撃って、メダメイドが駆け寄って庇うも、

 

「私たちに構うな。早く行って」

 

 と、木之本さんは言う。

 ユディトが、

 

「残念ですが、いま私たちがいても足手纏いです。いま我々に出来る事は彼女に全てを任せて安全圏まで逃げる事」

「でも」

「そして、諸々の犯人がクワトロであった事をTMZに報告する事です」

「スタッグを見捨てて、でも?」

 

 アズキは言った。しかしユディトは、

 

「ええ」

 

 と残酷にも言うのだった。

 再びミサイルとナパームが飛んできた。メダメイドは左腕で庇うも、

 

「くっ」

 

 と、苦しそう。見ると、すでに盆はボロボロでいつ破壊されてもおかしくない状態にみえた。

 こんな様子を見せられたら、

 

「分かった」

 

 アズキもこう言うしかない。

 

「させません!」

 

 が、ここでクワトロさんが指示し、レオとキャンサーが一斉にアズキたちに向かってくる。

 ヴァリスが銃撃で押し返そうとするも、何体かはアズキたちの下に辿り着いてしまい、至近距離からミサイルとナパームを撃とうとした。

 

 が、接近を許した暴走メダロットをユディトが杖で殴り、電流を流して動けなくしながら、

 

「ここは私も残るしかなさそうですねぇ。メダメイド、おふたりを頼みましたよ」

 

 ユディトは言った。

 

「な、何を言ってるのですかユディト!」

 

 メダメイドは反論するも、

 

「大丈夫ですよ。私は裏切りの代名詞ユダにちなんだ名を持つメダロットですからね。後で飄々(ひょうひょう)とした顔で皆さんと合りゅ」

 

 ここでヴァリスを振り払ったスタッグが、ユディトの腹にソードを突き刺す。

 

「かはっ」

 

 さらにバグシールドの撃ったビームをユディトは左腕で受け止め、

 

「くっ」

 

 苦しそうに呻くユディト。

 

「あっ」

 

 メダメイドは、ユディトを庇えなかった後悔で体を震わせる。

 キクナは同じくらい辛いのを抑えた声で、

 

「皆さん、行きましょうです」

 

 と言って、一足先に走り出した。

 アズキも頷いて走り出す。で、最後にふたりを庇う形で左腕の盆を構えながらメダメイドも一緒にこの場から逃げる。

 

 途中、アズキはユディトのこんな言葉が耳に届いた、気がした。

 

「ふふっ。途中退場なんてせず、ずっとマスターと戦い抜いて生き残る。そんな信頼を裏切る最期というのも私らしいのかもしれませんねぇ」

 

 

 

 路地裏を抜けたアズキたちは、ちょうど停車していたバスに乗り込んだ。

 バスはアズキたちの目的地であるTMZの研究施設とは別方向に進んでいくが、いまはクワトロさんから逃げるのが最優先なので問題ない。

 

 移動中、キクナはメダロッチを確認して、

 

「やっぱり、路地裏からは妨害電波が発生してるようですね」

「つまりユディトを回収できないという事ですか?」

 

 と確認するメダメイドにキクナは、

 

「それだけでなく、僕のメダロッチは事前にTMZと通信を繋いで会話を送信してたはずだったのですけど、全部届いて無かった事になります」

「それよりもユディトです。いまどうなってるのか分からないのですか?」

 

 ユディトの事で頭がいっぱいになってる様子のメダメイド。

 しかしキクナは、

 

「分かりません」

 

 と小さく頷いて肯定した。

 妨害電波が出てる以上、ユディトを回収する事もできなければ、メダロッチ越しに会話する事も、何もできないのだ。

 

「ところでアズキさん、傷のほうは大丈夫ですか?」

「うん。何とか血は止まったから、研究所の帰りに病院に寄るつもり」

 

 アズキが言うと、キクナは、

 

「治りが早いですね」

「うん。そういう体質みたいで」

 

 このままアズキたちはバスで二駅ほど移動。

 降りた先で改めて救援要請を出して、TMZの車に乗って研究施設まで無事到着する事ができた。

 

 すでに要件は伝わってるせいか、中に入るとすぐ指令室まで案内され、

 

『お疲れ様です。アズキさん、キクナ』

 

 と、モニター越しにブルー博士と面会できた。

 

「早速ですけど、現在アズキさんは負傷しています」

 

 キクナは挨拶もなしにすぐ言った。

 

「後ほど詳しく説明しますけど、敵と判明したクワトロさんによってスタッグさんが暴走してしまい、腹部を斬られました」

『傷口を見せていただけますか?』

 

 ブルー博士は言った。

 アズキは頷き、衣服をめくって傷口を見せる。

 

 メダメイドが「わっ」と驚いて、

 

「かすり傷と聞いてはいましたけど、結構深いじゃないですか」

「ですけど、確かに血は止まってますね。普通ならまだ出血が続いてもおかしくない傷なのに」

 

 と、キクナも初めて傷口をみて顔を青くする。

 アズキにとってはかすり傷のつもりだったけど、思ったより重傷だったらしい。

 

 ブルー博士は、

 

『ありがとうございます。すぐ施設内で出来る限りの処置を手配します』

「え、施設にそんな設備あったのですか?」

 

 アズキが驚くと、ブルー博士はすまなそうに、

 

『応急手当の程度ですけど』

 

 と言った。

 

「それで本題に入りますですよ」

 

 キクナは今日起きた出来事の全てをブルー博士に報告した。

 

 

 その後、アズキは研究施設で傷の手当てを受けたのだけど、応急手当と呼ぶには十分過ぎるほどの治療をして貰った。

 この様子だと病院に行く必要はなさそうだ。なんてアズキは判断したが、施設からは念のための受診を勧められてしまう。

 

 とはいえ、今日はもう夜に入る。

 入院とは少し違うとは思うけど、今晩は研究施設に泊まって様子を見る事になってしまった。

 

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