メダロットHERMIT   作:CODE:K

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3-2 Journey through the Zako2

 

「キクナ、いる?」

 

 お昼休み。

 

 アズキはすぐ職員室に飛び込むと、自分の席から胃薬を出して水筒のお茶で飲む。

 この時、キクナは他の教師と会話してたが、アズキに呼ばれるとすぐ合流してくれて、

 

「薬は水で飲まないと駄目ですよ」

「分かってはいるけど」

 

 アズキはいってから、

 

「それで、授業の様子は見てくれた?」

「悪質ですね」

 

 キクナは難しい顔をみせた。

 

「アズキさんを支配下におきたいのか、それとも懲戒処分に追い込みたいのか。どちらにしても野放しにしたら危険だと僕も思います。それに」

「それに?」

「早速、アレが尻尾を出してくれた可能性もありますね」

 

 キクナが推測を口にすると、

 

『ロボロボ団ですか?』

 

 スタッグが反応。

 キクナが頷いたのをみてアズキは、

 

「それって、神宮寺さんがロボロボ団ってこと?」

「という形で早速動いてくれたのなら、一般生徒を相手にするより色々楽なのですけど」

 

 どうやら希望的観測だったらしい。

 キクナのことだから多少の根拠はあるかもしれないけど。とはいえ、

 

「私は勘弁してという話だけど」

 

 まだ数日でも、教え子が黒というのは想定したくない。

 キクナは宥めるように笑って、

 

「大丈夫ですよ。まだ証拠もなにも出てませんから」

 

 最初に生徒をロボロボ団と疑ったのも彼女、いや彼だけど。

 

『そもそも、彼女はどうしてアズキに同性の色仕掛けが通じると知ったのでしょうか』

 

 スタッグがふと疑問をつぶやく。

 キクナはうーんと考え、

 

「僕以外にアズキさんの性癖を知ってそうな人はいますか?」

「そういえば、クワトロさんにはバレたはず」

 

 アズキはいった。

 キクナ「あっ」って反応し、

 

「そういえば初日にロボトルされてましたね。そのときですか?」

「うん」

 

 どうして知ってるの、とは聞かないほうがいいのだろう。

 たぶん話がややこしくなる。

 

「クワトロさんですね。彼女のことも調べておきます」

 

 キクナはいった。

 

「アズキさんは少しでも休んでください。間違いなく午後の授業でもターゲットにされるはずですから」

 

 

 キクナは、同日の放課後には彼女たちの情報を色々持ってきてくれた。

 

「どうやら神宮寺さんに情報を与えたのはクワトロさんで間違いなさそうです」

 

 改めて生徒たちが下校した後の職員室。

 キクナは早速アズキにこう報告した。

 

「彼女は神宮寺さんと親友のような関係らしくて、ここに男子生徒の赤城(アカギ)フクカゼさんを加えた三人トリオはモッチーズといい、学年の中心的存在のようです」

「あのふたりが親友かぁ」

 

 アズキは軽くショックを受ける。

 

 しかも、男子生徒の赤城といえば一時限目で関わった眼鏡をかけた男子のことである。

 クラスの中でも優等生と思ってただけに、彼もあちら側というのは正直きつい。

 

「前年度までの担任を異動に追い込んだのも彼女たちのようです」

「えっ?」

 

 そういえばアズキは、前の担任に関して全く情報を持ってなかったのだ。

 

「生徒の行方不明事件忘れてないですよね?」

 

 キクナはいった。

 

「実は、その生徒とモッチーズは対立関係にあったらしくて、その事から前担任は彼女たちが犯人だと思ったそうで、糾弾して返り討ちにあったそうです」

「具体的には?」

「教師に暴力を振るわせて懲戒ですね。そのまま校長の判断で他所の学校に追放です」

 

 つまり彼女たちに誘導されたという話か。

 

「その後、外から何度か非常勤の教師を呼んで臨時の担任にしてたそうですけど、全員二か月もたず離れていってます」

「もしかして、その原因も」

「彼女たちです」

 

 うっ。

 

『ほんとに悪質で闇が深いですね。こちらの想定してた以上に』

 

 スタッグの言葉に、アズキとキクナは同時にうなずく。

 そういえば、アズキは気づいた。

 

「どうして外から呼んだの? 校内にいる他の先生を頼んだりは」

 

 が、キクナはいった。

 

「拒否したそうです」

「なら、前の学年主任は」

「他の同学年クラスと掛け持ちだったそうです。今回、専属で学年主任を用意する必要があると判断してくれたおかげで僕はこの位置に入れました」

 

 さらに言うと、学校側がお手上げだからこそ自分たちは潜り込めたらしい。

 セレクトやTMZ社と繋がってるのは事実だし、教員免許が明らかに偽装でも学校側は見て見ぬふりするメリットが大きいのだ。

 

 以上の補足をキクナはいってから、

 

「まあ、この部分はアズキさんには今までわざと黙ってたのですけど」

「どうして?」

「ボロが出ると思いましたから。任務で不自然に潜入できたと思い続けてたほうが、アズキさんなら余計な事しないようにと警戒を強めてくれると思って」

 

 さらにスタッグが、

 

『私は事前にすべて聞かされてました』

 

 つまり、アズキ本人よりもメダロットのほうが信用あると。

 否定できない。

 

 ……。駄目だ、悲しいから話を戻そう。

 

「キクナは、三人がロボロボ団だと思う?」

「いえ、逆にシロだと思いました」

 

 え、どうして?

 

「組織の犯行にしては、あまりにやり方が短絡的で過激すぎます。逆に行方不明にロボロボ団が関わってない可能性も浮上しましたですね。今回で」

「前任の推測が正しかったってこと?」

「まだ決めつける段階ではないですけどね。事件もロボロボ団も全部シロの線だって」

 

 いってからキクナは笑顔をつくって、

 

「よくある事ですよ。捜査を進めると途中さらに謎が深まるのは。真実に一歩近づいた証拠です」

「うん」

「まずはモッチーズですね。ロボロボ団の末端よりずっと危険な存在みたいですから、気をつけてくださいですよ」

 

 そんなTMZエージェントたちの息が詰まるような緊迫感は、

 

 

 

「先生! どうして沢山ぱんつ見せたのに食いついてくれないんですかぁっ!」

 

 一時間もしないうちに、粉々に崩れ去った。

 

 キクナと会話の後、エージェントの仕事として校舎内を警備で歩いてたのだけど、受け持ちのクラスがある三階の廊下を歩いてたとき、神宮寺さんと遭遇した。

 警戒のあまり「早く帰りなさい」ともいえず、軽く会釈して逃げようとしたのだけど、神宮寺さんはそんなアズキの服を掴んで、急にそんな事をいったのだ。

 

「え、え?」

 

 アズキが混乱する中、

 

「やっぱりおっぱい。おっぱいが全てを解決するんですか? 胸が無い女の子はそれだけで魅力がないんですか?」

 

 泣きそうなほど必死な神宮寺さん。

 たしかに、言われてみると神宮寺さんは胸部の発育が見当たらない。他のルックスが良過ぎて全然気づかなかった。

 

 って、そうじゃなくて。

 

 アズキはメダロッチからキクナと通信を繋いで、

 

「助けて! 三階の廊下、なんかよく分からない異常事態が発生」

「仲間を呼ぶは駄目ぇぇぇっ!」

 

 さらに神宮寺さんが叫んだ。

 

「先生がお友達作れたなんて想定外。それされたら計画が台無しになっちゃうわ」

 

 友達いなさそうとか。

 なに、さらっと酷いことを言うの?

 

「じゃあどうすればいいの? って、計画ってなに?」

 

 流れに呑まれてアズキまで慌てしまう。

 そこに、

 

「先生を誘導して二対一のロボトルをしかける算段だったんだ。負けたらしばらくオレたちの言うこと聞いてもらうって条件付きで」

 

 って、言いながら背後から赤城くんがやってきた。

 情報通り彼はあっち側だったらしい。

 

「だから無理だと言ったじゃないか。色仕掛けで先生に交渉するなんてさ」

「だってぇ」

 

 神宮寺さんはぷうっと頬を膨らませる。

 え、なに、かわいい。

 

「先生は色仕掛け耐性がざこざこっていうからぁ」

「情報提供はクワトロさん?」

「って、クーちゃんとグルなのバレちゃってるうううっ!」

 

 いや。

 

「バレてるのも正解だけど、校内でそれ知ってるのクワトロさんくらいだから」

 

 あとキクナ。

 というか、まさか色仕掛けに食いついてないと思われてたなんて。こちらは人生アウト間際だと恐怖してたのに。

 

 赤城くんが「はぁっ」て顔で、

 

「ったく。ザコリーダーが一番計画を台無しにしてるじゃないか」

「ざこじゃなーい!」

 

 神宮寺さんが嘆く。

 

「それもこれも、先生が一向に振り向いてくれないからです。あれ、すっごく恥ずかしかったんですから」

 

 まあ、実際やってたことは痴女のそれだものね。

 彼女の名誉のためにも言わないけど。

 

「実際やってたことは痴女のそれだしな」

 

 あ、赤城くんそれ言っちゃうんだ。

 

「うわーん。フクのバカー!」

 

 再び嘆く神宮寺さん。

 

 なんていうか。

 もう、なんというか。

 

「ねえスタッグ、あの子たちのロボトル受けてあげてもいい? なんだか神宮寺さんが哀れにみえてきた」

『奇遇ですね。私も同意見です』

 

 許可がとれたので、アズキはメダロットを転送。

 

「え、いいの?」

 

 予想外の事に驚きつつも嬉しそうな神宮寺さん。

 この子って、本当はすごく素直でいい子なのでは。

 

「ただし、こちらも条件があります」

 

 姿を見せたスタッグはいった。

 窓が開いた。

 

「私たちが勝ったら、少しあなたたちに聞きたい事があります。当然、私たちに何をさせようとしたのかも話していただきますね」

「それだけでいいの?」

 

 きょとんとする神宮寺さんに、

 

「はい」

 

 スタッグが頷くと、逆に彼女は動揺して、

 

「え、え? ほんとに? ほんとに条件それだけでいいの? 私たち二対一で挑んじゃっていいの?」

「ばっ馬鹿! そんな事いったら逆に訂正されるじゃないか」

 

 慌てる赤城くん。

 なんだろう。今度は彼のほうが哀れにみえてきた。

 

「構いませんよ。元々そういう条件のロボトルでしたから」

 

 が、スタッグはこの条件で乗り気な模様。

 逆にアズキは心配になって、

 

「大丈夫なの? スタッグ」

「では訂正というのも大人気ないですから」

 

 すでにクワトロさんという予想外の強敵にあたってるせいだろう。スタッグは大丈夫とは断言しなかった。

 

「ありがとう。だったら遠慮しないわ」

 

 神宮寺さんがメダロッチを構える。

 しかも先に感謝を伝えるなんて、この子やっぱり本当はすごくいい子。

 

「メダロット転送。マゼンタキャット!」

 

 現れたのは初代CAT型。

 先端がプラグの尻尾を生やした猫モチーフの赤いメダロットだった。

 

 両腕の爪も丸ピン三本のプラグだったり随所にコンセントの要素を持つ、旧式ながらとても完成度の高いデザインとなっている。

 スタッグと同じく女型でとても可愛い。

 

 さらに、

 

「メダロット転送。来い、ブルーティス!」

 

 赤城くんが出したのはDOG型。

 

 メダロットの中でもメジャーとされる犬モチーフ「シアンドッグ」と同じシリーズで、同型機の中ではとても珍しい格闘型である。

 左腕に犬の顔、右腕に犬の肉球をつけてるのが特徴。

 

 ふたりがそれぞれメダロットを出した直後、

 

「合意と見てモージュナ(よろしい)かい?」

 

 それは、校舎内だというのに当然とばかりに現れた。

 通信機を持ったBYC型「ツンドル」が、いつの間にか開いてた窓から覗き込んでて、

 

「先ほど『窓が開いた』と文章を挟んでおいたんだ。転送されたスタッグが最初に喋った辺りだよ」

 

 この人は何を言ってるのだろう。

 今日もロボトル協会公認レフェリー、Ms.ウォッカはよくわからない。

 

「というか、ここ三階だったよね?」

 

 アズキはいうも、

 

「ハラショー。その通りだよ」

 

 それがなにか? と言わんばかりのウォッカの態度に、アズキは突っ込む気が失せた。

 

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