「アズキ、チャージ行動から入ります」
「バグシールド、チャージ開始」
前回と同様、お互いに最初はチャージ行動から始まった。
特にスタッグの足元からはフォースの一部が光の粒子として吹き上がり、そのまま今回も相手に接近開始。
途中、ステップを踏んで残像を出しながら、スタッグは右腕のソードでバグシールドを斬りつける。
今回のメダロットは、バグスティンクと違って背中に装甲板を持ってない。だから予想外で特殊なアクションを用いてガードしてくる事はないだろう。
アズキはそう読んでいたのだけど、
「バグシールド、メダチェンジ」
「え!?」
驚くアズキ。
その間に、バグシールドは六足の黄色く頑丈なカメムシを連想させる姿に変形し、跳び上がって回避してきたのだ。
「なら」
と、スタッグは続けて左の甲を回転させ、ヨーヨーとして投げつける。
しかし、バグシールドはその攻撃さえもぴょんと飛び跳ねるように避けてしまった。
(速い!)
アズキは思った。
これが元々戦車メダロットだった機体の動きだろうか。
バグスティンクのときには戦車脚部の特性ゆえに分からなかった、クワトロさんのメダロットが持つ高い回避能力に驚愕してると、
「バグシールド。指定した座標にドライブB発射!」
なんと、バグシールドは右側の装甲からナパームを発射してきたのだ。
(ビームじゃない!?)
ナパームにはビームほどの威力がない代わりに絶対ヒットという特性を持っている。
しかも、クワトロさんが直々に座標を指定したおかげで、残像なんて無視して本物のスタッグに向かって爆弾が向かってきた。
「くっ」
気合で避けるスタッグ。しかし爆弾はその場で方向転換し、動いた先のスタッグに当たって爆発した。
「きゃあああっ!」
爆炎の中で悲鳴をあげるスタッグ。
メダロッチで確認したところ、ダメージはそこそこ程度。だけど、ナパームは基本的に絶対に当ててくる攻撃だから、これを何度も受け続けるのは不味い。
何より、スタッグはメダルが変化した今でも攻撃を避けてフォースを高めるタイプのメダルだ。このままではフォースを稼ぐ事もできないのである。
「スタッグ、大丈夫?」
アズキは呼びかける。スタッグは爆炎の中から飛び出しながら、
「平気です。この程度でしたら、まだバグスティンクの頃のほうが厄介だった程です」
スタッグは言い、バグシールドとの間合いを詰めて、ついにソードを叩きこむ事に成功。しかし、
(ダメージが浅い?)
と、アズキは直感的に感じた。というより、先程ナパームを撃った発射口から漏れ出た煙が物理的にスタッグの攻撃から身を護る盾になってるように映ったのだ。
「これって」
アズキが呟いたところ、クワトロさんが、
「バグシールドの攻撃は通常のナパームではありません」
と言った。
「
直後バグシールドは前足でスタッグを蹴り飛ばし、
「ああっ」
と、スタッグが宙を舞った瞬間を、
「バグシールド。ドライブCを使用。直後、指定地点に移動」
クワトロさんの指示を受け、バグシールドは再びナパームを発射。
地面に足がついてない状態でスタッグは再び爆発に巻き込まれ、それによって発生した煙のせいで一度バグシールドを見失う。
スタッグは再び爆炎の中から飛び出して、
「アズキ、バグシールドはどこですか?」
「ごめん。まだ見つけてな、あっ!」
いた。
バグシールドは、スタッグがナパームの爆発に巻き込まれてる間に、六本の足で壁をよじ登っていたのだ。
「スタッグ、壁に!」
「いました!」
アズキの言葉でスタッグも気づくが、すでにバグシールドは壁の高い位置まで登ってしまい、スタッグの攻撃は届かなくなってしまっている。
しかしスタッグはフィールドの狭さを利用して、対面の壁に足をひっかけてジャンプ。
バグシールドにいる壁の低い位置に飛び移ると再び壁蹴りで対面に飛び移る。
これを繰り返して強引にバグシールドの位置まで到達しかけるも、
「バグシールド、ナパーム発射。直後ジャンプ」
クワトロさんの指示によってバグシールドも壁を蹴るように対面の壁に飛び移ってしまう。
さらにスタッグが飛び掛かっていた場所にはバグシールドの代わりにナパームが設置物のように待ち構え、スタッグの足が壁に当たると同時に爆発。
「うっ、くっ」
スタッグは爆発をまともに受けながら、さらに壁を蹴って対面のバグシールドを追いかける。
けど、
「バグシールド。スタッグに向けてジャンプ」
ここでバグシールドは自分からスタッグに向かって跳んできた。
何をするのかと思えば、
「キック」
バグシールドは宙を跳ぶスタッグの真上から、六本の足で地面に蹴り落としてきたのだ。
「きゃああっ」
ジャンプ中のために回避も防御もできず、蹴られて地面に落下していくスタッグ。
逆にバグシールドは蹴った際にスタッグを足場にもう一度跳んで再び壁の高い位置に飛び移った。
「こうなったら」
スタッグは言った。
「メダチェンジ!」
直後、スタッグは落下しながらM字開脚して変形を行い、フロートの付いた潜水艦の姿に変わる。
さらにワイヤーで繋がったソードを射出して壁に突き刺し、自らを壁まで引っ張り上げた。
「あれ? 普段よりも動きがスムーズに」
呟くスタッグ。
「あっ」
アズキは気づいた。
「いまスタッグのメダル、潜水対応のマグソクワガタメダルだから。メダチェンジ形態にも対応してるんだと思う」
「そういう事ですか」
言いながらスタッグは脚に搭載されたふたつのフロートから光の粒子を放出すると、落下する事なく彼女は壁を足場に滑りだした。
どうやらメダチェンジしたスタッグは壁移動も可能らしい。
「いきます!」
そのままスタッグは壁を登っていく。その先にはバグシールドの姿。
「バグシールド。避けながらナパームで迎撃」
クワトロさんの指示を受けて、バグシールドは対面の壁に跳び移ろうとするが、スタッグはヨーヨーを錨として射出する。
バグシールドをワイヤーで絡ませながら自分のほうに引き寄せつつ、スタッグはナパームによる爆発を受けながらも、潜水艦の姿のままジャンプした。
直後、元々はスタッグのツインテールだったフロートが発光。
(そういえば、メダチェンジしたスタッグのドライブAって)
ビームソード!
スタッグはバグシールドに飛び掛かると、上空を跳んだままふたつのフロートでバグシールドを突き刺した。
Dナパームの煙が盾になるも、それさえ貫通して刺突に成功したスタッグ。
彼女はバグシールドを刺したまま対面の壁に飛び移ると、そのまま下に向かって壁を滑る。で、バグシールドを地面に叩きつけるのだった。
『バグシールド、中度ダメージ』
クワトロさんのメダロッチから通知が鳴ったのを確認して、
「やった」
と、アズキは小さく呟いた。あの避けて硬くてクワトロさんの指示で動く厄介すぎる相手から軽視できない程度のダメージを与える事ができたのだ。
しかし、スタッグは悔しそうに、
「これでも中度ダメージですか」
と言った。たぶん、この一撃で機能停止まで追い込むつもりだったのだろう。
しかしここで、
「って、馬鹿! 早くメダチェンジを解除しなさい!」
とミケさんがスタッグに向かって叫んだ。
「どういう事?」
アズキが返すと、
「あのバグシールドが前のバグスティンクと同じメダルだったとしたら、これ以上メダチェンジ状態で戦うのは不味」
言いかけた直後だった。
バグシールドはいつの間にかメダチェンジを解除しており、その体を黄緑色の光が包み始める。
これは、メダフォースだ。
「残念。手遅れですよ」
クワトロさんが言った。同時に光は一気に膨れ上がって、
「ロックラッシャー!」
破裂。波状の衝撃波となって一帯に広がったと思うと、
「アズ……」
スタッグが慌ててメダチェンジを解除しようとする。
アズキの名を呼ぼうとする。
しかし、どれも叶わず、一瞬のうちにスタッグの全身が破壊されてティンペットとペンダントだけの姿になり、メダルが地面に転がった。
「スタッグ?」
え、いま、何が起きたの?
(そういえば)
あの攻撃には逃げ場がない。使われたら最後、避ける事もできず、どんな防御も意味も成さず、絶対に何かを破壊される。
ロックラッシャーを初めて見た当時、アズキはそう理解したのを思い出した。
同時に、当時は使い手が味方で助かったと感じた事も。
「改めて私たちのメダフォース、ロックラッシャーの効果をお教えします」
クワトロさんが言った。
「このメダフォースはパーツひとつを問答無用で破壊する技です。どれだけ装甲が高くても、強力なダメージ軽減が入っていてもこの一撃の前では無意味です」
そこまではアズキも理屈ではなく心で理解した通りの内容だ。
しかし、今回のケースはどうだ。メダチェンジしたスタッグは一撃で全てのパーツを破壊されてしまったではないか。
「基本的に破壊できるパーツはひとつだけです。ですけど、メダチェンジの場合は装甲が一体化してますよね?」
「まさか」
「はい。ロックラッシャーは、メダチェンジの一体化した装甲を纏めてひとつのパーツとして扱い、破壊します」
と、同時に、
「スタッグ機能停止。よって勝者はクワトロとするよ」
ウォッカからもスタッグの敗北を告げる宣言が出されてしまった。
「そんな」
アズキはショックで声を震わせる。
やっと、やっとスタッグがメダチェンジした潜水艦の姿を使いこなせるようになったと思ったら、そのメダチェンジのせいで負けてしまったなんて。
「それでは、約束通りスタッグさんのパーツは回収させてもらいますね」
直後、アズキのメダロッチからセーラースタッグのデータが消失する。
ロボトルに負けた事で、奪われてしまったのだ。
「そして、紅下先生自身も」
と、バグシールドがアズキにビームを撃ち、クワトロさん自身もアズキに飛び掛かってきた。
けど、
「残念ですけど」
言ったのはキクナだった。
同時にメダメイドがビームからアズキを庇い、ヴァリス、ユディト、ブルーティス、さらにはTMZのメダロットたちも一斉にアズキの前に並び立つ。
続けてミケさんが、
「あなたが用意した暴走メダロットは全員始末させてもらったわ」
言われてアズキも気づく。
すでにレオもキャンサーも動いてる機体は一体もいなくなってる事に。
「クー! この事はオレからリーダーに報告するからな」
赤城くんは言いながら、地面からスタッグのメダルを拾ってアズキに手渡す。
アズキは受け取って、メダロッチに収納。
直後、メダロッチから、
『すみませんアズキ、負けてしまいました』
と、スタッグの声が鳴った。
アズキは、
「大丈夫。スタッグが頑張ってくれてた間にみんなが暴走メダロットを倒してくれたから、私は生け捕りにならなくて済みそう」
『良かった』
ほっと安心するスタッグ。
ミケさんが言った。
「それでも戦る気なら相手になるわ。この場全員をバグシールド一体で何とかできるつもりならね」
「さすがに、そこまで無茶をする気はありません」
クワトロさんは懐から球状の何かを出し、
「今回の私のミッションは失敗です。大人しく引き下がらせていただきますね」
こちらに投げつけた。
球の正体は煙幕。
途端、路地裏は煙に包まれ、気づくとクワトロさんの姿はどこにもいなくなっていた。
メダロット解説
以下の設定は小説内オリジナルとなってます。
[機体名]
バグシールド
[型式番号]
MDT-STN-01
[性別]
男
[パーツ]
◆頭部:ソリッドヘッド(守護/ガード500//2回)Hv
◆右腕:スウェットビーム(射撃/Dビーム/)
◆左腕:パースピアビーム (射撃/Dビーム/ねらいうち)
◆脚部:エンバランス(戦車/フォートレス)
●HV:1/0/0 合計:1/3
[メダチェンジ]
◆ドライブA(守護/ガード500/)
◆ドライブB(射撃/Dナパーム/)
◆ドライブC(射撃/Dナパーム/ねらいうち)
◆ムーブ(多脚/ホプライト)
[使用者]
クワトロ・チーゼス
レイア・フォルマージ
[備考]
naviに登場するバグスティンクの後継機。メダロットS未参戦につきデータは当作品のオリジナル。
navi当時の性能通り、メダチェンジ後は多脚となり防御型でありながら回避・充冷が並の機体より高い性能となっている。
また、通常時の左右の腕はDビーム、メダチェンジ後のドライブB・CはDナパームという専用技を装備。
メダロットnaviにおいてSTN型の二機は左右の攻撃パーツが防御属性である事が由来。
これによって脚部特性ホプライトがドライブA~Cすべてをカウントする想定。
なお、メダロットnaviではバグスティンクと型式番号が同じだった。
[Dビーム]
正式名称ディフェンスビーム。
守護パーツとしても扱い、使用後、1回攻撃を受けるまで格耐値・射耐値が上昇する。かわりにディスターバンスなどの影響を受ける。
使用するスキルとそれ以外の性能は射撃/ビームのまま。
[Dナパーム]
正式名称ディフェンスナパーム。
守護パーツとしても扱い、使用後、1回攻撃を受けるまで格耐値・射耐値が上昇する。かわりにディスターバンスなどの影響を受ける。
使用するスキルとそれ以外の性能は射撃/ナパームのまま。