気がつくと五条悟は空中にいた。
「は?」
無下限呪術で宙に浮くことが出来る彼にとって空に投げ出されるなんてことは問題にはならない。問題なのは投げ出される以前の記憶が無いこと。
そして目の前に"ドラゴン"としか言いようのない大きな生き物が存在していることである。
そのドラゴンは五条悟を見るや否や大きな雄叫びをあげ、その大きな牙で彼をかみ砕こうとした。
だが………
「残念。そんな攻撃じゃ僕には届かないよ?」
無限を纏う彼にはその牙が届かない。そして彼は拳を握りしめ大きなかけ声と共にドラゴンに向けて振り下ろした。
「そぉれ!!!!」
その拳はドゴォン!!という音と共にドラゴンの硬い鱗を砕き、その先にある皮膚を確実に貫いた。だが、それだけだった。
ドラゴンは苦悶の声をあげながら少し後退したがそれだけで大したダメージになっていない。
五条悟はその事実に驚きつつも喜色の笑みを浮かべた。
「へぇ、結構本気で殴ったつもりだったんだけどな。君結構強いじゃん」
五条悟に本気で殴られて苦悶の声を浮かべるだけで済むものは殆どいない。それこそ彼が最後に闘った両面宿儺や己に継ぐ現代の特級術師である乙骨憂太くらいのものである。
そんなタフさを持つ生き物が五条悟の周りに6体。
このドラゴン達は何者なのか?ここはどこなのか?
疑問はつきないがこの状況で彼は楽しそうに口元を歪めながらこう言った。
「楽しくなってきた」
――――――――――――
幾ら特級術師に並ぶ程の耐久力を備えていようと五条悟の不可侵を突破できる手段がドラゴンには無かった。
ドラゴンの大きな口から放たれる炎もその鋭い牙による噛みつきも何もかもが彼には届かない。
それに比べ、五条悟にはまだ先程放った拳以上の破壊力を持つ攻撃手段が幾つもある。
「これは耐えれるかな?………術式順天『蒼』」
彼の『蒼』によって3体のドラゴンが吸い寄せられ、それを五条悟が円形に動かすことにより、ドラゴン達はハンマー投げのハンマーのようにぐるぐると振り回され、他のドラゴン達へと投げ飛ばされた。
「グギャァ」
蒼によって圧縮され振り回さた挙句に他のドラゴンへとぶつけられた三体のドラゴンは喉が潰れるような声と共に地面へと落ちていった。
「ははっ、まだまだ!!!」
五条悟はそのまま他のドラゴンへと追撃、蒼の応用による瞬間移動でドラゴンへと近づき、ドラゴンのお腹へと拳をめり込ませた。そして五条悟は苦悶の声をあげるドラゴンの首根っこを掴み、そのまま高速で空中を移動して地面へと叩きつけた。
「これであと2体。」
次々と倒されていく同族の姿を見た残りのドラゴン達は気づいた。目の前の存在は生き物としての格が違うということを。
――――――
「これで終わり。硬さとか攻撃力はそこそこだったけど動きが単調すぎ」
五条悟にとってドラゴンたちは完全に未知の存在だったが結果は五条悟の完勝であった。
「さて、ここはどこだ?確か僕は………ああ、そうか」
現代最強の術師である五条悟は呪いの王両面宿儺との闘いに敗北し死亡した。そのことを思い出した彼の脳内には色々な想いが浮かんだ。
残された生徒のこと。その生徒の1人である伏黒恵の父親を自らが殺したという事実を伝え損ねたこと。そして最後に闘った両面宿儺に本気を出させられなかったこと。
全て一通り考え終えた後、五条悟はやっと自身が置かれている状況について考えはじめた。
「順当に行けばあの世ってことになるけど………多分違うよなぁ。天国にドラゴンがいるの意味わかんないし」
そう言うと彼は先程自らの手によって地に伏したドラゴンに目を向けた。
目の前で倒れている存在は相手は姿形が明らかに人間では無い。だが、五条悟がよく知る呪霊でもない。彼の持つ"六眼"で観察したが目の前のドラゴンには呪力がない。
それどころか少なくとも彼の知覚している範囲に呪力は自身のものしか存在していない。
それはここが彼の知っている世界では無いことを示していた。
周囲には呪力がなく、六眼によって周りの状況を何も察知することが出来ない。彼にとっては全く未知の状況。
そんな状況で彼は━━━━━━━━━━━━━
「未来?それとも違う世界?現状何もわかんないけど………まあ、なんとかなるでしょ」
少し楽しそうにしながら未知なる世界へと歩き始めた。