神の代行者(自称) 全てはあのお方の思し召すままに……と言いまくってたら引くに引けなくなった   作:ユタシ

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第17話 神出鬼没! カルマ登場!

 六教乱舞(バトル・ウェスタ)。六大神に戦いの舞を送る一年に一度だけの祭典。

 

 世界中から猛者達がこの大会の為に集まる。

 

 

 会場には既に数十万の人間が集まっており、闘技場地下には戦士がスタンバイをしている。

 

 

「お父様! お母様!」

「あらあらイルザちゃんははしゃいでいるのね」

「イルザ落ち着け。落ち着かないのなら帰れ」

「はい! お父様! 落ち着くわ!」

「ならばよし」

「あら、貴方。あそこで軽食買ってから席に座りましょう」

「あ! お兄様! あれ!? お兄様どっか行っちゃってる!?」

「ゼロならば放っておけ。放っておけないなら帰れ」

 

 

 ゼロ、イルザ、ゴルザ、エルザの四人できていたはずだったが気づいたらゼロは消えてしまっていた。そのまま三人となってしまったがゴルザの言葉によって観客席に向かった。

 

 

 観客席には既に沢山の人間や種族が数多座っていた。人族、獣人、エルフ。

 

 

「それじゃ、一旦アタシ選手控え室に行ってくるわ!」

「あらあら、頑張ってねぇ」

「そうか、イルザ。せいぜい頑張ることだ」

 

 

 

 イルザは観客席に二人を置いて闘技場の地下に存在している大会出場選手控え室向かった。観客席には数多の種族や人間が存在していた。そして、それは大会に出場する選手も同じであった。

 

 玉石混合であるその場には男女問わず沢山の騎士や剣士、戦士が待ち構えている。

 

 

 

「あらあら、イルザさんビビらずに来たようですね」

「うげ、キャル……」

 

 

 控え室には彼女と同じ学園の生徒であり、【永遠の次席】キャルも滞在していた。

 

 

 彼女はまっていたと言わんばかりの表情をしていたのだ。

 

 

「前回は貴方のお姉さんが優勝したみたいですが、今年は私が頂きますね。ふふふ」

「次席に出来るわけないでしょ」

「ふふふ、それはどうでしょうか」

「アンタに負けるわけないでしょ、アタシのお父様とお母様血筋すごいし。お兄様とお姉様の応援があるんだから負けないわ」

「──随分と余裕そうな嬢ちゃん達だ」

 

 

 

 キャルとイルザ、互いに同じ学園の二人に割って入ったのは一人の男だった。年齢は40を超えていそうな所謂おっさんである。頭部は光っており、だが体の筋肉が熱く同時に魔力の流れが緩やか。猛者の風格を感じさせる男性の指には指輪がはまっている。

 

「あぁ、悪いな。俺の名はギムレット。二人が俺の息子と娘に近い年齢だったもんでね。つい話しかけちまった」

「あらあら、それはどうも」

「何の用かしら。アタシこれで優勝しなきゃいけないから集中したんだけど!」

「あぁ、手短に済ませよう。正直言えば今回の大会棄権した方がいい」

「「あ?」」

「二人じゃ勝てないと言ってるわけじゃない。ここにいる全員が勝てない場合があるかもしれんからだ。()()()()()()()

 

 

 ギムレットがとある方向を首で示す。そこには一人の大きな鎌を持った選手が一人座っている。

 

 全身を包帯で巻いており、顔も全て包帯で覆っている。顔の部分は包帯の上から大きな瞳が一つ描かれている。体には包帯の上から少し服を着込んでいる。

 

 多数いる選手の中でも異彩を放つ容姿であった。独特のオーラを放ち過ぎており、周りの選手からは引かれている。

 

 

 

「奴の名は【カルマ】。俺も毎年出ているが初めての選手だ」

「見るからにヤバそうですね。しかし、私の敵になるかと言われると難しいでしょう。彼……と言っていいのか知りませんが魔力を感じません」

「あぁ、確かにそうだ。だが、長年の経験がいってるんだ。あれは……やばい。ほら見ろ。毎年、祭典トーナメントの前に選手同士のいざこざが起こるんだ」

 

 

 遠くから眺めていると【カルマ】に向かってとある選手が向かっていった。

 

 

「おいおい、なんだこのダサい鎌使いは! てか大鎌は明らかに使いづらい欠陥武器だろうが! 魔力もねえしな。とっとと引っ込んだ方がいいんじゃないか!」

「……一度だけ言っておく。立ち去った方がいい。消えたくないならな」

「あぁ、こんな弱そうな貧相でよ。祭典に出てんじゃねぇぜぇ……ぶげごぉ!?」

 

 

 カルマに向かっていった男性が気づいたら殴り飛ばされていた。頭が天井に突き刺さり、干物みたいにぶら下がっている。

 

 

「……誰か伝えてくれ。一人棄権したと(ベジータ)」

 

 

 

 その一瞬の攻防に全員が【カルマ】の強さを認識をする。

 

 

 紛れも無い強者の領域を持っているのだと……彼等は囁く。

 

 

「今、見えたか?」

「いや、見えねぇぞ」

「い、一瞬だけだが」

「裏拳。それによる一撃か」

「これで今年のレベルがわかったな」

 

 

 カルマの一撃を彼等は分析をする。それを踏まえてギムレットは額から汗が落ちた。あまりにもここまでの流れが彼の手の平であったからだ。

 

 

「マジか。あの野郎」

「ギムレットさん何か気づいたのですか?」

 

 

 キャルはギムレットが何かに気づいたことに疑問を持っていたようだ。一方イルザはカルマをジッと見たり、ちょっと近づいて匂いをかいだりしている。

 

 

 

「あの一撃、あれは余興……に見せかけた策略だ」

「ふむ?」

「毎年こういう祭典前の荒くれは起こるんだよ。これが余興であったり風習であり文化でもあるんだ。以前だが、ゴルザ・ラグラーと言う天才が大会前に妻をナンパされてブチ切れて出場選手の三分の二をぶちのめした」

「……あぁ、そうなんですね」

「因みにだが前回大会でもアルザ・ラグラーが弟をナンパされたことにブチ切れて女参加者全員をぶちのめしたらしい」

「……今その二人が出禁となった理由がわかりました」

「話を戻すが、毎年ある程度の余興で荒くれがあるんだ。だが、あいつはただの余興で終わらせず、あの一撃で周りのレベルを測ったんだ」

「なるほど……」

「祭典の悪ふざけを一瞬で看破し、それに敢えて乗る。その際に手を抜いた拳の一撃によって周りのレベルを測っていたんだろうな。現にあの一撃を目視できたかどうかで周りがざわついている」

「なるほど。私は見えましたが見えてない人もいたようですね」

「格好からヤバそうだが……あれは注目や余興を引き寄せる為の敢えての格好だろう」

「そうですね。でなければあんなクソダサい格好をするわけがありませんし」

 

 

 

 

 カルマは未だに控え室の端にて座り込んでいる。異彩、カルマが現れたと皆が記憶に刻み込む。

 

 

 

「ねね、あのカルマって人から飴ちゃん貰っちゃった! アタシが可愛いからなのかしら! あの人いい人ね!」

「嬢ちゃんそれ絶対毒だ」

「毒ですよ。イルザさん」

「なんか知らないけど、あの人の体から良い匂いもしたわ! アタシの好きな匂いなの!」

「だ、大丈夫か? この嬢ちゃん」

「ギムレットさん。この方、アルザ・ラグラーの妹で、ゴルザ・ラグラーの娘ですから」

「あぁ、ラグラー家なのか(ヤバいやつを見る眼差し)」

 

 

 

 

 

 

 祭典はトーナメント方式である。一回戦は

 

 

【異彩】カルマVS【鳴かない狩者(サイレントアサシン)】シュテ

 

 

 

「さぁ、今年もこの祭典がやってまいりました。神々を讃い、舞を送る六教乱舞(バトル・ウェスタ)。解説役は私、魔法騎士育成学園卒業生にして、現在ラキルディス【神聖騎士団】メンバーであるマイマイ・ルースファ。そして、特別ゲストとして前回の優勝者。アルザ・ラグラーさんをお呼びしております。アルザさん宜しくお願いします」

「──ワタシの家族大体カッコよくて可愛い。前回の優勝者、アルザ・ラグラーだ」

「はい。最初の一言は必要であったのかと疑問ですが、それを言うと怒って前回のように乱闘騒ぎになると面倒だなと思ったのでお口チャックしておきます。さてアルザさん、今回の大会優勝候補は誰になるでしょう」

「可愛さで競うならワタシの弟と妹になるだろう」

「なるほど。少し考えれば六教乱舞(バトル・ウェスタ)の優勝者の話だと分かると思うのですが……まぁ、良いでしょう」

「冗談はさておき……そうだな。正直に言えば分からん。ただ、前回ワタシが戦った中でそれなりに強かった連中は良いところまで行くだろう」

「なるほど。今大会は前回のベスト8メンバーがアルザさん以外は全員出場となっています。その試合は押さえておきたいところ。そして個人的に私が注目をしているのは、アルザさんの妹イルザさんですね」

「あぁ、イルザも大したものだ。現在、魔法学園では首席をキープしている」

「それは非常に楽しみです。私と同じように会場中が熱気に溢れております」

 

 

 

 観客席では沢山の人々熱気で包まれている。解説の声は特殊な魔道具によって観客席全員の元へ届けられるようになっており、通常の大会とは違うハイコストでありハイレベルなものとなっている。

 

 

 

 

 

「今回の優勝賞品は、5000万ゴールド、若しくは芥川龍太郎の写本となっております」

「芥川龍太郎、最近聞いた名だ」

「はい、観客席にもアルザさんのように知らない方が多いようですので私の方から解説をさせて頂きます。芥川龍太郎(あくたがわドラゴンたろう)。最近、本が見つかった古代の詩人ですね」

「古代なのか」

「はい。古代も古代、六大神が存在をしていた時代の表記があり外装や紙質などがかなり古くなっていることが明らかです。もしかしたら本当に神話の時代、つまりは3000年前の神々がいる時代を生きていた存在かもしれないのです。しかし、その内容は今までの通説をひっくり返すような内容ばかりで高値がついているんです」

「ほう、一体どれくらいだ」

「最低でも5000万ゴールド。魔法書も著書していたようですし、そちらは7000万ゴールドが最低値になっているようです」

「随分な値段だな。だが、それほど価値があると言うことか」

「そうですね。中には見たこともない言語で書いてある本もあり、独自言語の開発をしていたのではとすら言われています。それらが高値になるのは当然とすら言えるのかもしれないですね」

 

 

 

 

 芥川龍太郎。一体全体、何ラグラーなんだ!? と誰もが正体に気付かないまま解説は進んでいく。そして、一回戦がついに始まり選手が入場する。

 

 

「さぁ、一回戦。最初に入場したのは昨年のベスト8! 会場中が注目する狩人にして、優秀騎士! 【鳴かない狩者(サイレントアサシン)】のシュテ選手になります!!」

「昨年準々決勝でワタシが戦った相手か」

「はい。今年は更なる力をつけて挑んでいるそうですね! さて、シュテ選手の背中には六大神、の一神【風雷神ボルトル】のシンボルが刻まれております! 今回の祭典は信仰をする神のシンボルを背中に刻んで挑むのが習わしとなっております!」

「あぁ、そうだったな」

「さぁ、相対するのは……カルマ選手となります! 今入場……あれ? 来ないですね」

「お腹痛いのかもしれん。急かすのはよくないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、カルマ選手は入場ゲート付近でとあるメイドによって呼び止められていた。

 

「ぷぷぷ、良い格好ですね。かっこいいですよ」

「笑いながら言うなよ」

「あ、優勝期待してますね。ゼロ様」

「あいあい」

 

 

 この時、メイドの頭に電流走る!!

 

 

(あ、そう言えばこの大会、信仰する神のエンブレムを背中につけるんでした! これは……信仰あげるチャンス! ゼロ様なら絶対負けないし、背中にエンブレム描いちゃいましょう!)

 

 

 

「ちょっと失礼」

「おいなんだよ。変なことするなよ」

「良いじゃないですか。元気になるマークを書いているのです」

「ふーん」

「願掛けですよ。あと、すぐに勝たないでくださいね。これ……エンタメ要素ある祭典ですし」

「そうなのか」

「そうです」

 

 

(すぐに勝たれるとマークを見せつける時間が減りますしね!! ここはアルカディアの要素を全面に押し出して、尚且つ良い戦いぶりで会場を沸かせて信者を獲得して欲しいのです!!)

 

 

(毎回瞬殺されては、困るのですよ。見てる方も飽きますし!! 主に私が飽きます)

 

 

 

「エンタメ重視で戦ってくださいね。団員も見に来てますし」

「え!? まじで!?」

「はい。見に来てます」

「バレてたのか!?」

「そうですとも」

 

 

 

 そして、カルマは会場へと上がる。すでに場内は大歓声であった。しかし、彼が出てくると全員が絶句をした。なぜなら彼の背中には嘗て世界を滅ぼし、人間に牙を向いた

 

 

 

 

 

 愚神アルカディアのマークが入っていたからだ。

 

 

「こ、これは大胆な選手……と判断した方がいいのでしょうか!? アルザさんどうでしょうか!?」

「さぁな。ただ、歩く挙動で分かる。あれは相当な手だれだな」

「か、会場中がざわざわとしています! ぐ、愚神のエンブレムとは!? こちらの声は結界魔法にて選手には聞こえませんが会場内がざわつくのはカルマ選手は分かっていたはずでしょう! 相手の動揺を誘う作戦なのか!?」

「そうは見えんがな。そういった小細工を使う戦士には思えん。見たところ、武器は大鎌のみ。飛び道具とかは使いそうな感じでもない。たかがエンブレムにて動揺を誘うなど、このレベルのトーナメントでできると思うほどのバカにでもないだろう」

「つ、つまりは? もしや愚神を崇拝しておりこの大会に参加していると言うのか!? カルマ選手!? これは前代未聞ですよ!」

「さぁな。ただ単に悪ノリの可能性もあるが。下手に反感を買いたい馬鹿ならばこんな場所に来ないか」

 

 

 

 互いに闘技場にて入場を終える。シュテ対カルマ。その勝負はかなり注目されていた。

 

 

 シュテは二丁拳銃を持っている中距離タイプの戦士。男性であり髪は銀色に瞳は赤い。背丈は両者変わりない。

 

 

「さぁ、第一戦どんな闘いを見せてくれるか! それでは開始!!」

 

 

 ガーンと大鐘の音が響くと同時に動いたの。シュテ。魔力を高め、詠唱を開始魔法を構築する。

 

 

見えない隣人(パーフェクトインビジブル)

 

 

一級魔法に分類される見えない隣人(パーフェクトインビジブル)。自身から音や魔力の発生を抑制するのと同時に姿と身につけている装飾品を透明化させる。

 

 

 

「出たぁ! シュテ選手の得意魔法! 全大会もこれにてベスト8まで上り詰めていいます!」

「以前よりも、構築が早くなっているな」

「アルザさんはどのような立ち回りで彼に勝利をしたのでしょうか?」

「同じく一級魔法。見破る瞳(ロック・シャドウ)を使った。これで相手の姿を見破れる」

「なるほど。しかし、一級魔法は使うのが難しいからこその一級の位置付け。三級、二級、一級、そして特級と番付をされていますから上から二番目を使える前提でなければ対策は難しいと。カルマ選手がどのような対処するのか見どころでしょうか」

 

 

 

 

 

 姿を消したシュテに対してカルマが行うのは……

 

 

 

「アイツ、動いてないぞ」

「見えないんじゃない」

「一級の魔法は厳しいんだろ」

「愚神のマーク使ってる馬鹿に、ベスト8が負けるかよ」

 

 

 

 会場で彼の挙動に注目する者達は一瞬にして落胆をした。なぜなら彼が行ったのは……何もしないと言う選択だったからだ。

 

 

 一切動かず、大鎌を担いだまま一切動かない。顔には包帯を巻いているので表情もわからない。

 

 

「ママ」

「あら、イルザちゃん。試合は?」

「かなり先だからこっちきたの。あの包帯ぐるぐるマン良い人なのよ」

「あら、そうなのね。ただ、会場の人達はあまり好感を持ってないようだけれど……あなたはどう思う」

「勝負ありだな」

「それは──」

「──あぁ、大鎌使いの勝ちだ」

 

 

 

 

 突如として試合は動く。遂にカルマが大鎌を振るった。その振るわれた鎌は何かに当たったかような金属音を発した。

 

 

 

「ふむ……器用な男だ」

 

 

 

 アルザが彼を評する。カンッ、と音が何度もなり続ける、彼は大鎌を振り続けて何度もその金属音を鳴らしている。

 

 

 

「あ、アルザさん、これは一体?」

「信じられんが……魔法無しでの見えない隣人(パーフェクトインビジブル)を攻略したのだろう」

「え!? 魔法無しで!?」

見破る瞳(ロック・シャドウ)を使っているのかと思ったが、そうではない。奴は……微細な空気の流れを頼りに弾丸を弾いている」

「はああ!?」

「観客席にはちらほら分かっている様子の者がいるが……理解できていないようなので丁寧に説明してやる」

「お願いします」

「まず、ワタシの弟と妹は世界一可愛い。特に弟はかっこよさも兼ね備えており、うっかり兄弟の壁を超えてしまいそうになる」

「そう言うのはいいですから。ちゃんと解説を」

「あぁ、先ず鳴かない狩者(サイレントアサシン)シュテの戦い方について説明しよう。奴はシンプルだ。見えない隣人(パーフェクトインビジブル)を使い姿と音を消し、拳銃にて敵を撃ち落とす。これだけだ」

見えない隣人(パーフェクトインビジブル)は身につけている物も許容範囲がありますが消すことができます」

「あぁ、これにより弾丸がいつ発射されたかも分からず、音も出ない。姿も見えないとなると……大体の戦士ではこれで詰みとなる」

 

 

 

 大鎌使いのカルマは未だ鎌を振り続けている。地味ではあるが的確に銃の弾丸を切っていく。

 

 

「魔法を使っている挙動はない。ならば、空気の流れを読んで弾丸を切っている。それだけだろう。実際には消えているわけではない。透明になっているだけだしな」

「……空気の流れって普通わかるのでしょうか?」

「馬鹿者……分かるわけがないだろう」

「で、ですよね」

 

 

 

 進んでくる弾丸、それによる空気の微かな流れや動きを読み取っていると言う彼に会場中が唖然としている。

 

 

「で、できるのかよ!?」

「でも解説はやってるといってるぞ!!!」

「ばーか! チート使ってるんだろ!!」

「と言うかアイツがチートだろ!!」

 

 

 

 その様子を見ていた【アルカナ幹部】である女性陣三人も舌を巻いていた。一人はエルフギャルの【月】ロッテ。団長と副団長からは裏で【ギャルロッテ】と言われている彼女である。

 

 

「つーか、無理無理でしょ。空気を読むって。まぁ、会話してての空気読むならまだしも。ガチの物理で空気読めは無理無理的な? どーやればあーできる? キルスっちはできる?」

 

 

 【魔術師】キルスは驚きと言わんばかりの表情を隠しもせず、同時にあまりに自信と敬愛する団長に差がありすぎてそこに落胆もしていた。

 

 

「……無理ですわ。わたくしなら見破る瞳(ロック・シャドウ)を使った方が的確になりますし……どちらかと言うとあれは体術寄りの技術ですわ。どんだけ頑張ったとしてもあれは無理、ですわね」

「だよねー? チャイカっちはどう?」

「チャイカっちと言うでない。妾はお主達より年上じゃ」

 

 

アルカナ幹部、【冠位(グランド)】を授けられた【女王】チャイカ。200年を生きる吸血鬼である彼女からしても団長の凄さは異次元であった。

 

 

「どうにもこうにも、あれは悪い手本じゃろうて。凡人は大人しく一級魔法を一級魔法で対策すると覚えておけば良いのじゃ。神業が凡人にできるはずもない」

「あれ、できるのどれくらい居っと思ってるー?」

「そうじゃの……幹部全員無理じゃろ。副団長も無理じゃ」

「ですわね。あれが出来る幹部は想像できませんもの」

「じゃ、団長マジで神レベルじゃん」

「──お待たせしました」

 

 

 

 そんな幹部三人の元にメイド姿のレイナが入り込んできた。

 

 

「あら、来ましたのね。副団長。随分と遅いんじゃありませんの? 団長頑張っていると言うのに」

「えぇ、ですから団長に応援メッセージなどをぎりぎりまでしてましたので」

「また抜け駆けをしましたのね!」

「抜け駆けではなく、副団長とのして責務です。幹部には分からない仕事があるのですよ」

「つーか、副団長っていつ変えれるの? あーし、立候補したいんだけど。実績もあるし」

「妾も大分、実績はあるからのぉ。200年の知恵もある。副団長として申し分ないじゃろ」

「わたくしは同じ学園に潜み、同じ魔法も習得してますわ」

「ふふふ、皆さん浅いですね。私は知っているのですよ、あの人の重大な秘密をね」

 

 

(あー、マウント楽しいですね! ふふふ、どんなに足掻こうが最終的に神様には敵わないのですよ人間! それと吸血鬼!! 私とあの人は切っても切れない関係。全てはあのお方の思し召しとか言っていただけの愚者であるとは私しか知らないのです!!)

 

 

「その秘密とは何ですの!?」

「教えて、副団長ティーちゃー」

「教えろ」

 

 

 

(ふふふ……教えるはずがないでしょう。だって、それ知られたらあと勝てるところないですからね!!)

 

 

 

(今信仰が弱いですから、魔力はそこまであるわけでもないし。ゼロ様を見てると影薄くなりがちですが、この三人、十分化け物レベルだし。ふふふ言いませんよ。でも、マウントは取らせてもらいます!!!)

 

 

 

 

「そんなことを言っていないで応援をしましょう」

「くっ、いずれ暴いてやりますわ」

「つーか、マジむかつくわー」

「ふん、副団長など妾がいずれ引き摺り下ろしてくれるわ」

 

 

 

 仲間割れを十分しつつ、彼女達は再び試合を観戦した。そこには既に大鎌を振い、相手を闘技場の壁にめり込ませているカルマの姿があった。

 

 

 

「け、決着ーーーー!!!!! 昨年のベスト8がここでまさかの敗戦!!! まさかの大番狂せダァぁあ!!!!!! 勝ったのは大鎌使い【異彩】のカルマダァ!!!」

「うむ。見事な戦いだったな。観客席でカルマに驚いている、ワタシの妹の表情には及ばないが」

 

 

 

 解説席では驚きの声と同時に試合の終了を告げる。それと同時に観客席でも大声の大歓声が上がる。まさかの大番狂せが起こりムードが上がる。

 

 

 

「これこれ! 祭典はこうでなくちゃ!!!!」

「ジャイアントキリングがあるから面白いんだよねぇ!!」

「前回はアルザ・ラグラーが圧勝すぎて面白くなかった!!」

「ラグラー家は毎回そうだよ。ゴルザの時も圧勝でつまらなかったもんな」

「これくらいでいいんだよ」

「こういうのでいいんだよ」

「ねぇねぇ、あの人かっこよくない?」

「あの包帯、イカしてるなぁ。大鎌もいい味出してる」

「カッコいなぁ。イカつい感じがさ」

「愚神のマークだけど、結構かっこいいじゃん」

「この祭典って、信仰する神のアピールでもあるんでしょ? あの人かっこいいのになんで、愚神なんか」

「いや。もしかしたら実はすごい神様なのかもしれないぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、アルカナ幹部達の席では

 

 

 

 

「──こ、これは!? し、信仰が溢れてくる!? ふふふ、これは遂に戻ってキタァあ!!!!! しゃああああああああああ!!!」

「大丈夫ですの? この副団長」

「疲れてるかも……あーしのクッキーあげる」

「うむ……そうかもしれんの。妾もチョコあげるぞ」

「……わたくしも、このプリンあげますわ」

「──え!? わーい! もぐもぐタイムしてますねっ。もぐもぐ」

 

 

 

 

 

 試合が終わったカルマは一度、服を全て脱いだ。なぜならば次の試合まで大分時間があるからだ。

 

 

 

「ふー。包帯も楽じゃないぜ。あの格好きついから次の試合までは脱いでよ」

「ご、ゴルザ・ラグラー!?」

「ん?」

「……い、いや、すまん。人違いだったぜ」

「あぁ、それ俺のパパんだから間違いも仕方ないぜ」

「そうなのか! 俺の名はギムレット。今年の祭典出場者の一人だ。お前もゴルザの息子なら、もしかして妹が出場してるのか?」

「よく知ってるじゃん」

「いや、さっき話してな」

「そうだったか。あぁ、そういえばそんな様子だったか」

「なにか言ったか?」

「いや、こっちの話だ。妹が世話をかけたらすまなかったな」

「いや、割とまともだったぞ」

「そうか。結構わがままな奴だから何かあったら言ってくれ。俺が叱っておくから」

「……お前、ラグラー家の人間か? 随分まともな感性だが」

 

 

 ギムレットは一瞬だけ、怪訝な顔をしてゼロを見た。しかし、ゼロが変わった反応を返さないので元の顔に戻した。

 

 

 

「すまんな。勝手に。ラグラー家にはまともな人間が居るように見えなくてな」

「まぁ、変わったメンツが多いから苦労してる」

「そうか。ゴルザとは昔から戦った経験があるがあれは化け物だ。学園でも強さを求め続けて、怪しい部活動を行なっていた。エルザは一度だけ戦ったが目玉が飛び出るかと思ったくらい顔面殴られたし、アルザとは去年戦ったが乱闘騒ぎで俺もついでに顔面飛び蹴りされてるし、さっき会った妹も変わった感性だなと思っていたからな」

「パパンと同じ学園だったか」

「あぁ、正確には二学年上だがな」

「そうだったか。ラグラー家は基本的に変わっている人が多い。一番まともなのは俺だから何かあったら俺をいつでも通してくれ」

「そうか。お前……本当にまともだな。名前は?」

「ゼロ・ラグラー」

「わかった覚えておこう。おっとそろそろ時間なんでな。次の試合、見ておくといい」

「勝てるの?」

「勝つさ」

 

 

 おっさんの勝利宣言!!

 

 

 

 

 そして、ギムレットは一回戦で敗北した。

 

 

 

 

 

 

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