神の代行者(自称) 全てはあのお方の思し召すままに……と言いまくってたら引くに引けなくなった   作:ユタシ

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第28話 最強

 代行者。

 

 アタシ(イルザ・ラグラー)にとって、最も強い人間であると思う。魔力、体術、度胸。全部が天下一品であると判断できた。

 

 

 

 初めて会った時、正直好意を持ってしまった。恋心のように胸がドキドキしてしまっていたのだ。だが、しかし、アタシにはお兄様がいるからすぐに切り替えた。

 

 まぁ、カッコいいからそれはそれとして……結局はお兄様かなと思っている。

 

 

 さて、代行者。その強さをお父様に聞いたことがある。

 

 

 

「代行者か……魔力の質が常人を超えている。だが、何より驚くのは魔力操作だ」

「魔力操作?」

「魔法発動の際、尋常じゃないほどに操作が速い。速いだけでなく、精度も世界一だ」

「お父様がそこまで言うなんて……そう、昔は世界で一番と言われてた魔法騎士のお父様も二番目になってしまったのね」

「いや、私もまだまだいけるけどな」

 

 

 

 お父様はむむむっと言う表情で私に抗議をしている。

 

 

 やはり父の威厳を保ちたいのだろう。今度はお母様に聞いてみた。

 

 

「あー、あの仮面をかぶってる人ねぇー。凄いわねぇ。体術が凄かったわぁ。しなやかな筋肉と躍動感があったわねぇ」

「お父様とどっちが強いと思う?」

「うーん。あの人も学園生徒の時はマジで凄かったわねぇ……うーん。もしかしたら、あの人でも負けて──」

「──いや、私の方が強い」

 

 

 

 お父様、急に背後に立たないで!!

 

 

 

「あら、魔力量も質も全部貴方より上に見えたけど」

「魔力量は気合いでなんとかなる」

「体術とか絶対負けそうだと思ったけど」

「代行者半端無いって、勝てないだろ、どうやっても」

 

 

 

 次にお姉さまに聞いてみようと思った。お姉さまも祭典で代行者を見てるわけだしね。

 

 

 

「ふむ、強いな。ワタシより数段強い」

「お父様とどっちが強い?」

「それは流石に代行──」

「──私だ」

 

 

 

 お父様どこでも出てくるわね。流石に遺跡だからここには居ないだろうけど。そして、私の目の前には代行者が現れた。

 

 

 相変わらず、佇んでいるだけで場の空気を変えてしまう。

 

 

「ね、ねぇ、あれ代行者だよね?」

 

 

 

 王女様が何やらビクビクした様子でこっちに寄ってくる。確かにあの覇気、姿を見てビビらない人はいないだろう。

 

 

「そうね」

 

 

 やはり、遠い。目の前にいるのに遥か先にいると思わされるほどの断絶的な強さの差を感じてしまう。

 

 

 最近は代行者の真似をして魔力制御の技術を上げているけど、改めて目にすると分かる。アタシ程度では絶対に辿り着けない無敵の領域であるということが。

 

 

 うん、無理。勝てない

 

 

 代行者半端無いって、勝てないわよ! お父様が嘆いている理由がよくわかった。でも、アタシはその戦いを絶対に見届ける。

 

 

 何か一つでも盗んで強くなってお兄様を守るために。

 

 

 

「ねぇ、代行者どうするのかな? この遺跡内で大きな魔力で魔法は使えないよ。だって、遺跡が崩壊するかもしれないし」

「えぇ、確かに。ここで使えば崩れる可能性で生き埋めもあり得るわ……ただね。代行者はその名の通り……神の代行なの」

 

 

 

 

 代行者は中心として、時空が歪んだ。この魔力反応をアタシは知っている。つい昨日まで使っていた。

 

 メイドのレイナも使っていた。結界魔法の予兆!!!

 

 

 

ロードオブ・ワールド(虚像の異世界)

 

 

 

 虚像の世界が目の前に展開されている。足元には真っ黒な影みたいで作られた大地で空も赤い空。

 

 

 

「なるほど。いきなり結界で囲んでその中で魔力を使う気なのね! ただ、結界を維持しながら魔法を使うとなると高度な技術がいるわ」

「そうだよね! 僕も無理だよ」

「代行者を普通と思わないことね。ここから、魔法を複数同時で使えるのが代行者なのね」

 

 

 

 そう、アタシが知っている代行者様はこんなものじゃない。お母様もお姉さまも、お父様ですら勝てないと認めた存在が代行者なのだから。

 

 

 お父様が言ったように絶大な魔力と魔法、お母様が言ったように躍動する肉体全てを併せ持った究極的な力を彼は使う。

 

 

 本来なら詠唱が必要な魔法も無詠唱にて誰よりも魔法を使いこなす。手を合わせると極大の雷の魔法球が出現する。

 

 それは一つでは無い。複数発生しそれによって銅像は破壊された。

 

 

 

「嘘! 耐性があったのに!? 全部、無に帰すように壊せるの!? どんな魔力でしかも創り出すまでの時間がほぼゼロだった!!」

「王女様、あれが代行者よ。以前も見たと思うけど……」

「覚えてるよ。でも、これはいくらなんでも反則すぎる……人の身に余っている力だよ」

 

 

 

 第三王女ナナ様も冷や汗ダラダラ流してるわ。護衛騎士なんてビビりすぎてずっと無言だし……ってか護衛騎士の人無言すぎない?

 

 

 レイナは黙ってニヤニヤしながら腕組んで後方師匠面してみてるし。お兄様は……あれ!? お兄様がいない!?

 

 

 

「お、お兄様!? お兄様どこ!? お兄様!!!」

「落ち着いてください。イルザ様、ゼロ様なら大丈夫です。私が危険なので最深部に入る前に外に出しておきました」

「なるほど。よくやったわ。初めて役に立ったじゃない」

「調子乗んなクソガキ」

「は?」

 

 

 

 くっ、家帰ったらお母様に頼んで減給と解雇、両方提案してやるわ。前からお兄様の周りをうろちょろしてて気に入らなかったし。そろそろ消えてもらいましょう。

 

 

 

 

『──まさか、こ、ここまでの人間が存在、しているとは……』

 

 

 

 試練をずっと与えていた存在の声が聞こえる。代行者様のあまりの力に恐れ慄いているのね。

 

 

 

 

「全てはあのお方の思し召すままに……」

「待って、代行者様」

「何かな。ラグラー家の才女」

「どうしてここにきたの?」

 

 

 

 銅像を全て片付け、今まさに立ち去ろうとしている代行者様をアタシは呼び止めてしまった。彼がここにきている理由を知りたかったからだ。

 

 

「全てはあのお方の思し召し……私はただそれだけだ」

「どう言う意味。貴方は聖神を復活させたいの? 歴史転換点の中心は貴方なんでしょ。本来の歴史があるのも貴方はわかってるはずよ。それを動かしている貴方は一体」

「……? 全てはあのお方の思し召しのままに」

「だから、聖神と何かしらのコンタクトをとっているの? 思し召しってことは意思疎通があるって判断できるわ」

「全てはあのお方の思し召し……それだけなのだよ。私はただ……全てあのお方の思し召すままに動くのみ」

 

 

 

 急に濃い煙が立ち込めてきた。代行者は幻のようにどんどん姿が見えなくなっていく。

 

 

 

「待って……」

 

 

 

 アタシの言葉も煙に塗れて消えていった。それが彼に届くこともなかった。

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 神ですー!! ふー!! 私の遺跡なんてテンション上がります!! ふー!!

 

 

 問題。やはり私の遺跡を作るのは間違っているのだろうか!? いいえ。大正解なのです!!!

 

 

 ちゃんと歴史に則って作られているところもポイントが高いですね。こんな隠しフロアも作っているのがイカしています!!

 

 

 しかし、この遺跡を作ったのはどこかの一族なのでしょうか? 確か、他のクソ六代神を最も信仰していた者達の末裔が現在の『王族』だったわけだし。

 

 

 ここまでハイテクな遺跡は普通の人間では無理でしょう。

 

 

 あ、そんなことを考えていたらゼロ様が全部倒しちゃったようですね。相変わらず全部あのお方のせいにしちゃってるところは後で説教が必要です。

 

 

 ですけど、まぁいいでしょう。だって信徒も一人増えちゃいますしね。護衛騎士のディズレットさん。えぇ、話してみたところ私に興味があるようです。歴史も疑っています。

 

 うんうん、聖神アルカディアの信徒にぴったりです。

 

 

 

「あのー」

「あぁ、メイドのレイナ様」

「さっきの歴史の話の続きを」

「いえ、大丈夫です」

「え!?」

「先程の代行者を見て考えが変わりました。やはり、神なんて曖昧なものより実在する強者を知るべきだと」

 

 

 

 えぇ!? な、なんで急に!? さっきまで大先生とか言ってくれていたのに!?

 

 

「え、で、でも、聖神アルカディアの歴史も……」

「えぇ、ずっと歴史に違和感を持っていたのも事実です。しかし、気が変わりました。どんな些細な違和感も全てを払拭できるほどの力があればどうでもいいのでしょう」

「えぇ!? も、もっと知ってくださいよぉ」

「それより、代行者様を知りたいです。あの強さ、惚れ惚れしました」

 

 

 

 お、おのれぇ、代行者。私から信者を掻っ攫うとは……まぁ、ゼロ様の信者ということは実質私の信者でもありますし。許してあげましょう。

 

 

 

「しかし、代行者様はあまりに強かったですね。彼こそ神なのかもしれません」

「彼は神ではありませんよ。寧ろ神は私です」

「レイナ様は彼ほどの魔力を感じません」

「ふふふ、それは抑えているのですよ。見なさい、最近徐々に信徒を増やしている私の圧倒的な神様パワーを!!」

 

 

 はぁぁああああああああああああ!!!!! 神パワー解放!!

 

 

「……代行者様の半分もありませんけど」

 

 

 

 うわああああああああああ!!! ゼロ様ぁぁぁぁっぁ!! ゼロ様のせいで誰も神様って信じてくれないじゃ無いですか!!!

 

 

 

 はぁー、信者を一人逃してしまいました。仕方ありません。こうなったら他にも信者を増やすしかないでしょう。

 

 

 だーれーにーしーよーうーかなー!! あ、イルザ様が居ましたね。ゼロ様の妹くらいだから基本的に神様とか興味なさそうですけど一応誘ってはみますか。

 

 

「イルザ様」

「なによ」

 

 

 遺跡を脱出した後の帰り道、こっそりと彼女に話しかけた。

 

 

「聖神アルカディアについて興味ありますか?」

「あるわよ」

「な、なんと! なら私が教えてあげましょうか?」

「そうね。詳しそうだし聞かせてもらおうかしら」

「おお! 初めて良い人だと思いました」

「腹の底でアタシを舐めてたのはわかっていたわよ、クソメイド」

 

 

 

 

 うむ、この子を信者にできたらゼロ様もついでに信者にできるかもしれない。だって、妹には結構甘いお兄ちゃん気質な部分がありますからね。

 

 

 

「まぁ、どっちにしろ聞きたかったわ。聞かせてもらおうかしら」

「聞かせてもらおうと言われたら! 答えてあげるが世の情け!!」

「ふざけてるなら聞かないわね」

「あぁ! ゼロ様がこんな感じで茶化すから真似しちゃったんです! ごめんなさい!」

「で?」

 

 

 

 イルザ様はかなり職人肌というか気難しいですね。

 

 

「アタシとしては神様って何なのか気になるのよ。それと代行者様よ」

「神様とは神ですよ。聖神も六大神も変わりないです」

「どっから神は来たのよ」

「人の信仰ですね」

「……ちょっと待って。虚像ってこと?」

 

 

 あぁ、確かにこれは言ったら説明が面倒ですね。信仰が塊になって生まれたのが神である私達ですからね。

 

 

 

「そもそもはそうですね」

「なんでそんなの知ってるの。適当言ってんじゃ無いでしょうね」

「本当です」

「ふーん……なら、神源教団と天明界について教えて。あそこは組んでるの?」

「組むって感じでは無いですね。もともと神源教団から派生したのが天明界です。互いに不可侵で邪魔しないって盟約はあるそうですが」

 

 

 

 はぁ? って感じの表情のイルザ様……あ、これって言ったらダメなやつじゃないですか!? 

 

 一般美人メイドはこんなこと知って無いですし

 

 

「なんで知ってるのよ」

「今のは嘘ですね」

「嘘とかつくな」

「ごめんちゃい!」

「はぁ……なら、最後に教えて。代行者様のことを」

 

 

 

 あ、それはどう答えましょうか。まぁ、多少は教えてあげても良いでしょうか

 

 

「代行者は神の代行です」

「あの仮面の下は誰なの」

「知りません」

「……使えないわね」

「おおい! 喧嘩なら買いますよ! こう見えても沸点低いんですからね!」

 

 

 

 代行者の正体はゼロ様は絶対に知られたくないと思ってますからね。教えたら嫌われるから、言いません。

 

 

 

「代行者……全部を知ってるのはそこなのよ。歴史の異分子、神の代行。もしかして、アタシと同じ歴史を見る能力を持っててそれを──」

「あ、あのぉ。聖神アルカディア様の話の続きを……」

「天明界と神源教団も気になるし……」

「あ、あのぉ。聖神アルカディア様の信徒になるつもりは」

「ないわ。アタシの心はお兄様のものなんだから」

 

 

 

 

 

 けっ! せっかく話してあげたのに!! まぁでも、ゼロ様はいずれ私と結婚するので貴方の枠はありませんけどね。と言いたいけど、メイドクビになりそうだし言わないでおきます。

 

 

 私は賢いメイドなのです。

 

 

 ふーむ、仕方ない最後に第三王女様にも声をかけますか。あのクソボケ大地神の国の王女様ですけど。

 

 

 

「あのぉ」

 

 

 

 声をかけようと思ったらゼロ様と王女様が二人きりで話していました。

 

 

「よーし、俺は実質お前の弱みを握っているのはわかったな?」

「わ、わん……くっ! 王女にこんなことをして絶対に許さないぞ!」

「これは命令です。ワンと言いなさい。おしっこを漏らしたとバラすぞ。王女様」

「……わん」

「なるほど。支配の悪魔のマキマさんってこんな感じだったんだな」

 

 

 

 は? 何二人でイチャイチャしてるんだ? ってか王女様なんで嬉しそうなんですか?

 

 

 これは、人間は滅ぼすべきですか? 嫉妬ですけど、嫉妬で滅ぼしてあげましょう。

 

 




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