神の代行者(自称) 全てはあのお方の思し召すままに……と言いまくってたら引くに引けなくなった   作:ユタシ

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第34話 彼黒鳥

 ダンピールに倒されかけているアタシの前に現れたのは代行者様。明らかに分かる。代行者様の方が魔力が上であることが。

 

 しかし、代行者様は魔力を制限している。常に本気の魔力を曝け出すことはしない。だが、それはダンピールも同じようにアタシと戦っていた時の魔力はまだまだ本気ではないらしい。

 

 

 

 

「見せてみろ。お前の魔力をな」

「わざわざ、私が相手をするほどとは思えんがな」

 

 

 

 

 代行者様の頭上から一匹の黒鳥が飛来する。いつも、飛んでいるのはよく見ているけど、あの黒鳥がどれほどの強さなのかどんな役割を持っているのかアタシは知らない。

 

 

 

 大きさは普通にどこにでも居そうな……鳥だ。

 

 

 だけど、代行者様の黒鳥は……

 

 

 

「……鳥にしては随分と多い魔力量だ」

「当然だ。全てはあのお方の思し召し。この鳥はまさに神の鳥。神鳥(しんちょう)なのだよ」

「【神鳥】だとっ……?」

 

 

 

 【神鳥】ですって……?

 

 

  名前の通りに解釈をするのであれば、神の鳥。神に仕えていたのか、神の生まれ変わりなのか、神の力の一端を持っているのかはわからないが。

 

 代行者様が神の名をつけている鳥なのであれば、それに適すような何かを持っている黒鳥なのだろう。

 

 

 

 

「ただの鳥に随分と大層な名をつけたものだな」

 

 

 

 ダンピールが魔法を発動させようとする、だがしかし、それと同時に神鳥もまた魔力を高めていた。

 

 

 信じられないことに、ただの鳥の方が魔力操作が素早いのだ。ダンピールだって未だ手を抜いていると見えるから全力でもない。だが、それを差し置いても……

 

 

 

 

王者の爆炎(おうじゃのばくえん)

「るるるーるー」

 

 

 

 

 全く互角ッ!! 嘘でしょ!? た、ただの鳥だと甘く見ていた。代行者様が神鳥と名付けているけど、所詮はただの鳥だと

 

 

 

 だけど、想像以上の強さだった!! 明らかに、アタシより格上!!

 

 

 強さの桁が違う!! 代行者様の手下であるあのエルフの少女よりも、お姉様よりも、お父様よりも……

 

 

 

 ──この鳥は強い!!

 

 

 

 

 

 

「バカな!? お、オレと同格だと!!」

「かかー、るるるー」

 

 

 

 

 美しい声を奏でる烏。その魔力は代行者様が神の名を授けるに相応しいほどに大きく迫力がある。

 

 

 

 

「クク、少し抑え過ぎたようだな」

 

 

 

 

 互いの炎がぶつかり合うが相殺される。そして、鳥とダンピールは仕切り直しを始める。

 

 

 

 

 一度目はダンピールも鳥ということもあり、油断をしていた。故に更に魔力を高める。

 

 

 魔力が溢れるだけで、アタシのツインテールが揺れている。たったそれだけで魔法を発動していないのに突風を起こしているのだから、ダンピールの強さが窺える。

 

 確かにこれほどの魔力を持つ存在は世界でも有数なのでしょうね。

 

 

 アタシとキャルなら間違いなく、死んでいたでしょうね……

 

 

 

 

「かかかーるるるー」

 

 

 

 あ、あり得ない……鳥はここまでの魔力を保有できると言うの……? ダンピールに呼応するように鳥もギアを上げるッ!!

 

 

 

「きゃああー!」

「くやあああ!!!」

 

 

 

 

 アタシとキャルは鳥の魔力放出によって吹き飛ばされてしまった。な、なによ!? なんだというの!?

 

 

 鳥でしょ!? なんで人間よりも強い魔力を当然のように!!?

 

 

 

 あまりの突風でこのままだと壁に激突してしまう。しかし、そこでアタシとキャルを受け止めたのは代行者様だった。

 

 

 

「あ、あああ、あ。ありがとうございます。だだ。だいこん、代行者様」

「どどど、どうも」

 

 

 アタシはちゃんとお礼を言ったが、キャルは緊張をしているようで何も言えてない。まぁ、代行者様かっこいいからね。仕方ないわね、アタシはちゃんとお礼を言えているわよ。

 

 

 まだまだね、キャル

 

 

 

 

「気にしなくていいとも」

「あ、あの、代行者様、あ、あの鳥は一体?」

「その名の通り、神の鳥とだけ言っておこう」

 

 

 

 アタシとは桁が違う。ダンピールとも桁違いね。代行者様は風からアタシ達を守る魔法を展開してくれている。

 

 

 代行者様自身もその障壁に入り、戦いを眺めているだけ。つまり、代行者様は鳥とダンピールの戦いに手を出すつもりはない。

 

 

 そして、上に飛んでいる他の鳥も一向に手を出すそぶりはない。

 

 

 ダンピールと鳥のタイマン勝負というわけね。

 

 

 

「王よ・手繰れる魔よ・我が手に宿りし剣と成せ」

 

 

 

 ダンピール、わざわざ詠唱をするほどの魔法を使うのね。あれほどの使い手ならほとんど無詠唱で使えるでしょうに。でも、わざわざ詠唱をするということはそれ相応の魔法である証拠。

 

 

 特級魔法と考えるのが自然でしょうね

 

 

 

真奥王の剣(キング・ソード)か」

「だ、代行者様ご存知なのですか?」

「これのことだ」

 

 

 

 あ、代行者様、無詠唱であっさり出せるのね。流石ね代行者様。彼の手にあるのはまるで、黄金の光をそのまま剣にしたような美しい塊。

 

 

 

「これは全てを切り裂くことができる。基本的にはだがね」

「な、なるほど」

「それに加え、自身の身体能力に大幅なバフがかかる。単純計算で普段の……二倍はある」

 

 

 

 

 代行者が言うようにダンピールの動きが段違いとなっている。数秒前と違い、もはやアタシの目には光の線が動いているくらいにしかわからない。しかし、その中でも鳥が華麗に舞っている。

 

 

 

 

「くっ、こ、これもかわすだと!?」

「るるるーかかかー」

 

 

 

 

 踊り子のように空中を舞い続ける、それと同時並行にて鳥が魔力を高める。

 

 

 まさか!?

 

 

 

「ばかな!?」

 

 

 

 

 ダンピールも驚いている。そう、鳥の両翼に光り輝く剣が二本握られていたのだ。更に、口にも剣を加えている。

 

 

 計三本なのだ。同じ魔法を重複して使う技術はあるけど、特級魔法よ!? なんで、使えるのよ!

 

 

 

「かかかー、るるー……しゅばしゅばー!!」

 

 

 

 

 急に光と化して、鳥はダンピールを切り裂いた。

 

 

 

「あ、あり得ん。ぜ、全盛期のゴルザを……完全に超えているッ。こ、こんな、存在が、い、いただと! た、だの、鳥なわけがない、き、貴様、なにもの……」

「るるるーかかかー、しゅばー!」

 

 

 

 

 切り裂いた後、更に魔力を高め、爆炎を発生させるとダンピールを鳥は燃やし尽くした。

 

 

 

「こんな、化け物の鳥が……いると言うの」

 

 

 

 

 世界は広い、そんなのはわかっていた。アタシより強い存在はたくさんいる。悪魔、神、お姉様、お父様、代行者様とその変な仲間達。

 

 

 

 

 アタシはまだまだだと分かっていた。最強である代行者様には程遠くて、その下にも沢山の存在がいる。

 

 だけど、まさか、鳥すらもアタシの最強への道を阻むと言うのね

 

 

 

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 よーよー、神ですよーよー!

 

 

 

 はいはい。無事にゼロ様は天明界を潰してくれましたね。偽物出したり、本物と入れ替えて、本物を実験対象にしようとしてましたから当然の報いです。

 

 

 流石ですゼロ様。

 

 

 

「ゼロ様ー」

「べたべたするなって」

「いいじゃないですか、こんな可愛いメイドですし」

 

 

 

 

 現在、学園の合宿は中止となっているので私はゼロ様の個室でべたべたいちゃいちゃしていた。

 

 

 

 ゼロ様が天明界の最高幹部、天神人を倒してしまいましたから……正確に言えばゼロ様の手下の黒鳥ですけど。

 

 

 

「っていうか、ゼロ様あの黒鳥強過ぎませんか?」

「昔拾った。俺の魔力を纏わせたりんごを食べさせて、訓練させたらめっちゃ強くなったな」

「化け物の魔力は化け物にする力もあるんですね」

 

 

 

 神である私より魔力多くありますからね。全部の鳥が私より多いですから、困ったものですよ。立場がないじゃないですか

 

 

 

「って言うか、天明界は相変わらず変なことしてるよな」

「偽物とかゼロ様からしたら、どうでもいいですよね」

 

 

 

 まぁ、多分ですけど本来の人間じゃない物でも信仰を集めることができるのか、擬似的な人間の信仰が神にどんな影響を及ぼすか調査するために

 

 

 

 あれほど精密に人間を再現していたのはなんとなく想像できますけどね。

 

 

 

 

「お兄様! そろそろ帰る時間よ!」

「おう」

「うげ、メイドもいる」

「イルザ様、このような美人メイドを見てそんな反応はしてはいけません」

「うざ」

 

 

 

 

 イルザ様は年中反抗期みたいな人ですからね。ブラコンでもありますし、ゼロ様とイチャイチャしてたらイライラしますよね

 

 

 

「お兄様、さっさと行くわよ」

「あいあい」

 

 

 

 ゼロ様が欠伸しながら個室を出ていく。その後ろをイルザ様がてこてこ付いていくような形だ。

 

 

「アンタって、魔力の流れ独特よね」

「えぇはい」

「怪しいわね。そろそろクビにしようかしら」

「イルザ様、今日もお美しいですね。今度足を舐めましょう」

「そんな分かりやすい媚びがあるのね。お兄様ちょっと先に行ってて、このメイドと話があるから」

 

 

 

 ふふふ、ゼロ様もイルザ様もちょろい子供ですからね。なんとか首の皮をつないで見せましたよ。こちらは神ですからね、知識が深いのです。弁も立つんですよ。

 

 

 

「ねぇ、鳥って……人間を超えることってあるのかしら?」

「鳥ですよ。ないですよ」

「そうよね。アタシもそう思ってたの。でも世界って広いの」

「そうでしたか」

「あの鳥、神の名を持っていたから……もしかして、あれこそが神と何か関係が?」

 

 

 

 あれはただの野生の鳥ですよ。ゼロ様の魔力で化け物になっただけです。あと、神はここにいますよ!!

 

 

 

「イルザ様、鳥よりも私の方がすごいですよ。神様ですし」

「また、言ってるのね。それ全然面白くないわ」

「ならば見せてあげますよ。神パワー解放!」

「あの鳥の方がすごかったわ」

「わぁああああああ!!!」

 

 

 

 ぜ、ゼロ様のせいでどんどん神である私の価値が下がっていますよ! これは責任もってもらって結婚ですね!

 

 

 

 毎日、ご飯と洗濯をして、マッサージもして、イチャイチャもして、仕事の手伝いをしつつ、必ず幸せにできる嫁ですからね!

 

 

 しかも神ですし、ゼロ様もこれは断らないでしょう。そうと決まれば後で婚約の紙を渡しましょう

 

 

 

 などと考えながら、私達は都市を後にしたのです。

 

 

 

 

 しかし、ゼロ様の手下である鳥が、敵の最高幹部である天神人を一人葬ってしまったことにより、ここより戦いは激化していくのです。

 

 

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