神の代行者(自称) 全てはあのお方の思し召すままに……と言いまくってたら引くに引けなくなった   作:ユタシ

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第45話 復活のヘルボルト

 この悪魔め! 全く一体全体この犬はなんなんだ!

 

 神の石像に急にタックルしてぶっ壊して今も俺に抱っこされて嬉しそうに尻尾を振っている。頬を必要以上に舌でぺろぺろ舐めてくるし。

 

 

「……ここが、革命軍の本部」

「革命軍かぁ」

 

 

 

 石像を壊したことでオーズドルルの国に居る信徒から殺害されかけた俺だが急に現れた女の子に手を引っ張られ現在、革命軍と呼ばれる場所で匿ってもらっている。

 

 正直、俺が死ぬわけないので匿ってもらう必要もないのだが、一応ラグラー家の落ちこぼれ設定なので派手に動けない。それに加えて、手を取られてこっちにきてと言われたので、あれよあれよと流されたからここにきてしまったのだ。

 

 

 

「言い忘れてた、私はタルミラ……あなたは?」

「ゼロ・ラグラーです」

「そう。ラグラー家の……ゴルザとエルザその娘のアルザとイルザは知ってたけど、息子もいたんだ……」

「あ、はい。落ちこぼれなんで有名じゃなくて」

「……そう、やっぱり助けてよかったあのままだと殺されてた」

 

 

 

 随分とおとなしそうなイメージんの女の子だ。ゴスロリみたいな格好をしているのが気になるけどね。

 

 髪も瞳も紫色な美人な顔立ちだ。この世界って俺を含めて顔がいい人が多いよね。

 

 

 

「……その犬の名前は?」

「こいつはこの国で拾ったんです。拾うつもりなかったんですけど、勝手についてきてて」

「……そう、随分懐いてるから君の犬かと思った」

「わんわん!」

「違います」

 

 

 

 白銀の毛に、青い瞳。確かに可愛らしい顔立ちで綺麗な犬。飼ってあげたいと思ったけど、やめておこう。

 

 

 

「……その犬、オーズドルの石像に躊躇なく突進したね。神様嫌いなのかな」

「だとしても、厄介ごとに巻き込まれたことに変わりないので……タルミラさんは犬好きですか」

「……私が引き取れと?」

「そうは言いません」

「……そう、でも、その犬は納得してないみたい。すごい頬舐めてるよ」

 

 

 

 確かにべろべろめちゃくちゃ舐められている。まぁ、犬には優しくしてあげないと思ってしまう。

 

 

 悪気とかないだろうし。

 

 

 

「……でも、神様の石像に突進する。もしかして、その犬は本当に邪神の使いなのかもね」

「邪神って……いるわけないですよ」

「……伝説だと邪神アルカディアは銀髪に青い瞳を持ってたらしいよ。その犬は、似てる」

 

 

 おやおや、この人も神様とかを信じている人みたいだ。困ったもんだぜ!

 

 ただ、さっきから気になることがある。この子、どっかで会ったことがあるような気がするんだけど。

 

 

 

「……あ、ゼロ。ここの説明をしておく」

「あ、はい」

「ここは革命軍の本部……でも、革命軍の人員は殆ど居ない」

「あ、そうなんですか」

「そう……かつてはヘルボルトと名乗る男仕切っていた」

 

 

 

 ……あ!? 思い、出した!!!!

 

 

 ここって昔俺が好き勝手やっていた宗教組織の秘密基地かよ!! あーあ、どうりでこの子も見たことがあるよ。

 

 顔だけはなんとなく覚えている。名前も今になってみれば聞き覚えがあるように思えるよ。

 

 

「……ヘルボルトはさほど名前は知られていない。でも、本当に実力者だった。背も高く、格闘術に優れていた。惑星外生命体でもあった」

 

 

 

 あぁ、昔は竹馬に乗りながら宗教の教祖みたいな感じをやってたな。軽快な口調で適当にやってたな。

 

 教祖ってだけだとキャラが弱いかなって思ってたから惑星外生命体で宇宙人とか適当に言っていたな。

 

 神の代行者の練習のイメージしてたからね。色々試してたな。

 

 

 

「そ、そうですか。強い人だったんですね」

「……うん、でも、もういない。私たちを見限って消えてしまった……彼が消えてから集っていた仲間も散り散りになった。過激派も力を増してきて国が再び腐り始めている」

 

 

 

 あ、俺がいない間にそんなことになっていたか。昔も過激派は居たから適当に潰してたりしたけども。また、過激派が力を増して、騒ぎが起こってるんだな。

 

 まぁ、国とか国民の未来とかどうでもいいけど……な、なんとかしておかないといけないのだろうか?

 

 

 へ、ヘルボルトに会いたいみたいな顔をしてるし、この子。

 

 

 

「……彼がいれば全てが変わるのに……なぜ、消えてしまった。あれから十年、ずっと彼の影を追っている」

「あ、そ、そうですか」

「ふとした時、夢に出てくる。でも、幻で……私が代わりにリーダーをしてるけど、う、上手くまとまらない……ヘルヘイムと言う組織の名前も私がリーダーになってから相応しくないと言われ……革命軍になって、人員の数も質も落ちた……彼さえいれば」

 

 

 

 こ、これはもう、やれと言ってる!? もう一回ヘルボルトをやれと遠回しに言ってるのか!?

 

 

 正体に気づいているわけがないからそんなわけないだろうけどさ!!

 

 

「あ、そ、そっか」

「……過激派は急激に力を伸ばしている。天明界もバックにいるからだろうけど」

 

 

 天明界また出てきた。本当に碌でもないよね。

 

 

「……ゼロ。暫くここに居て。最近、オーズドルはきな臭い。何かが起こる」

「へぇ」

「……それ以外にも裏大会もある」

「裏大会?」

 

 

 なんだそれは? 裏大会、なんだかしょうもない名前な気がするが。

 

 

「……非合法な大会。この国の貴族や金を持つ商人が攫ってきた人間同士を戦わせる。改造している人間や悪魔、各々が持っている奴隷を戦わせてその勝敗を予想する」

「ふーん」

 

 

 普通の魔法大会とかでも金銭の賭けとかは行われた。でも悪魔を戦わせたり改造人間や奴隷とかは聞いたことない。

 

 そんなことをしていたのか。

 

 

「……過激派はこの国の貴族も絡んでいる。神は信仰していないけど、信仰から生まれる金を吸いとり、悪事を見逃している……このままだと、この国は本当に腐ってしまう」

 

 

 へぇ、そんなにヤバい状況なのか。

 

 我が家だとこの間、パパンとママンは庭に咲いている薔薇の絵を一緒に描いていたけど。

 

 ラキルディスは本当に平和なんだな。

 

 ナナみたいなのが王女だし。

 

 

 

「……王族の力も最早、あってないようなもの。国、いや、もしかしたら世界の問題かもしれない。徐々に暗雲が強まっている気がする」

「あ、そうですか」

「……やはり、彼の力が必要。彼こそがこの国の太陽だった」

 

 

 

 

 うむ、また俺のことか。

 

 

 

「……胸が苦しい。私には人を率いる器がない」

「そ、そんなことないと思いますよ。ほら、この犬も向いてるって言ってます」

「わんわん!」

「……犬に言われてもね」

「わん!?」

「まぁ、確かに犬に言われても説得力ないですよね」

「わわん!?」

 

 

 

  うーむ、この子、なんだか元気がなさそうだな。よく見ると目の下にくまがあるし

 

 

「あの、タルミラさん。寝れてます?」

「……寝れていない。ずっと……寝ずにリーダーとして革命軍を率いるために頑張ってきた。鍛錬を惜しまず、彼のようになるために」

「肌ボロボロだし、休んだ方が」

「……私がやらなきゃ」

 

 

 

 うわぁ、なんだか俺が好き勝手やって消えたせいでこの子が悩んでるみたいじゃん。

 

 いやまぁ、実際俺のせいなんだけどさ。

 

 

 

 

「……とりあえず、私は裏大会を見てくる」

「見てどうするんです?」

「……そこに居る過激派に通じている貴族を倒す。このままではジリ貧だから、攻めに転じる」

「なるほど」

「……ゼロは犬と一緒にここで待ってて。ここならバレないはず」

 

 

 

 そう言ってタルミラは去っていった。あの人、目の下にすごいクマがあったけど、大丈だろうか。

 

 あの人が去った後、犬と俺だけになってしまった。革命軍と言うが誰もいないのだろう。

 

 連れてこられた本部は学校の体育館くらいの大きさだ。確か、壇上は俺が作ったんだよな。

 

 

 教祖見たいに人間を高みから見下ろして操りたいから。

 

 

 おや、机が置いてある。ここは確か昔俺が使っていた机だ。中には……おお、俺のペン! 懐かしい! あ、でも、心臓が痛い、黒歴史ノートもあるし。

 

 

 あ、このノートは知らないな。机の中にあった見覚えがないノート。それを見ると作者にタルミラと描いてあった。

 

 

 

「こんなのも描いていたのか」

 

 

 

『ヘルボルト、ヘルボルト、なぜ消えてしまった。ヘルボルト……会いたい。ヘルボル』

 

 

 あ、これダメなやつだ。ずっとノートの端から端までびっしりとヘルボルトと書かれている。相当病んでるなあの子。

 

 なんとかしてあげたいけど、ヘルボルトとして会いに行くと面倒な状況が余計に面倒になりそう。どうしたものか。

 

 

 

 

「遂に見つけたぞ! 革命軍のアジトを!!!」

「教団の名において、神の名において、成敗する!」

 

 

 

 おや、外がなんだか騒がしいな。外を見るオーズドルの信徒と思われる者達が外にいた。や、やばい、場所がバレてるじゃん!

 

 逃げるか。でも、ここを放っておくのも……

 

 

 

「わん!」

「ん?」

 

 

 足元には犬がいた。そして、犬はなにやら鎧を一式持っている。床に置いて、頭で鎧にずつきをしている。

 

 

 

「まさか、これを着て……ヘルボルトとして大暴れしろと言うのか」

「わん!」

「……いやいやいや、流石にね。うんでもまぁ」

 

 

 

 さっさと帰りたいけど。あのままあの子を放っておくのもヤバそうな気がする。と言うかなんだか俺が悪者みたいな気がするから納得いかん

 

 

 

「──ふふ、これでいいかぁ? 惑星外生命体(自称)ヘルボルト。さっさと暗躍して国をさろうか」

「わん!」

「お前さんはここで待ってな……あー!? 恥ずかしい!! こんなキャラやってられないよ。宇宙人設定だけど、宇宙人とか知らないし、俺異世界人だし」

 

 

 

 こうして、再び俺はヘルボルトとして活動をすることになった。

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