ようこそようマジ至上主義の教室へ   作:山内春樹

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【1.オブジェクトの生成】
 ベースキャラオブジェクトをタップすると、スタミナを消費してオブジェクトを生成します。

【2.オブジェクトをマージしよう】
 同じオブジェクト同士をドラック&ドロップでマージすることで、次のレベルのオブジェクトになります。


❶ゲーム全体の流れ

 

「おい鈴音ェ……消しゴムよこせ」

「なんであなたにそんな指示をされなくちゃいけないのかしら? というか誰? 名前で呼ばないでくれる? そもそもあなたに名前を教えた記憶は無いわ」

 

 見知らぬ男による突然の要求に、堀北涼音は拒否で返す。

 当然だ。応じる理由が無い。しかし男は引き下がることなく、堀北涼音に手を伸ばした。格闘技経験者の堀北涼音だが、その動きを避けることが出来なかった。

 

「うるせぇいいから出せ!!」

「──何?」

 

 堀北涼音は消しゴムを奪われてしまう。

 

「くっ……用が済んだら速やかに返しなさい」

「それは無理だ」

「は? 強奪は立派な犯罪なのだけれど、そんなことも知らないのかしら?」

 

 あまりにも堂々とした強盗の宣言に、堀北涼音はとまどいながらもしっかりと怒りの感情を保った。

 だが、男はそれに返答することなく堀北涼音に手を伸ばす。

 

「そういうのいいから、もっと出せよ」

「け、消しゴムなんてそう何個も持ち歩いてるわけ……あっ──

 

 ──何? 何? こうかしら? いいわよ。何?」

 

「よし消しゴム6個ゲット」

「ちょ、ちょっと待ちなさい、今、何をしたの?」

 

 堀北涼音は身体をつつかれた瞬間、ひどく冷静になり『何?』と声が口を突いて出た。続いて同じようにつつかれると、その度にひどく冷静になり『何?』と言ってしまう。『こうかしら?』『いいわよ』とも言ったが、はたして何の意味があるだろう。というか何も良くはない。

 

 困惑する堀北涼音の目の前で、男が堀北涼音の筆箱から消しゴムを取り出した。

 その数6個。

 何の因果か、それは鈴音がつつかれて喘いだ回数と同じだ。

 

「これでメインミッション達成だな」

 

 あろうことか、目的を果たしたとおぼしき男は立ち去ろうとする。

 

「待ちなさい! 待ちなさいと言っているのが聞こえないの? 女子生徒に無許可で触れるなんて常識欠片もないのかしら? そしてその大量の消しゴムは何!? あなたが何をしてどうなっているのか、一連の行動が理解できないわ」

「知るかよ。イベントを進めるために消しゴムと鉛筆が必要なんだよ」

「はぁ? ひ、必要なら自分で買えばいいでしょう!」

「それがそうもいかないんだよ。ただの消しゴムじゃ駄目なんだ。鈴音ェ……か高円寺、あるいは葛城。今は鈴音ェ……しか頼れない以上、こうして鈴音ェ……から生成するしかないのさ」

「生成……? あなた何言って……」

 

 苦言を呈そうとする鈴音だが、男は信じられない行動に出た。

 

「ほい」

「!?」

 

 なんと、消しゴムと消しゴムを押し付けたと思うと、そこにノートが生成されたのだ。

 

「あ、あなた……いったい何を……??」

 

 堀北涼音は目を見開き、疑問で頭をいっぱいにすることしかできない。

 今しがた、鈴音の認識下に置いてこの場にノートなんてなかったのだから。あったのは消しゴムだけ。ゴムと紙。何をどう足掻いても素材すら異なる。

 ──一応、消しゴムの周りに厚紙が巻かれているわけだが、まぁだからなんだという話だ。

 

「で、鉛筆は──ノート2冊か」

 

 呟くと、男はさらに消しゴム2つを接触させノートを生み出す。

 

 まさか。

 

 男の呟きを元に、一つの予想が立つ。

 

「そい!」

 

 ノートとノート、男が2冊を同時に押し付け合うと、そこに鉛筆が出現した。

 

「??????????」

 

 瞬間、堀北涼音の脳内に宇宙の光景が広がった。それは、目の前の事象が一切理解できないという、無知の知という悟り。

 膨大な宇宙の如く理解不能な何かを目の当たりにして脳がクラッシュしたのである。

 

 人はこれを宇宙猫と言うとか言わないとか。

 

「これでメインミッション達成だな。ありがとう鈴音ェ……。また消しゴムが必要になったら来るわ」

 

 返事をすることも出来ず、鈴音は立ち去る男の背中を見つめることしかできなかった。

 筆箱の中に、消しゴムが元あった姿でそのまま残っていることに気づくのは帰宅してからのことだ。

 

 こうして始まったのだ、男が消しゴムを強請(ねだ)りにくる学園生活が……。

 

 

 

 

 

 ──ようこそ実力至上主義の教室へ~マージパズル特別試験~──

 

 

 

 

 

「次のミッションは……なになに、ハンカチとワイシャツぅ? 面倒くせぇがしょうがねぇ。おい綾小路! 来い!」

「なんだ?」

 

 友人からの呼び出しに、綾小路清隆は馳せ参じた。

 

「ボタン寄越せ」

「……? ──おぉ」

 

 綾小路清隆は額を突かれると、間の抜けた声を出すと共に制服の袖に付いたボタンを引きちぎると、男に渡す。

 不思議とこの男の要求に従ってしまった。綾小路清隆自身でも微塵も自身が理解できないのだが、拒否しようという選択が思い浮かばなかった。

 

 彼にとって男は初めて出来た友人だ。自覚はないが、それだけ特別に本心の奥底で思っているのかもしれない。

 

 綾小路清隆はホワイトルームという施設で人間が一生で学ぶ教養を全て叩き込まれたという過去を持つ。

 そんな彼が、男の無遠慮なボディタッチを躱そうとすら思えず、要求を突っぱねることすら思えない。……得てして、これが友情なのかもしれない。

 

 綾小路清隆は未知の体験に僅かに心を震えさせた。

 

 

「何に使うんだ?」

「ワイシャツを作る」

「?」

「もう1個くれ」

「なんで──おぉ……」

 

 

 答えになっていない答えに、綾小路清隆でさえ疑問符を浮かべるのみだった。

 しかし疑問がここで尽きることは無かった。男はまたしても綾小路清隆をつつくと、今度は知らずの内にボタンをむしり取っていた。

 全く気付かなかった、いや、気づいていたが抵抗できなかった。

 男の手の中に収められた自身のボタンを、ただ見つめながら、この未知に対し思考を加速させていく。

 

「ボタン2つを合成して……ハンカチだ」

「!?」

 

 男はボタン2つを叩きつけ合った。

 突飛な行動の理由を考察するが、綾小路清隆の人類最高峰といえる脳の演算処理が結果を出す前に、事は起こった。

 

 なんと、男の手にはハンカチが握られている。

 そのハンカチは綾小路清隆が持つハンカチと同じデザインであった。またくすね盗られたのか、そう思い咄嗟にズボンのポケットに手を入れると、そこにはハンカチの感触。

 

 何が起こったかと言えば、つまり男は言葉通り、ボタンを合成してハンカチを作り出したのだ。

 

 男が手品に精通していて、神にも等しい高速ですり替えた可能性もありえた。だが、このホワイトルーム最高傑作の綾小路清隆が見落とすだろうか? 否、見逃さない。

 もっと言えば、今ポケットに入っているハンカチと寸分違わず同じものを用意するなど出来はしない。偶然という線もあるが、綾小路清隆にはこれが作為的であると判断する要素の方が多かった。

 綾小路清隆の常人には理解できないほどの高性能脳なので解説は割愛する。

 

 金属製のボタンから布製品を錬成する、そんな結論は狂気の沙汰だが、綾小路清隆の脳はそうであると辿り着いてしまった。

 

 たとえ作り出したのでなかったとしても、そう見えるような動作が常人に出来るとは思えない。ましてやこの自分を騙すなど、ありえないだろ、常識的に考えて。

 綾小路清隆は、ホワイトルームに招かれたどんな専門家、どんな教授、どんな超人、誰にも見せられたことのなかった超次元的な技術に興奮を抑えきれなかった。

 

「……すごいな、何が起こったんだ?」

「ハンカチ2つでスクールソックス、スクールソックス2つでワイシャツが出来上がる。だからあとボタンを14個よこせ」

 

 返答は得られなかった。

 しかし、今はひとまずそれで良かった。そんなことよりも、ボタンを渡すことで何が起こるのか、この男が何を見せつけてくれるのかがひたすらに好奇心を掻きたてた。

 

 だが流石は綾小路清隆だ、瞬時に自信の置かれた状況を分析する。

 

 

「ま、待て。俺の制服にあるボタンは前に2個、両腕で6、合わせて8個だ。今さっき腕のを引きちぎったから残りは6個しかない。平田にでも頼むか?」

 

「いや、平田は駄目だ。あとは神崎か坂柳でもいいんだがな、でも今は綾小路にしか頼めないんだ」

 

 神崎──誰だ。

 それに、坂柳。

 聞きなれない名前に綾小路清隆はクラス全体に意識を向ける。しかし、少なくともこのクラスにその名前の生徒は存在しない。

 綾小路にしか頼めない。その言葉に言いようのない不思議な高揚感を覚えるが、同時に他に頼れるかもしれないという相手がいることにこれまた言いようのない不快感を覚える。

 

「なぁ、神崎や坂柳とは誰な──」

「うるせぇ!」

 

 瞬間、男の指が綾小路清隆の顔面へ雨のように降り注いだ。

 

「──おぉ……おぉ……これは? おぉ……ふぅ……おぉ……ふぅ……これは? これは? おぉ……ふぅ……ふぅ……火事場の馬鹿力ってやつだなおぉ……おぉ……おぉ……」

 

「よくやった綾小路。これでワイシャツが作れる」

 

「???????」

 

 男が突く度に声が漏れ出て、痙攣するかのような感触を覚えた。当然その連撃を避けようとは出来なかったし、声を我慢しようとは思わなかった。

 途中で文庫本を差し出したり、食堂まで行って無料の山菜小鉢を注文して持ち帰って来た気がするが、綾小路清隆にそれをする理由がなかった。

 冷静に、あくまに冷静に把握していく。

 

 つまるところ、意味が解らなかった。

 

 男は空いていた近くの机に持ち物を並べていく。

 ボタンが14個、文庫本が1冊、山菜小鉢が1つ。

 

 なぜ──?

 

 文庫本は百歩譲って良いとしても、我ながら突然の食品購入には分析すら出来なかった。もはやしようと思えなかった。

 

「何が起こったんだ?」

「ボタンが2つでハンカチが出来ただろう。これをもうひとつ用意する」

「まったくわからない」

「そしてこの、ハンカチ同士でくっつけることで──スクールソックスが出来る」

「まったくわからない」

 

 男は語る通りにスクールソックス、つまり靴下を生成した。

 同じ動作を繰り返すことでもう一足のスクールソックスを出現させる。

 

「で、この2つでワイシャツと」

「まったくわからない」

 

 そうして男はワイシャツを手にした。

 

 待て。わからない。

 ハンカチから靴下、ワイシャツへ変化する道理が理解できない。布面積も種類も異なるのだ。ハンカチとワイシャツならわかる。同じ繊維だ。化学繊維か動物線維かはさておくとして、同じ系統だ。

 だが靴下お前はなんだ。使われている繊維集合体の太さが違うだろう。……最初のボタンの時点で金属が変異していることは保留とする。

 

「よし、ワイシャツはこれで解決。あ、ハンカチも普通に1枚必要なんだっけ」

「な、なあ! 何が起こったのか説明して──ふぅ……」

 

 問い詰めるかという勢いの綾小路清隆だったが、それでも男の一撃を受け気の抜けた声を出す。

 

「お、ハンカチ直で出てくることもあるんだ。ありがとな」

 

 男は最後にハンカチをポケットから抜き取ると、にこやかに笑い去って行った。

 

 後を追うことは出来なかった。

 興奮していたとはいえ、いやだからこそか、やや不規則な挙動の自分の額を正確に指で突いた一撃が繰り出されたこと。なぜか口から漏れ出た『ふぅ……』。抵抗も出来ず抜き取られたハンカチ。

 

 その鮮やかな一連の動きと理解不能な自身の反応に、疑問が尽きなかった。

 

「……」

 

 思わず自席に腰を落とす。

 

 自分はいったい何を体験したのだろう。

 

 それはこれまでの人生、あの真っ白な部屋ではおおよそ考えられなかった事象だった。科学で説明できない、すくなくとも綾小路清隆には説明できない、この世の奇跡が顕現したかのような行為に、舌を巻き感心するのみだった。

 

 

「あら、あなた、人前で随分と間抜け面を晒すのね。みっともないから気を付けた方が良いわよ」

 

 どれだけの時間が経っていたのだろう、気づけば隣の席にいた堀北涼音が冷たく言う。その言葉通りの顔をしているのだろう。否定できる説得力が無い確信があった。

 

「堀北、世界は広いな」

「?」

 

 ──面白い奴。

 

 綾小路清隆は、自身の制服にちぎったはずのボタンが再生していることや、確かに持ち去られたはずのハンカチがポケットにあることを確認すると、僅かだが思わず口角を上げた。

 

 今後の学園生活に思いを馳せると、身体の内が熱くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 ──ようこそ実力至上主義の教室へ~マージパズル特別試験~──

 

 

 

 

 




 だいたいこんな感じ。

 ぶっちゃけ虚無だけどこういう妄想すれば遊べないこともない。
 どうせ半年でサ終だろうけどそれまで時間潰し程度に付き合ったるわ。坂柳のSR来たら課金するで。それまでサービスが続くかは(ry
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