剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました 作:加藤あきら
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世界の始まりはヘーレジアにあり。
へーレジアに授けられた『知識』により我らは発展を遂げた。
その授けがなければ、我らは洞窟に暮らし、石によって作られた道具を使い、原始的な生活から中々脱することはできなかっただろう。
様々な科学技術や魔法技術はヘーレジアによって『知識』を授けられ、人へと宿る。
この世のすべての『知識』はそこから始まり、人へ人へと伝えられるのだ。
この世界の始まりを綴っている文章の最初の部分がこれだ。
あくまで伝承だし、そもそもヘーレジアがいったい何なのか、詳しいことは何も書かれていないため、おとぎ話の域を出ないものだと思っていた。
でも、いま俺が住んでいるこの世界は不可思議なことで溢れていて、たまによく分からないものが出てくることがあるのを考えれば、あながち嘘じゃないのかもしれない。
例えば……そう、彼女なんかがそうだ。
事務所の奥からコーヒーを持ってきてくれた銀髪でゴスロリを着た女の子フェルトが、感情の篭っていない平坦な声で言う。
「ナオシさん、コーヒーです。どうぞ」
「ありがとな」
俺には昔の記憶がない。もしかすると、俺もそのよく分からないものなのかもしれないが、今のところはちょっと体が丈夫なくらいの普通の男だと……思う。
一番古い記憶は何もない荒野に佇んでいたところ。今から二年ほど前のことだ。
自分が何者なのかも分からず、不安に駆られ、涙を流し、叫びながら歩みを進めた。
分かっているのは
正直なところ全然思い出すことができない。
そのとき俺は自分のことすら分からず孤独に襲われながら人のいる場所を求めた。
そしてたどり着いた場所、それが魔法使いの里――クリオタウン。
ここは郊外ではあるが歴史が長く、数々の魔法の名家が住んでいる場所であり、レンガ造りの歴史的物件が多く、現在は観光地として有名である。
この世界を知って二年たらずではあるが、色んな地方を回って分かったことがある。
魔法技術に優れている場所もあれば、科学技術が優れているところがある。そしてそれぞれの得意分野は地域によって進化の仕方が違う。魔法であっても仕組みはひとつじゃないし、科学技術だって兵器産業だったり建築産業だったり様々だ。
とにかくここでは魔法が使えようが使えまいがあまり関係なかった。魔法を使えない人を見下す人はほぼいないし、色んな人、種族が共存している不思議な世界である。
まぁ、争いが存在しないってことではないのだが……。
「今日もお客さん、来ないですね」
「困っちゃうよねぇまったく。困っている人を助ける仕事なのに、なんで俺たちが困っちゃってんだろうねぇ」
この魔法使いの町で俺たちは何でも屋を営んでいる。クリオタウンのメインストリートからちょっと外れた一角に佇む少しボロい二階建ての建物。その二階で『ジェネシス』という何でも屋を俺は営んでいる。
ジェネシス……起源とか、発生とか、そんな意味の単語だ。
正直語感で決めたってのもあるが、まぁ起源ってのは物事の始まりや、ルーツといった意味もあるし、あと誕生って意味もある。俺は記憶もないから今までの自分の歴史ってのは皆無だ。だからこそ、ここから自分の歴史を始めるって意味を込めたってのは……まぁ、後付けも良いところかな?
「なぁフェルト?」
「なんですか」
「もう出会ってから一年以上経ってるけどさ、俺についてきて良かったって思ってる?」
「ナオシさんを登録した時点で運命共同体みたいなものなのですから後悔はありません。ただ、もう少しお金を稼いでくれると嬉しいです」
無表情で毒吐いてくれるじゃないのフェルトさん……。確かに今は仕事はないけど、貯金はあるのよ? 一文無しじゃないし、生活の不自由は今はないから良いじゃない。
自分で自分を擁護している最中、フェルトは俺のことをじー、と見つめてきた。
いや、フェルトさんそんな目で見つめられても……仕事がないことなんて気にしてないよ? 本当だよ? ……すみません、嘘をつきました。仕事をしているようでしていないことの罪悪感で吐きそうです。
さて唐突だがこんな無表情銀髪ゴスロリ毒吐き少女は不思議な力を持っている。
それは自分の身を剣の姿に変えること。それが彼女を不可思議な存在たらしめる要因だ。しかも、凄まじい力を与えてくれるもんだからさぁ大変。
まずは……そう、フェルトと出会ったエピソードでも語りますか。