剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第16話『救出作戦開始』

 現在位置は列車の最後部。人質が何両目にいるのかも分からないこの状況では、後ろから順々に前へと進んでいくのが一番手っ取り早くて楽だ。

 中へ入ると、乗客が悲鳴をあげた。

 まぁ、剣のような凶器を持った野郎がいきなり現れたらそりゃ驚きますよね。

 

 

「大丈夫、助けに来たんです。俺は何でも屋ジェネシスのナオシ=サカイ。お困りの際はぜひ俺たちに相談を!」

 

 

 俺が味方だって教えるのと同時に、俺たち何でも屋『ジェネシス』の宣伝も忘れない。

 人質となっている人たちに俺の雄姿を見せることによって信頼感を得る。そしていつかは依頼が絶えない大きな会社にしてみせるさ。

 

 それにしても後ろの方には列車を乗っ取った奴らはいない。

 ということは、全部の客車を見張るまで人数はいないって事かもしれないな。

 

 ところで犯人の目的は何なんだろうか。政治家の娘さんを人質に取るくらいなんだから反政府の奴らなのか、それとも愉快犯で、たまたまそこに政治家の娘がいただけなのか。

 まぁ、どっちだっていいさ。俺は娘さんとこの乗客たちを助けて犯人を捕まえるだけだ。

 

 

『ナオシさん、そこから先の車両に火器を持った人物がいます。気を付けてください』

 

 

 突然、俺の頭の中に直接フェルトの声が響く。

 これは剣となったフェルトと意志疎通を取るための手段。魔法の『念話(テレパシー)』の類だとは思うけど、原理は全然わからない。

 とにかく、今はこの先にいる犯人の事を考えるだけだ。

 緑色に透き通った剣を強く握りしめる。

 

 

「いくぞ。ワン、ツー、スリー……!!」

 

 

 そして勢いよく次の車両の中に入り、乗客に警告する。

 

 

「みなさん、伏せてください!!」

 

 

 大慌てで身を伏せる人や突然の事に唖然としてしまう人がいる中、俺はジャック犯の拳銃を切り裂き、頭を蹴り飛ばしてのしてやる。

 だがしかし、ここにはジャック犯がもう一人いた。

 いきなりの事でもう一人のジャック犯の動きが止まっていたが、仲間が一人やられたことに激昂して銃を構えてくる。

 

 これはマズい。

 

 こんなところで銃を撃たれたら俺は良いが、乗客にまで危険が及んでしまう。

 怪我人が出たとなれば、俺たちジェネシスの評価はガタ落ちだ。今回の任務は死傷者ゼロで達成されると言っても過言ではない。

 初めてもらったビジネスチャンスを、失う訳にはいかないんだ。

 

 

「フェルト!」

 

『はい』

 

 

 車両内に銃声が響き渡る。放たれた銃弾がどこに向かって行くのか凝視した。

 俺はフェルトの力を借りて、人を越えた動体視力を得て銃弾の軌跡をたどり、その先に剣が発生させる粒子を使って防壁を作る事によって受け止めてやった。

 一発の銃弾は、誰にも当たることなくその場にポロリと落ちる。

 

 これがジェネレーターが生み出す粒子の使い方の、その一端だ。

 何が起こったのか理解できないジャック犯は、もう一発撃ってやろうと構えるが、時すでに遅し。俺はこの剣が届く距離に来ている。

 拳銃を切り裂き、剣の柄で思いっきり後頭部を死なない程度に殴る事で気絶させた。

 これでこの車両は解放された。

 

 

「フェルト、この先、何人いるか分かるか?」

 

『五人の反応があります。一人、こちらに向かってきているようです』

 

「さっきの銃声に反応しちまったか」

 

 

 ガラリと車両のトビラが開かれて。

 

 

「おい、さっきの銃声は――」

 

「オラァ!」

 

 

 顔をのぞかせた瞬間に、腹にパンチをかましてやって気絶させてやった。

 

 

「わりぃな、見せ場を与えてやれなくて」

 

 

 さて、これまでマリナとかいう娘さんがいなかったということは、この先――先頭の座席車にいるらしい。

 一番前にある座席車はお金持ちが乗るのか、高級感のある車両だった。

 きっとあの中にジャック犯のリーダーと、娘さんがいるはずだ。

 

 

「いくぞフェルト」

 

『はい、ナオシさん』

 

 

 今いる車両から次の車両へと飛び移り、その中に突入した。

 その中には、銃を持った奴らが三人。そして写真で見せてもらったマリナ=エンライトの顔もあった。手足が縛られ、タオルで猿ぐつわをされている。

 

 

「おいおい、なんだよお前は」

 

 

 スキンヘッドの大男が下品な濁声で聞いてきた。

 だからここで俺は、高らかに宣言してやった。

 

 

「俺は何でも屋ジェネシスのナオシ。そこのエンライトさんを助けるためにここに来た!」

 

「何でも屋だぁ? そんなオモチャみてぇな剣をぶら下げてよくここまでこれたもんだなぁ、正義の味方気取りの何でも屋さん? ぎゃははははははは!!」

 

「そんな風に笑ってられるのも今の内だ。早く投降しなよ。後悔することになるからさ」

 

 

 一斉に俺へ向かって銃弾を放った。

 火薬の弾ける音が何度も聞こえるが、それが誰の体にも当たることなく地面に落ちる。

 そう――さっきやったように剣から発生している緑色に輝く粒子を利用して防壁を作り、銃弾を受け止めたのだ。

 

 

「まずは、そのうるせぇ拳銃をどうにかしないとな」

 

 

 何発も放たれる銃弾を粒子の防壁で防ぎながら、俺は接敵。

 前に出ていたスキンヘッドの取り巻きの一人の頭を持ち、もう一人の取り巻きの頭に打ち付けてやった。もちろんその二人はノックアウト。気を失ってその場に倒れた。

 

 そしてスキンヘッドは――。

 

 

「へへへ……中々やるじゃねぇか。だが正義の味方ごっこもこれで終わりだクソガキ。これ以上暴れたらコイツの命はねぇぞ!」

 

 

 あろうことかマリナ=エンライトの頭に拳銃を擦り当てていた。

 一番守らなければならない人物を一番危険な状態にさせてしまった。この失態は許されない。俺はこの失態をチャラにすべく、無傷でマリナ=エンライトを助け出さなくてはならない。

 

 

「まったく、おなじみ過ぎる行動に俺は呆れかえってるよ」

 

 

 まずは暴発を防ぐために、どうにかして銃口を別の方向に向けないとならない。

 

 

「なぁおっさん。分かった、俺は降参する。この剣も――」

 

 

 そう言って俺は剣を地面に落とし、フェルトには悪いがスキンヘッドの方へと蹴り飛ばした。

 

 

「捨てるから。だから、な? お嬢さんを離してやってくれ。そいつはお前らの貴重な交渉材料なんだろ? 殺すわけにはいかねぇよな?」

 

 

 マリナ=エンライトと言えば、ハイレシスの政治における中心人物ブライアン=エンライトの一人娘。彼女を人質に取れば、何らかの要求が出来ると思ったのだろう。

 だからこそ、彼女が乗ると分かっていたこの列車をジャックしたんだ。

 

 

「くそっ……分かったよ。妙な動きはするんじゃねぇぞ!」

 

 

 俺のその考えは当たっていたのか、銃口をこちらに向けてマリナ=エンライトをその場に投げ捨てた。

 

 かかった……!!

 

 俺が剣を捨てた事でアイツは安心しきった。これで俺は攻撃する手段を失ったのだと、勝手な憶測で銃口をこっちに向けるという行動に移してしまった。それが奴の敗因。

 俺の回りに未だ残っている緑色の粒子を長細い形に形成する。それはまるで杭のようなカタチを模していた。

 

 

「フェルト、照準のアシストまかせたぜ。拳銃を狙え」

 

『了解。拳銃をターゲットに固定。いつでもどうぞ』

 

 

 小さな声でフェルトに指示をすると、相変わらず可愛げもない平坦な声で、事務的に話してきやがった。

 しかし、俺もそれに助けられてきてるから文句も言えない。

 とにかく、準備が整ったのなら、躊躇する必要なんて何もない。

 

 

「つらぬけ……!!」

 

 

 緑色の杭は真っ直ぐに――いや、吸い込まれる様にしてスキンヘッドの持っている銃を貫いた。

 

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 ちょっと杭が長すぎて拳銃どころか奴の手まで貫いてしまったけども、悪事を働いた罰だと思って気にしないことにした。俺には関係ないもんね、仕方がないね。

 

 

「うるせぇぞ。ちょいと眠ってろ!」

 

 

 ゴン! と鈍い音が響いたかと思えば、スキンヘッドの大男はその場に倒れた。

 俺は蹴り飛ばした剣を拾い、フェルトに話しかける。

 

 

「フェルト、他に敵は?」

 

『……いないようです。お疲れ様でした、ナオシさん』

 

「おう、お疲れさん」

 

 

 人質にされていたマリナ=エンライトの猿ぐつわと取ってやると、彼女は涙目になりながら叫ぶようにして言った。

 

 

「あ、あの! ありがとう、ございました! とっても、怖かった、です。うう……」

 

「もう安心していいですよ」

 

 

 俺は縛り付けられた手足の縄を切りながら会話を続ける。

 

 

「列車のジャック犯は全員倒してしまいましたから」

 

「あなた一人で、ですか?」

 

「まぁ、一人ではないですけど。この剣……めんどくさいな。フェルト、戻ってくれ」

 

『分かりました』

 

 

 剣が白く光ると、それは一人の女の子を形成する。

 そこに現れたのはゴスロリを着た銀髪のちっこい女の子。さすがにこれには驚いたのかエンライトさんは目を丸くしていた。

 

 

「不思議な……剣をお持ちなんですね」

 

「いや、剣よりはこっちの姿がメインかな? 剣になれる不思議な女の子です。ほら、自己紹介なさい!」

 

「フェルトです。よろしくお願いします」

 

「フェルトさんですか……こちらこそよろしくね」

 

 

 さて、マリナ=エンライトを助けたし、ジャック犯はすべて倒したし、つまりは乗客全員を救い出した。よし、ミッションコンプリート!

 と、安心しきっていたその時だった。

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