剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第2話『運命の出会い』

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 クリオタウンから五〇〇〇キロメートル以上離れた寂れた街までやってきた俺は、お世話になっている人に迷惑をかけないために、一度一人になることを決めた。そしてこうして自分探しの旅を始めちまった。

 それにしても、とても暑い……。のどが渇いて今にもぶっ倒れちまいそうだ。

 どこかに喫茶店とかないかなと、知らない街を歩いていたとき……彼女に出会った。

 

 

「すみません、いいですかお兄さん」

 

「ん?」

 

 

 その声は透き通っていてとても綺麗だが、平坦で感情が篭っていなかった。

 違和感を感じながらも、俺は振り返ってその声の主を見た。

 そいつは安そうでボロボロの白いワンピースを着た銀髪の女の子だった。一目見たときからその異常性には気が付いていた。だけど、俺はとりあえず何も考えずに話を聞く。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「お兄さん、休憩したくはありませんか」

 

「え、休憩だって? ちょうど良かった、俺探してたんだよ休憩できる場所」

 

「そうですか、では着いて来てください」

 

 

 俺は黙って彼女に着いて行く。その道中、彼女は何者なのかと考えた。

 やはり、このような寂れた街にいる女の子なんだから、やはりちょっと普通とは程遠い生活を送っているのかなと、勝手な妄想を広げていく。だけど現実は想像をはるかに超えるものだった。

 

 

「着きました」

 

「ちょっと待ってくれ。これって男女が一緒に入ってゴニョゴニョするところだよね? 休憩所って、違う意味だよね? 何なの? 高度な下ネタギャグなの? 全然面白くないよ。ふざけてるの?」

 

 

 だけど、女の子は無表情を貫いた。

 オイオイオイ、本当に? ギャグでもないってのかよ。

 

 

「ふざけていません。お兄さんが休憩できる場所と言いましたので、ここを選んだだけです。もしかして、私の様な子供は抱けませんか」

 

「…………」

 

 

 絶句するしかなかった。

 こんな小さな子供がラブホテルの前まで連れてきて抱くだとか抱かないだとか、セックスの話をし始めたんだから。

 

 

「私はただ、お兄さんの要望に従っただけです」

 

「いやいやいや、俺は別にエッチしたいって意味で休憩と言った訳じゃないからね。純粋に休みたいからそう言っただけだから」

 

「そうですか。分かりました、ではこちらです」

 

 

 そうして案内されたのは、今度こそちゃんとした喫茶店だった。

 中に入ってみると、ちょっと厳ついマスターと、顔が怖いおっさんがチラホラといた。

 待てよ……この街って怖い人のたまり場か何かなのか?

 

 

「オイあんちゃん、見かけねぇ顔だな。どっから来たんだい?」

 

「はぇ!? えっとぉ、クリオタウンから、です」

 

 

 顔が怖いおっさんに話しかけられて思わず悲鳴みたいな声をだしちまったよ。

 でもまぁ、話し方はなんだか優しげだったから俺は普通に返したけど。

 

 

「クリオタウン!? あんな裕福な場所からなんでぇこんな場所に来たんだい?」

 

「それはぁ……えっと、自分探しの旅、的な?」

 

「がはははは! なんだいそりゃあ。そうかい、おめぇさんドロップアウトしちまったんだなぁ」

 

「ぐぅ……」

 

 

 完全にバレちゃってるな……。

 でもドロップアウトしたような奴じゃなきゃ、クリオタウンからこんなところには来ないよなぁ。あそこは観光地で有名だし、都会な方だし、裕福な街で有名だし。

 ホント、こことは全然違ってクリオタウンは人もたくさんいて活気付いてる。

 

 

「で、あんちゃんは早速その女の子を買ったんかい。そんな小さな女の子を抱くとはぁ、マニアックだねぇ」

 

「え!? いや、これは違――」

 

「あーあー、いいのいいの隠さなくたって。ここはこういう売春行為が当たり前なんだからさ。ま、サイフ全部奪われない様にだけ気ィ付けな」

「は、はい。分かりました、ありがとうございます」

 

 

 とにかく何か飲もう。もう喉が渇いてやってられん。

 俺はアイスコーヒーを、そして案内してくれたフェルトはオレンジジュースを頼むと、キンキンに冷えた飲み物が俺たちのテーブルに置かれた。

 

 コーヒーで喉を湿らせて、俺は気になっていることを女の子に聞いてみた。

 本当はあまり首を突っ込まずに、ここの喫茶から出たらサヨナラするつもりだったが、俺の良心が働いてしまってどうにもならない。

 

 

「お前は、こういう……売春行為はずっと続けてきたのか?」

 

「いえ、お兄さんが初めてのお客様です」

 

「そ、そうか。でも、なんで俺に声をかけたんだ?」

 

「仕事を初めてすぐに目の前に手頃そうな男が現れたので、お兄さんに決めました」

 

「あ、そう……」

 

 

 手頃そうなってどういうことなの。俺、そんなにホイホイついていくような軽い男に見えたのかよ。そりゃあ、進学も就職もできずにドロップアウトしちまったような奴だけどさ、自分が気持ちよくなりたいだけで女の子に乱暴したり、性欲を押さえきれなくなるような男じゃないよ。

 

 

「でさ、君の様な小さな女の子がどうして売春行為を?」

 

「それは主様の命令だからです」

 

「主様……お前の持ち主か」

 

 

 その言葉を聞いて、この世の中には本当に人身売買といったものがあるのだと知った。

 そして、自らの体を売り物にして、金を稼ぐ子供がいる事も知った。

 今まで全然知りもしなかった世界に、俺はただ唖然とするしかない。あるらしいだとか、そういう風に遠い世界だと感じていた界隈に生きる目の前の女の子をこのままにして立ち去るなど、俺はできなかった。どうやら、どこまでも俺はお人好しらしい。

 

 

「命令って事は、金を稼いでこなけりゃいけないって事か?」

 

「そうです。手始めに10万シャムほど稼いで来いと言われました」

 

「10万シャムね……」

 

 

 まぁ、こういう女の子を抱きたいような奴は、大金払ってでもヤリたい変態だ。

 しかも彼女は銀髪美少女。ペドフェリアの野郎ならすぐに飛びつくだろう。そういう奴に捕まっちまったら、彼女は……。

 俺は想像して吐き気を催した。あまりイメージするもんじゃない。

 

 

「君は……売春をしたくないとは思わないのか?」

 

 

 その質問はあまりにも直球過ぎた。

 本当なら、首を突っ込むもんじゃない。こんな小さな女の子に股を開いて金稼いで来い、という命令をする奴なんてマトモなはずがないじゃないか。

 

 きっと権力を持っている偉いクズ人間に違いない。

 それに刃向かうだなんて言語道断。それは命を投げ捨てているようなものだ。

 

 

「正直に言えば、したいとは思っていません。ただ、それが私にできる唯一のことですから」

 

 

 それが彼女にできる唯一の事。

 不自由が当然となっている彼女には、俺が情に訴えたところで何も伝わらない。何も変わりゃしない。きっと彼女は今日も明日も明後日も、いつまでも股を開いて銭を稼ぎ続けるだろう。

 ただ、彼女は明確に「したくない」と言った。

 

 

 その言葉を聞けただけで十分だ。俺が動く理由にはなる。困っている人を見たら放っておけない性格ゆえに、いつも損な役回りばかりだった。それに嫌気が刺してドロップアウトしちまった。

 今回もこの性格ゆえに死ぬ思いをするかもしれない。本当、シャレになんねぇよ。

 

 

「したくないってんなら……お前の主様とやらに会わせてくれ」

 

「ダメです」

 

「何でだよ!? 俺は――」

 

「お兄さんが何をしようとしているのか分かったからです」

 

 

 チッ……やっぱりそう易々と会わせないよな。きっと、その主様とやらはこの街を牛耳る超危険人物に違いないだろうから。

 でも、俺は……。

 

 

「無責任な発言だって分かってるけど、このまま君を知らん振りで帰るだなんて、俺にはできない」

 

 

 そう言って、俺は彼女の手を握った。

 その瞬間だった――心臓を貫くような衝撃が俺を襲う。口から心臓が出てくるような気持ち悪さを感じ、俺は彼女の手を放す。

 

 

「…………」

 

 

 一体何が起こったのか分からず唖然とする中、彼女は無言で俺のことを見つめ続ける。

 そして、しばしの間の後、彼女の口が開いた。

 

 

「お兄さん、名前は何ですか」

 

「……えっと、俺は、ナオシ=サカイ、ってんだけど……」

 

「私はフェルトといいます。先ほどの言葉は撤回します。ナオシさん、アナタに強大な力を授けたいと思います。そして私を助けてください」

 

 

 唐突な手のひら返しに戸惑うしかない。

 でも今の俺に出来ることは、彼女の言いなりになるだけだった。

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