剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第20話『グリフィス=オブライエン』

「おー、グリフィスさん。申し訳ない、先に食事をさせてもらっているよ。なにせ、急な来客だったものでね」

 

「ふん、そんな事は大した問題ではない。それより、コイツらが例の?」

 

「そうです。ジェネシスのみなさんです」

 

 

 グリフィスと呼ばれた男は、高身長のイケメン野郎だった。さらに言葉には圧があり、その声を聞くだけで圧倒的な存在感を覚えた。なんだ、コイツは? その圧倒的なプレッシャーに、俺は身動きできなくなっていた。

 

 

「ナオシ=サカイというのは、お前か?」

 

 

 奴の視線が、俺へと向かう。その問いに答えたくても口が中々開かない。いや、口どころじゃない。緊張しきっていて全身が動かなくなっちまっている。

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 力を振り絞ってようやく出た言葉が、掠れた返答だった。

 

 

「そうか、初めましてだな。グリフィス=オブライエンだ」

 

 

 ……ん? オブライエン? その名は、まさか。

 

 

「妹のマーガレットが世話になったようだな。感謝する。だが、俺は借りなどは作らん主義でな、なんとも腹立たしい……! だから貴様らに俺が直々に仕事を与えてやろう」

 

 

 黙って聞いていれば調子に乗りやがって! 何でもかんでも上からしか物を言えんのかコイツは。ふざけんなよ、何が仕事を与えてやるだよ!

 

 

「さ、サカイさん。この人は『ガーデン』っていう便利屋の社長さんですよ……!」

 

 

 ガーデン……だと……? 俺たちなんか足元にも及ばない一流の大企業じゃないっすかやだー。従業員は1万人越えで俺たちの二千五百倍の人数とか比べ物にならない。

 

 確かフランチャイズ形式を取っていて店舗数は五〇〇を超えるとか。未だに加盟する人が増え続けているからハイレシス全体をそろそろカバーできるらしい。

 やろうと思えば、俺たちの事などそこら辺の草を毟るくらい簡単に排除できるはず。

 

 怖っ! 上から目線は当たり前でしたごめんなさいでした!

 道理で圧倒的な存在感があるはずだ。そのプレッシャーは社長だからこそ、積み上げたものがあるから放つことができるオーラのようなものだろう。

 

 

「あ、あのぅ……仕事と言うのは、どういう?」

 

 

 弱々しく、小さく手を上げながらリリーは質問した。

 するとグリフィスさんは腕を組みながら澄ました顔で答える。

 

 

「なに、簡単だ。マリナ=エンライトの護衛任務を貴様らにやってもらおうと思ってな」

 

「護衛任務だって?」

 

 

 マリナさんの護衛か……。

 なぜ彼女のことを守らなければならないのか。その理由は、きっと、おそらく、いや十中八九アレしかないだろう。

 

 

「あぁ、そうだ。来週になれば選挙が始まる。エンライトが魔法社会推進の保守派であるのは知っているだろう?」

 

 

 やっぱりな。

 確かに、ブライアン=エンライトは『魔法』という力を推進している保守派の政治家だが、当然この考えに反対する者も存在する。科学技術が着々と進展している今の世の中では、魔法は時代遅れの力であるという考えもあるのだ。才能がなければ扱う事の出来ない『魔法』よりも、万人に扱う事の出来る『科学技術』の方が優れている、という考え。

 

 今の世の中は、極端に言ってしまえば魔法技術の進展を守る保守派と、魔法技術を切り捨てて科学技術の研究を進めるべきという推進派に分かれる。

 当然、今のこの世の中は、魔法によって地位を上げた家が存在する。

 

 目の前にいるグリフィス=オブライエンの家は、古来から受け継がれし魔法技術を保有している名家だ。これでハイレシスという国が、魔法の研究はこれで終わりです、と言ってしまえば、その魔法の名家という地位は無に帰してしまうというわけだ。

 

 

「…………」

 

 

 横を見れば、リリーが俺を無言で見つめていた。彼女の友達、マーガレット=オブライエンは、この問題の当事者――いや、リリー自身も問題の当事者なんだ。魔法使いという肩書き自体が危ぶまれているこの現状は、決して無視できるものではない。

 

 

「大きな権力を持っているエンライトは、推進派の奴らにとって邪魔な存在。だから、その身内であるマリナ=エンライトに危害が及ぶ可能性があるということか」

 

「その通り。戦いだけが取り柄の無能ではなかったか」

 

「そうですよ。あまり舐めないでいただきたい。しかし、なぜ俺がマリナさんを?」

 

「貴様はマリナ嬢と同い年と聞いてな、護衛をするには適任だと思ったんだ」

 

 

 その瞬間、マリナさんの体がピクリと反応した。

 

 

「サカイ様が私の護衛に……?」

 

「えぇ、マリナ嬢。もし嫌だと言うのなら、私どもの――」

 

「いえ! 問題はございません。サカイ様、よろしくお願いいたします」

 

「お、おう……。急な依頼だったけども、全身全霊を賭けて、あなたを守りますよ」

 

 

 俺がマリナさんにそう言った後、グリフィスさんはブライアンさんに向き合う。

 

 

「ブライアン、よろしかったか?」

 

 

「えぇ、何の問題はありませんよ。護衛の仕事はすべてあなたに一任しています。どういう風に人員を割こうと私は口を出しません。それに、ナオシさんなら、わたしとしても安心できますから」

 

 

 暴走列車の事件の解決は、思ったよりも信頼を勝ち取ったようだ。

 文句など一言も発することなく、あまりにも簡単に、こんな若造に娘の護衛を任せれるとは、驚きを隠せない。まぁ、それよりも、この俺が高校に通う事になるだなんて思いもしなかった。学力的には絶対に足りないだろうけど、あくまでマリナさんの護衛が目的なんだから、問題はないよな。ないよね?

 

 

「サカイ様、あの、明日から、よろしくお願いします……!」

 

「あ、あぁ。大丈夫、安心して」

 

 

 近い近い近い。まだ食事中、行儀悪いですよマリナさん! ちょっとまって、なんでこんなに好意的なの? あれなの? 一回助けられちゃったものだから落ちたとか、そんなことはないよね。それじゃ、あまりにもチョロインになっちゃうもんね。

 

 

「…………」

 

 

 あの、いつまで俺の手を握っているんでしょうか?

 これマジなの? え、ちょっと待ってよ。

 

 

「マ、マリナさん。まだ食事中ですよ。せっかくの食事が冷めてしまってはもったいないので、食事を再開してはいかがでしょう」

 

「そう、ですわね……。では、食事を再開しましょうか」

 

 

 マリナさんは離れてくれたけど、何でか残念そうな表情をしてらっしゃること。これはもうあれですね。自惚れとかじゃなくて完全に好意を向けられてますね。どうしよう……政治家の娘さんと付き合えないよ、俺。住む世界が違い過ぎるよぉ! 今でもそれを十二分に感じてるってのに。でも断るのも可哀想だし、かといって放っておくのも問題だし、これは困った。困ったぞぉ……!

 

 

「グリフィスさんも一緒にどうですか?」

 

 

 ブライアンさんがそう言うと、バサァ、とコートをなびかせて後ろを向いた。

 

 

「いえ、今日は挨拶だけの予定だったのでな。これで失礼する」

 

 

 と言って、一人颯爽と帰っていったグリフィスさん。なんだかその後ろ姿がかっこよくて、思わず帰っていく姿を見つめてしまった。なんだよぉ、ムカつく野郎なのにメッチャかっこいいじゃん。何あれ、俺と大して歳変わらないみたいなのに貫禄ありすぎだろ。

 

 と、とにかく、マリナさんの護衛任務をやり遂げねぇと。

 このビッグなビジネスチャンスを、無駄にはできない!

 

「なぁナオシ」

 

「なんだよロディ」

 

「死ね!」

 

「表現がシンプルかつ直接的過ぎて笑えねぇよ!?」

 

 

 と、とにかく俺たちは食事会を終え、マリナさんの護衛についての会議を始めたのだった。

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