剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第21話『サボり魔に出会いました』

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 マリナ=エンライトが通う学園『聖ヴァリアント学園』はいわゆるお坊ちゃまやお嬢様が通うような学校だ。セキュリティはしっかりしているし、マリナさんを襲うような人間などそもそも学園内に侵入などできないだろうが……万が一ってこともある。

 

 それで俺は屋上でフェルトと一緒に空を見上げながら佇んでいた。

 結局、マリナさんを護衛するってことで特別に学校に入らせてもらうことになったが、流石にクラスメイトとしてとか護衛ですとアピールしながら教室に居座るのは学校側が許してくれなかった。本当ならば何が起こるか分からないから傍にいたいのだが……生徒を刺激したくないとかなんとかで学園長が首を縦に振らなかった。制服を着て学校内にいるのは許されたのでマリナさんがいる教室の真上……つまり屋上で待機することにした。

 

 隣のフェルトはこの学園のブレザーに身を包んでいる。てか、身長150センチメートルないくらいのフェルトも制服を着れば学生に見えてくるんだから不思議だ。身長だけ言ったら小学校高学年くらい。高校生にしては小っちゃい。

 

 にしても、俺が制服のブレザーを着るなんて思いもしなかった。アレが無ければ一人旅に出ることなく高校生やってたのかもしれない。でも、そうなってたらフェルトと会うこともなかっただろうし、何でも屋を営んでなかっただろうし、リリーとも出会ってなかったんだよな。

 そう考えるとこの運命も素晴らしいものだって思える。

 さてと、インカムのチェックといきますか。

 

 

「あーあー、マイクテスマイクテス、どーですか? 聞こえますかみなさん」

 

『はい、ナオシ様。とてもよく聞こえてます』

 

『こちらロディ、よく聞こえてるぞ。学園の近くで待機してるぜ~どうぞ~』

 

 

 各自のインカムに異常はなさそうだ。俺の声も聞こえているみたいだし、みんなのマイクも大丈夫そうで各々の声もちゃんと聞こえる。さすが一流企業の『ガーデン』だけある。こんな高性能の最新機種を貸していただけるとは思わなかった。音声もクリアで聞き逃すこともないだろう。

 

 リリーは残念ながら平日なので学校がある。学生でアルバイトである以上、学業に専念してもらわなければならないのでここには来てもらっていない。本人は学校を休んで仕事をやりたがっていたが、なんとか説得して自分の学校に行ってもらった。

 

 その代わり、今度彼女に御馳走しなければならなくなったのだが、まぁそれくらないなら良いか。飯の一回や二回ぐらい、いくらでも付き合ってやるしな。

 

 

「こうやって見張っていても意味あるのかなぁ? どう思うフェルト」

 

「何があるか分かりませんから」

 

「そうなんだけどさ、学校に襲撃するとか、そんな目立つようなことするかねぇ?」

 

「学生に紛れている可能性もあると思いますよ」

 

「すでに敵は中にいるかも、ってか……。その可能性は大だな」

 

 

 でもジェネレーターのカメラ機能は……あまり役に立たないか……。詳しいことは分からないが、フェルトのかみ砕いた説明によるとあれは人や物の振動とかを粒子でキャッチして別の粒子に伝達することで映像のように見せているだけらしい。つまり見える映像は緑一色のザラザラしたもの。解像度が低すぎて人ひとりひとりを細かく判別することはできないからな。

 

 と、なれば休み時間に常に一緒にいるとかやらないとダメだよなぁやっぱり。

 事前に決めた通りに教室へ迎えに行くか。その為の学校の制服だ。

 

 

「あれー? サボり魔がいるぞぉ?」

 

 

 と、ここで俺の後ろの屋上のドアが開かれた。ここは立ち入り禁止だったはずなのになぜ他人がここに来る? いや、深く考える必要もないだろ。授業中だってのにここに来て、ふわふわした間抜けな声を出す奴なんて決まってるだろ。

 

 

「お前には言われたくないなぁ、サボり魔さん」

 

 

 仕事でここで待機している俺と違って、ここに訪れた大きな紙袋を持った赤毛の女の子は本物のサボり魔だ。

 

 

「じゃあ、わたしたちサボり仲間だね。うーん、誰だっけ?」

 

「ナオシ。お前は?」

 

「わたしはねぇ、ルビーっていうの。よろしく、ナオシくん!」

 

  

 赤毛で小柄な女学生でルビーって名前……あぁ、マリナさんのクラスメイトの一人じゃないか。てか、ここ金持ちのボンボンが通うような学校なのにサボるような不良学生がいるなんて、こういうのはどんな環境でもいるもんだなぁ。

 抱えていた大きな紙袋を屋上のドアのそばに置き、ルビーという彼女は近づいてきた。

 

 

「で、あなたは?」

 

「フェルトです」

 

「そーなんだ! かわいいね! お人形さんみたいで!」

 

 

 ルビーの興味は俺の隣にいるフェルトに向かったようだ。いきなり手を握ったり抱きついたりするとは、この子のコミュニケーション能力は計り知れないな。フェルトなんて言葉に感情が出ないから冷たい印象を持たれるってのに、お構いなしって感じ。

 良ければフェルトの友達になってこれからずっと関係を持ってくれればいいんだが、如何せん俺たちはマリナさんの護衛の為に潜入した偽学生だし、仕事が終わればこの学校に行くことは絶対ないだろう。

 

 

「ふたりはー、秘密の逢引でもしてたのかなぁ? やらしー」

 

「違うわい! いやー、その、なんだ。サボり仲間だよ」

 

 

 てか、授業中に屋上に関係ない生徒が来ると思ってなかったから、面倒くさいことになったな。ま、休み時間になったら適当なこと言って別れれば良いか。

 

 

「あ、お菓子食べる? たくさんあるんだ!」

 

 

 彼女は扉の近くに置かれていた紙袋を抱きかかえ、一杯に詰め込まれたお菓子を見せびらかしてくる。あの大きな紙袋の中身は全部お菓子かよ。って、元々全部一人で食べるつもりだったのか……?

 

 

「まてまて、それ、全部一人で?」

 

「うん。お昼ごはんと兼用だし」

 

 

 うわー、めっちゃ不健康な食生活送ってるじゃねぇか。仮にもお金持ち学校に通っている生徒だろ? なのになんでこんな……いや、家の縛りがキツイから、その反動でこんなことをしているのかも。

 

 

「これまたずいぶん偏食だな。いつもそんなにお菓子食ってんの?」

 

「うん……家じゃお菓子食べさせてもらえないし、味っけないご飯だし」

 

 

 あー、あれだ。両親の健康な食事の理想が高すぎて縛りがすげーやつだ。前に一度そういった相談を受けたことがある。まぁ、こういったケースは解決が難しい。ほぼ不可能だ。だって他人の家族の食生活に見ず知らずの男が意見を言ったところで変わるわけがないし、反発されるのがオチというものだ。

 

 大抵こんな感じに子供を縛り付けると、反動でとんでもない事をしでかすことが多い。ルビーさんなんてその典型だろう。親の目が届かない学校だと、普段食べれないお菓子を異常とも思える量を食べてしまう。

 たぶん、親御さんの耳に入ったら只事で済まないと思うが、無闇に首を突っ込むのも良くないだろうし、今はマリナさんの護衛が俺の仕事だし、ここは申し訳ないが特にアクションを起こさないことにしよう。でもまぁ、ちょっとだけ付き合ってあげようか。

 

 

「そっか……。じゃあ、お菓子を食べるのってルビーさんにとって至福の一時なんだな」

 

「うん! とっても幸せだよ! だからその幸せをおすそ分け!!」

 

 

 そういって彼女は紙袋の中からスティック状のビスケットにチョレートをコーティングしたチョコ菓子を渡してきた。

 

 

「ありがとう。これは俺も好きだぞ。コーヒーのお供として最高だよな」

 

「え……ナオシくんコーヒー飲むの……?」

 

「そうだけど……何かおかしいか?」

 

「よくあんな苦い飲み物飲めるよねぇ……。わたしには理解できないや」

 

 

 まぁ、コーヒーは好き嫌い分かれるだろうし、パッと見チョコ菓子とかの甘めのお菓子が多めに買っているあたり、ルビーさんは相当な甘党だな。むしろ苦味とか、そういった味に拒否反応を起こしているのかもしれない。俗にいう子供舌というやつだ。

 

 たぶん普段の家の食事をしっかり食べてないんだろうな。だから薄めの味とか、苦味や辛みといった味に慣れなくて苦手になっている。

 この仕事が終わったら彼女の助けになれれば、って思った。だから、もしよかったらって、俺の事務所を紹介しよう。ビジネスチャンスがあればたとえ女学生だろうと、ね……。

 

 

「あ……チャイム」

 

 

 ここでチャイムが鳴り、これで一時限目が終了。さてと、早速マリナさんのもとへ向かうとしますか。

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