剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第22話『帰宅』

「チョコ菓子、ありがとなルビーさん。じゃ、俺たちはこれで」

 

「あ、待って! わたしもいくー」

 

「へ?」

 

 

 は? なんで俺に付いて来るの? 困ったことにならなきゃいいが……まぁ、マリナさんの周りに何か不審な物とか人物とかいないか確認するだけだし、問題はないと思うけど。

 

 とにかくまずは急ぎでマリナさんの教室へ向かう。その間、ずっと俺の後ろにルビーさんが付いて来たけど、彼女の目的って何?

 

 もしかして……俺の正体を知っていて、何も知らないふりをしているだけなのでは? 一見、無害に見える彼女は政界に精通していて マリナさんを狙っているとか?

 ありえない、と断言できないから、一応は警戒しておこう。

 

 

「あ、ナオシ様!」

 

 

 俺に気づいたマリナさんが近づいて来た。……って、ナオシ様呼びはマズいって! ほら、周りの男子学生の目線が大変なことになっている。怨嗟が混じっている突き刺すような鋭い視線だ。

 確かにマリナさんは周りの女学生に比べ頭一つ飛びぬけて別嬪さんだ。美男美女率が高いこの学校でこのルックス……そりゃモテるだろうさ。

 

 

「おいっすー、マリナちゃん!」

 

「あら? ルビー……? 姿がないと思ったらなぜナオシ様と一緒に……?」

 

 

 ふたりは知り合いなのか? ずいぶん仲がよろしいようで。

 

 

「マリナさんはルビーさんと友達なんですか?」

 

「ええ、入学初日から仲良くさせてもらってます。……そ、それより! なぜルビーがナオシ様と一緒にいるんでしょうか?」

 

「えーとね、屋上でね、お話して、お菓子食べようとしたの! でも、チャイム鳴っちゃったから……」

 

「まったく。またアナタは数学の授業をサボって……!」

 

 

 あー、一時限目は数学だったのね。俺も数字の羅列見てたら眠たくなるからな。気持ちは分からんでもないが、やっぱサボりはダメだよね。

 そんなことよりも今は現状の把握だ。俺はマリナさんの耳元でコソコソと話す。

 

 

「ところでマリナさん、普段と違っておかしい所とか無かったですか?」

 

「いえ、特に何も変わったことはなかったですね」

 

 

 何もないとは言っても、次の瞬間にでも何かが起こる可能性があるし油断はできない。警戒を緩めないようにしなくちゃな。

 さて、何か起こるとしたらどういった方法があるだろうか。正面から突撃、空からの襲撃、俺らの様に学生に扮して襲うか……放課後に街中で襲うか。でもこの状況だ。学校が終われば間違いなくマリナさんは今以上の護衛がつくことになる。

 

 だったら、警護が手薄な校内で襲われる可能性が高いか? でも校内に侵入するのは容易なことじゃない。武装してテロ紛いなことをしてド派手に襲いにかかるか? いや、その可能性は低いだろう。敵は政治家……目立つことはしたくないはずだ。

 なら屋上で見張るのはちょっと危険か?

 

 

「とにかくマリナさん。授業中は私たちは教室に居られません。近くで待機してますから、何かあればインカムで声をかけてください」

 

「分かりました。ナオシ様、頼りにしてます」

 

 

 ここで予鈴が鳴り、生徒たちは次々と教室に集まっていく。残念ながら、ここで一旦別れなければならない。マリナさんに気を付けるように言って教室から離れると、階段のところで立ち止まる。

 

 

「で、ルビーさんは教室に行かなくていいのかい?」

 

「だって気になっちゃうもん。マリナちゃんとなに話してたの? やらしーゾ」

 

「まあ、アレだよ。放課後に約束をね」

 

「やっぱりナオシくんはマリナちゃんと付き合ってるの?」 

 

「そういう訳ではないが……と、とにかくちゃんと授業受けなよ、ルビーさん」

 

「ちぇ、わかったよぉ……じゃあ、またねナオシくん」

 

 

 ルビーさんはすごく残念そうに口をすぼめながら教室へとトボトボと歩いていく。

 変に気に入られて一緒に居られるとちょっと動きにくいな。それに授業によってはサボるような悪い子だ。数学とか化学とか、理数系の授業のときは付きまとわれそうだな……。

 

 

「フェルト」

 

「はい」

 

「ここからはちょっと分かれて見張るか。屋上はフェルト、教室付近は俺が見張る」

 

「了解です。何かあれば連絡してください」

 

「もちろんそのつもりだよ。じゃ、いっちょやっちゃるぞ!」

 

 

 フェルトとグータッチをしてお互いに分かれた。彼女が階段を上っていくのを見送ると、教師に見つからないようにマリナさんの教室付近を見張った。

 

 だが、結局のところ放課後になるまで何も起こることはなく、実に平和な一日を過ごすことになった。なぜかルビーさんに気に入られて休み時間になる度に話しかけられたが……もしかしてサボり仲間だと思われてた? もしそう思われていたのなら助かる。クラスの事を聞かれたら答えられないし、クラスメイトの話題にならないのは俺としては助かる。

 

 さて、ここからが護衛の本番と言えるだろう。学校に襲撃するのは目立ちすぎるので、学校という集団から離れるここからがむしろ一番危険な時間だ。俺だったら学校を離れて人気がなくなったところを狙うしね。

 

 

「マリナさん、迎えの車に乗るまで俺とフェルトから離れないでくださいね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 ま、とはいってもマリナさんは家の車で送り迎えされるし、襲われるとしたら同じく車で突撃してくるとか、銃撃されるとか、そんな感じになるだろう。だったらジェネレーターの力の一端、粒子の盾で問題なくやり過ごせるはずだ。

 そしてエンライト家の迎えの車が下校時間に合わせてやってくる。待ち時間はほぼなく、時間ぴったりと言ってもいい。さすがは政治家の送迎車だ。

 

 

「では、お先に乗り込んでください。俺が次に乗ります」

 

「はい」

 

 

 マリナさんと俺、そしてフェルトが乗り込み、車は発進した。

 さて、じゃいっちょ始めますかフェルト!

 

 

「マリナさん、ここからフェルトの姿が剣に変わりますが、魔法みたいなものなので気にしないでください。そして、それが貴女を守る盾となる」

 

「フェルトさんが、剣に……?」

 

「えぇ、いきますよ。ジェネレート、コード:フェルト」

 

 

 おなじみの合言葉を言うと、フェルトの姿が輝きだし、姿が歪み、剣の形へと姿を変えた。いつもは剣を抜いた状態で展開されるが、今回は車内ということもあって鞘に納まった状態で剣モードになった。フェルトが気を利かせてくれたみたいだな。

 それにしても狭いセダンタイプの車の中だと剣を横にしてギリギリ納まるくらいだ。とりあえず足元に置いていつでも持てるようにだけしておこう。

 

 

「それが、フェルトさんの戦う姿……なのですね」

 

「はい。正直俺もちゃんとした原理とかはまったく分からないんですけど。でもこのジェネレーターの力のおかげでここまで生きてこれたんです」

 

「ジェネレーター……言葉の意味としては発電機、って意味ですよね?」

 

「そうなんです。でも彼女がやるのは発電じゃあない。フェルトはこの緑色の粒子を作り出すんです。攻撃も防御も、その他様々な使い方もできる正体不明の粉の様なモノのおかげで出来るんです」

 

 

 マリナさんは剣から漏れ出している緑色の何かに気が付いた。この車に粒子が充満するのはマズイと思い、了承を取って車の窓を少しだけ開けた。すると車の窓から外へ向かって排出されていく。今更だけど、これって人体に悪影響とかないよね? いや、ずっと使い続けていた俺が何でもないんだから大丈夫だと思うけど……。

 

 

「とても綺麗ですわね。キラキラと輝いていて、まるで星々のようで……」

 

「そうですよね。俺もこの粒子を星屑と揶揄することがあります」

 

「確かに、無数に出てくるコレは夜空に輝く無数の星のようですわ」

 

 

 マリナさんが吐き出される粒子の中に手を入れる。緑の粒子は手にくっつくこともなく、指の隙間をすり抜け少しだけ開けた車の窓から飛び出すように出ていく。それを目で追うと……その目線の先に……黒い何かがあった。

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