剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第24話『窮地越えて休む間もなく』

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 次に目を覚ますと目に飛び込んできたのは、リリーの顔だった。

 

 

「サカイさん、気分はどうですか?」

 

 

 その声は、聞けば安心できるほどやさしい声色だった。

 あぁ、俺は生き残ることができたんだな……じゃあ、あの場にいた人たちは無事なのか⁉︎

 

 

「お、おいリリー……ッ!?」

 

 

 倒れている身を起こそうとすると、わき腹にとてつもない激痛が走った。傷口は完全に塞がっているようだが、痛みだけはどうしてか残っている。

 

 

「サカイさん! 今は絶対安静でお願いします。私の魔法で傷口を塞いで止血しましたけど、完治には至っていませんから。それから、マリナさんは無事ですよ。今は事務所の方で休んでもらっています」

 

「そうか……マリナさんは無事か。よかった、本当に」

 

 

 ということは、あの黒い獣の化け物は倒すことに成功したってこと。

 でも何だったんだ? あのとき感じた感覚からして俺はあの黒い獣の機械とどこかでかち合ったらしいが、記憶が戻る前兆的なものなのだろうか? だったら俺はいったい何者なのだろうか? あんな物騒な兵器を知っているだなんて、きっと俺は普通の一般人とはかけ離れた存在なのだろう。どこかで戦士をやってたとか……まさかね。

 

 それよりもまずは目の前の問題に向き合うべきだ。

 

 マリナさんが襲撃を受けたという事実。それが何を意味するかと言えば、推進派が随分と過激な行動に出て、かつ保守派の代表であるエンライトを消そうとしているということ。あんなワケの分からない兵器を持ち出して、政治家の娘を襲うとはいったい何を考えているのやら。こんなの推進派が保守派を潰すために手を上げましたと言っている様なものだ。あまりにも直接的過ぎて全然クレバーじゃない。どこのバカ政治家だ……そんな奴が国を動かしているとは怖気が走る。マリナさんへの襲撃が失敗した今、次はどんな手を打ってくるか分からない。

 

 あまりにも危険すぎる状況だ。

 

 

「サカイさん」

 

 

 この状況下でマリナさんの護衛をするにしても次は何をしたらいいのか考えていると、リリーが呼びかけてきた。

 

 

「選挙活動開始の日までまだ五日あります。どうしますか? その怪我じゃ護衛なんてとても……」

 

 

 そうだ……俺は絶賛大ケガ中で、あの機械仕掛けの獣がもう一度襲ってきたら撃退なんてできない。

 でもこの仕事は何としてでもやり遂げて見せるんだ。だって依頼された俺が仕事を放棄したらマリナさんは誰が守るっていうんだ? あんな未知の領域が襲い掛かってきているのに、戦う術がある俺が逃げちゃダメなんだよ。ケガがなんだってんだ! そんなん気合でどうにかしてやるさ!

 

 

「何言ってんだよ。仕事をほっぽり出すなんてできる訳ないだろう。俺たちジェネシスはまだまだ売り出し中なんだよ。ここで仕事をやりきらねぇでどうすんだ」

 

「でも……」

 

「リリーだって、魔法使いとして今回の任務は放っておけない事案だろう?」

 

「はい……。で、ですけど、サカイさんの体があってこそのジェネシスなんですからね! 無茶はいけません!」

 

「そうだぞナオシ」

 

 

 ここで、聞きなれた野郎の声が聞こえた。こういう場面は女の子だけでいいってのに、よくもまあ、俺も大親友を作っちまったもんだよまったく。

 

「ロディ」

 

「よぉよぉ、ずいぶんと無茶したみたいだな。ま、これから五日間は俺たちをうまく使ってくれよな。お前ほど強い力はないけど、俺には車があるし、リリーは魔法がある。戦えないわけじゃないと思うぜ?」

 

「そっか……そうだよな……」

 

 

 俺たちはチームだ。みんなそれぞれ得意分野があって、できる事とできない事がある。お互いに支えあえるのがチームの良いところだから、それを捨てるだなんてとんでもない!

 まずは相談しあって今後の方針を決めよう。ひとりで考えるには限界がある。段々と視野が狭くなるし、固定観念に縛られてまともな結論を導き出せないだろう。

 

 

「リリー」

 

「はい、サカイさん」

 

「バイトの身なのは十分に承知してるけどさ、俺が動けない分、頑張ってくれるか?」

 

「何言ってるんですかサカイさん。たとえアルバイトでも、私だってジェネシスの一員なんですから、戦えと言われれば私が持っている力を喜んで使いますよ」

 

 

 さすが、最強の見習い魔法使いだ。その自信持ち様は俺に安心感をもたらしてくれる。

 

 

「おう、信頼してるよリリー」

 

「はぇぇ!? な、と、突然なんですかもう! おだてたってパワーアップなんてしないんですからね!」

 

 

 あらら、リリーったら顔を真っ赤絵にさせちゃって。俺に信頼されるのがそんなに嬉しいのか? だったら、その気持ちを認めてあげないと。で、今までよりもこき使ってやるから覚悟しとけよ?

 

 

「おっけい。じゃ、明日以降のマリナ=エンライトの護衛任務の今後を決めよう! みんな、知識を貸してくれ」

 

 

 

  5

 

 

 

 と、いうわけで……マリナさんにはジェネシスの事務所に寝泊まりしてもらうことになった。

 

 フェルトが居るとはいえ、男が二人も居るジェネシスの事務所に半分監禁みたいな保護を許してもらっている以上、リリーにはマリナさんの身の回りの世話をしてもらうことにした。これは女同士にしかできないことだ。頼らせてもらうぞリリー。

 

 それにしても昨日襲ってきた機械仕掛けの獣について、テレビのニュースも、ラジオも、新聞も、何ひとつ報道されていない。露骨な隠蔽だ。きっとこれは推進派が金を積んで大手マスメディアを黙らせているのだろう。

 

 てか、アレはいったいどこから持って来たんだ? あんなものを作れるのは……最先端科学技術が集結し、兵器産業も盛んに行われている大都市デュッセンヴォルフか……?

 

 でも完全自立二足歩行機動兵器なんて今の科学技術では作り出せないのでは? そもそも今存在する人工知能は戦闘だなんてそんな高度なことはできない。精々今は簡単な推論と探求ができる程度だ。例えば、こんにちは、とコンピューターに打ち込むと人工知能が考えてここは挨拶を返す場面だと判断して、こんにちは、と返してくれる。そんな簡単な字面での会話しかできない。あんなに剣がブンブン振られて、粒子の杭が飛び交う様な沢山のアクションが求められる状況下で運用できるほどのものでは当然ない。

 

 まったくもって意味不明だ。

 しかし今は……それどころではない。

 

 

「ほえ~、サボり仲間だ~って思ったのにそもそも生徒さんじゃなかったんだね、ナオシくんは」

 

 

 ルビーちゃんがここに遊びに来ていた。どこからマリナさんがここにいるのを知ったのか分からないが、まぁマリナさんも学友がいた方が安心できるだろうからいいけど。

 

 今日はツインテールじゃなくてポニーテールにしているが、あいかわらずのほほんとした声は健在。あの悲劇があったにも関わらず、調子が変わらないのは少し不気味……いや、もしかすると彼女は無理をしているのかもしれない。

 

 

「ちょっとサカイさん! 無関係の人をここに入れるのはどうかと思います!」

 

 

 リリーの言い分も分かる。ここだって絶対に安全な場所ではないし、むしろマリナさんの周りは常に危険だって思った方が良いだろう。

 でも引きこもって精神がすり減りつつあるこの状況でルビーちゃんの存在は少し助かるのも事実。こういう時の友達の存在って、結構大きいと俺は思う。

 今晩だけでもって俺は思っちゃうんだが……危険か?

 

 

「マクファーレンさんの言うとおりですよナオシ様! ルビーには悪いですが、これは業務の一環であって、それで、その……」

 

 

 言葉に詰まるマリナさん。使命感と感情がごっちゃになって葛藤してるなこれ。心優しいマリナさんだし、親友のルビーちゃんをここから追い出すなんてことはしたくない。けど、無関係の人をここに居座り続けるのもよくない事だって事は分かってるんだ。

 ちょっとオロオロし始めてるルビーちゃんを見て、俺は決心した。

 

 

「大丈夫だよルビーちゃん。ここにいて、マリナさんを励ましてくれるかな? 危険なことが降りかからないように、俺たちが君を守ってあげるからさ」

 

「は、はい、サカイ君」

 

 

 あ、あれ……? 思っていた反応と違うぞぉ? さっきまでののほほんとした雰囲気はどうしたのかな。恥らう乙女みたいにモジモジされると俺もどうしたらいいか分からないんだけども。

 

 

「はぁ……これだから天然スケコマシは」

 

「す、スケコマシとはなんだよリリー!」

 

「そのままの意味ですよ。自覚してない分ひどいと思います」

 

「最低ですね、ナオシさん」

 

「便乗して罵らないでくれるかなフェルト? いや、これはいつものことだったな」

 

 

 仕事のときは自重してくれるけど、日常生活では息を吐くようにして罵ってくるからなフェルトは。でも、そんな中でデレる瞬間がとんでもなく可愛いから問題なし! たとえば、いつも俺にコーヒー出してくれる時とかね。正直あれはいつもキュンとします、ハイ。

 

 

「おいナオシ」

 

「なんだよロディ」

 

「いっぺん死ね」

 

「直球すぎるわ! もうちょっとオブラートにだね、こう、やさしく包んでくれると、俺も苦い思いをしなくて済むんだが」

 

「うっせえ。テメェはオブラートなんて必要ないっての。お得意の粒子で何とかして見せろよ」

 

「あれはフェルトの力であって俺の力じゃないから使えないし、てか、そもそもそういう精神的な攻撃は守れませんのことよ!?」

 

「あーもう! どうでもいいけどこの子も護衛するってことでいいのね!?」

 

 

 この収集つかなくなった場にイライラし始めたリリーは無理矢理話をまとめた。

 

 そもそも、マリナさんの身が危険ということは、彼女の親友なども危険があるということ。特にルビーちゃんはマリナさんと仲が良いみたいだし、不安要素を排除するまでは、こちらで見てた方が安心できるというもの。

 

 

「と、いうことで、選挙当日まではルビーちゃんもこの事務所で寝泊りしてもらうことになるけどいいかな? もし不満があるというなら遠慮なく言ってくれてもいいし、家に何か物を取りにいきたいというのなら、ロディが家まで送っていってあげるけど」

 

「ここに泊まるんですかぁ!?」

 

「嫌なら、リリーが直接ルビーちゃんの家に行くけど、どうする?」

 

「こ、ここで、いいと思います……」

 

「そうか、そう言ってもらえると助かる」

 

 

 ただでさえ俺は怪我してて足手まといなんだからな。戦力を分散するのは好ましくないし、何かあったときはすぐさま対応できるからな。ルビーちゃんがここに泊まっても良いと言ってくれたのは助かる。

 

 

「まぁ、奥の部屋は男子禁制にしてるし、寝るときはフェルトとリリーがしっかりと守ってくれるから安心してくれてもいいよ」

 

「は、はい。分かり、ました」

 

 

 初めての場所にお泊りすることになって緊張気味なのか、言葉がただたどしいルビーちゃん。それでものほほんとした雰囲気は絶やさす、緊張しきっていたこの場が少しばかり和やかになったのは良い傾向だ。

 

 そして、その晩。

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