剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第27話『360』

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 衝撃の数を数える限り、ナオシの野郎が張っている壁はあと2枚か?

 

 

「おいナオシ! 壁はあと何枚だ!?」

 

「あと2枚! あと2枚だ!!」

 

 

 やっぱりな。さて、この窮地を脱するにはどうすれば良いかな……。

 幸いここはコーナーとか障害物がない真っ直ぐな道路だ。今のところステアリング操作とアクセルワークを間違わなければバランスを崩すことない。今は俺が何とかしてやる!! でも次のことはまるで思いつかん!!

 

 

「ちょっとピットマンさん! 本当に大丈夫なんですか?」

 

「うっせぇぞ小娘。ちょっとは俺のことを信頼してくれてもいいんじゃねぇの?」

 

 

 助手席でピーピー文句たれまくっている見習い魔法使いは言うなれば小姑だね。コイツの夫になる男は尻にしかれそうだ。おー怖い。

 お前も何か案出してくれよリリー! 俺は頭が悪いんだからよぉ!!

 

 

「ローにぃ……」

 

 

 エリカが不安そうな表情で俺を見てくる。

 やめてくれ、そんな顔を向けられたら何とかしねぇとって気持ちが爆発しちまうじゃねぇか!

 

 

「大丈夫だよエリカ。俺を信じろ」

 

「うん。わたし、ローにぃをしんじる!」

 

 

 隣に座る口うるさい小娘にくらべ、俺のことを信じてくれるエリカは心のそこから守ってやりたいと思える。

 だったらやってやるしかないだろうが。男なら、大切な女の子を守ってやれなくてどうすんだよ!

 

 じゃあ、どうやってここを切り抜ける?

 このまままっすぐ進んでいてもジリ貧だ。T字路に出ちまったらアウト。そうなる前にナオシとフェルトちゃんが張ってくれた壁が全部壊されてもアウトだ。

 

 いや、待て……。

 

 壁が全部壊されたら後ろのデカブツは俺たちを押しつぶそうと前に出てくるよな? つまりそのタイミングで壁で受け止めて押し付ける様な形になっている俺の車は一瞬フリーになる。

 

 その時に何をすればいい?

 

 前に逃げるか? いや、後ろのデカブツの幅を考えるととても逃げきれない。だったらどこに逃げる? いや答えはもう出ているか。前がダメなら後ろに逃げるしかないじじゃん? だってあのデカブツは俺らを押しつぶそうと角度が付いた斜めの状態でいるわけだ。

 

 だったら隙間……あるよな?

 

 そこに滑り込ませるしか……ないよな?

 

 

「もう少しで四枚目の壁が破壊されそうだ! みんな、対ショック姿勢!」

 

 

 来た……!

 

 ナオシが張ってくれた壁がすべて破られるその時がベストなタイミングになる。

 

 重要なのはタイミングだ。早すぎても、遅すぎても、後ろのデカブツに押しつぶされることになる。バックミラーとサイドミラーから見える視界と、そしてナオシの野郎の合図を頼りにソレをやらないとならない。責任重大だ。みんなの命は今、俺の運転にかかっている!

 

 

「ナオシ! 壁の状況を聞こえるように言ってくれ! 考えがある!!」

 

「正直最後の壁も心もとないぞ! たぶんすぐ壊れちまう!!」

 

「んなこと分かってる! 耐えられないこともな!! だから壊れる瞬間を見極めて俺に合図を送れ!!」

 

「難しいこと言ってくれるじゃないの! 分かったよロディ、任せろ!!」

 

 

 手汗がすげー出てくる正直気持ち悪いし、手元が滑ったら最悪だ。俺は素早くズボンで片方ずつ手を拭ことにしたが、正直時速140キロメートルまで速度が出ているのに一瞬とはいえ片手運転は肝が冷えるな……。

 

 

「ロディ! 準備頼む! もう耐えられない!」

 

「分かった! 割れる瞬間に合図を頼むぜ!! 合図したらナオシは出来るだけ低い姿勢になれよ!」

 

「了解!!」

 

 

 さぁて……いっちょやりますか。額からは気持ち悪い脂汗が噴き出ているが、拭っている暇はない。今ステアリングから手を放すわけにはいかないんだ。

 

 

「みんな、どっかに力いっぱい掴まってろよ!」

 

 

 俺は車内のみんなに最後の通達をした。

 

 そして……その時がやってくる。

 

 

「今!!」

 

 

 俺の耳にナオシの合図が届く。

 その瞬間――俺の右足はアクセルペダルからブレーキペダルへ素早く移動し、一気に底まで踏みつけた。

 時速はついさっき確認した時よりも速い180キロメートル越えの状態からのハードブレーキングだ。

 

 キィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

 

 という激しいスキール音と白煙。荷重が前へ行ったこの後に取る行動は――ステアリングを左に切りながら、クラッチを切り、サイドブレーキを思いっきり引くことだ!

 

 すると車の前後が逆転する。鳥の形をした鉄のデカブツが目に入ってきた。ナオシの野郎とフェルトちゃんはこんな大きなものを受け止めてたのか……と思っていたのもつかの間。この車が通れそうな隙間を見つけた俺は、そこ目がけて車を滑り込ませる。

 

 白煙をモクモクとタイヤから出しながら、滑り続ける車のコントロールをしっかりと行う。再び車の進行方向を戻し、地面に激突し、道をズタズタにしながら滑り続ける鉄の塊を俺は眺め続ける。

 

 よし!! なんとか抜けたッ!!

 

 車の速度を落とし、俺の車はその場で止まった。

 

 これが360度(サブロク)ターン。

 

 車をその場で一回転させながら、コントロールし続けるテクニック。

 

 

「へへ……どうだナオシ。この窮地、しっかりと打破してやったぞ!」

 

「ああ! すげーよロディ!! 最高だ!!」

 

 

 すぐにでもナオシとハイタッチをしたいが……あ、あれ? ステアリングから手が離れないぞ? ステアリングを握りしめたまま、開かなくなっちまった……。心臓も聞こえるくらいバクバク言ってるし、頭も少し痛い。

 

 そうか。緊張して、気が解けていないんだ。ぶわっと噴き出ている汗を拭いたいが、どうやら俺はすぐに動けそうにない。

 

 もう俺は役に立たないし、ここからはナオシの仕事だ。頼んだぜ親友!!

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