剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第3話『ジェネレーター』

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 連れて来られたのはラブホテルだった。

 だけど、それはセックスするためではない。

 

 他人に見られてはならないことをこれからやるのだと、フェルトは言った。

 そして、失敗すれば頭の中が狂って廃人になるとも言われた。

 

 正直これから何が行われるのか想像が付かなかった。だけども助けたいだとか、あんな無責任なことを言っちまったし、逃げ帰るだなんて情けないこと出来るわけがない。

 

 もし仮に、これから行うことに成功すればフェルトを助け出すことが出来るというのなら、俺は喜んでこの身を捧げよう。

 

 

「ナオシさん」

 

「お、おう……」

 

「先ほども言いましたが、これから想像も付かないような精神的苦痛がナオシさんを襲うでしょう。ですがそれに耐え切れれば、誰も抗うことができないような力を手にすることができます」

 

「分かった……で、どうすりゃいい?」

 

「私の手を取り、こう宣言してください。ジェネレート、コード:フェルト」

 

 

 なんだ? 魔法の呪文的な何かなのか?

 でもそんな呪文聞いたことがない。俺には魔法の才能がないけど、知識としては多少は持っている。だから、もしかすると、この世から秘匿されていた禁じられた魔法なのかもしれない。

 

 正直めっちゃ怖いけど、ここで逃げるわけにはいかない!!

 

 

「いくぞ……ジェネレート、コード……フェルト」

 

 

 その瞬間だった――俺の世界は唐突に光を失った。

 意識が飛ぶ。

 そして次に見えた光景。それは見たことのない空間だった。

 

 どこまでも果てしなく続く黒。暗黒の世界がそこに広がっていた。自分の身は見えるけど、逆に言えばそれしか見えない。俺は今立っているのか、それとも宙に浮いているのかも分からないくらいに、黒に染まっていた。

 

 

「なんだ? 俺はなんでここに?」

 

 

 思わず一人呟く。

 歩みを進めてみるが、その行動が本当に前に進んでいるのかも分からない。

 もしかしたら前に進んでいるつもりがその場に留まっているのかもしれないし、逆に後退しているのかもしれない。コレだけで不思議な感覚に頭がおかしくなりそうになる。

 これがフェルトの言っていた精神的苦痛なのか? だけど、だったら何をすれば強大な力が手に入るってんだよ。

 

 

「どうすりゃ――」

 

 

 その瞬間だった。

 おそらく後ろ。誰かがいるような感覚があった。振り向くとそこにいたのはフェルト。

 先ほどまでこの空間には俺だけだったはずなのに、いったいどこから現れたんだ?

 でも、そんなことより今はこの状況をフェルトに聞く方が先だ!

 

 

「お、おい、フェルト? ここはいったい――」

 

 

 言葉を最後まで吐き出すことはできなかった。

 なぜなら、彼女の姿がいきなり変わってしまったからだ。

 それはとてもキレイで、アメ細工のように緑色に透き通った剣が宙に浮いていた。その剣身の色と同じ緑色の塵を撒き散らすそれは、目にしただけで毒を吸い込んだように頭がかち割れそうな痛みが俺を襲った。

 

 

「ゴホッ……ガッ……ぐぅぅ……!! な、なんだこれ」

 

 

 理解できなかった。

 でも、考える余裕も、ましてや苦しんでいる余裕すらなかった。

 宙に浮く剣の先は、この俺を指していたのだから。

 

 まさかとは思うがこの俺の身を貫こうとしてんのか?

 

 次の瞬間、短く風が切れる音が聞こえた。俺は考えることなく、本能だけで身体を動かして飛んできた剣を回避していた。

 自分の体すら確認できないこの状況で、だ。

 

 

「俺を、殺す気、なのか?」

 

 

 この黒い空間に充満する緑色の塵。それを吸い込むたびに、頭の中がおかしくなりそうになる。呼吸をしないわけにもいかない俺は、塵を吸い込むしかなかった。だがその度に、体中に激痛が走り、頭の中がクラクラしてしまう。

 

 だが、その感覚にうずくまっている暇はない。真っ黒な地面に突き刺さった剣は、再び俺を襲おうとしている。

 

 

「あああああああああああああああ!! があああああああああああああああ!!」

 

 

 俺は苦痛に負けないように、ただひたすら叫んだ。そうでもしないと自分を見失いそうだったし、動くことすらままならない。

 

 こんな意味の分からない場所で死んでたまるかよ。

 

 俺は言った。フェルトを助けたいと。その言葉を無責任なものにしたくない。宣言したからには、絶対にこの試練を乗り越えて力を身につけなくちゃいけないんだ!!

 

 

「いいぜ……。どっからでもかかって来いフェルト。まずはお前を乗り越え、第一歩を踏み出そう。やっちゃるしかないんだ。そうだろ?」

 

 

 返事なんて返ってこない。だが、それでいい。この宣言は自己満足のようなものなんだから。

 再びその剣は俺を狙って飛んできた。

 どんな攻撃が来たって避ける他ない。抵抗する手段なんて、この俺にはないんだから。

 

 寸で飛んできた剣を避けたが、今度は地面に突き刺さることなく、空中で急停止し、俺に向かって横振りしてきた。俺は身を反らし、間一髪で避けた。いや、避けきったと思ったのだが、俺の鼻の先っちょが少しだけ切り落とされ、ボタボタと血がたれるような感覚に襲われる。

 

 そしてそれに気が付くと更なる痛みがこの俺を襲う。

 

 だが、叫ぶ暇すら与えない。剣は休むことなくこの俺を切り刻もうと何度も、何度も、何度も、縦に、横に、斜めに、時には突きで、この俺を殺そうとしてくる。

 この至近距離の戦い。緑色の塵も濃くなっているのか、さっきよりも体中に走る激痛が更に強いものになっているし、実を言えば意識すら朦朧となりつつあるくらいに頭がボーとしてきた。

 

 

「ああああああああああああああ!! あぁ!! ああああああああ!! ふっざけんなああああああああああああああああああああ!! がぁぁぁああああああああぁぁぁああ!!」

 

 

 だから俺は気を失いそうになる度に叫ぶ。

 だけど、これをずっと続けていくわけにもいかない。必ず限界が来て、俺はフェルトに殺されるんだ。

 ならば。

 ()られる前にやるしかない。

 

 

「いい加減にしやがれフェルトォ!! この俺に力を寄こしやがれェェェ!!」

 

 

 次に飛んできた剣を、俺は最小限の動きで避け、そしてその剣の柄を――掴んだ!!

 

 

「やってや――」

 

 

 これ以上にないくらいの激痛が俺を襲った。言葉も出なかった。特に剣を掴んだ両手が千切れているんじゃないかと勘違いするくらいに、または肉どころか骨まで粉々にされているじゃないかと勘違いするくらいに、そしてその先の腕、胴体、足、頭、全てが巨大な針に貫かれているんじゃないかと勘違いするくらいに、とてつもない大きな痛みが襲い掛かってきた。

 

 

「あ…………」

 

 

 言葉を出すのはこの一文字が限界だった。

 だけど、意識だけは失わないようにと、俺は気合だけで踏ん張った。

 精神力がものをいうのなら、この俺にはこんなんじゃ足りないぞ。俺は、これ以上の苦痛を……。

 

 

『ナオシさん』

 

「…………」

 

 

 もう、口すら開けられない。だけどフェルトの声は確かに聞こえた。聞こえていた。

 

 

『あなたを、私の使用者として認めます』

 

 

 平坦な声なせいでとても事務的な言葉に聞こえるけど、でも何となく、その言葉の奥に喜びの感情が見えた気がした。

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