剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました   作:加藤あきら

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第31話『蹂躙』

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 これが俺の過去の記憶?

 

 俺のこの力は、人の手によって意図的に付けられた強大な力だってのか?

 

 どうりで……筋トレも、スポーツも、何もやっていないのに身体能力が高いわけだよ。

 

 ずっと不思議に思ってたんだ。いくらジェネレーターの力を手にしたからって、戦闘訓練も何もしていないド素人が、銃弾飛び交う戦場に何度も赴いて生きて帰ってくるなんて普通はありえない。

 

 蒸気機関車を受け止めたりしても無事だとか、普通はありえないよな。

 俺の体ってずいぶんと丈夫だなぁ、なんて暢気に考えたけど。こんな過去があったってんなら納得だわ。なんだよ、すげぇな俺。そんでもって――最低だ。

 

 両親ぶっ殺すとか、普通じゃねぇよ。

 

 だけど、それがどこか他人事のようにも感じている。この俺が今思い出した記憶の中の俺と、別人なんじゃないかって思えるんだ。これは逃げなんかじゃない。確かに別人だと感じてる。

 

 記憶の中の俺は俺であって俺ではない。

 

 自分でも何を考えているか分からなくなってる。

 考えれば考えるほど混乱してくる。だから難しいことを考えるのはもうヤメだ。

 とにかく今は――。

 

 

「目の前のこいつらを、なんとかしなくちゃな」

 

 

 早くしないと、この街が血みどろの死の街に変わっちまう。この前、たった一体のあの機械仕掛けの獣に食堂を利用していた学生たちが惨殺された。だったら、100を超える数がこの街に放たれたらどうなるのか。

 

 そんなの、簡単に想像できる。

 

 許されるわけがない。誰が、何のために、こんなことをやっているのか分からない。

 

 選挙の妨害にしてはやりすぎだ。こんな、制御できない《領域》の力を持ち出すなんて……推進派の奴らは一体何を考えてやがる!?

 

 

「ふざけんな……」

 

 

 こいつら全部皆殺しにしてやる。どうせ機械仕掛けの兵器でしかない。だったら遠慮はいらねぇよなぁ!?

 

 

「やっちゃるぞフェルト。この許されざる存在を、このまま野放しにするわけにはいかない。なら誰がやる? 俺たちしかいねぇよな?」

 

『はい、ナオシさん。あれのデータは前回の戦闘で収集済みです。サポートはお任せください』

 

「ああ、頼むぜフェルト」

 

 

 俺は剣を握り締め、目一杯の粒子の槍を作り出す。

 前回はこれでトドメを刺した。今回ばかりは出し惜しみはしねぇ。最初から全力全開、遠慮なく行かせてもらうぞ。

 

 

「ターゲットロック! 一斉射出だッ!!」

 

 

 無数の緑色の槍が、黒い獣に向かって放たれる。

 それは正確に黒い獣を貫き、身動きを止める。突き刺さった奴らはもがき、その場からどうにかして動こうとするがそんなことはさせない。地面まで突き刺さった槍は、そう簡単に破壊なんてできるわけがない。それが粒子の力なんだ。

 

 

「どこから来たかは知らねぇが、テメェらは一匹残らず破壊し尽くしてやる!」

 

 

 あまりにも軽い緑色に透き通った剣を振るう。しかし、その軽さから考えられないほどに切れ味は鋭く、黒い獣をバラバラに切り刻む。槍で突き刺した機械仕掛けの獣たちを破壊しつくしているが、そりゃあ全てを突き刺したわけじゃない。

 

 

「そんな反撃は読めてるんだよォ!!」

 

 

 上から黒い塊が降ってくる。そこから伸びてくるのは灰色に鈍く輝く鋭い爪。目にも留まらぬ素早い攻撃だが、今の俺に通用するとは思わない方が良い。ま、機械仕掛けのカラクリごときじゃ、そんなことは理解できないと思うがな。

 

 粒子で防壁を作り、それを受け止める。

 

 そして攻撃した獣を防壁の粒子を爆発させることで吹き飛ばした。

 

 俺は獣の蹂躙を再開する。

 

 今は、自分が何ができて、何ができないのか、間違いなく理解できている。記憶を取り戻したことがキッカケになったのだろうか。よくわからないが、今の俺はよっぽどの相手じゃなけりゃ、負ける気がしない。

 

 一度戦ったことのある機械仕掛けの黒い獣は、何もかもが見通せる。

 

 最初の襲撃で戦ったときには見えなかった攻撃も、見て、判断して、行動する余裕がある。

 槍を作り出して射出し、剣で切り刻む。獣の攻撃は冷静に防御し、またはかわし、カウンターでぶっ壊す。

 

 

「やべぇぞ……見える、見える、見える! 視界がいつも以上にクリアだ。フェルト、お前何かしたのかよ」

 

『いえ、ナオシさん。私は何もしておりません』

 

 

 後ろから襲い掛かってきた獣に、粒子で作った杭を飛ばして視界を奪う。

 

 

「じゃあ、これはやっぱり俺の力だってのか?」

 

 

 視界を奪ったおけげで、獣の攻撃は空を裂く。その隙に、俺は剣を縦に振り落として両断してやった。学園で戦ったとき、何であんなに苦戦したかってくらいに弱いぞ。

 

 

『はい。おそらくは、これがナオシさんが持っている本来の身体能力だと思われます。いったいどうされたのですか』

 

 

 まだまだ獣の数は50ほどいる。囲まれないように立ち回っていたはずだが、奴らも学習能力があるのか上手く回り込まれ、囲まれてしまった。しかし、これも想定していなかったわけじゃない。対策は……ある!!

 

 

「思い出したんだ。フェルトが言っていた、俺がいた本来の世界ってのよォ!!」

 

 

 俺の周りに浮遊している粒子を一斉に爆発させ、襲い掛かってきた複数の獣は吹き飛ばされることとなった。今の俺に、勝てると思ったら大間違いだぜ?

 

 

『記憶を、取り戻したのですねナオシさん』

 

 

 爆発させたおかげで粒子は少し心もとない量になってしまった。だが、俺の武器は粒子だけじゃない。さっきから使っているこの剣も、切れ味抜群の強大な力だ。

 全速力で走り、獣に接近。向こうの攻撃を許さぬスピードで、剣を振るう。

 

 

「あぁ、そうみたいだな。だけどさ、どこか俺の記憶でもないように感じるんだ」

 

 

 剣一本じゃ、ちょっと面倒臭いな……何か良い方法はないのか?

 

 

『その理由は、私にも分かりかねます。ヘーレジアにその答えがあるかもしれません』

 

 

 良い案が浮かんだ。できるかどうかは分からないが、やってみる価値はある。

 

 

「ヘーレジアに答えがあるかもしれない、か……。なるほど、だが、どうやったらそこに行けるか分からんからどうしようもないな」

 

 

 粒子を短剣の形に形成した。これを使えば、手数を増やすことが可能なはず!

 

 

『ナオシさん、目標の数、残り30です』

 

「報告ありがとよフェルトちゃん! さぁ、ラストスパートだ。やっちゃるぜ!!」

 

 

 左手に握っている粒子でできた緑色の短剣で獣の攻撃を受け流し、右手に握るジェネレーターで獣を切り刻む。

 

 左から迫ってくる獣に対しては、奴より先に左手を伸ばして短剣で目をつぶす。コイツらは視界を奪われると明らかな隙が生まれる。おそらく、機械仕掛けゆえに、視界がなくなったことで何らかの不具合が生まれるせいだとは思う。

 

 この性質を利用し、積極的に目潰し攻撃をしていく。距離がある敵には粒子で杭を作り出して飛ばし、近くの敵には粒子で作った短剣で素早い刺突を繰り出す。

 

 動きが止まったところで剣を使って確実に壊れるまで切り刻む。これがコイツらの攻略法だ。機械仕掛けゆえに存在する弱点が分かればこっちのもの。後はミスをしないように単純作業を繰り返すだけだ。

 

 さぁ、一方的な蹂躙ってやつを見せてやる!!

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