剣になれる銀髪美少女を助けた俺は何でも屋を始めることにしました 作:加藤あきら
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「あなたが、ここら辺のストリートレーサーたちを総なめにしているっていうロディ=ピットマン?」
俺の前に現れたのはスーツを着こなす黒髪の美女だった。
走り屋、ストリートレーサーたちが目覚める夜のクリオタウン。そこで俺はスポーツタイプの赤いセダン車に寄りかかりながら炭酸水を飲んで喉を潤わせていた。
ゴフ……とゲップをして、俺はその美女さんに返事を返す。
「そうだけど、アンタは?」
「私はダイナ=オコナー。ちょっとあなたに依頼がしたくてね。報酬は弾むわ、どう? 話を聞いてみない?」
あまりにも胡散臭い。依頼だか何だか知らないけど、こんな美人さんをわざわざ差し向けるあたり狙っているとしか思えない。女に誘惑されて、ホイホイついていったらそこは悪い奴らの巣窟で、人としての道を外れさせるような――例えば人殺しとかやらされるに違いない。
突然の依頼、美人の仲介人、高報酬――話を聞いてはいけない三連コンボで俺の答えはもう決まったようなものだ。
「興味ないね、他を当たりなよ。俺ほどじゃなくても、腕の良いドライバーなんてそこら中に転がってる」
確かにここら辺では俺に敵う走り屋はいない。幾人も俺に挑戦しては敗れ、また挑戦しては敗れ、気が付けばトップレーサーに君臨していた。
だけど、変な仕事をさせたいのなら、わざわざ俺じゃなくても手ごろな奴はいくらでもいる。金が欲しいような奴に頼めば二つ返事で依頼を受けるだろうさ。
「いえ、アナタでなければダメなのよ」
その女はグイッと体を寄せて、耳元に口を近づける。
「ちょっと人の命が危なくて、助けてほしいの」
はぁ? 人の命が危ないから俺に助けを求める……? 意味分かんねぇよ。
胡散臭さが増し過ぎて鼻を摘みたくなるレベルだ。
「そんなに疑わなくてもいいじゃない。そうね、これを見ればアナタは動かざるを得ないはずよ」
彼女が取り出したのは写真だった。
目を凝らしてよく見てみると……そこに映っていたのは――。
「……ッ!?」
「ようやく事態を把握できたようね」
「……ちょっとドライブでもどうだい、お姉さん」
「えぇ、いいわよ。でも過激なのは止してね。静かな夜のドライブといきましょ」
そして俺はその女を車に乗せて、夜の街を走り出す。
ストリートレーサーが集まる場所から離れ、あまり交通量がない場所へ――っていっても向かっているのはナオシの野郎の仕事場。
なんだか最近、新しい仕事を始めたとかなんとか。あいつの事務所ならどんな話だってしても大丈夫だろ。もしかしたら、ナオシの協力も仰げるかもしれない。
「じゃあ改めて自己紹介するわ。私は
助手席に乗っているオコナーとかいう女は、身分を証明する手帳を見せながら言った。
「ILA!? マジかよ……」
「ええ、
それなら知ってる。
このストリートレースの世界にいれば嫌でも話は聞くくらい大きな組織だからな。
「クリオタウンの郊外を拠点としてるストリートレーサーのチームだよな? 何でもあまりよろしくない事も手を付けてるとかなんとか」
「そう。その
「……何の」
「ある荷物をドゥームタウンまで届けて欲しいとか。でも、その荷物を抱えたままドゥームタウンまで行く自信なんてない。なぜだと思う?」
ここクリオタウンからドゥームタウンまではだいたい600キロメートルくらいはある。
結構な距離だが、普通に車で走るなら一日かければ何の問題もなく着くような距離でしかない。だけど、運転技術があるような奴をわざわざ募集するくらいなんだから、きっとそれは時間指定だとか、警察が出てくるヤバい仕事に違いない。
「荷物って……なんだ? 薬か?」
「お察しの通り、積み荷は麻薬」
「その運び屋をやって欲しいのか?」
「ホント、察しが良くて助かるわ。アナタには
「なるほど。俺の車を追跡しながら、そのグレゴリーって奴が現れる場所を見つけ出して身柄を確保したいと」
「その通りよ。どう? やってくれる?」
その問いに、俺はすぐには答えなかった。
確かにこの女が見せてきた写真。それを見ちまったからには俺が動かないわけにはいかない。だけど、まずは下準備を整える。それからでも返答は遅くはないだろう。
「一回降りるぞ」
「ここは?」
「信頼できる友達のところだ」
そうここはどこまでもバカで善人で、とっても頼りになる俺の親友ナオシ=サカイが営む何でも屋『ジェネシス』だ。
「あなたの友達がここにいるの?」
オコナーさんは怪訝な顔で俺を見てくるが、その言葉を無視して俺は階段を上がって事務所の入り口に立つ。
ノックもせずに俺は無遠慮でズカズカとアイツの事務所に足を踏み入れた。
「おーい、ナオシ。いるかー?」
俺の呼びかけに事務所の奥の方から「ちょっと待ってくれ」と声が聞こえてきた。その声が聞こえたその部屋は居住空間となっている――とはいても寝床とシャワーくらいしかないけどな。
「お、おまたせ……」
すると額に汗をかきながらナオシは部屋から出てきた。それに続くようにして銀髪の小さな女の子が現れる。その衣服は……乱れていた。
「な、ナオシ……おめぇ……。おまわりさん、コイツです!」
俺は後ろにいた女にそう言うと、彼女は困った顔をしながら俺たちを眺めていた。
「お前、突然可愛らしい女の子連れてきたと思ったらやっぱりそういう事がしたかっただけなのか。お前だけは、お前だけは親友だと思っていたのに……ロリコンだなんて失望したよ」
「ままま、待てぇぇぇい?? これは違う! 違うんです。いやね、ちょっとフェルトをからかったら腹パンされたというか……」
「からかったって……そうか、だからフェルトちゃんはナオシを殴って逃げようと――」
「違うから! フェルトにゴスロリ着させたらあまりにも似合っていたから……ね」
「なんでゴスロリ………………?」
「い、いやさ、フェルトが物欲しそうにこの服を見てたから買ってやっただけというかなんというか――ってか、お前がここに来るなんて珍しいじゃん。依頼か?」
ふはは、コイツの困った顔が面白くてからかい甲斐があるってもんだ。
さて、悪ふざけはこの辺にして真面目な話をしましょうか。
「そう、依頼だよ。報酬は弾むぜ。成功した暁にはちょっとばかし大金が入るらしいからさ」
そして俺たちはテーブルを囲むようにしてソファに腰掛けた。
「まず、コイツの紹介からだな。オコナーさん、コイツはナオシ=サカイ。この街で何でも屋をやってる元ドロップアウトボーイだ」
「ドロップアウトは余計だ! まぁ、間違いじゃねぇけど。えと、改めまして、ナオシ=サカイです」
「こちらこそ、私は
ナオシの野郎も、彼女がILAの人間だと知って心底驚いていた。
そして二人は握手を交わし、話は本題に入っていく。
「で、どのような依頼ですか?」
「今回、ピットマンさんに依頼したのは近々行われる麻薬の移送してもらいたいというものです。そして我々はその売買を行っているグレゴリーを確保したい。そういう話なんです」
「なるほど。で、ロディは俺に何をして欲しいんだ?」
その質問を、俺は待っていたんだ。
「エリカを、助けて欲しい……!」
エリカ=シェリンガムは近所に住んでいるまだまだ小さな女の子だ。整えられた金髪と、碧い瞳がとても綺麗で、みんなの人気者。
俺はエリカにとって近所に住んでいる優しいお兄さんってところだろうか。俺に懐いていたし、ご両親がいないときは俺が面倒を見てた。そのくらいには仲がいいと思う。
俺がマイカーの整備をしていると、決まって彼女は近づいてきて俺の作業黙って見てる。一息つきたいと思って工具を置いた瞬間に、エリカは笑顔でこう言うんだ。
――お車直ったら、ローにぃと一緒にドライブしたいな。
だけど、まだそのエリカの望みを俺は叶えられていない。いつも俺が「暇ができたらな」って言って先延ばしにしてたからだ。
そしたらこれだよ。
女が見せてきた写真に写っていたのは、
やつらはきっと、これを材料にして俺に危ない仕事をやらせようとしてる。今回の麻薬を運ぶ仕事は、俺にさせるのが一番確実だと踏んだんだ。
やっかい事は他人に押し付けて、自分たちは甘い汁を啜るとか、まるで映画の中の悪党のようだな。
だから、そんな悪党には正義の鉄槌を。
最近のナオシとフェルトの活躍は少しだが耳に入ってくる。フェルトは自身を剣の姿に変え、そしてそれを操るナオシは鬼神のごとく敵を倒すとか。
俺にできるのは車の運転くらいだから、悔しいがエリカを直接奴らの手から助けてやることはできない。
だからこそのナオシだ。
頼んだぜ、俺の一番の親友さんよぉ!