【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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任務達成

 ――ミーシャは消えたストライクのシグナルにも気付かず、一方的に敵を殺す悦楽に酔っていた。

 

「――やっと、殺せる!」

 

 ミーシャがニンマリと笑いながら引き金を引こうとする。その寸前、なんとジンのコクピットが開いて、中からパイロットが出てきた。

 

「――!!」

 

 ミーシャはその顔を見て、思考が真っ白になる。

 ……忘れもしない。父の仇。その父の仇は両手を上げている。まるで降参のポーズにも見える。

 

「投降する気?」

 

 ラミアスが疑問を浮かべる。

 

「違う! ナタルさん、私はコクピットから出てきた敵なんて知らない! 敵はまだ戦おうとしてる! 撃たないと殺される!」

 

 だからこのまま撃つ、そうミーシャは悲鳴を上げるように叫んだ。

 

「バレンタイン少尉、敵は投降している! ――彼は捕虜だ。撃つことは許さん!」

「パパの仇なの! コイツがパパを撃った!」

 

 ナタルは目を見開く。ラミアスも、他のクルーも一様に何も言えない。

 

「――バレンタイン少尉」

「ナタルさん! 撃たせて……! そのあとどうなってもいい、撃たせてよ!」

「……お前は、軍人なのだな」

 

 ミーシャの動きが止まる。何を言われているのかわからなかった。だが、涙が溢れてくる。

 

「何言ってるのさ。なんで私が……」

「お前は許可を求めた。――何も言わず撃てばいいものを、許可を求めたのだ。私はお前を尊敬する。――よく、堪らえた」

「……私は、ナタルさんと同じように軍人、なの」

 

 ミーシャはポロポロと涙をこぼしながら言う。

 

「……ごめん、なさい。カメラが、おかしくて、見間違えちゃった。……ねぇ、ナタルさん。これでいいんだよね? これが正しいんだよね」

「ああ。お前は正しい。ジンを回収させる」

「……うん。――聞こえる、ジンのパイロット」

 

 外部スピーカーでミーシャはディアッカに呼びかける。

 

「今からお前のところに回収班を向かわせる。――抵抗したら撃てるから、是非抵抗してほしいな」

 

 その声に篭められたとてつもない憎悪と殺意に当てられて、ディアッカはぶるりと震えた。

 

「冗談じゃないぜ……あんな子供がなんで魔弾の悪魔なんだよ……」

 

 ディアッカは回収班の兵士が来てアークエンジェルに収容されるまで、魔弾の銃口に睨まれ続けることになった。

 

 アークエンジェルがジンとディアッカの回収を終えたあと、ミーシャにさらに不幸が舞い降りる。

 ――ストライクの信号がロストしたというのだ。

それを聞いたときのミーシャの感情をなんと表せばいいのか……。ミーシャは最初、その知らせを信じなかった。

 

「嘘だよ」

 

 バスターのコクピットに座ったまま、ナタルに返す。ミリアリアは今席を外している。――恋人が死んだのだ。無理もないだろう。ミーシャも同じように悲しいはずなのに、辛いはずなのに……なぜか涙も出てこない。感じるのは深い喪失感。まるで脳みそが感じることを拒絶したかのような……急速に現実感が薄れてしまったような、そんな感覚がしていた。

 

「……事実だ。遥か後方で信号が途絶した」

「まだ戦ってる。キラを見捨てられないよ」

「だが――」

「ならなんでイージスは来ないの。キラが死んだならイージスが来るはずだよ」

 

 ミーシャの尤もな意見も、今は受け入れられることがない。もうアラスカの防衛圏に入っているのだ。アークエンジェルにできることは、ただ進むことだけ。

 そんな折、ラミアスが会話に割り込むようにして言った。

 

「ストライクとキラ君の捜索、回収はオーブに頼んだの」

「――? オーブ? なんで?」

「なんでって……」

「別の国の軍隊になんで頼むの? 別に今敵がいないんだから探せばいいじゃん! カガリのときはそうしたでしょ?」

 

 ラミアスは答えに窮する。カガリの時は、カガリがオーブの姫君だったからこそ探すことを許可したのだ。だが……。

 

「――もうアラスカの防空圏に入ってるわ。私達は任務を達成しなければならないの。……もう、転進なんてできないわ」

「ラミアスさん……」

「――残念だけど、これは決定よ」

 

 ミーシャに一方的に言いつけて、ラミアスは会話を打ち切った。

 

「――ホントにキラは死んだの?」

「……おそらくは」

「そっか」

 

 ミーシャは通信を切ると、コクピットから出る。心配そうなムウがコクピットの前で待っていた。

 

「おお……嬢ちゃん、大丈夫か」

「――ホントのことなのか全然わかんない。ホントにキラは死んだのかな」

「……俺も同じ気持ちさ。まさか坊主が死ぬなんて」

「――部屋に戻ってるね」

 

 ミーシャはムウの方を見もせずに言って歩く。

 ……何もかもが遠い夢の世界のことのようで、現実に起こったことなのか……理解できなかった。したくなかった。

 

 ――ヘリオポリスから続く長い、長い航海の果てに、アークエンジェルはついに辿り着いた。最終目的地、アラスカに。

 ミーシャは戦って、戦って、戦い続けた。失ったものは数知れず、得たものはない。

 それでも、終わったのだ。

 

 ――アラスカの会議室で、何人かの将校が会議をしていた。議題は航海の果てに辿り着いたアークエンジェルについて。

 

「……素晴らしい」

 

 一人の将校が言った。

 

「この戦果、この戦績。何もかもGシリーズに求められていたもの以上だ」

「これなら誰に対しても名目が立つ……。唯一の瑕疵はつい最近なくなったようだしな」

 

 うむうむ、と全員が頷きあう。

 

「コーディネーターがアークエンジェルを守っていたなど……本来有り得てはならないことだが」

「まさかバレンタイン氏の娘が生きて、しかもバスターに乗っていたとは。ナチュラルの彼女も共にいたのならいくらでも言い訳はできる。――それに見給えこの戦果を!」

「落ち着き給え、諸君。ここでは彼をバレンタイン大尉と呼び給えよ」

「それは失礼。しかしサザーランド大佐。彼女はあまりに幼すぎます。広告塔にするにも……」

 

 サザーランドと呼ばれた男は楽しそうに笑う。手元の資料にはミーシャのプロフィールが書かれていた。

 

「広告塔? もちろん戦後はそうなるだろうが今は……アズラエル氏が彼女を望んでいる」

「――バレンタイン氏の御息女をまさか使い捨ての駒にするつもりではあるまいな? いくらアズラエル氏でもそれは――」

「早とちりをするな。むしろ逆だ。彼女に栄光の道を、最善の未来を用意するためだ」

 

 見給え。そうサザーランドが言ったのは、彼女の未来。ディスプレイに無数の情報が表示される。戦艦の画像。モビルスーツの画像。そして、人員編成の画像だった。

 

「これは――2番艦に加えて最新鋭のGシリーズ……!」

「さらに、艦長は彼女と仲の良いバジルールを当て、アズラエル氏も乗艦する。ここまで豪勢な艦もなかなかないぞ」

 

 サザーランドの言葉に、他の将校も満面の笑みで頷く。

 しかし、そこで一人の将校が不安げな表情になる。

 

「――しかし、彼女はラクス・クラインのファンだそうですが……」

「別にいいではないか。彼女はただのアイドルだ。戦場に出てくるわけでもあるまいし」

「それもそうですな! はは、失敬」

 

 和気藹々と会議は進む。負け越しの地球軍にとって、連戦連勝、前人未到の撃破数を誇るミーシャの話題はいくらしても楽しい話題だと言えるだろう。なにせ、名高いエンデュミオンの鷹……ムウはモビルスーツ5機の撃墜で英雄となったのだ。戦艦の撃破数こそないが、モビルスーツの撃破数は凄まじい。キラと比べても雲泥の差である。

 強敵はだいたいキラの担当だったとしても、軍に置いて数は印象深く、そして絶対だった。

 

「では、アークエンジェルには予定通り……」

「まかり間違っても彼女に悟られるなよ。誤って彼女も『事故』に遭うなどということも避けろ。彼女の退避を確認してから実行に移せ」

「了解」

「全ては、青き清浄なる世界のために」

「青き清浄なる世界のために」

 

 ――地球軍の闇が、こんな中枢にいる。

 それが、この戦争の核心だった。

 

 ――アークエンジェルクルーはアラスカ基地に降りることも許可されていなかった。ミーシャはひたすら自室に籠もっていたので気付かなかったが、かなりの時間が経っていたらしい。その間ミーシャは泣くこともせず、ただこれまでのことを振り返っていた。

 両親が死んだこと……初めての人殺し……守れなかったフレイの父……撃墜されるルミナ……キラとフレイとの傷を舐め合うかのような関係……バルトフェルトとの会談……キラに決別を告げられたこと……そして、永遠の別れ。

 

 何度も何度も、振り返るつもりもないのに頭が勝手に繰り返す。忘れることを許さないかのように、何度も、何度も。

 ふと、部屋の扉が開いた。ぼんやりとした頭で入口を見ると、ナタルが立っていた。

 

「……あ……ナタルさん」

「……この部屋から出たか?」

「ううん。ここにはトイレもあるし……水もあるし。キラが死んだって聞いてからは部屋を出てない。なんでそんなこと聞くの?」

 

 ナタルは言いにくそうにして、それからややあって、口を開いた。

 

「ミリアリア・ハウとフレイ・アルスターが捕虜を殺しかけた」

 

 それを聞いたミーシャはあまり感情を動かさなかった。そういうこともあるかな、という気持ちもあるし――死んだと聞かされたとしても拍手喝采するだけだ。ミリアリアとフレイにはどんなにお礼してもしたりないだろう。

 

「ふーん。私も参加すれば良かったかな。――で、何したの?」

「銃を突きつけたらしい」

「どこで調達したんだろ。私も持ってないのに」

「お前に持たせたら、少しの危機で自分に向けて撃つだろう」

 

 一度、自衛のために銃を持たせるかと言う話もあったのだ。だが、弾は一発あればそれでいいとミーシャが言ったので取りやめになったのだ。

 

「拷問されるの嫌だもん」

「私も嫌だが……お前は諦めるのが早すぎる」

「割と粘ってるつもりなんだけどね……」

「――私は、この件をラミアス艦長の責任問題にするつもりだ」

「……え、急にどうしたの? 仲良かったよね」

 

 ナタルは制帽を被り直す。否定も肯定もしなかった。

 

「……お前も疑問に思ったように、私も、ストライクの捜索をオーブに任せたことは疑問に思っている」

「やっぱりおかしいよね?」

「――ああ。そして……。サザーランド大佐がお前に会いたいと」

「サザーランド……? 誰?」

 

 ナタルはその名前を出すのをとても躊躇った。だが、出せと言われた以上は出すしかない。

 

「ムルタ・ アズラエル氏の友人だ」

 

 反応は劇的だった。バッとミーシャは飛び起きると、ナタルに詰め寄るようにして近づいた。

 

「アズラエルさんの友達なの? 会うよ! アズラエルさんは来てる?」

「……いや。聞いていない。お前は……お前は、アズラエル氏と知り合いなのか?」

 

 ブルーコスモスの盟主、コーディネーターを人と思っていないような人間と、知り合いなのか。ナタルはその時どんな思いでそれを聞いたのか。

 

「知り合い? そんなもんじゃないよ! パパの友達で、私の友達! コーディネーター嫌いが玉に瑕だけど、いい人なんだよ?」

 

 その答えに、目眩がしそうだった。

 友達? ブルーコスモスの盟主と?

 

「どこで知り合ったんだ?」

「え? そんなに気になる? うちによく遊びに来るから自然に? あとパーティとかで?」

「そ……そうか」

 

 ナタルはさっきから戸惑いっぱなしである。司令部に呼び出されて査問を受け、ひたすらヘリオポリスでアグニを撃った件やらアルテミスが沈んだ件やら第8艦隊先遣隊が全滅した件やら第8艦隊がほとんど全滅した件やらを詰められたかと思えば、キラの存在は口外するなと……コーディネーターが存在するから戦争が終わらないなどという全開のブルーコスモス節を聞かされる。かと思ったらその人物がミーシャと会いたいと言ったのだ。警戒するかと思えばミーシャは友好的だし。ナタルは何が起きてるのかさっぱりわからなかった。

 

「――とにかく、連れて行くぞ」

「うん!」

 

 ナタルに連れられて、ミーシャは司令部の一室に通された。

 

「サザーランド大佐。バジルール中尉以下2名。命令により出頭しました!」

「楽に休め」

 

 サザーランド大佐は答礼すると、ミーシャとナタルに椅子を進めた。ミーシャは緊張した面持ちで座る。しかし、バルトフェルトのときのように警戒している様子はない。ここは大西洋連邦なのだ。周りには味方しかいない。ただ偉い人と会うこと自体に緊張しているのだ。

 

「さて……バレンタイン少尉」

「はい!」

「まず、お父さんとお母さんのことは残念だった」

「――はい」

 

 ミーシャは顔を俯かせる。

 

「だが、君はよく戦い、少ない戦力で艦を守ってくれた」

 

 本心でサザーランドは言う。戦闘データが満載された船。機体データ自体は不要になったとしても、積み重ねられたそれは新機体ばかりの地球軍では喉から手が出るほど欲しい。それを命がけで守り通した幼子には、感謝しかない。

 

「それに……コーディネーターの……なんだったか、そう、ヤマトくんか。彼のことも残念だった」

 

 だからこそ、ほんのひとかけらも思っていないようなことでも、目の前の少女を慰めるためならば言える。少女はその言葉でサザーランドをある程度信用したらしい。悲痛な面持ちで頷くと、小さくお礼を言った。

 

「重ね重ね、残念だった。ときに、バレンタイン少尉。君には転属命令が出ている」

「転属……? アークエンジェルから離れるの?」

 

 ミーシャは隣のナタルに聞く。ナタルはミーシャの顔を見て頷いた。

 

「ああ。私とフラガ少佐、それからアルスター二等兵も同じように転属だ。――珍しいことではあるが、ないことではない」

「そうなんだ……。みんな一緒?」

 

 サザーランドは残念そうに首をふる。

 

「君とバジルール中尉は一緒だ。しかし、フラガ少佐は教導隊へ、アルスター二等兵は広報班へ転属となる」

「広報……? CMとか出る?」

「……まぁ、そういうこともあろう」

「へー。いいなー。人気者!」

 

 サザーランドは微笑ましげにミーシャを見つめる。

 

「戦争が終わったら、君もどうかね」

「いいの!? ……いいんですか?」

 

 とん、と肘で訂正され、慌ててミーシャは言い直す。

 

「礼儀は構わないよ。データは見せてもらった。休めた日のほうが少ないような行程だ。多少の行儀は構わない。それこそ、教育隊でもあるまいしな」

 

 はっはっは、とサザーランドは鷹揚に笑う。ナタルはこの男は本当に先程自分達を鬼のように追求した男と同一人物なのだろうかと疑い始めていた。

 

「さて……。君らは明日0800人事部へ出頭せよ。アラスカから潜水艦で輸送する手筈になってる」

「バスターは?」

「もちろん、潜水艦に積み込む予定だ。そうだ、最後の確認をしておかねば」

「――確認?」

 

 サザーランドはミーシャに向き直る。これだけはどうしても聞いておかねばならなかった。

 

「……今なら、君を民間人として逃がすこともできる。だが、戦うというのならば、最後まで戦ってもらうことになる。ここが、引き返せる最後のポイントだと思って欲しい」

「戦う」

 

 ミーシャは即答した。強い意志がその目にはあった。

 

「……みんな死んだ。パパもママもルミナもトールもキラも、知ってる人、仲良かった人……ほとんど死んだ」

 

 だから、とミーシャは続ける。

 

「だから、戦う。ザフトは私からみんな奪っていった。もう奪わせない。誰の大切な人も」

 

 辛いことばかりだった。苦しんでばかりだった。

 ――でも、最後に守りたいものは守れた。軍人というものに憧れもできた。

 どんな苦境でも規律を守って戦うということが、カッコいいと思ったのだ。今なら、憧れた軍人になれる。そういう純粋な気持ちだった。

 もちろん、人前で言えない理由もある。ザフトは許せない。殺せると言うなら殺せるだけ殺したい、とか。まだルミナの仇を討ってない、とか。

 でも、そういう気持ちをお偉いさんに言ったらマズイということくらい、幼いミーシャだって知っているのだ。

 

「そうか。素晴らしい心意気だな。見習いたいものだ。――おそらく、転属先ではアズラエル氏にも会えるだろうな」

「アズラエルさんに? ――楽しみ!」

 

 ミーシャはこの基地に来てから一番の笑顔でそう言った。

 

「では下がってよろしい。バジルール中尉、彼女を頼む」

「かしこまりました」

 

 敬礼と共に、ナタルはミーシャを連れて部屋を出る。

 

「――素晴らしい」

 

 サザーランドは連合の未来が明るいことに、深い笑みをたたえた。青き清浄なる世界が、近づいている。そんな気がしていた。

 

 

 

 ――その日の夜。捕虜を収容する牢屋にミーシャとナタルはやってきていた。人影を感じて、中に収容されているディアッカは起き上がる。

 

「……ガキ?」

「うん、私の顔見覚えない?」

 

 愛らしくくりくりとした茶色の瞳。ショートカットの黒い髪。よそ行きのお洒落な模様がついた服に、赤いチェックのスカート。真っ白なスニーカー。愛らしい顔立ちの幼子を見て、ディアッカは首を傾げた。

 

「いや……お前誰?」

「ヘリオポリスのあの日、お前が殺した男の娘だよ」

 

 ディアッカは目を見開く。心臓が早鐘を打つ。つい最近ミリアリアとフレイに殺されかけたディアッカだ。ここに彼女が何しに来たのか簡単に推測できる。彼氏の仇を討つのは我慢できても親の仇は無理かもしれない。ディアッカは恐怖と緊張で喉を鳴らす、

 

「……私はこれでも大西洋連邦の軍人だからね。捕虜への暴行はしないよ。聞きたいことがあるの」

「な、なんだよ」

「デュエルのパイロットの名前を教えて」

「……なんでそんなこと知りたがる?」

 

 ミーシャはその返答を、黙秘だと受け取った。鋭い目をして見下すように睨む。

 

「大西洋連邦軍人は拷問もしない。でも尋問は許可されてるの」

「それがどうしたよ?」

「お茶の間に流せない尋問って知ってる?」

「――は?」

 

 しゅるり、とミーシャはスカートのポケットから真っ白なタオルを……どこにでもあるありふれたタオルを取り出した。嫌な予感がひしひしとする。

 

「濡れタオル……って言ったらザフトでもわかる?」

「そ、そりゃ、そりゃ拷問だろ!?」

「尋問。強化尋問だよ。もちろん素直に話してくれるならしないよ。苦しいのやだよね?」

 

 その目は爛々と光っていた。今から拷問……いや、尋問するというのに実に楽しそうだ。それはそうか。親の仇を痛めつけられるチャンスに心弾まないわけがない。

 ディアッカは脅しに屈した。

 

「……イザーク。イザーク・ジュールだ」

「イザーク、ジュール。ルミナの仇」

「――なんで知りたがるのか聞いてもいいか?」

 

 ミーシャはタオルをしまうと、頷く。

 

「大気圏突入の戦いでそいつが避難船撃ち落としてね。戦争中に仇を討つのもいいけど……戦後戦争犯罪者として銃殺刑ってのも面白いかなって」

「――避難、船?」

 

 ディアッカは目に見えて狼狽える。イザークから逃げ出した兵士を撃ち落としてやったとは聞いていた。……もしかしてそれが?

 

「非武装の民間人しか乗ってないシャトルだったよ。ザフトの兵士様はナチュラルだったら私と同い年の民間人でも憎い敵に見える節穴しかいないみたいだね」

「……それは」

「……ま、言いたいことは言ったし。もういこ、ナタルさん」

「よく堪らえた」

 

 別に、とミーシャは答える。

 

「私、軍人だもん」

「――そうだな」

 

 二人はそう言って、牢屋から出ていった。

 ディアッカは壁を思い切り殴りつける。

 

「――クソッ!」

 

 避難船だと? 民間人しか乗っていなかった!?

 ディアッカはその日、そのことが頭を巡り続けることになる。 




査問は原作の倍くらい詰められました。しかしダイジェストっぽくなるのでカットします
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