【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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恩をあだで返す

 船のシミュレータールームでミーシャは訓練に勤しんでいた。敵は三機。ビームやらバズーカやら銃を山ほど装備した青い機体、カラミティ。変形して空を自由に飛び回り、鉄球や口のビームなどで意表を突いた戦闘を繰り広げる黒い機体、レイダー。大きな盾でありとあらゆるビームを曲げて防ぎ、軌道が曲がる不思議なビームを放てる緑の機体、フォビドゥン。その三機を相手に、ミーシャは圧倒していた。

 

「クソ! 反応が……!」

「反射神経で戦争やってんじゃないよ、オルガ! 狙って撃っては集中力なの!」

「飛んでもないのになんで当たらないんだよ! 必殺!」

「殺せてないよ、クロト! 当てられないようにこっちが撃ってるからに決まってるでしょ!」

「ちっ! うらああ!」

「盾持ってるのに後ろに下がらないで! 前に出て攻撃するの!」

 

 三機の猛攻をバスター一機でミーシャは凌ぐ。正確な狙いは敵に回避を強いる。まだ経験の浅い三人は回避しながら狙って撃つが難しい。回避しながら撃とうとすると、必ず避けられるのだ。

 

「三人とも連携意識して! なんで旧式のモビルスーツ相手に手こずってるのさ!」

 

 ミーシャとしても必死だ。隊長として負けられないし、三人の訓練に手を抜けば人間に戻る研究が終わる前に死んでしまう。それでいて指導もしなきゃいけないなんて、正直ミーシャの手に余る。色々聞こうとしたが、ナタルは別の船でずっと待機しているらしい。また離れ離れ。正直くじけそうになったこともある。

 ――だが、なんとか今までやれている。

 

 終始ミーシャの有利で進んでいた訓練だったが、ブーステッドマンの三人の戦闘限界時間が近づいたため中断することとなった。戦闘後のアンプルを摂取する三人を眺めながら、隣の研究員にぶちぶち文句を言う。

 

「――で、コクピットにアンプル持ち込む件許可下りたの?」

「いえ、それがまだ」

「今の様子見た? まだ戦闘終わってないのに限界来たんだけど? っていうか子供の私より長く戦えないってどういう戦闘する気だったの?」

「いえ、それは――」

「……あなたに言ってもしょうがないけどさ。せめて一か月分くらいはコクピットに薬常備するべきだって」

「上にも連日の訓練データは提出してます。すぐに許可は下りるかと」

「まったく。日頃の訓練が限界時間来るまでとか信じられない」

 

 ミーシャは薬の副作用でしんどそうにしている三人に近づく。三人は立ち上がってミーシャを見る。

 

「三人とも、よくなってると思う。でも、強い人ってあんな感じで本当に攻撃当たらないから、強い人と交戦したときは真っ先に残り時間を気にして、無理せず母艦に戻ること」

「でもよ、隊長。勝手に戻っていいのかよ?」

 

 オルガ・サブナックが若干不安そうに聞く。オルガはこの中で最も未来について悲観しており、何よりも薬が切れたときの苦しみを恐れている。乱暴そうな口調に反して、その瞳はしっかりとした理性と知性が見て取れる。

 

「今はね。コクピットにお薬常備できるようになったらそれも変わるけど……正直薬切れた状態で戦場にいられても困るっていうか……トールより頼りないっていうか」

「トール……隊長の戦友だったって人?」

 

 クロト・ブエルが興味深そうに聞く。彼は一番シミュレーター訓練を楽しみにしている人間だった。ゲームみたいで楽しいと心から思っている。ゲームが趣味の自分よりも遥かに強く、部下である自分達に優しいミーシャに強い興味があるのだ。

 

「ん……。そう。アークエンジェルの時にね。私と同じ民間人だったんだけど、私みたいに強くなくてね。二回目の出撃であっさり死んじゃった」

「……俺らはそんな簡単に死なない」

 

 ぶつぶつと呟くように言ったのは、目の下のクマが目立つシャニ・アンドラスだ。彼の人柄はミーシャもまだつかめておらず、自由時間はひたすらヘビメタを聞いている。だが、仲間意識がないわけではない。

 

「……じゃ、午後からは戦闘中に薬を飲む訓練ね。もう午前はゆっくりしてて。私アズラエルさんと会ってくる」

「なぁ、隊長」

 

 オルガがシミュレーター室から出ようとしたミーシャに聞く。

 

「ん?」

「俺たち本当にこれからも生きれるのか? ぶっちゃけ、あんたがいくら言っても、あのオッサンが俺たちを元に戻す研究なんてするわけないと思うんだが」

 

 ミーシャはしばらく悩むようなそぶりを見せる。それから、部屋にいる研究員を見る。

 

「私はしてるって聞いてる。今んとこ嘘って証拠もないよ。研究員も最近は優しいでしょ?」

「――まぁ、それはそうだが」

 

 ミーシャが来るまでは実験動物としか彼らを見てこなかった研究員も、最近は違う。――いずれ人になるかもしれない。そう思っただけで研究員たちはかつての倫理を若干取り戻したのだった。上からの命令と、『こいつは機械のパーツで実験動物』そんな意識が、彼らの意識と倫理をどこまでも低下させていた。

 

「もしやってないってわかったら……モビルスーツ奪って大暴れしちゃえ!」

「……そうならないために、俺たちは薬を制限されてたんだよ」

「でも今してないでしょ? 信頼ってそういうもんだと思うよ」

 

 ミーシャはそう言うと、シミュレーションルームを出た。

 

「――変なガキ」

「ですね」

 

 シャニが言って、クロトが同意する。だが、嫌いではない。

 

 ――オーブ近海、アズラエル船団の旗艦。ミーシャはブリッジで腕を組んで不満そうにしていた。

 

「……オーブに攻め込むのが用意してくれる戦場ってこと? 気を遣ってくれてありがとう、アズラエルさん。私に命の恩人を殺せって言うんだね」

 

 荒れている原因は一つ。この船が攻め込もうとしている対象が一度は命を救ってもらった国、オーブなのだ。地球連合とオーブが違う国ということは理解している。しているが……。ミーシャの心はざわめく。

 

「まぁまぁ。我々地球連合とオーブは別の国です。別の国ということはつまり、戦争になる可能性があるということですよ。そこまではわかってもらえますか?」

「それくらいわかるよ。私が我儘言ってるってこともね。でもそんなに攻めないとダメ?」

 

 アズラエルは書類をミーシャに渡す。彼女は受け取ると、書かれている内容を読んでいく。……アズラエルがこの戦闘に踏み切った理由が資料付きで書かれていた。アラスカ司令部がそっくりそのまま自爆して消失した件や、その次にパナマに攻め込まれて大多数の人員を失ったこと。そして、宇宙に上がるためのマスドライバーを保有していて味方になってくれそうなのが現状オーブしかいないこと。

 ――しかし、オーブはマスドライバーの貸与を断固として拒否。時間的余裕がない連合はオーブへの武力による交渉に移行せざるを得なかった。その書類を粗方読んだミーシャは苦い顔をする。どんな交渉もなしのつぶてで全く譲歩を引き出せないことが書いてあった。

 

「……お金出して貸してくださいじゃダメだったの?」

「ウズミ・ナラ・アスハにその程度で交渉できたと報告を受けたら、私は虚言をまず疑いますねぇ。彼はひたすらに頑固なのですよ」

「……アスハか」

 

 ミーシャはアズラエルとオーブ代表との会話の記録を見て呟く。ウズミ・ナラ・アスハ。なら娘の名前はカガリ・ユラ・アスハか。あの人、偉い人どころか代表の娘だったんだ。ミーシャは心底不思議に思う。……なんでそんな人がレジスタンス組織の一兵卒として戦ってたんだろう? もしかしてアスハ家の伝統とか? 益体もないことを考えながら、書類を読み進める。

 ――ザフトと戦うためのルートがなくなるのは困る。困るが……。この会話記録。ウズミの頑固さは確かに娘のカガリそっくりだ。

 

「ご存じなのですか?」

「――娘さんがお転婆だって知ってるくらい」

 

 正直娘がザフト相手に戦ってたことを突っつけば譲歩が引き出せなくもないかもしれないが……。キラと約束したしなぁ。ミーシャは亡き戦友との約束を破るつもりなど毛頭なかった。

 

「そうなんですか。それで……ミーシャはオーブとは戦えませんか?」

 

 ミーシャはしばらく悩む。書類の資料をじっと見つめて、考える。

 

「……書かれてる作戦だと、マスドライバーとモルゲンレーテが目標だね。じゃあ本土迎撃に向かってきたオーブの人たちとは戦う。でも、民間人を撃ったりはしたくない。むやみな虐殺はダメでしょ?」

 

 欺瞞だな、とミーシャは思う。流れ弾で何人死ぬことになるのやら。ミーシャは暗い表情をしつつも、それでも命令拒否をする気はなかった。

 

「――その辺が落としどころですかね。では、ミーシャさんの部隊は味方と連携して迎撃部隊を蹴散らしてください。新型のテストの方はおいおいでいいのでミーシャは実戦での指揮に集中してください」

 

 ミーシャはアズラエルに書類を返して、頷いた。

 

「わかった。……ねえアズラエルさん」

「なんでしょう?」

「アークエンジェルは……ホントに沈んだのかな」

「信じられないでしょうが……事実です」

 

 つい先日、アラスカが落ちたという報が入った。ミーシャの下に入ってくる情報は錯そうしている。やれ自爆しただのやれ敵の新兵器だの……。だが、確かなことはあの場にいたザフト勢力と防衛隊は全滅したということだ。

 ミーシャは顔を俯かせる。アラスカは後方のはずだったのに。戦争に安全なんてものがないとミーシャは改めて思う。――一気に知人友人を亡くしすぎて、ミーシャの感覚はもはや麻痺しかかっていた。辛いと思う間も、悲しいと思う間もなく、ただただ知っている人たちが死んでいく。苦しい。ラミアスやサイ、マードックをはじめとするアークエンジェルのクルーが死んでも涙一つ出てこない自分が嫌だった。

 ――もう、戦闘マシーンになっちゃったのかな。部下たちよりよっぽど生体CPUだよ。

 

 ミーシャは内心でそう思った。

 

「弔い合戦するためにも、貸してもらわないとね」

「ええ。何も根こそぎ奪うつもりはありませんよ。我々は海賊ではないのですから」

「うん。――そう言えば、パナマの方って大丈夫なの?」

 

 アラスカと時を置かず襲撃され奪われたパナマ基地に関してはミーシャも気になっていた。船で聞いた噂も、気になっている。

 

「落ちたことはご存じですよね? 何が気になるのですか?」

「ザフトの連中、動けなくなったMSに対しても捕虜取らなかったってホントなの?」

「ええ。ザフトの基本方針は『捕虜は取らない』だそうですよ?」

 

 ミーシャはぎり、と歯を食いしばる。

 

「……ずるい。私は、私はパパの仇を討つの我慢したのに」

「彼らはきっとあなたが慈悲をかける相手ではないという事ですよ。ザフトは――コーディネーターはちゃんと退治しないと」

 

 ミーシャはアズラエルの顔を見る。憎悪は見えない。本当に本心からアズラエルはコーディネーターをそういう別の生き物として扱っている。

 ――同意しそうになる自分が嫌だった。

 

「私、準備してる。戦争は明日?」

「おそらくは。よろしくお願いします」

 

 ミーシャは顔を俯かせたままブリッジを出た。なんでザフトばっかり自分の大切な人を殺すんだろう。それは、コーディネーターが悪い奴らだから?

 ミーシャは頭に浮かんだ邪悪な考えを必死になって振り払う。キラは戦友だった。ラクスは自分が好きなアイドルで、ザフトが死ぬより自分が生きる方がいいとまで言ってくれた。コーディネーター全部がナチュラルと敵対しているわけじゃないんだ。そう自分に言い聞かせて、シミュレーター室へ向かう。

 訓練しないと。戦って生き残るために。

 

 ――翌日。専用のパイロットスーツに身を包んだミーシャは格納庫で整列したブーステッドマンの三人の前に立っていた。

 

「今から、オーブを攻撃するよ。モルゲンレーテ本社とマスドライバーを攻撃するのは厳禁。味方が頼りになるかどうかはわかんないけど、あんまり前に出すぎてもダメ……らしい」

 

 ミーシャが言うと、オルガが怪訝な顔をする。

 

「らしいって……隊長はベテランなんだろ?」

「味方がいる戦場で戦ったことないんだもん。あったとしてもメビウスは全滅しててロクな戦力にならないとかそんなのばっか」

 

 クロトは頬を引きつらせる。そこまで過酷な戦闘しかしてないなど、あまりに哀れだと思った。

 

「僕たちもそんな戦場に行かされるってこと? 実験動物は辛いですねぇ」

「もう実験動物は終わったでしょ? 薬の備蓄は認めさせたし無理ってわけじゃないと思う」

 

 ミーシャは格納庫にある部下のMSを見ながら言う。コクピットの中にはミーシャの要望通り、一月分の薬のアンプルが積み込んである。戦闘が長引いても薬を飲みながら戦えば錯乱したりパフォーマンスが激減したりといった事態には陥らないはずだった。

 

「……必要なもん以外みんな殺していいんでしょ?」

「ですね」

「その理解で大丈夫だよ。さあみんな、人殺しの時間だよ。オーブに連合の力を見せつけよう!」

「了解!」

 

 敬礼して別れると、ミーシャ達は各々自分のMSのコクピットに向かう。バスターのコクピットはアークエンジェル時代と違い、ミーシャの身体にフィットするよう小さく作られており、レバーもペダルも苦労せず思う通りに動かせるようになっている。バスターのコクピットに乗った彼女は、一人きりになるとため息を吐く。

 

「……しんどいなぁ」

 

 でも、それでもバルトフェルトと戦うと思った時ほど動揺しないし、辛くも苦しくもない。なんだか、自分が無感情になっていってるんじゃないかという錯覚がする。

 

「――大丈夫。きっと降参してくれる」

 

 ただマスドライバーを貸してもらうだけなんだ。きっとすぐに……。

 ミーシャは部下の機体と通信を繋ぎ、ブリッジとも繋ぐ。

 

「各自ほうこーく」

「オルガ・サブナック、問題ないぜ」

「クロト・ブエル。問題なし」

「シャニ・アンドラス。いけるよ、隊長」

「了解。じゃあ改めてフォーメーション確認するよ。まずクロトがオルガを運んでオーブに上陸。シャニと私はその援護だね。オルガは上陸が終わったら戦闘エリアにいる敵を倒して。クロトとシャニは空中で戦う。私は船の上で戦うけど、問題なくみんな援護できると思う。

 ……アズラエルさん、みんな問題なし。いつでも行けるよ」

 

 ミーシャが報告すると、アズラエルは楽しそうな、ワクワクが抑えきれない子供のような顔になった。

 

「いやあ、新型の性能と、魔弾の天使の戦いが見れるなんてね。こんなところに来たかいがあるってもんですよ」

「ホント、安全なところにいればいいのにさ。……アズラエルさん、見かけによらず度胸あるよね」

「見かけによらずは余計ですよ。さあ、ミーシャさん、出撃してください」

 

 ミーシャは頷くとバイザーを閉じて、開いたハッチの先を見据える。海が見える。さらに遠くに島が見える。……オーブだ。

 

「最初だしみんな油断せずにね。ミーシャ・バレンタイン、バスター。行ってきます!」

「へへへ、みんなぶっ殺す。シャニ・アンドラス、フォビドゥン、行く!」

「初陣楽しみですねぇ! クロト・ブエル。レイダー行きます!」

「うっせーよお前ら。オルガ・サブナック、カラミティ行くぞ!」

 

 4機のモビルスーツが船から出る。戦争が始まる。オーブとの……最悪な戦争が。

 

――

 

 オーブは連合艦隊が布陣しており、最後通牒を突き付けてからすぐに迎撃MS、M1アストレイを多数要所に展開した。対する連合はミーシャ達最新鋭Gシリーズをはじめとし、ストライクダガーとバスターダガーを広範囲に展開した。

 カガリとも親しいM1アストレイのパイロット、アサギとマユラ、ジュリの三人も同じようにモルゲンレーテの付近を防衛するため出撃していた。沿岸部ではなく内陸部分の防衛であるため、ストライクダガーが上陸するまでは固定砲台としてビームライフルを撃つだけのはずだった。

 

「あれは……新型?」

 

 マユラは海の遠くに見えるMS4機を光学カメラに映す。同じように連合艦隊の方を観測していたカガリもそちらを見る。そして、その機体を見た瞬間に叫んだ。

 

「全員回避!」

「回避ってそんな――」

 

 遥か遠く。まだ機影すらレーダーに映っていない距離。ミーシャがじっくりと狙ったその一撃は回避の余地を与えることなくマユラのM1アストレイのコクピットを貫いた。

 

「え?」

「呆けるなバカ! 動かなきゃミーシャに撃たれるぞ!」

 

 その怒声にアサギとジュリは咄嗟にレバーを動かして機体を移動させる。次の瞬間にはアサギの機体は右肩を撃たれ、ジュリの機体は頭を撃ちぬかれていた。

 

「……くうっ! ヤバい、ヤバいぞ……! ()()()()()()()()! 早く迎撃しないとこっちの戦力がみんなやられる!」

 

 カガリが叫んでしばらく。

 

 その戦艦が、オーブより出航した。

 

 ――

 

「……ん、気分は良くないけど、そこまできつくはないかな」

 

 のこのこ歩いていた見慣れないMSを撃ったが、オーブ相手に銃を向けたとしてもミーシャの心は平静に近かった。自分は堕ちるところまで堕ちたのだと落ち込む一方で、これで誰が相手でも戦えるようになるとホッとしていた。もう心を削って戦う必要はない。……削る心がなくなったのか、心自体が強くなったのかはわからないが。

 

「好きに暴れて。援護するから。周囲の様子を常に見て、目の前だけ見ないようにね」

「了解! 行くぜぇ! 殺されるより、殺す方がマシってね!」

「了解! 抹殺!」

「うらああああああ!」

 

 オルガの言葉に、ミーシャは目を細める。その通りだ。殺されるよりかは、殺す方がマシに決まってる。敵か、自分か。どっちかが死ななきゃいけないなら敵が死んでしまえ。

 そうやってM1アストレイや敵の防衛施設やらをちまちま撃ってると、奥の方からモビルスーツが出てきた。

 

「そんなのも持ってるんだ、オーブって」

 

 真っ白な機体だった。青い翼のようなバックパックを装備していて、右手にはビームライフル、左手には盾。腰部のサイドアーマーは変形して武器になりそうな見た目をしている。ストライクのようなヒロイックな見た目に、ミーシャはどうしてもキラを思い出してしまう。

 

「――強そう」

 

 ミーシャは右手の散弾砲で新しく出てきた新型を撃つ。近づいてきたのでミサイルで牽制し、離れたところをビームライフルで射撃。全部回避された。ミーシャは舌打ちしながら周囲を確認する。部下三人は元気にオーブをボコボコにしている最中だった。ざっと見た感じ強そうな敵は見当たらない。ミーシャがこいつに集中しても問題なさそうだった。

 

「みんな、私強めのこいつと戦うから、ピンチになりそうだったら言ってね」

「援護を――」

「いらない」

 

 ミーシャは集中して戦う。だがさっきから妙だった。敵はこっちの攻撃を回避するのに、敵は全く撃ってこないのだ。強そうな背部にあるビーム砲も、手にしているビームライフルも、腰の武器も、ビームサーベルも、バルカンさえ使っていない。故障? ミーシャは訝しむ。ミーシャは撃ってこない敵に対して延々と攻撃を加える。

 

「……撃ってこないなら相手にしなくてもいいか」

 

 ミーシャは目の前の不思議なMSから意識を外し、出てきたオーブ艦隊のブリッジに照準し、ビームライフルを撃つ。宇宙戦艦に対しては火力不足が否めないが、海上戦力に対しては十分な威力がある。ブリッジをつぶして行動不能にすれば、味方の助けになる。近くを飛び回る敵MSを無視して三艇ほど黙らせたところで、敵MSがビームサーベルを抜き放った。

 

「やっとやる気になった? 変な敵」

 

 ミーシャは向かってくる敵に向けて散弾砲をぶち込む。全弾命中したが、フェイズシフト装甲のため全くの無傷。思わずミーシャは舌打ちをする。ミーシャは敵の進行方向と腕の位置から攻撃位置を推測すると、思いきり上昇する。バレバレの見え見えの攻撃。エースが乗っているにしてはあまりに拙い攻撃。ミーシャへ攻撃すること自体をためらっているようにも見える。それに、なぜか脚部を狙っている。敵機の攻撃は、宙を切ることになった。すれ違い様にミサイルを発射すると、盾で防いで衝撃をやり過ごした。反撃は来ない。ますますミーシャは不思議に思う。

 

 ――すべての疑問の答えは敵からもたらされた。向こうが通信を繋いできたのだ。ミーシャも知っている周波数……アークエンジェルの時に使っていた周波数だった。

 

「……え?」

 

 ミーシャは思わず通信を繋ぐ。そして、彼女と彼は再会する。

 

「ミーシャ……! もうやめてくれ! もうオーブを攻撃するのはやめるんだ! オーブにはカガリも、アークエンジェルのみんなもいるんだ!」

 

「――キラ?」

 

 視界の端ではオーブの奥の港から見慣れた戦艦……アークエンジェルが出てきているのが見える。

 死んだと思った仲間と、彼女は出会う。

 隣ではなく、相対して、出会ってしまった。




これからも応援よろしくお願いします。これからもミーシャもキラも曇ります。
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