【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy 作:丹寺 錯視屋
たくさん感想ありがとうございます。たくさん過ぎて返信するのに時間がかかりそうです。少しずつでもちゃんと返信するのでお待ち下さい。
あと、終戦直後の両軍被害状況は想像です
――それから、幾ばくかの時が過ぎた。
戦争の災禍は両軍等しく夥しいほどの被害を齎した。ザフトは総戦力の実に9割に至るまでを撃破、無力化され、最後の要塞ヤキン・ドゥーエも落とされ、もはや軍として機能するギリギリで踏みとどまったに過ぎなかった。
対する連合も無事とは言わず、司令部のアラスカが湖になり、アラスカの防衛に当たっていたユーラシア連邦が大幅に弱体化。パナマで撃破された戦力も少なくなかった。そして月基地の全戦力全人員を喪失。最終的に地球軍に残っていた宇宙戦力はヤキンで生き残った部隊だけであり……その戦力、実に戦艦4隻、モビルスーツ3機。その中にドミニオンと、ミーシャ率いるバレンタイン隊もあった。
つまり両軍とも戦争を続けようにも続ける戦力がないのであった。ヤキン・ドゥーエでの決戦を機に両軍は完全なる休戦に同意。停戦に向けての交渉を本格化させた。
そして、戦争が終わったミーシャは、ドミニオンを降りて長い長い休暇を取ることを許可されたのだった。
――
落ち着いた波の音だけがBGMの室内。ミーシャはロッキングチェアにゆったりと腰掛けて、背中を背もたれに預けていた。キ、キ、とミーシャの脚が揺れる度、ロッキングチェアはふらふらと揺れる。ゆりかごのように。
「……私ね」
ミーシャは独白するように言葉を紡ぐ。それを聞いているのは一人の女性。ルルリカ・ファスコというカウンセラーの女性である。白衣を着て、手元にあったかいコーヒーを用意して、ミーシャの様子を注意深く観察する。
「ずっと、ずっと……楽しんじゃだめだって思ってたの。幸せになっちゃダメ、気持ちいい思いしちゃダメ、苦しんで痛い思いして辛い思いして……そして死んで、地獄に落ちる。そんな人生じゃなきゃダメって思ってた」
「……そうなのね」
コクリ、とルルリカの相槌にミーシャは頷く。
「でも……。今はどうなんだろう。アークエンジェルにいる時は……本当に毎日辛かった。ママのことがずっと頭にこびり付いてるし、キラはすっごく自分を追い詰めるし、そんなキラの隣で人殺しが全然へっちゃらになる自分がいて……私もキラみたいに苦しまないといけないのかな、キラみたいにつらい思いするのが普通なんだってずっと思ってた」
「そんな日々が辛かったのね」
「うん、辛かった……。でも、ドミニオンからはそこまで……辛くなかったかな。だってみんな、私とおんなじなの。戦場に出て人を殺して……それこそ核で要塞吹っ飛ばした後だってみんな冗談言いながらご飯食べて笑ってた。落ち込んでる人もいたけどね。でも、シャニやクロト……オルガなんか、モビルスーツ降りたらすぐ部屋に引っ込んで趣味に没頭するの。勉強しなよ? って言っても暖簾になんとやらでさ」
クスクスとミーシャは笑う。
「……変なのはわかってるよ。私みたいな子供がそんなのに慣れちゃダメだってのはわかってる。でもさ、慣れなきゃ死んじゃってたんだからしょうがないじゃん」
「ダメということはないわ。そうしなかったなら死んでしまうなら、私だってきっとそうしたわ」
お世辞だろうか、同情だろうか。でも、ルルリカは強い女性だ。命の危機が眼の前に迫って、地面に銃があるなら、迷いなく敵に向けられる人だ。
「先生ならそうだと思う。……戦争が終わってさ、なんとかママのこと、気持ち悪いって思わなくても済むように頑張ったり……結構迷走したの」
「どんなことをしたの?」
ミーシャは自嘲するように曖昧に笑った。普段ならきっと言わないが、ここは何でも口にする場である。それが救いになると信じて……あるいは、救いになると識っているから。
「アングラっぽいグロ画像をたくさん見るの。中々慣れなかったけど……一週間も続けたらなんか慣れちゃって。人間何でも慣れるもんだなぁって逆に感心した」
荒療治だが、ミーシャはそのおかげで母の最期を思い出しても気持ち悪くならなくなった。気持ち悪くなったという罪悪感は拭えない。しかし、罪を再生産するようなことを避けられるようになったのだ。
「――もしかしてこんな感じでアークエンジェルであったことも慣れて行けるんじゃ、って――」
「――ミーシャ、約束は?」
危ない方向に話を持っていこうとするミーシャを、ルルリカが止める。
「……自分の体を、大切に」
「ええ。本当に大切にしてね?」
「わかってる。ほんの冗談だよ」
「笑えない冗談はやめてちょうだい。私はあなたが男性の間を渡り歩くような人にはなってほしくないのよ」
ミーシャはプイ、と顔を背ける。
「……キラより上の男なんてそういるもんか」
「ふふふ。そのキラって人より上じゃなくても、落ちるものなのよ、恋は」
「――知ってるし」
ミーシャはルルリカになら何でも話せた。ルルリカは秘密を打ち明けられる度にカウンセラーとしての覚悟を試されているような気分になるが、そこはぐっとこらえ、真摯に穏やかにミーシャと向き合った。そのかいあってか、ミーシャはカウンセリングを受ける前より遥かに落ち着いて、彼女らしさを取り戻している。
「……でね、先生」
――だが、戻らなかったものもある。取り返しがつかないこともある。
「この前訓練生にザフトも人間だ、できることなら殺したくないなんて事を言う人がいたからね……。
ザフトの悪いところ、いーっぱい教えてあげたんだよ。ザフトを獣か蛮族みたいに思えるようにね、たくさんたくさん教えてあげたんだ! そうしたらその人、「敵として会ったら撃つしかない」って言ってくれたの!」
――彼女はあまりにも失いすぎた。彼女は潰れることはなかった。壊れることもなかった。
しかし、彼女にかかった重圧は、失い続けた悲しみは、彼女の芯をどうしようもなく歪ませた。
「……そうなの。先生もザフトには気をつけないといけないわね」
「うん! ザフト兵を見かけたら絶対近付いたらダメだからね! なにせあいつら、地球を滅ぼすビームを本気で撃とうとしてたヤバイ奴らだからね!」
その話をミーシャから聞かされる度に、ルルリカはゾッとする。そりゃザフトアンチにだってなるだろうと思う。
もし目の前の少女が戦うことをやめていたら、自分は今頃草一つ生えず、虫一匹いない地球の地面のシミになっていたのだ。
普通、こんな少女が地球を滅ぼすビーム、なんて言い出したら妄想を疑うものだろう。しかし、同じことを言う人が、たくさんいたらどうだろう?
ルルリカは他の軍人からもよく話を聞く。数少ないヤキンの生き残りは皆ミーシャと同じかそれより重い心の傷を負っている。ミーシャには力があった。彼らにはなかった。
だから彼らは泣きながら語るのだ。
撃ち殺される寸前、敵を狙撃して部隊を丸ごと守る『魔弾の天使』の伝説を。
「……ミーシャ、あなたは……今、楽しい?」
「ん……それなりに楽しいかな。フレイが……幸せになってって言ったし。昔ほど、幸せになることが怖くない、かな」
ミーシャは立ち上がる。そろそろ時計は帰る時間を示していた。
「いつもありがとう、先生。本当に助かってる」
「いいのよ。これがお仕事なんだもの」
ミーシャは柔らかく微笑む。
「また来週」
「ええ、また来週」
ミーシャはそう言ってルルリカのセラピールームを退出した。
――
大西洋連邦首都、ワシントンDC。郊外にある大きな敷地面積を誇るバレンタイン家の邸宅の執務室で、ミーシャが黒檀の大きな机に座って、通信していた。
「まったく、信じられませんよ。あの連中、死んだザラ議長が独断でジェネシスを建造、運用していたと主張したのですよ? あの宇宙のゴミを国家として承認してやると言ったのに軍事力放棄に首を縦に振らないし……。ミーシャ、ちょっとプラントにテロってもらっていいですか?」
「宇宙基地なら考えたんだけどね。でも今は学校の準備とか忙しいし」
ミーシャは朗らかな笑みを浮かべながら、イラついたように愚痴を言うアズラエルと話をしていた。ミーシャの服装は上下ともジャージである。外に出るときの服は部屋一つをウォークインクローゼットにするくらいは持っているが、家の中は滅茶苦茶ラフな格好である。執務机の上にも近くのコンビニで流通しているようなお菓子が広げられており、リラックスの極致みたいな様子を見せていた。
「紹介した学校はどうです? 資産家が多く通う学校ですよ。寄付が結構かかりますが……まぁ、ミーシャに言う事ではありませんでしたね」
カリ、とチョコレートを齧りながらミーシャは頷く。
「まぁね。うちお金だけはあるから。それより馴染めるかな。こんな人殺しが……」
アズラエルから見たミーシャは滅茶苦茶馴染めると思っていた。何せ今の様子は息子が友達と話すときの様子そっくりなのだ。特に心配はしていない。
――アズラエルも、ナタルも、戦場から離れたミーシャが心を病んだりしないか非常に心配した。苦しんで戦って、心を削って殺し合って、最後には虐殺の片棒も担いで。だが、大人たちの心配はよそに、ミーシャは意外とケロッとしていた。もちろん、ミーシャとて自分がおかしくなったらどうしようという不安はあるので、精神科にもかかってるし、カウンセリングも週に一度は受けている。
……やはり、最後の決戦。それをミーシャは『地球を守るための戦いだ』と認識したのが大きく作用したのだろう。自分は地球を守るための正義の味方で、この戦いは正しいものなのだと。たとえ事実と相違があろうと、たとえそれが一方的なものの見方であろうと。それでも、幼い彼女の心を守るのには役立ったのだ。
「ミーシャは気に入らないことがあったらすぐに暴力を振るうタイプではないでしょう? 細かい事情は、友人になったあとに話せば受け入れてもらえますよ」
「……そうかな」
「ええ。金持ちの子供は精神的に余裕があるので、大多数の子供は善良です。あなたを含めてね」
「なら、いいんだけど。友達とか……恋人とかできるかな。初めてじゃないけど……」
ミーシャが不安な心情を吐露すると、アズラエルは若干引きながらも真摯に答える。11歳の子供に恋愛など、10年早い。……だが、ミーシャは何もかもすっ飛ばして男女関係の行きつくところまで行ってしまった。……避妊もしていなかったというのだから、アズラエルは
「……まぁ、そんなに焦る必要はありません。こんな私でも、愛してくれる人はいます。あと、これは既婚者としてのアドバイスなんですがね、初めてだとかそうじゃないとかにこだわる男にロクなのはいませんよ。さっさと別れるに限ります。もしそんな理由でフラれたら是非教えてください。
「角て……。まぁ、もしそんなことがあったら考えとく。ねぇ、フローレンシアさんはどうだったの?」
多くの人間が……たとえばナタルなんかは知ったら驚愕するのだが、アズラエルは既婚者でしかも子供もいる。アズラエルの妻フローレンシアはミーシャも何度か会ったことあるが、物凄くおっとりとしていて、過激派のアズラエルにもついていける懐の広い人だ。それでいて本人はブルーコスモス思想ではないというのだから驚きだ。
「私、妻のプライベートを易々と言う人間に見えます?」
「見えない。ジュードくんは……」
アズラエルの息子、ジュード・アズラエルは現在9歳でミーシャとは友達である。ちょっと内気な性格で優しい子なのだが、そのせいで割りを食うことが結構ある子供だった。……戦後すぐ久々に会ったらキラに似てるな、なんて思ったりしてしまうくらい、優しい子なのだ。
「ジュードはまだ9つです。……もしジュードに手を出したら訴えますのでそのつもりで」
「でも2歳差だよ? 別に」
「訴えるって言ってますよね?」
アズラエルは本気のトーンでミーシャに言った。意外と親バカなのだろうか。
「わかったわかった。あと、お金に関しては大丈夫。資産状況の把握は終わったし、運用も始めてるしね。……税金エグかったけど」
「ちゃんと払ったようで何よりです。ミーシャの資産運用は見ててヒヤヒヤするのですが……」
「上手くいってるからいいじゃん。ミスっても死ぬわけじゃないし」
けろっとしたミーシャの物言いに、アズラエルはため息を吐く。こんな認識の子供がトップとは、バレンタイン一門の従業員は可哀そうに。だが彼女は投資、経営の才能もあるのか、未だ大きな失敗をしていない。基本的に大人に任せる方針のようだが、今の時点でそれができるなら十分である。
……これも遺伝子のせいなのかな、なんてことをミーシャが考えてることも知らず、アズラエルは忠告する。
「いいですか、我々経営者が失敗すると傘下の者全てが死ぬのです。自分はバレンタイン家という戦艦の艦長だと思いなさい。適当な指示でモビルスーツ隊……自分の部下を殺す気ですか?」
「ん-、了解。今後はもうちょっと本気でやるよ。……でも私個人の収入で生きていけるからなぁ。なんか本気になれないんだよね」
ミーシャは現在、週1のペースでワシントンにある訓練基地で教導隊の臨時教官をしている。それに加えて撮影やらインタビューやらで忙しく……そのすべてに収入が発生している。まだ企画段階だが映画の撮影もあるらしい。……プロパガンダというやつだ。
「お金はあって困ることはありませんよ。でも、本当に良かったのですか? 軍をやめて普通の子供として生きていく道もあったと思いますが」
ミーシャは未だに、少佐の地位を手放していなかった。つまりいつでも配置転換に応じ……戦争に参加する意思があるということだ。
「今更だよ。足抜けなんてする気はないよ。あんだけ殺しまくっといて一人だけ安全なところでぬくぬくするのは嫌だし……またジェネシスなんて絶滅兵器が出てくるかもしれないし」
「……私はもう二度とやりたくありませんね。今後は金だけ出すことにします」
アズラエルは戦場の過酷さを嫌というほど思い知った。今後は現場の人間を軽んじるようなことはしないだろう。そしてこんなことを言っているが、もしまた自分が出る必要があると判断すれば戦艦にも乗り込むだろう。変なところで熱い男なのだ。コーディネーター殲滅にも熱を上げているのは問題だが。
「別に、私はアズラエルさんとならまた戦場に出てもいいよ。約束、守ってくれたしね」
「クロトとシャニに関しては実験に参加してもらっただけですので、お気になさらず」
クロトとシャニの二人はヤキン戦後すぐにまともな人間に戻す手術を行い、軍を辞めた。病院通いをあと十年は続けなければならないらしいが、逆に言えば十年は生きられるということだ。二人は元気に新しい人生をスタートさせている。
「っていうかさ、私南アメリカの件関わらなくていいの?」
今、大西洋連邦は南アメリカに独立戦争を起こされている。他にも戦力が激減した地球連合にこれ幸いと事を起こす勢力がいて、地球は今戦乱が巻き起こっている。
ミーシャもニュースでしか知らないが、かつてのエース『切り裂きエド』が脱走して南アメリカ側に寝返って、連邦側のエースが刺客として送り込まれて……という話をえらくセンセーションに報道されていたのを覚えている。
「その件ですか。問題ありませんよ。英雄様はしっかり休んでください。カウンセリングも腕のいいのを用意しましたから、引き続きしっかり受けてくださいね」
「はいはい。色々忙しいだろうけど頑張ってね」
「そちらは、ゆっくり心と体を休めてください」
「……ま、おいおいね」
ミーシャは通信を切る。端末を起動して、彼女はバレンタイン家の当主としての仕事をする。
「……あ、シャニ、通う予定の学校に寄付の手続きしてもらっていい?」
「了解、隊長。あ、そうだ、BGMかける? 最近いいメタルバンドがデビューしたんだよね」
「部屋の雰囲気考えてよ。っていうかインディーズでしょ? 私インディーズのメタル聞くほどキメてないから」
「ちぇっ。じゃ、手続きしとく。額は?」
「ま、400万くらいが出せる限度かな?」
「了解」
部屋に控えていた使用人……シャニはそう言うと部屋から出て言った。クロトももう少ししたら戻ってくるだろう。別に、二人の働き口を探すのでもよかった。だが、過去の経歴全てが抹消していて公的には死んでいる人間を雇うところなどヤバいところ以外に存在せず……結局、シャニもクロトも、軍を辞めてもまだミーシャの部下をやっている。
「……ふう」
ミーシャはふかふかの背もたれに体を預ける。あれから、二か月くらいの時間が経った。今戦争は終わっている。……終わったのだ。
「アークエンジェル……」
ミーシャは壁にかかっている写真を見る。アークエンジェル時代に撮った写真だ。ルミナも、キラも、フレイも……みんな映っている。当時はなんでこんななんでもない日に写真を撮るのか不思議だったが、こうしてたくさんの人を亡くしてみればわかる。写真がなければ顔を忘れてしまう。……ルミナと一緒に歌ったときの録音がなければ、声も忘れていただろう。
……アークエンジェルはエターナル、クサナギと一緒に『3隻同盟』と呼ばれて英雄視されている。核からプラントを、ジェネシスから地球を守った英雄というわけだ。キラのことは、ミーシャは死んだと聞かされたし、ミーシャ自身死んだと思っていた。最後にキラが戦闘していた宙域があまりにジェネシスに近いところにあったのだ。色々ありすぎてぼんやりとしか覚えていないが、ジェネシスとその反射ミラーの間の宙域で戦っていたはずだ。そんなところにいたらジェネシスの爆発に巻き込まれるに決まっている。
……ミーシャとて彼らの扱いに思うところがないわけではない。だが、ジェネシスを破壊するために死んだキラが讃えられていることを躍起になって否定するほど強く拒絶しているわけでもなかった。
そして、3隻同盟以上に英雄視されているのがミーシャである。幼いながらに武器を取り、正義の為にと戦い続けて地球を守った英雄。……もうすでに話が歪んでいるが、それはプロパガンダ映画で多少は修正されるだろう。ネットで見かけた意見だと、酷いのに至っては『ヘリオポリスからずっと軍の密命を受けていた』とか言われているのがあるし。
――修正されるよね? ミーシャは若干不安だった。
「……パパ、ママ」
……ふと、じんわりと視界が潤む。ミーシャは両親の声をもう思い出せない。両親の写真は家にある。だが、ミーシャの記憶にあるのは血塗れになって弱っていく父と、醜悪な肉塊と化してしまった母の、最期の瞬間の光景だけだった。強烈すぎる経験が、思い出全てを塗りつぶしたのだ。優しかった。厳しいところもあった。……でも、どんなふうに会話していたか、もう思い出せなかった。
「私頑張るよ」
たとえ死んだあと地獄に堕ちることになることが決まっていたとしても。今を頑張らない理由にはならないのだ。ミーシャは自分のパソコンを起動し、その中に大事に……複数の記録媒体にバックアップしている音声データを再生する。ラクスの歌声が聞こえる。その歌に重ねて、ミーシャとルミナの拙い歌声が聞こえる。
「……ルミナ」
父親の仇は討てた。だが、ルミナの仇がまだだった。でも、心配はしていない。アズラエルに頼んで、戦争犯罪は絶対に裁かせるよう要請しているのだ。もしかしたら自分も何かしていて裁かれるかもしれない。でもそんなことは関係なかった。イザーク・ジュールが戦争犯罪者として裁かれ自軍の手にかかって銃殺される。そうなったら最高だし、そうなるようにミーシャは持てる全てを使って働きかける。……といっても、ミーシャのできることといったらアズラエルにお願いすることだけなのだが。
戦後編は他にもミーシャが学校に通うシーンとかも予定してます。
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