【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy 作:丹寺 錯視屋
ミーシャ・バレンタインのプロフィール
年齢 13歳
身長 137cm→150cm
体重 35kg→46kg
思想 ブルーコスモス(軽度)
階級 大佐
所属 地球連合大西洋連邦第81独立機動群
好きな言葉「殺されるより殺す方がマシ」
嫌いな言葉「青き清浄なる世界のために」
好きなもの「友達」
嫌いなもの「ザフト」
新型MSを奪取せよ!
コズミック・イラ71、オーブ。少年、シン・アスカは凄惨な光景を前に膝をついていた。四肢があらぬ方向に曲がり息絶える女性。倒れた木に腹を潰され息絶える男性。吹き飛んだ右手が道に落ち、全身を爆風で焼かれた少女。
……全て彼の家族だった。父と、母と、妹。シンは手の中にある古いタイプの携帯電話を手に取る。レトロな物がマイブームだった妹の携帯電話が、シンを救ったのだ。シンは涙を流しながら呆然とする。思考がまとまらない。――死んだ? 父さんが? 母さんが? ――マユが?
シンは憎しみのこもった目で空を見上げる。そこにはフリーダムが、フォビドゥンが、レイダーが……そして、遠い海に浮かぶ戦艦からはバスターが。それぞれ好き勝手にビームを撃ち合っていた。まるでこの大地に暮らす自分達など、存在すら気にしていないかのように撃って、撃って、戦って、殺し合っている。
「ああ……」
船から飛び上がったバスターがフリーダムに向けてビームを放つ。フリーダムが回避して、外れたビームはオーブ本島に命中した。――また誰かが死んだのか?
「ああああああああ、うわああああああああああああああああああ!」
シンは叫ぶ。世界の不条理に、家族を失った悲しみに。怒りに。
そして、彼は武器を手に取る。憎しみではなく、怒りでもなく。ただ、もう力もないまま奪われるのが嫌だから。だから、戦うことを選んだのだ。
――
コズミック・イラ73。先の1年半にも渡る戦いはザフトの宇宙要塞、ヤキン・ドゥーエ宙域での戦闘を最後に一旦の終結を見せた。ザフトは戦争によって夥しいほどの人員と戦力を失い、地球軍は戦力の半分をジェネシスで喪った。かつての悲劇の土地、ユニウス・セブンで調印されたユニウス条約をもって両陣営は正式に停戦。ユニウス条約でも特に重要とのちに歴史に記される項目は以下の通りである。
プラントを国家承認するものとする。
保有戦力は概ね国力に比例するものとする。
ニュートロンジャマーキャンセラーをMS、兵器に搭載することの禁止。
ミラージュコロイドの軍事利用禁止。
以上の条約に批准することを両軍とも同意することで、ナチュラル対コーディネーターの対立戦争は一度、完全に終了することとなった。しかし、かつて人が『平和とは次の戦争への準備期間』と言ったように、水面下では未だ、火種が燻り続けている。
そんな世界情勢の中、ザフトも地球連合も戦争で喪った戦力を補充するべく技術革新を続けていた。
……L4宙域に存在する工廠プラント、アーモリーワン。コズミック・イラ73、10月2日。今日は新型戦艦ミネルバの進水式があるザフトにとって記念すべき日だった。失ったザフトの戦力が、今日という日にまた一つ増強されるのだ。コロニー内の軍事基地は式典の準備で大わらわである。
「……まさかこんな堂々と進水式をするとはな」
貴賓の応接間に向かうまでの道で、カガリ・ユラ・アスハは護衛のアレックスにぼやいた。彼女の服装はオーブの礼服であり、今回は正式な訪問であると言う事だろう。
「ザフトは戦力の回復に必死だ。明るい話題は少しでもほしいということなんだろうな」
護衛のアレックスはなんとも言えない表情でそう答える。
「だがその戦力の製造にオーブの技術者や国民が使われるのは困るぞ」
「そうだな。だが……」
アレックスはその先を言う事ができなかった。戦乱に巻き込まれたオーブ国民の一部はプラントに逃れた。敵国ではないとはいえ、プラント国民の元オーブ人に対する感情は良くない。受け入れられるために必死に働くしかなかったのだ。……誰が悪いのか。そういう話をし始めると、責任は為政者であるカガリにもあると言うものはいるだろう。
「……とにかく、これ以上オーブの技術を使っての兵器開発はやめさせないと」
カガリは言いながら、前の大戦時の自分を思い出す。『殺されたから殺して、殺したから殺されて。最後にそれで平和になるのか』……かつてアスランに言った言葉。だが、戦場にひとたび出てしまえばそんな言葉、ほとんど思い出さなかった。アサギを殺されたから、彼女を殺したカラミティを殺して。カラミティを殺した自分はミーシャに撃墜された。ジェネシス内部で出会った時も……彼女が自分の命を散らしてでもジェネシスを破壊しようとしていたと知らなければ一体どう思っていたことか。憎しみの連鎖を断つ……言葉で言うならなんて簡単なんだろうか。自分は結局、言うだけ言って行動できなかった。そう思うことがカガリに影を落としていた。
「……ようこそ、アスハ代表」
通された応接室で、カガリはプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルと会談する。
「急な来訪、申し訳ない。話があってだな……」
――
アーモリーワンの町並みは、程よく発展した片田舎という雰囲気だった。スティング、アウル、ステラの3人は町中をそれとなく歩きながら、少しずつ目的地に向かっていた。その両手には買い物をした荷物が下げられている。
「好きなの買っていいって言われたけど……ホントにこれでもいいか試してやろうぜ」
「お前なぁ……」
買い物袋には買ったポルノが満載されていた。悪戯っぽく笑うアウルに、スティングが呆れたような声を上げる。
「まだたいちょ……おっと、リーダー殿は13だぜ。わかるかどうか怪しいもんさ」
「いや……さすがにわかるだろ?」
「うちのステラ見てみろよ」
そう言ってスティングは親指で後方のステラを指さした。彼女はウィンドウに映った自分が着ているよそいきのドレスを見て、浮かれた様子でくるくると楽しそうに踊りだした。
「女はあんなもんなんだよ。浮かれたバカの演技……にしちゃ
「なるほどねぇ。じゃ、ネオにその辺説明させようぜ。絶対笑える」
「ははは、違いない」
バカな話をしながら、3人は目的地……軍事工廠まで近づいていく。その道すがら、路地裏から急に現れた赤い目をした少年に、ステラがぶつかってしまう。
「うわっ! ご、ごめん!」
「……!」
ぶつかった拍子に胸を触られたことに気付いたステラは、無言で少年から離れてアウル、スティングの方へと駆け出した。
「あ……」
「おいシン。お前胸触ってたぞ」
「え!? まじかよ……」
「ラッキースケベめ」
二人の少年もそんな風に話しながら、ステラ達とは別の道を歩き出した。
「大丈夫か、ステラ?」
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。……アウル、ホントにそれリーダーに提出するの?」
「当たり前だろ。何せ経費だからな! ちゃーんと報告しないと向こうも困るだろ?」
アウルが楽しそうに笑うと、ステラは渋い顔をして、生ゴミを見るかのような目でアウルを見る。
「……セクハラ」
「べっつにー? 好きなもん買ってこいって言ったのリーダーだしー? いやがらせの意図はありませーん」
「もう。怒られてもしらないよ」
「はっ。……もう俺たちはなんでもできる。前までこんな悪戯したくてもできなかったんだ。自由な人生ってやつを謳歌させてもらうぜ」
「自由謳歌すんのはいいが、仕事はちゃんとしろよ?」
スティングが釘を指すと、アウルはハイハイ、と頷いた。
「スティングは変なところで真面目だねぇ。ここがコーディネーターの町じゃなきゃ、脱走も考えたんだけど」
「――私はリーダーについてく」
「雛鳥かよてめーは。ま、小さいステラちゃんには難しかったか」
「アウル……!」
「やめろ二人とも。バカ騒ぎも行き過ぎれば注目の的だ」
スティングが締めると、アウルもステラも了解と返事をして黙った。
「そろそろ気を引き締めろ」
スティングの視界には、軍事工廠の入り口が見えていた。
――それからしばらく。軍事工廠の中をスパイの手引きで進み、格納庫までたどり着いた3人。用意されていた武器をそれぞれ手にし、格納庫内のザフト兵を手際よく始末していく。精神に影響がないレベルに抑えられた薬物強化と、メンテナンスしなくても生きていけるというレベルの控えめな改造と。それだけなのに、ナチュラルの三人はその場にいるザフト兵に反撃さえ許さず殲滅できた。三人が子供の頃に聞かされてきた化け物みたいな性能の、絶対強者コーディネーターなんてどこにもいなくて、ただ少し優秀なだけの人間がそこにはいた。
「クリア。スティング、ステラ、そっちは?」
「同じくクリア。怪我もない」
「クリア。この人たち弱い」
ステラは手にしたナイフを地面に捨てながら言った。三人はそれぞれ担当の機体に乗り込もうとする……前に、アウルはわざわざ持ってきた荷物をコクピットまでもっていった。
「それ本気で持って帰るの?」
「余裕余裕! 別に作戦に影響ないだろ?」
ステラがアウルに嫌悪感丸出しの目を向ける。男の子ってホントバカ。そんなことを考える。
「抵抗も想定より少ない。まぁ、問題ないだろ」
「はん! 将来は先細るだけの『お強い』コーディネーター様は、ナチュラルに負けるなんてちっとも思っていなかったんだろうぜ」
アウルが奪取する機体……アビスに乗り込みながら言う。
「今の状態でここまで戦えるなら……俺たちが昔されてた処置ってなんだったんだろうな。……コーディネーターが生物として強いって、一体だれが言い出したんだよ?」
スティングがカオスに乗って、コクピットハッチを閉じながらぼやく。
「あともうちょっとで任務完了。……褒めてくれるかな」
ステラがガイアを起動しながら言った。各モビルスーツが起動し、少しずつ立ち上がる。生き残ったザフト兵が警報を起動し、工廠全体に警報が鳴り響いた。
「仕留めそこなったの誰だよ……。まあいい、ここまで起動すりゃこっちのもんだ! 暴れるぞ、アウル、ステラ! ファントムペインに勝つなんて夢のまた夢だって教えてやれ!」
「ザフトのクズども、断末魔はなんだろうな? ママか? 女か? ……聞かせろよ!」
「殺す、殺す……死ね!」
カオス、アビス、ガイアの3機は起動後即座に武装を使用。進水式で浮かれていたザフトを混乱の坩堝に叩き落した。
――アーモリーワン近傍宙域。ミーシャはガーティ・ルーのブリッジでぷかぷか浮きながら腕時計を見る。艦長席に座るイアンと、その隣の副官席に座るネオも同じように時間を見ている。
「そろそろ奪取成功したころかな。奪取に失敗されるとすっごく困るんだよね……。こっちがピンチ」
「別に、彼らのパーソナルデータが地球軍だと知られる可能性はありませんよ?」
ネオが言うと、ミーシャはそんなことじゃないよ、と首を振った。
「もし誰かが失敗して代わりにそこら辺をうろついてた民間人が緊急避難的に新型に乗りました……なんてなったら悪夢だよ」
「民間人が乗ったところで脅威ではないのでは……?」
イアンはごく常識的な反応を返したが、ネオは顔を顰めていた。
「いや、そのパターンで英雄までなったのが私と……それから、死んだキラだからね」
「あー……それなら、そのパターンは警戒せねばなりませんね」
イアンは改めて、自分たちの上官が13歳の少女でしかも現場叩き上げの極致みたいな存在だということを思いだした。前大戦のヘリオポリス崩壊の時に乗ったとしたら……当時10歳? あまりに哀れだった。今ですら戦艦に乗っていることを同情するクルーは多いのに。
それからしばらく待って、所定の時間になっても彼らは出てこなかった。
「んー……想定外事象、って奴かな。ネオ、ここで艦隊戦よろしく。私出てくるね」
「よろしいのですか? 俺もエグザスで……」
「ま、それはまたの機会にってことで。不意打ちできるから勝てるとは思うけど、危ないと思ったら出ていいよ。ホント、ミラコロって便利だねー」
「み、ミラコロ……?」
「だって長いじゃん?」
ミーシャは笑いながらブリッジの出入り口に向かう。散々苦しめられたミラージュコロイドをこっちが使うとこんなに強いなんて思いもしなかった。条約違反なのはミーシャも知ってるが、もはやそんなことをミーシャは気にしない。向こうがきっちり戦犯を裁いていれば話は違ったかもしれないが。
「あ、それから第2小隊と第3小隊も出しといて。第4小隊は待機で。じゃ、行ってきまーす」
ミーシャは軽く采配すると格納庫へ向かう。
ガーティー・ルーの格納庫にはモビルスーツが満載されており、その奥にはかつての愛機、フリーダムがあった。
「曹長、出れそう?」
「へい、整備はバッチシです!」
「ニュートロンジャマーキャンセラーが条約違反になっちゃったしね、こんな部隊でもなきゃ使えない」
ミーシャは自分のパーソナルカラー……緑とベージュのバスター色に染められたフリーダムに乗り込みながら言う。
「でも本当に構わないんですか? 緑のフリーダムって言やぁ魔弾の天使が乗ってたって有名なんじゃ……」
「こんなところに魔弾の天使が出るなんて向こうは思ってないし……ま、アズラエルさんからはそのへん気にしなくていいって言われてるしね」
もしザフトが抗議しても知らぬ存ぜぬ……我が軍ではあのカラーがメジャーなのだと言い張るつもりである。事実、最近では既存の量産機をバスター色に塗るのが流行っているとか。部隊全員がストライクダガーをバスター色に塗ってるという部隊もいて、そういうやつらを『天使信者』とか呼ばれてると聞かされた時はなんとも言えない気持ちになったものだ。そこはバスターダガーじゃないのかと。てか信者ってなに。
「とりあえず、部下のフォローに行ってくる。ネオ、聞こえる?」
ミーシャはブリッジに通信を繋ぐ。仮面を被った胡散臭く見える男が表示される。
「ああ、どういうプランで?」
「どうせだし何もかもぶっ潰していこうか。第2小隊と第3小隊には宇宙港破壊させて。私は第1小隊……生きてたらだけど、あの子達の指揮執るね」
「了解」
「ネオも指揮頑張ってね。ミーシャ・バレンタイン、フリーダム行ってきます!」
ミーシャはフリーダムでアーモリーワンの宙域に出撃した。
「――久々の戦場だな。ブランク取り戻さないと」
ミーシャはコキコキと首を鳴らそうとして……できなかった。その動作をやるには彼女は若すぎる。思った通りの動きができなくてミーシャは不満そうに見える。
遠くで、モビルスーツが出てくるのが見えた。奪取予定の機体3機だった。
「――やっぱり生きてた」
――
4機目の新型……インパルスに乗っているシン・アスカは奪取された新型を追って宇宙空間へと躍り出た。
「あいつら……! 逃さない!」
「シン! 突出しすぎだ!」
「レイ! 悪い!」
白いザクファントムに乗っているレイ・ザ・ バレルと赤いザクウォーリアに乗っているルナマリア・ホークがシンのそばまできた。同じように緑色のザクウォーリアがアーモリーワンの宙域に出てきた。他にもアーモリーワンの防衛戦力が宙域で戦闘を始めていた。
「で、あんた一体誰なんだ?」
「俺はアレックス。アスハ代表を守るため已む無くこれに乗せてもらっている」
「アスハ……? カガリ・ユラ・アスハか!」
シンが敵愾心を見せてその名前を呼ぶ。アレックスが訝しむが、それどころではない事態が発生する。
見慣れない戦艦から一機のモビルスーツが出てきた。新手か、とアレックスが思ったのも束の間、その機影を確認して驚愕に目を見開く。
「全員回避に集中しろ! あれは――魔弾だ!」
「何!? 魔弾!?」
遥か遠距離から、ロックオンアラート。フリーダムからフルバースト射撃が飛んでくる。アレックスは射撃のタイミングを見計らって回避する。シンやルナマリア、レイも同じように回避することができた。しかし、今のフルバーストで防衛戦力が3機も削られた。ビームライフルが乱射される。そのビーム着弾点全てに味方がいて、次から次へと味方が死ぬ。初陣のシン、レイ、ルナマリアの三人は知っている人たちがあっけなく、あっさりと死ぬ状況に愕然とする。
「――クソッ!」
アレックスは舌打ちする。ミーシャのいる戦場はいつもこうだ。一定の戦闘能力を持つパイロット以外を的あてのように大量に殺すのだ。
「魔弾の悪魔……! 前大戦の化け物がなんでこんなところに!」
「み、味方が……! このままじゃ全滅するわ!」
「フリーダムを落とすんだ!」
シン、ルナマリア、レイがフリーダムに向けて攻撃を始める。ミーシャはビームライフルやミサイルの攻撃全てを回避する。フリーダムがビームライフルを構える。敵の反撃を回避しようと3人は身構える。しかし、ミーシャが撃ったのは、後方からガーティー・ルーに向かっていた、シンたちが名前もしらないパイロットが乗るザクだった。それからも、ミーシャは目の前にいるシンたちよりも、全然関係ない機体を狙って撃ち落としていく。
「俺達を相手にする価値もない……! そういうことかよ! ふざけるなよ悪魔!」
シンはミーシャの意図を理解して怒りを募らせる。
「前大戦で強かったからって言ったって……! 2年も前の機体で、好き勝手やらせるもんかー!」
シンはビームサーベルを抜いてフリーダムに突撃する。フリーダムは同じようにビームサーベルを抜き放ち、シンの一撃を回避するとコクピットを斬ろうと振り抜く。シンは手にしたシールドでサーベルを防いだ。
「チッ……。やっぱり私強い人相手にするの苦手!」
ミーシャはコクピットで悪態をつく。ミーシャは自分が強いなと思った相手を撃墜した経験がほとんどない。
フリーダムはまるで逃げるようにシンから離れる。逃げる際にバラエーナを放って牽制され、シンは思ったように追撃ができない。離れたら狙撃され、近づこうにもフリーダムの速力は現時点でも最高峰に近い。
「バレンタイン隊、各小隊状況報告!」
ミーシャはエース級3人、アレックスの攻撃を避けながら叫ぶ。かつてと違って今はただ戦っていればいいわけではない。部下の様子や作戦全体のことも考えて戦闘しなければならないのだ。中々しんどいものがある。
「第1小隊異常なし、帰還完了!」
スティングの返事が真っ先に返ってくる。とりあえずこれで作戦完了が確定。少しだけホッとする。
「第2小隊異常なし、敵宇宙港を使用不能にしました!」
「第3小隊異常なし、宇宙港に停泊中の戦艦を撃沈しました!」
報告を聞いたミーシャは作戦の成功を確信する。
「現時点を持って作戦完了と判断する! みんな帰るよ! 総員撤退! 帰るまでが作戦だからね!」
「了解!」
「第4小隊出撃! 第2、第3小隊の帰還を支援して!」
「第4小隊了解!」
ガーティー・ルーからほどなく4機のダークダガーLが出てくる。入れ違いになるように、アーモリーワンの宇宙港で大暴れしていた部隊が戻って来る。ミーシャは追ってきたザクを瞬く間に撃つ。
「……嘘だろ……? あんな簡単に人が死ぬのかよ? もうやめろ!」
シンがビームライフルをフリーダムに撃つが、まるで撃つタイミングがわかっているかのように的確に回避してくる。熟練の腕ということが痛いほどわかる。
アーモリーワンの秘密港から、シン達の母艦が出撃してきた。
「戦艦? あれがミネルバってやつ?」
ミーシャはその姿を見て名前を呟く。何もかも事前情報通り。だからこそ眼の前で元気にビームライフルを撃ってくる4機目の機体が気になる。
「――その機体どうやって秘匿したのかな? ……ま、いいや」
ミーシャは全部隊の撤退を確認すると、自分もガーティー・ルーへ帰還を始める。
「全砲門、敵モビルスーツへ向けろ! こんなところで隊長を落させるなよ!」
ネオが鋭く命令し、ゴッドフリートの火線がシン達に向けて放たれる。母艦の援護射撃の中、ミーシャは悠々と母艦へ帰還した。
ガーティー・ルーの格納庫に戻ってきたミーシャはコクピットを降りると休むことなく次の指示を出す。格納庫に備え付けられている通信機器の受話器を手に取ると、各小隊へ連絡を取った。
「第1小隊、データの吸い上げ作業を始めて。プログラム起動したらしばらくかかるからその間休んで。
第2、第3、第4小隊は通常通りのシフトで休憩と待機のサイクル回して。質問は?」
「なし!」
よし、とミーシャは受話器を下ろすとブリッジに向かう。
「なんとか作戦は成功。あとは後ろの撒くだけだね」
「相変わらずの射撃ですね」
ネオが恐々としながら言った。一度敵に回ってみればわかるがアレは恐ろしい。最近のミーシャはロックオン射撃も織り交ぜるからさらにタチが悪くなっている。成長して天性の勘も冴え渡っている。ミーシャを撃ち落とすのは彼女の射撃を回避すること以上に難しいだろう。
「で、撒けそう? 割とピッタリついてきてるけど」
「推力は互角……向こうの方が若干上かと。増槽を切り離して爆弾代わりに使えば目くらましになるかと」
「んー……そのへんはネオに任せる。作戦ある?」
ミーシャの質問に、ネオは頷く。
「なくはない、って感じかな……。まぁ、任せてください」
ネオから聞かされた作戦を聞いて、ミーシャはニンマリと笑った。
ネオの作戦……ガーティー・ルーに備え付けられているアンカーを小惑星に刺すことで、ブースター点火なしでぐるりと回り、ミネルバの後ろを取るという作戦は見事に成功した。あと一歩のところで撃沈まで持っていけたのだが、ミネルバの機転によって仕留めそこなった。
ただ、航行能力は大幅に削った。一旦近くの基地に戻って修理しないことにはどうにもならないレベルまで追い込んだのだ。ロクに動けないミネルバを尻目に、ガーティー・ルーは悠々と索敵範囲を抜け、撤退を完了した。ミーシャ率いるバレンタイン隊はこうして初任務を成功させた。
そして、複雑な秘匿航路を通って月基地に帰還したミーシャ達は各々休暇を楽しむことになった。
――しかし。
「……おい、これ本当か……?」
「いや、そんな馬鹿な――でも観測間違いってことはないはず……」
「なんでユニウスセブンが降下軌道をたどってる!?」
だが、世界は休む暇など与えてはくれない。
感想、評価お待ちしております。