【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy 作:丹寺 錯視屋
ディオキア。かつて連合が支配していた街で、現在はザフトが解放し、街の中枢に基地を置いている土地である。反連合気運の高い土地ではあるが、地球軍の伝手も完全に死んではいない。ミーシャ達バレンタイン隊は、部下のエクステンデッド3人を潜入調査を名目に休ませつつ、上官2名……ミーシャとネオは情報収集と整理に時間を費やしていた。現地のエージェントに提供された少し手狭な部屋で二人は仕事に励む。
「……そういえばさ、ネオ」
壁一面、と形容できそうなほどの数の通信機器に囲まれ、雑多な情報を部屋いっぱいに、壁一面に広げてミーシャとネオは仕事を続ける。人を傷つけずにこんなふうに働いていると、なんだかスパイみたいで少し楽しくなってしまう。……作業自体は死ぬほど地味だが。
「どうした?」
「スティングとアウル、娼館に連れてってあげた?」
「……それをお前に報告する義務はないと思うが」
ネオのもっともな言葉にもミーシャは不満げだ。
「あるよ。隊長だよ私」
「あのな。年下の女の子に自分のシモ把握されるとか死にたくなるだろ」
「そういうもん? クラスメイトはなんだかんだでキラとフレイの関係、興味津々だったよ?」
「女の子はおませだねぇ、いつの時代も」
ネオは呆れるように言った。10歳と16歳、それから婚約者のいる女のハーレムなんて聞いて何が面白いのか……いや、端から聞く分には、刺激的な話かもしれん。
「……それに、私だってフレイやキラとそういうことして救われた部分あるし……。ほら、同い年くらいの女の子を殺したあとでしょ? 変に歪まないうちに大人のお姉さん経験させていた方がいいんじゃないかなって」
「……別に嬢ちゃん、戦場で性癖が歪んだわけじゃないだろ?」
「女の子もイケるようになっちゃったし」
ネオは仮面の奥で遠い目をする。それは確かに……かなり影響が出たと言えるなぁ。
「……まぁ、アイツラも今頃は愉しんでるよ。色んな意味でな」
「ステラは……女性向けのそういうのってアングラな方しかないイメージあるからなぁ。ネオは詳しい?」
「いや俺に聞くなよ頼むから……。嬢ちゃん、ステラもそういうところ連れて行く気だったのかよ」
「だって同じ仲間だし。――敵が初めて、とかより遥かにマシだよ。ステラ可愛いし、もし捕まったら絶対そういう目に遭うよ」
ミーシャはケロッとした様子で言うが、ネオとしては複雑な気持ちだ。口数が少なく声が幼く聞こえるステラは、ミーシャ以上に子供っぽく見える。そんな子が男を買い漁る……かなりショッキングな光景だろう。
「……まぁ、ステラは海に遊びに行くって言ってたし、ストレス発散できるなら何でもいいよ」
「――そういう嬢ちゃんは、どうなんだ」
ん? とミーシャはネオを見た。それからいたずらっぽく笑う。
「私とする?」
「――冗談。俺にはマリューがいるからな」
「いいなー。愛してくれる人がいて。今どこにいるんだろ? 連絡あった?」
「いや、ないよ。向こうだって死んだと思ってるだろ」
「ふーん……。そっか。色々便宜図ってあげるから、マジでいきなり裏切ったりしないでね」
「しない。誓うよ」
「ならいいけど」
ミーシャは新聞を手に取ると記事を読む。『ローエングリン・ゲート健在。ザフト、ジブラルタルへの軍備増強か!?』ジブラルタル。ザフトの重要拠点だ。ここからだと目と鼻の先……というには遠いが遥か彼方というほどではない。戦艦ならあっという間に着くだろう。
「嬢ちゃんもいつかいい人ができるさ」
「戦艦の中で頭茹だってハジメテ迎えた女を好きになる男がいればいいけどね」
「……そんなに自分を卑下するなよ」
「別に。キラとの関係噂になったら『俺ともどうだ?』みたいな同級生何人かいたもん。やっぱり、私の年齢でそういうことするって、そういう目で見られちゃうんだって」
「……恐ろしいことをするやつがいるもんだ」
魔弾の天使でブルーコスモスの盟主と仲が良く、本人だって金も力もある人間によくそんな口が利けるものだとネオはある意味感心した。……ま、今頃土の下だろうな、なんてことを思う。
「別に殺したりなんてしてないよ。……私と殺し合うことになったとしても、愛してくれる? って聞いたらみんな逃げてった。意気地なしどもめ」
「……そりゃ、逃げるだろうさ」
ネオはため息を付く。ミーシャはアークエンジェルでのことを消化したようでできていなくて、かと言ってトラウマというほど病んでるわけでもなく、じゃあまったく傷になっていないのかといえばそんなことも当然なくて……。つまり専門家ではないネオにはさっぱりわからない状況になっていた。
「――そういや、ジブリールのカスがまた無茶やらかして、宇宙の戦力また減らしたの」
「……そうか」
「私が表に出れないからユーラシアの国々が次々反発して……。やっぱりこの辺も地球軍アンチ多いよね」
「気持ちもわかるがな」
ネオの言葉にミーシャは訝しげな顔になる。さっきから応答がはっきりしない。なんだか心配になってきた。
「……ネオも休む? ちょっと発散してきたら?」
「いいんだよ、俺は。今はそういう気分じゃない」
「ふぅん……。じゃあ何が気になるの?」
ネオはミーシャに書類を一つ手渡した。そこにはオーブ艦隊がディオキア……つまりここを取り戻すための連合艦隊に援軍を派遣するという内容の情報だった。
「これ正式なやつだね。オーブが味方か。カガリと一緒に戦えたらいいんだけど」
「オーブは……そういう事する国じゃなかったのにな」
「今更でしょ? ヘリオポリスで地球軍のためにモビルスーツ作ってたじゃん。売るならともかく一緒に作ってて関係ないですって通らなくない?」
ミーシャの感覚では一発逆転や切り札となる兵器を仲良しこよし一緒に作るというのはめちゃくちゃ仲が良い国同士でないとしないというイメージである。そして、その感覚は一般から外れているかと言うとそうでもない。
「……まぁ、そういう見方もあるか……」
「――総司令は……ユウナ・ロマ・セイラン? ええ……? なんでカガリの婚約者が前線に出るの?
「やめろ。というかユウナとカガリは結婚しているぞ」
ネオのツッコミに、ミーシャは鼻で笑う。
「ハッ! 花嫁に逃げられといて『カガリは僕の奥さんなんだぞ!』って言い張る気?」
「フリーダムが攫いにきたなら仕方ないだろ?」
「式の相手がアスランだったら、カガリはたとえ叩き潰されることになっても抵抗したと思うよ」
……それはそうだろうな、とネオですら思った。
――ミネルバはディオキアに入港するなり、新しい人事に頭を悩ませることになる。またしてもデュランダルの意向により、新しいFAITHがミネルバに着任することとなったのだ。FAITHが三人。どれを頭にこの艦は動けばいいのだ。タリアは頭が痛くなりそうだった。
新しいFAITHというのは、ハイネ・ヴェステンフルスというヤキン防衛戦にも出撃し生き残ったまさしく英雄だった。あの戦場で生き残る……その事実だけでザフトでは尊敬を集めることができるのだ。しかもハイネは前線で戦っていた。あの魔弾と戦っていたかもしれないのに生き残る。それがどれほどの偉業か。FAITHであるのも当然である。
……そんな経歴のハイネは、その役職を全く鼻にかけない好青年だった。
「俺のことはハイネと、そう親しみを込めて呼んでくれ」
「そんな! 前の大戦の英雄に恐れ多い!」
ミーハーなルナマリアは声とは裏腹に、気さくなハイネに近寄ってアピールしていた。ハイネもまんざらでもない様子でルナマリアを見る。
「ルナマリア……それにシン。レイに、アスラン。俺たちは仲間だろ? ザフトは戦場に出たらみんな同じだ。赤服とか緑服とかFAITHとか……そんなのは区別であって階級じゃない。わかるだろ?」
「……」
アスランは黙っている。若い3人はハイネの言葉に聞き入っていた。
「地球軍の奴らは階級がないと何にもできない。命令がないと何もできない。階級で区切って、同じ隊にいるってのに打ち解けることなく狭っ苦しい想いをしてる。そんなバカみたいな奴らと俺たちは違う。だろ?」
ハイネが言うと、シンは少し微笑んで頷いた。
「だからさ、隊長とか、そういうの気にせず俺のことはハイネって呼べよ。な?」
「……はい、ハイネ!」
シンが言うが、ハイネは首を振る。
「もっと気さくに。な?」
「わかった。……これでいいんだよな、ハイネ?」
「おう! これからよろしくな、シン!」
ハイネとシンは握手して、あっという間に打ち解けた。
「俺も」
アスランは後悔するようにつぶやく。
「俺も、ああすることができたらな」
自分にはないものを持つハイネが、少し羨ましい。
――それから数時間。シンはバイクを借りて軽くドライブに出かけた。結局、ガルナハン基地は健在だ。ミネルバは通ることができたが、落とせなかった。結局、あの後必死になってコニールを探して……結局見つからなかった。いきなり女の子が行方不明。しかも捕まえたはずの連合兵士もいつの間にか逃げ出しているし……何もかもうまくいかない。……その悔しさから、とにかく風になりたかった。宛もなく海岸線を走ると、辛いことを忘れられそうな気がする。
……ふと、海岸で遊ぶ女の子が見えた。ドレスのような可愛らしい服を着た、金髪の女の子だ。彼女はふらふらと楽しそうに舞って、くるくると踊る。落ちやしないだろうか……。そんな心配をしていると、案の定少女は足を踏み外して海に落ちた。
「ウソだろっ!?」
シンはバイクを止めると少女を助けるべく海に飛び込んだ。海の中で少女が藻掻いている。もしかして足を怪我したのか。シンは背後から少女をしっかりと抱き上げると、泳いで近くの浜へと上がった。
「何してるんだあんた! 死にたいのか!」
「……死にたいわけじゃない!」
けほ、こほ、と水を吐いた少女はシンから距離を取って洞窟の方へと逃げ込んだ。痛む足を庇うように歩く姿は痛々しい。
「待てよ! 待ってくれ! 俺は別にあんたを……君を傷付けたいわけじゃない!」
シンが追いすがってその手を掴むと、少女は落ち着いたのか大人しくなった。
「……とにかく、服……乾かさないと。それから傷も診るよ」
シンはそう言って少女を洞窟の岩場に腰掛けさせる。
「……火……煽せるよ」
「本当か!? ありがとう!」
ステラは浜辺に落ちている木と、洞窟に落ちている枝を拾う。ポケットにいつも入れている着火用の金属棒を取り出すと、セットになっている金属で擦る。凄まじい火花が出て、あっという間に火が点いた。
「すげー……。こんなにすぐに火が早く点くなんて」
「……サバイバルの基本、だよ」
少女は照れくさそうにそう言った。シンはその赤らむ頰に思わず見とれる。ハッなると、すぐに少女の足の前に跪く。
「俺、職業柄こういうの得意でさ。任せてくれよ」
手際よく、的確に。シンは少女の傷を見る。折れてはいないが、かなり悲惨な状況だった。当木をして持っていたハンカチで縛る。
「これでよし。楽になると思う」
「……手慣れてるね」
「う……、まぁ、その、仕事がそういう関係でさ」
「仕事……。プラントの人なの?」
「え? なんでわかったんだ?」
シンが不思議そうに、聞くと、少女はクスリと笑った。その笑顔が、何故か眩しく見えた。
「変なの。プラントではもう大人。だから働かなきゃ……そうでしょ?」
「は、はは……。その通り。すごいな君。そ、そうだ。俺、シン。シン・アスカ。君は?」
シン。少女はその名前を聞いたことがあるような気がしていた。だが、どこだったか。コクピットで聞いたのだけは思い出せるのだが。
「ステラ。私はステラだよ」
「ステラ……ステラか。いい名前だ」
「うん、好きな名前……」
少女ステラは慈しむように自分の名前を繰り返す。ちらり、とシンを見る。まるで可愛らしい子犬のような雰囲気の少年だ。シン。シン・アスカ。……好きな名前。
「服……乾かさないと」
「うん、乾かす……」
ステラは思い切って自分の服を脱いだ。枝を組んで服を掛けられるようにする。
「え、ええっ!?」
シンは慌てて後ろを向く。ステラはキョトンと首をかしげた。
「……別に、気にしないよ?」
「俺が気にするの!」
ステラはクスリと笑ってさらに服を脱ぐと、完全に下着姿になった。まるでお話のような出逢いに、ステラは舞い上がっていた。ドキドキと鼓動が跳ねるのが抑えられない。
それはシンも同じだった。初めて見る女性の下着姿に、あどけない笑顔。劇的な出会いに、どうしても意識してしまう。
「……シンも、脱ご?」
理性が保つか。それだけが心配だった。
……結局日が沈んで夜になり、それからさらにしばらくしても陸に上がる方法は見つからなかった。仕方なく、シンは救難信号を発信した。帰ったら始末書かな、でもステラの助けになるなら何枚だって書いてもいい。そんなことを考えながら、シンとステラはお互いに下着姿のまま、背を向き合って座っていた。
「俺さ、元はオーブ国民でさ。今は……ちょっと違うんだけど」
シンは自然と、自分のことを話していた。頑なに自分がザフトであることを話さなかったが、今まであったことを自然に話していたのだ。機密のことなんて頭にあったわけではない。
――血に汚れている自分を、知られたくなかった。
「前の大戦……地球連合がオーブを攻めただろ? その時に家族がみんな死んでさ」
「……可哀想」
「……そうかな。……いや、でもありがとう」
「私……私、お父さんもお母さんも知らないの」
シンに衝撃が走る。家族のぬくもりを知らない人を、初めて目にした。親を亡くした人はたくさん知ってる。だが、はじめからいないという人にあったことはなかったのだ。
「……どうやって生きてきたの?」
「……ごめんね」
ステラはそう言って、言葉を濁した。機密というのもある。だがそれ以上に言いたくないのだ。身体に刃物が入る度強化される自分。薬物と暗示で自分がどんどん薄れていく感覚……研究者の思う通り、望む通りに振る舞えば痛いことも苦しいこともなくなって……そしてようやく落ち着き、形成した自分こそが、舌っ足らずで口調も幼く、仕草も抜けてて何も考えていないように見える『ステラ』という人格だった。子供っぽく振る舞えば研究者は少し優しくしてくれた。だから、ステラはそれに縋ってそれを続けて。気が付けば、元の自分はどんな人間だったのか完全に忘れていて、戻れなくなっていた。そして、戻ろうとするつもりもなかった。
――そんな成り立ちの自分を、知られたくなかった。
「……俺こそ、ごめん。聞かれたくないこと聞いて……」
「いいの。シンになら、いい。シンになら……きっとなんでも話せるよ」
ステラはそう言った。この口調も拙い喋り方も、別に演技しているわけではない、心と身体に染み付いたものだ。そうなるまで、演技を重ね、自分を偽り、作り上げてきた。そうしないと待っているのは……地獄のような痛み、苦しみ。だからこそ……だからこそ、普段は気にならない『作り物の自分』という要素が、酷く醜悪な物に見えたのだ。ありのまま愛らしく、ありのまま素敵に見えるシンと自分を比べて、そのまばゆさに目が焼かれるような気分になる。
「――俺だって。俺だってステラにならなんでも話せる。なぁステラ、俺、君を守ってやりたいよ」
「守る……? 私を?」
シンは頷く。だってそうだろう。ステラは屈託のない笑みを浮かべられるのに。海で遊んでいる時は心からは楽しそうに見えたのに。自分のことを話すときだけは、辛そうな顔をするのだ。そんな顔はさせたくない。させないために、守りたいと思った。
「――ああ。俺に何ができるのかわからない。でも、俺は……俺はステラを、守ってやりたい」
「……なら、一緒」
ステラは言った。
「私も、シン、守りたい」
護る。なんて難しい言葉を軽々しく口に出すのだろう。何から守るのだ。どうやって守るのだ。
でも……でもこの気持ちだけはきっと本物だ。二人はお互いにそんなことを思った。
「……俺達、一緒だな」
「うん、私、シン……一緒」
その時、遠くからモーターボートのエンジン音が聞こえた。二人は慌てて服を着る。長い間乾かされていたそれは、ほんの少しも湿り気を感じなかった。
「おーい! ヴィーノ! アスラン!」
「お前な! 脱走したかと思っただろ!」
「すみません! でもこの子が!」
浜辺についたザフトのモーターボートを見たステラは、一瞬だけ普段拳銃のホルスターを装着している部位に手をやる。その反射的な行動自体が、自分が血塗られていることの証左に思えて悲しくなって……。悲しげに目を細めた。
……アスラン・ザラ。
助けに来たのが彼なら、シンが何者なのかはおおよそ想像がつく。……そんなのはウソだ。本当はとっくの昔、シンが身の上話を始めたころに気付いていた。
彼は敵なのだと。
――だがその上で思ったのだ。殺したくない。守りたいとさえ。
……モーターボートに揺られ、ザフトのジープに揺られ。このまま連れ去られるのも、何も知らない少女ステラとして生きていくのも……そんなふうにステラが思いかけたその時。スティングとアウルが運転する車とすれ違った。
「おい、アレ」
「まじかよ……!」
こっちを向いた二人。二人はステラを見た。ステラも、二人を見た。その場で何も言わなければきっとこのままシンと……。でも。
でも、ステラは声を上げたのだ。
「スティングー! アウルー!」
無邪気な声を上げて、ステラは大きく手を振った。そんなステラの様子に、運転手のアスランが気付いた。ブレーキを踏んで車を止めると、ステラはジープから飛び降りる。
「シン!」
ステラは浜辺で拾った一番キレイで素敵だと思った貝殻をシンに渡す。
「お礼」
「……いいよ、お礼なんて。友達?」
「お兄ちゃんみたいなもの。私達みんな、お父さんの顔もお母さんの顔も知らないの」
ステラの説明で、シンはだいたいを察した。
「……また、会えるよな?」
ステラは会いたくなかった。だって敵だから。
「会えるよ、シン」
会いたくない。
敵だから。
「きっと会えるから……その時はまた、守ってね、シン」
――会えないで。神様、会いたい。会いたくないよ。
シンは大きく手を振るステラと別れる。
「……シン、あのこは一体どんな子なんだ?」
アスランが聞く。シンは、答えた。なんでもないように、まるで本当にそうであるかのように。
「
――シンはずっとステラを見ていた。見ていたから気づいた。ザフトを見たステラが一瞬、何かを……まるで普段武器のある場所から武器を取り出すような仕草をしたことを。ザフトを見てそんな反応をするのは、地球連合の兵士に他ならないのだ。
次に会うとき、せめて、せめて……せめて、お互いを知らずにいられたら。シンはそう思わずにはいられなかった。
――しかし、世界は無情であり、不条理である。
「みんな、休暇は終わりだよ。陸路でスエズに行って……オーブと一緒にディオキアを陥落させる。防衛戦力は雑魚しかいない。強敵の
オーブと連合の同盟戦。混沌極まる戦場が、ミネルバとバレンタイン隊を待っている。