【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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連合オーブ同盟軍

 オーブ旗艦、タケミカヅチのブリッジに、ミーシャは大西洋連邦艦隊総司令として乗艦していた。……巻き込まれただけの民間人が今や複数の艦艇の総司令で、作戦責任者。大佐という役職の重みを改めて感じる。何故ミーシャが連邦艦隊総司令なんてやってるのか。それは大佐以上の階級の者でミーシャ以上に実戦経験のいる者など、それこそナタルしかいなかったのだ。そして彼女は今、月で防衛艦隊を率いている。そうそうに離せる立場にいなかった。大佐の地位にいる者は他にもいるが、皆後方で地道に階級を上げた者しかおらず、前線に出ていた者は皆ヤキンや先の大戦で戦死したのだ。山のように人がいるはずの大西洋連邦も、歴戦の戦士ともなると人材不足である。今回地球軍としての戦力は艦艇3隻とモビルスーツ隊である。かなりの戦力だが、大佐が率いるのがおかしい規模でもなかった。

 

「乗艦許可感謝します。改めてご挨拶を。私はミーシャ・バレンタイン大佐です」

「こんにちは、ミーシャちゃん。自己紹介は必要かな? ユウナ・ロマ・セイランだよ。オーブ軍総司令をやってて……今はオーブ代表代行もさせてもらってる」

 

 明らかに見下すような物言いに、周囲の軍人は冷や汗をかく。ユウナは軍隊の総司令官をやっているから、大佐よりは階級が上。その程度の認識だった。しかしミーシャは特に気にしたふうもなく握手を交わした。実はミーシャも同じような認識だったのだ。外交官の側面もあるという事実は割と頭から抜けていた。

 

「今回はよろしくお願いします。大西洋連邦とオーブが同盟を結んで以来の記念すべき戦闘です。できれば勝ちたいものですね」

 

 ミーシャの物言いに、ユウナはヒクリと頬を引き攣らせた。

 

「……君はこの数で負けると思ってるのかい?」

 

 ミーシャはその質問に、周囲を見回す。全員階級が高く、下っ端や前線に出て戦う兵士がいないことを確認すると、頷いた。

 

「可能性はあるかと。勝てると思ってやる戦争ほど愚かなことはないでしょう?」

「――それはそれは……魔弾の天使ともあろうお方が随分と臆病な物言いじゃないか。君の輝かしい経歴が本物かどうかすら怪しく思えてくる」

 

 明らかな挑発だが、ミーシャは意に介した様子もない。ミーシャは自分の見た目が子供であることをしっかりと認識している。こうして侮られて当然とすら思っている。……作戦に支障を来さなければどう思われても構わない。裏切ったら殺すだけだ。ミーシャのユウナに対するスタンスはそんなふうにさっぱりしていた。

 

「ご自由に疑ってください。私は死なず、殺せればそれでいいのですから」

 

 では、作戦会議といきましょうか。ミーシャはそう言って場を取り仕切った。

 

「……という風に、想定される危険はミネルバだ。彼らを海峡の外で迎え撃つ……堅実に確実にね」

 

 見るからに無能で明らかにそのへんの才能はなさそうに見えるのに、ユウナが提案した作戦は言葉の通り堅実かつ確実。王道ど真ん中の戦略だった。この会議に自分の部下の命がかかっているミーシャやトダカが何も言わないくらいには彼の作戦は完成されていた。

 

「ジブラルタルからの増援は想定してます?」

「もちろん。後背から遠距離射撃する部隊は僅かな射角変更でジブラルタル方面へ火力を発揮できる布陣だ」

 

 その通りの布陣だが……ミーシャならここに一手間加えることができる。

 

「うちのアビスならこの辺の艦隊一掃できるかも。せっかく海あるし……どうです?」

「ふーむ……僕はねぇ、人一人に作戦の要否を任せたくないんだ。英雄様には少し難しかったかな」

「……そうですね。やっぱり私は前線で人殺ししてる方が向いてます」

 

 ユウナはミーシャの言葉に頬を引き攣らせる。さらりというあたりが恐ろしい。

 

「じゃあ、布陣の具体的な割り振り考えましょうか」

 

 ミーシャの言葉に緊張が走る。布陣決めとは言うは易しの極地みたいなものだ。そこには様々な思惑が交差する。

 

「全体的に扇状に分かれてますね……。それなら、中央、左翼、右翼、後背って感じですか?」

「そうなるだろうね。我々オーブ艦隊は中央と後背を担当し、君たち地球連合には左右を任せたい」

 

 ミーシャはしばらく考えるが……盤上演習すらほとんど経験がない彼女に判断できることはなかった。少なくともこの布陣はオーブを信用しなければとても成り立たないように見える。だが、ミーシャは疑うべき理由もないのに味方を疑うつもりはなかった。もちろん裏切ったら地の果てでも追いかけて必ず殺すと思っているが。

 

「了解。では、必ず奴らを仕留めましょう。ミネルバは魚礁に、クルーは餌に。頑張りましょうね」

 

 ミーシャは改めてユウナと握手する。彼の顔は引き攣っていた。

 

「あ、ああ……もちろんだとも」

 

 別に声を荒げるでも威嚇するでもなく。それでも彼女の戦意は凄まじく感じた。彼女がこうして舐められても気にしないのは味方だと思っているからで……。もし、彼女に敵だと思われたらとんでもないことになるのでは。ユウナはそう危機感を覚えずにはいられなかった。

 

 ――それから会議が終わると、ミーシャは自分の船に戻った。地球軍のモビルスーツ空母を旗艦に、バレンタイン隊は駐留していた。旗艦のブリッジではネオが細かく味方との調整をしている。

 

「隊長。オーブとの会談はどうでした?」

 

 ミーシャは艦長席の隣に座ると、ネオの質問にうーん、という顔をした。

 

「なんかよくわかんない。舐め腐ってきたかと思えば怯えて……自信満々に策を言ってきたかと思えば嫌味言ってきて……なんか感情の振れ幅大きそうって思ったかな」

「それはまた、上に据えるには難儀な性格してるじゃないの」

 

 ネオの言葉にミーシャは肩を竦める。そんなことより遥かにヤバイ問題がオーブにはあった。

 

「そんなことより、ユウナのことあの船の人間だーれも認めてないよ。全員『なんでコイツが……』って思ってそうだった。軍人と折り合い悪い為政者ってこういうときどうするべきなのかなぁ?」

 

 全員、ユウナが何かをするたび、何かを言う度冷ややかな視線を送っていた。人望か、それとも別の何かか。とにかく向こうの総大将は現場の将官に信用も信頼もされていないということだけはわかった。

 

「それは困るな……。地球連合としてはここでオーブとの同盟を名実共に確たるものにしたいはずだ。ちゃぶ台ひっくり返されたら、ザフトの前にオーブを撃てとか言われかねません」

「そうなったら撃つしかないけど……まぁ、ここでこの艦隊とやり合うってことにはならないでしょ?」

 

 ミーシャの予想に、ネオは頷く。この場にいる最も権限のある人間はミーシャなのだ。そのミーシャが『やれ』と言わない限りオーブに砲が向くことはない。……改めて、ミーシャが一番偉いというのは地球軍の歪みを表しているように思う。

 

「……あ、そっか、私が言わなきゃオーブと戦うことにはならないのか。やっぱり変だよ私が総司令って……」

「そりゃ、普通じゃないでしょう。でも、じゃあ他に誰がこの艦隊従えられる? っていう話ですよ」

「他に一杯いるでしょ?」

「みんな前の大戦で死にましたよ」

「ああ……」

 

 誰の下で戦うか。『軍人なんだから誰が上でも命令されたら戦え』……当然それが規律だし、みんなそう答える。だが、現実そのまま適用できるかといえばそんなことはない。たとえば、ここにいる全部隊が連合のトップに『ユウナの指揮下で戦え』と言われて……彼の命令にハイハイ言う事聞くか? というと絶対にノーだと言える。勝手な行動を取る部隊も出てくるし、サボタージュを敢行する艦も出てくるだろう。命令に意見具申という形で文句を言いまくってまともに命令下達が上手くいかないなど、問題点は山のように出てくるだろう。前線で戦うパイロットだって士気が落ちるだろう。

 この人の命令なら命を掛けられるしその結果死んでも悔いはない。そう思えるだけの何かがリーダーには必要不可欠なのだ。

 そこまでの器のある提督や階級の高い歴戦の司令はみんな死んだのだ。

 

「――だからって13歳の言う事聞くかなぁ?」

「ただの13歳なら聞かないでしょうな。バレンタイン大佐だからですよ」

「……魔弾の天使、ねぇ」

「今までコツコツネームバリュー高めてきた効果ってやつですよ」

「軍人の仕事か? ってずっと思ってたけど……無駄じゃなかったんだね」

 

 ミーシャがしみじみ言うと、ネオはほほ笑む。

 

「これは大人からのアドバイスなんですがね、人生意外と、無駄な行動なんてのはないんですよ」

「ふーん……」

 

 ミーシャはしばらく何かを考えているようだった。今までの人生を振り返っているのかもしれない。

 

「……作戦までもう少しです。隊長はここで指揮します?」

「いや……フリーダムで出る。そっちの方がみんなやる気出るでしょ」

「出ないってやつは多分地球軍にはいませんよ」

 

 ミーシャは立ち上がると、ブリッジを出ようとする。

 

「指揮はコクピットでするよ。この船の指揮はネオに任せるね」

「またお留守番ですか?」

「いじけないの。まだウィンダムの慣熟訓練中でしょ?」

「ひょいひょい乗り換えできる若い君らがうらやましいよ」

 

 ミーシャは肩を竦めると格納庫へ向かう。戦争はもうすぐだった。

 

 ――スティング、アウルは様子のおかしいステラを心配そうに見ていた。格納庫の一角で固まって話をしている。命令がくればすぐ機体に乗り込めるこの場所は三人のお気に入りの場所だった。

 

「なあステラ、調子悪いのか? それなら隊長に言って下がらせてもらえば」

「戦う」

「無理されて死なれたらこっちが困るんだけど? 味方一杯いるんだし、無理するところじゃないってわかんないかなぁ?」

「無理してない。戦う」

 

 ステラは頑なだった。手にハンカチを握りしめて、そのハンカチをじーっと見つめている。

 

「あのザフトのジープで出会ったやつにもらったのか?」

「好きなんじゃねえの?」

「違う! 好きじゃない!!」

 

 ステラは叫ぶ。それは明確な否定だった。しかし、肯定しているようなものだった。アウルが笑い、スティングの表情が曇る。

 

「……やっぱり言えよ。ミネルバだろ? 戦いたくないって言え」

「でも!」

「ステラ。命令だろ? 誰かを好きになったら報告しろって」

「――! でも、だって、戦わないと、私たちはなんのために……」

 

 怯えるような、そんな言葉にアウルは顔を顰める。今は自由だ。そりゃ脱走こそ許されないが隊長は割と好き勝手させてくれる。でも、こうなる前は本当につらくて苦しかったのだ。不要品だと判断されたら――口にするのもおぞましい。

 

「あれ、みんなどうしたの?」

 

 そこに、ミーシャがやってきた。ステラは慌ててハンカチをポケットに隠してしまった。その仕草をミーシャが気づかないわけがない。

 

「……ステラ?」

「――隊長、なんでもない。私は戦う。戦える」

 

 ミーシャはスティングとアウラの二人を見る。浮かない顔をしている。何かあるな。そう思ったミーシャはしばらく考えて……そして、言う。

 

「そういえば、ザフトに助けられたって言ってたね。その時に何かあった? もしかしてクズのザフトに無理矢理おかさ――」

「シンは違う!」

 

 反射的に叫んでから、ステラはハッと口を抑えた。ミーシャは顔を顰める。その名前には聞き覚えがある。きっとステラは破砕作業に集中してて全く覚えてないのだろう。

 

「シン。シンね……」

「……知ってるの?」

「ユニウスセブンの時ちょっとだけ話したクソ生意気なザフトだよ」

「……生意気なんかじゃないもん。可愛いよ」

 

 こりゃダメだ、とミーシャはため息をついてやれやれと首を振った。ほんの僅かしか会っていないというのにずいぶんと惚れ込んだものだ。

 

「とりあえずステラは今回……そうだね、足の負傷の予後に不良が認められるため出撃を停止。医務室で……いや、医官には後で適当に診断書書かせるから部屋で療養しておくこと」

「隊長、お願いします、戦わせてください」

 

 ミーシャは首を振る。

 

「私、これでも女の子だよ。好きになっちゃった人と殺し合えなんて言いたくない」

「違うの、隊長。私、私達……もし戦うのをやめたら、なんのためにあんな目に遭ったのかわかんなくなる……」

 

 エクステンデット。薬物強化と強化手術。催眠暗示。言葉にすればなんと簡単なのだろう。だが、実際にその地獄を生きてきた三人にとって、自分がされたことには意味があったと思いたいのは当然であろう。

 散々苦しんで。散々辛い思いをして。コーディネーターを殺すために、そのためだけに人生の大半を費やして。

 ――それで、戦う事すら辞めたら、自分の人生は、あの時の苦痛は一体なんだったのか。

 

「二人も同じ意見なの?」

「まぁ……概ねは。正直今から戦うこと辞めて平穏に暮らせとか言われても――拒絶するだろうな」

「俺も俺も。せっかく無理やりにでも強くなったんだから、使わなかったら何のための力だよってならない?」

 

 ミーシャは痛ましげな顔になって、しばらく考える。

 

「ステラ」

「うん」

「まず……そんな大げさな話じゃなくてさ、今回と、それからミネルバ相手にするときだけ、外してあげたいの。それでも嫌?」

「……うん。だって私、戦える。戦えるのに戦わないなんて……そんなの……そんなの、嫌。だって、みんなが……もしみんなが死んじゃったら……」

 

 サボるのが嫌……なんて簡単な気持ちではないだろう。それくらいはミーシャにだってわかる。戦艦に乗ってて自分は元気いっぱいなのに戦わない。そんなの確かに嫌だ。でも恋愛関係は精神に多大な影響が――。とにかく悩ましい。

 

「じゃあ、シン以外なら普通に戦えるよね。シンはインパルスに乗ってるから、ステラはインパルスから離れて戦うように」

「……私、そんな特別扱い……」

 

 ミーシャはにこりと笑う。

 

「ま、その代わり私の好きな人が戦場に出てきたとしても、代わりにステラが戦ってよ。女同士の協定ってやつ」

「――それなら……わかり、ました」

 

 ステラは頷いた。よし、とミーシャは手を叩く。

 

「じゃ、みんなそろそろ出撃準備。コクピットに乗り込もうね」

「了解!」

 

 ミーシャは自分のフリーダムに乗り込むと、ため息を吐く。

 

「自己肯定感? ってやつが低いのかな……? でも確かにミネルバと連戦することになって、ずっとステラだけ戦わないってなると……しかもそれで味方が死んだら一生引きずるだろうしなぁ」

 

 難しい。とにかくステラには気をかけてあげないと。ミーシャはアウルとスティングにプライベート通信を開いた。

 

「こちら()()()()、ステラには聞こえてない通信だよ」

「……どうしたんだ?」

「なんだよ」

「二人とも、ステラのフォローよろしくね。具体的にはシン……インパルスと向かいそうになったら警告してあげてほしい」

「そんだけでいいのか?」

「もうちょっとないの?」

「二人だって戦闘に忙しいだろうしね。私も見てるけど……気にしてあげて。二人も好きな人できたらちゃんと報告してね?」

 

 ミーシャが笑いかけると、スティングもアウルも複雑な顔をする。

 

「ま、気が向いたら……だな」

「隊長を好きになったら報告しまーす」

 

 アウルが笑うと、ミーシャも同じように笑う。

 

「そんときはムードもよろしくね。じゃあ通信終わり」

 

 ミーシャは通信を切ると、いつもの部隊用通信に切り替える。

 

「バレンタイン隊全機報告」

「オークレー少尉問題なし。いつでも行けます」

「ニーダ少尉異常なし。強化されたアビス、やってみせるぜ」

「ルーシェ少尉大丈夫……です。隊長、本当にいいの……?」

「いいのいいの。カバーしあって行こう」

 

 ほどなくして戦闘が始まり、ミーシャ達は船の側部から出撃する。

 フリーダム、カオスは上空に飛び上がり、ガイアは船の上に着地。アビスは変形して海の中へと潜った。

 

「よーし、戦闘開始! ザフト共をぶっ殺すよ!」

 

 戦闘が始まった。ディオキアから防衛戦力としてザクが何機も出撃して、防衛兵器からの射撃も飛んでくる。それらに護衛されてミネルバが戦場にやってくる。インパルスとザクが2機、そして見慣れないオレンジ色の機体がミネルバから出撃したのが見える。

 

「新型……? まぁ、いいや。みんな、雑魚から先にやっちゃおう」

 

 ミーシャがレーダーを細かく注意しながら見る。様々な状況を判断しなければならない指揮官としての職務と、後方から敵を狙う戦闘スタイルは程よく合っていた。隙のあるザクからミーシャが狙い撃っていると、進軍してきたミネルバが艦首特殊砲、タンホイザーを起動するのが見えた。狙いは中央旗艦、タケミカヅチだ。

 

「タケミカヅチ! タンホイザー来るよ! 避けて!」

 

 ミーシャの叫びもむなしく、陽電子砲が発射される。……その時。戦闘空域外、遥か遠くからビームが飛んできてタンホイザーを貫いた。発射寸前だったタンホイザーは派手に爆発し……その場にいる全員がビームが飛んできた方向を見た。

 

 ――そして、彼らは見る。

 

「……うそでしょ?」

 

 ミーシャが呆然と呟く。

 

 純白の装甲。青い翼。言わずと知れたフリーダム。ミーシャのフリーダムと区別されるときに表現される、『3隻同盟の白いフリーダム』が、戦闘空域に侵入してきた。呆然としている間に海の中からアークエンジェルが浮上してきて、カタパルトハッチが開く。ストライクが出撃してきたかと思うとフェイズシフトが起動し、機体が真っ赤に染まる。ストライクルージュ……カガリの機体だ。ご丁寧に肩にエンブレムまである。

 

「噓でしょ……? カガリ?」

 

 ミーシャは困惑する。思わずユウナに通信を繋ぐ。

 

「ねえユウナ様あれカガリだよね? ウチ、カガリがこんなタイミングで来るって聞いてないんだけど……まあいいや。キラもいるなら心強い。一緒にザフトを殺すで問題ないよね?」

「え……あ……え?」

 

 ユウナは困惑しっぱなしだった。ミーシャは肩を竦めて、まだ困惑冷めきらないミネルバに向けてビームライフルを向ける。

 ……そこに、威嚇するように白いフリーダムからビームが飛んできた。あらぬ方向ではある。当てようともしていない射撃だった。しかし、白いフリーダムは……キラはミーシャに向けて撃った。

 

「――キラ」

 

 ミーシャは通信を繋ぐ。そこには顔を曇らせ、死んだ目をしてコクピットに座るキラがいた。

 

「……戦場に来んなって言ったよね、とか、カガリをモビルスーツに乗せてどういうつもり、とか……言いたいこと色々あるけどさ。まず聞かせて。なんで撃ってくんの?」

「ごめん。でも……カガリの言葉を聞いてほしい」

「カガリの? ……いいけど」

 

 ミーシャが言うと、その場にいる全員に向けて広域通信が来る。

 

「私は! 私はカガリ・ユラ・アスハ! オーブ代表だ! 戦闘区域にいる全オーブ軍に命じる! 今すぐ撤退しオーブへと戻れ!」

 

 カガリはいきなりそんなことを言いだした。本気でそれができる状況だとカガリは思っているのだろうか。

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