【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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ステラ

 ミーシャは戦闘終了後、隊長室に籠もって項垂れていた。誰とも話さず、誰も部屋に入れず……。自分の執務机に両肘を乗せて頭を抱え、掻きむしる。

 

「クソッ……ステラ……!」

 

 どうすれば……。ミーシャは悩む。悩んでもどうしようもないのはわかってる。でも、何かを考えていないとどうにかなりそうだった。ただ、時間だけが過ぎていく。

 

――ミネルバ艦内、タリアは休憩室でアーサーと話をしていた。話題は捕らえている捕虜について。タリアは重々しいため息をついた。

 

「……本国から命令が下ったわ。彼女を連れてジブラルタルへ帰還せよ、ですって。簡単に言ってくれるわ……。戦力がインパルスしかないのに」

「エクステンデッドを連れて……ですか。どういうつもりなんですかね?」

「さぁ……。でも、()()()()やら()()()()()調()()が予定されてるらしいわ」

 

 タリアとアーサーは揃って苦い顔をする。それはつまり、死ぬまで痛めつけて死んでからバラバラにするということだ。流石に敵とはいえ生き地獄に突き落とすのは気分が悪くなる。

 

「……せめてこの船にいる間は心穏やかに過ごさせてあげましょう。彼女も大人しいし……助かるわ」

 

 タリアはそう言って話を締めくくる。――休憩室の直ぐ側でその話を聞いていたシンには最後まで気付かなかった。シンはその話を聞いてすぐ、ステラを収容している牢屋に向けて走り出した。

 

 ……牢屋の入口には、看守として保安部が立っている。

 

「おい、ステラ会わせてくれ!」

「ん……アスカか。いいぜ。お前も参加してくか? 今始めたばっかだし……一番はお前が持って行けよ」

 

 シンはその言葉を聞いて頭を真っ白にした。……何の話をしているんだ? 嫌な予感が湧いてくる。やめてくれ。その先を言うな。

 

「な、何言ってんだよ……!」

「――あいつの隊長には俺達がえらく苦労させられた。ほとんど全滅みたいなもんだろ? だから部下に責任を取ってもらおうと思ってな。まぁ、別にいいだろ? どうせ向こうから見捨てられた奴だ。どうしようとこっちの勝手――」

「うあああああ!」

 

 シンは即座にそいつを殴り飛ばした。ほとんど何も考えず、反射的な行動だった。だが後悔はしない。顎への一撃で看守の意識を飛ばすと、中に踏み込む。

 

「――暴れんなって! お前は隊長から見捨てられたんだ! 大人しくしてりゃ()()してやるからよ……!」

「ヤダ……! やめて……!」

 

 上の服を脱がされて、手錠をされた状態で暴れるステラを見て、シンは完全に怒りに我を忘れた。近くにあった折り畳まれたパイプ椅子を手にすると、ステラを襲っている仲間に向けて思い切り振り落とした。凄まじい音がして、彼は完全に気を失った。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

「ステラ……! 大丈夫か!?」

 

 シンが近付こうとすると、ステラは怯えたように後ずさった。その反応に、シンは目を見開いて呆然とする。ステラが、傷ついて錯乱している。そうなったのは自分の仲間のせいで……。暴れるステラの目は焦点が合っておらず、どこも見えていないようだった。

 

「ひっ……! ヤダ……! 隊長……助けて……! スティング……! アウル……! ネオ……! 助けて!」

 

 うわ言のように、瞳から涙を流しながら名前を繰り返し呼んで、何度も助けを求めるステラの手を、シンは握る。

 

「ステラ! 俺だ! もう大丈夫! 俺が守るから!」

 

 シンの必死な声が聞こえて、ハッと、ステラは正気を取り戻してシンを見た。

 

「――シン?」

 

 肩で息をして、ステラはシンを見る。シンは安心させるように頷くと、ステラに脱がされた上着を渡す。

 

「俺だよ。シン・アスカだ。ステラ。このままだと君は殺される。――ついてきて」

「で、でも、シン、こんなことしたら……」

「いいんだ。俺はスーパーエースなんだ。こんなことで銃殺刑なんてできるもんか」

 

 シンは倒れている男から鍵を奪うと、ステラの手錠を外す。シンはステラを力づけるように……というよりかは心から信じているようにそう言った。ステラはその言葉を信じて、とりあえず上着を着る。

 シンは彼女の手を取って、格納庫に向かって走り出す。格納庫に繋がるエレベーターが開くと、ザフトの仲間二人と出くわした。

 

「なっ……!? 捕虜がなんで!?」

「チッ!」

 

 シンは迷わなかった。目の前の仲間を殴り倒す。だが、もう一人が銃構えてステラを狙う。

 

「やめろー!」

 

 シンが叫ぶと同時に、仲間の動きが止まり、白目を向いて倒れた。

 

「……レイ」

 

 彼を気絶させたのはレイだった。レイはシンとステラの二人を見る。

 

「何があった」

「……彼女が、本国に連れていかれて……耐久実験と、解剖だって艦長が言ってて……なんとかしないとって思ってステラに会いに行ったら、保安部が、彼女を無理やり――」

 

 シンがそこから先を言う事はなかった。だが、レイは事情を把握した。レイは気絶させたザフト兵を端に片付けると、二人をエレベーターに押し込んだ。

 

「レイ! いいのかよ、お前まで……」

「気にするな。覚悟の上だ。……今までの人生で、彼女に選択肢はなかった。どんな命でも……生きられるなら生きたいだろう。明日をも知れぬ命というわけでないなら、なおさらだ」

「……悪い、恩に着る……!」

「俺は俺がやりたいことをやるだけだ。格納庫のハッチに関しては任せろ。お前はとにかくインパルスに乗れ」

 

 レイがボタンを押すと、エレベーターが閉まる。格納庫に着く前の通路で、作業を終えたアスランと出会ってしまった。シンが苦い顔をする。勝てるかどうかわからない相手……。しかし、アスランはシンとステラを見る。

 

「……シン、お前は何やってるんだ? こんなことして許されるとでも思っているのか?」

「な、なんですか。俺はステラを戻したりしませんよ!」

「だがな、俺たちは――」

「このまま牢に戻して、他の奴らに好き勝手させることが正しいことだってあんたは言いたいのか! ステラにそういうことまで受け入れさせるのが、正しい軍人の在り方だって言うのかよ!?」

 

 シンの言葉を聞いて、アスランは目を見開く。……そして、苦い顔をする。シンがステラを逃がそうとした理由がわかってしまった。ここで止めて牢に彼女を戻すということがどういう意味を持つかも、理解してしまう。

 アスランの脳裏にはカガリの顔が浮かぶ。そして、ラクスの顔もだ。アスランは顔を曇らせたまま、シンを見る。

 

「……帰ってくるんだな?」

「あ、当たり前だろ!?」

 

 シンが答えると、アスランはふっと微笑んだ。

 

「前の大戦のとき……ラクスがアークエンジェルに囚われたことがあってな」

「……?」

 

 急に昔話を始めたアスランに訝しげな顔をするも、シンは大人しく聞いている。

 

「……そのとき、キラがラクスを返してくれたんだ。後でそのときのことを聞いたらな、ミーシャが手伝ってくれたんだと言っていた」

「魔弾の悪魔が……?」

 

 アスランはシンに頷くと、短く宣言する。

 

「まだ連合艦隊に襲撃される可能性は否定できない。……シン、偵察に行ってくれるか? 命令は俺の権限で出すから……艦長を通す必要もない」

 

 シンはその言葉に、満面の笑顔になった。まさかアスランが協力してくれるとは思っていなかったのだ。

 

「もちろんです!」

「命令を出すから少し待て。……ミーシャに伝えてくれ。あのときの礼だと」

 

 アスランは迅速に命令を発すると、FAITHの権限で艦長を通さずにシンを出撃させられる状態にした。格納庫の操作室ではレイがアスランの命令に答えた。

 シンはアスランと一緒にステラを連れて格納庫に着くと、コアスプレンダーに乗り込む。キャノピーのすぐそばでアスランが厳しい表情で忠告する。

 

「シン、出撃までは責任が持てる。だが……そろそろ気付かれるだろう。捕虜を勝手に返したことについてまでは……」

「大丈夫ですよ! 俺しか戦力いない状況で無茶できるもんか!」

 

 明らかに調子に乗っている様子に、アスランは顔を顰める。

 

「シン! 調子に乗るな。お前はあくまでただの兵士に過ぎないんだぞ!?」

 

 アスランが忠告するが、シンはもう聞いていなかった。出撃準備を即座に終えると、キャノピー付近にいるアスランに向かって叫ぶ。

 

「そんなのわかってますよ! さあアスラン、離れてください! コアスプレンダー、シン・アスカ。行きます!」

 

 アスランが離れると、シンは堂々と命令のもと、インパルスを出撃させた。ミネルバ上空で合体すると、周辺に向けてガイアから抽出した通信周波数で呼びかける。

 

「……こちらミネルバ所属シン・アスカ! ミーシャ・ バレンタイン! お前の部下は預かっている……! 取り返したいなら一人でポイント825デルタへ来い!」

 

 シンは繰り返し放送しながら指定したポイントまで向かった。

 

 ――一方、その通信を聞いたミーシャはすべての反対を押し切ってフリーダムで出撃した。コクピットの中にネオの叫びが響く。

 

「バレンタイン大佐! 罠かもしれないだろ!? ホントに一人で出るやつがあるか!」

「罠なら食い破る……! 一対一なら私なら負けない!」

「相手が一人かどうかは……!」

「ミネルバはインパルスしかいない! 雑魚相手なら何人いようが私はやられない! 大丈夫だから!」

 

 最悪でも死ぬことはない。ミーシャの実績がそう言っている。それに、部下を取り戻せる機会があるのなら、取り戻させてやりたかった。もし上に怒られることがあったとしたら……そうなったら全力で弁護しよう。ネオはそう決めた。……と言ってもミーシャより上なんて現場にはいないのだからどうとでもなるような気もするが。

 

「……わかったよ! 死ぬなよ!」

「死ぬもんか!」

 

 ミーシャはフリーダムをポイントに急がせる。指定された場所は大きな岩場で出来た小さな陸地だった。インパルスを目印に着陸すると、コクピットから降りる。ここで撃たれたらどうしようもなかったが、インパルスは撃ってこなかった。

 

「本当に……子供なのか……」

 

 シンは愕然としながらコクピットハッチを開ける。

 

「ほら、ステラ。一緒に」

「うん!」

 

 シンはステラの腰を抱いて、昇降装置でインパルスから降りた。

 

「ステラ!」

「隊長!」

 

 ミーシャとステラはお互いに呼び合う。ミーシャの表情は安堵と心配がないまぜになったようなもので、とてもではないがエクステンデッドという道具を使い捨てにする外道のようには見えなかった。

 

「魔弾の悪魔! これだけ聞かせろ!」

「何!?」

 

 お互いに距離があるため、大声で怒鳴り合うように会話する。

 

「なぜステラにはエクステンデッドの処置がされていない!? ブロックワードは!? 記憶処置は!? なんでだ!」

「ロドニアの記録を探ったの……?」

 

 ミーシャはザフトにエクステンデッドの情報が完全に漏れたことを悟り、顔を顰める。アレは敵にバレたらヤバイ厄ネタなのだ。政治的に利用されるに決まってる。だが……今のミーシャは質問に答えないわけにもいかない。ステラはまだシンの手の中だ。恋人にみたいに腰に手を回して……。彼氏面か? ステラもまんざらでもない様子だから許すが……。

 

「なんでって……! そんなの決まってるでしょ! ブロックワードも! 記憶処理も! そんなのはね! 人間相手にやることじゃないのよ!」

 

 ミーシャの言葉に、シンは目を見開く。幼い見た目で、生きていたらマユと同い年くらいの子供。それがザフトの怨敵、プラントの悪夢、魔弾の悪魔だなんて。これで悪辣なら恨めもしたのに。見るからに子供そのままのミーシャが、地球軍の制服を着て戦っている。シンは色んな感情が湧いてくる。そしてその感情をなんと呼べばいいのか、わからない。哀しみのようで、怒りのようで。不思議な感覚だった。

 

「――ステラ! 帰ろう!」

 

 ミーシャはまるで親しい人を相手にするかのように心配そうな顔でステラに手を伸ばす。

 ステラはシンの顔を見る。お互いにしばらく見つめあい……ステラの方から、キスをした。頬ではなく、唇に。

 

「!」

「あっ!?」

 

 ステラが顔を離すと、にっこりと微笑む。

 

「シン……ありがとう」

「ステラ……。おい! 魔弾!」

 

 シンはミーシャに向けて叫ぶ。

 

「もうこれ以上……! ステラを戦わせるな!暖かくて優しい、そんな世界で休ませてやってくれ! もういいだろ!? もうステラは十分戦っただろう!?」

 

 シンは懇願するように言った。しかし、ミーシャの答えははっきりとした拒絶だった。

 

()()()()()()()()! ……でも、ミネルバからはもう手を引く! これが私のできる限界! それで満足できないなら……!」

 

 ミーシャが腰の後ろに手を伸ばそうとしたその時。ステラがシンの前に出て両手を広げた。

 

「隊長、ダメ!」

「!」

「ステラ、よせ!」

 

 シンも同じようにホルスターに手をやる。一触即発の空気。しかし、ステラが無防備に歩き出した。

 

「ステラ!」

 

 ミーシャとシン、二人がステラの名前を呼んで、銃を向け合う。

 

「魔弾の悪魔! ステラを殺したら承知しない!」

「シン・アスカ! 後ろからステラを撃ってみろ、お前らザフトを根絶やしにしてやる!」

 

 二人は銃を向けたまま……ステラがミーシャの方へ歩く。両者の間に来たあたりで、ステラは振り返ったシンに手を振った。

 

「シーン! ありがとう! またね!」

 

 無邪気な笑顔。眩しいその笑顔に、シンはすっかり戦意を削がれてしまった。銃をおろし、空いた手でステラに手を振る。

 

「隊長、ただいま!」

 

 ステラは駆け出すと、銃を持つミーシャの手を握る。ミーシャは苦笑すると銃をホルスターにしまった。

 

「――そんなことしなくても撃たないわよ。恩人で……好きな人なんでしょ?」

「うん!」

「……よかった」

 

 ミーシャはステラを思い切り抱きしめた。シンはまるで二人が姉妹のようだと思いながら……背を向けて、インパルスに向かう。最後に、シンはミーシャに叫ぶ。

 

「魔弾! 最後に伝言だ! アスランから、あのときの礼だってさ!」

 

 シンはそう言うとインパルスに乗り込んで、飛翔した。ぎゅう、と抱きしめ合って再会を喜ぶ二人を、シンはずっと、小さくなるまで見つめていた。

 

 ――ミネルバの営倉で、シンはベッドに寝転んでいた。アスランも、レイも、同じように別々の営倉に入れられている。理由は言わずもがな。本国から連行を命令された捕虜を勝手に返還した罪である。銃殺刑に処されるのが当然というレベルの罪の数々だが、シンは言い訳しなかった。主犯ではないレイとアスランも相当の罰則を覚悟していた。

 

「……アスラン」

「なんだ」

「あんたは、こういうこと反対すると思ってた」

「別に……俺だって人の子だ」

「……どういうことです?」

 

 アスランはベッドに腰掛け、営倉の冷たい壁に背を預ける。顔を上げ、天井を見上げる。

 

「……わかるだろう? あの子はここにいたら酷い目に遭う。ジブラルタルに着くまで若い奴らの慰み者で……それが終わったら今度は実験動物だ。あまりに哀れだと思ってな……。それに……そういう面では、俺はあいつに……ミーシャに……いや、ミーシャの友達に借りがある」

「ラクスさんの件ですか?」

「ああ」

 

 アスランは頷いた。アークエンジェルにラクスが捕まったと知った当時……アスランはそこまで興味を持てなかった。だが、思い返せばステラのような目に遭ったって全然おかしくなかったのだ。――だが、そうはならなかった。彼女は痛みも苦しみも知ることなく、アスランの元に帰ってこれた。

 

「アークエンジェルでラクスは……ミーシャと、ミーシャの友達……ルミナという子に守ってもらっていたらしい。敵船にいるのに歌を歌って、可愛らしいファンとデュエットしたと楽しそうに語っていたよ」

 

 ――アスランはルミナがイザークに殺されたことを知っている。だからこそ、余計にステラのことを見過ごせなかった。

 

「ミーシャとは……色々あった。殺し合いもした。だが……ルミナという子には、俺はもちろん、ザフトの誰も何もされてない。ルミナという子の友達――ミーシャの――彼女の助けになることが、ルミナという子に借りを返すことになるのなら……そう思ったまでだ」

「……別に、本人に返せばいいじゃないですか」

 

 アスランだってできるならそうしたい。だが。

 

「ルミナという子は死んだ。避難船で逃げるところを……撃ち落とされた。まだ、10歳だったらしい」

 

 シンは目を見開く。10歳。マユとほとんど同じ。話を聞いていたレイが口を開いた。

 

「……まさか魔弾はその時から戦っていたのですか?」

「ああ。そうだよ」

 

 レイもシンも、驚愕する。10歳の女の子が、ナチュラルの女の子が、モビルスーツに乗って戦う。それがどれほど困難なことか、パイロットの二人にはよくわかった。

 

「……なんで……なんで戦争ってこうなんだよ……」

「……シン……」

 

 シンは拳を握りしめて呟く。

 

「10歳の女の子が戦って……マユも、魔弾の友達も、何も悪いことしてないのに殺されて……! 戦争は、なんでこんなにも……大切な人を奪うんだ……!」

 

 それは慟哭のようだった。失った哀しみに、奪われた怒りに、それらを混ぜたような感情がシンの中で渦巻いている。

 

「……シン。俺達パイロットにできることは少ない。だからこそ……だからこそ、誰と戦い、なぜ戦うかを常に見据える必要があるんだ。そうしないと……俺たちは、ただ力を振るい奪うだけの存在に成り下がってしまう」

「……はい、アスラン」

「――戦争のない、世界があれば」

 

 レイが絞り出すような声で言った。

 

「俺は……戦争のない世界を作れるなら……そのためならば、何でもできる」

「――俺もだよ、レイ」

 

 シンはレイに同意する。戦争のない世界。平和な世界。そんなものがあったらきっと……。

 

『そんなものはない!』

 

 暖かくて優しい世界。それを存在しないと言い切った彼女も、銃を置くことができるのだろうか。

 

 銃殺刑を覚悟した三人だったが、プラントからの処分は艦全員が驚愕する内容のものだった。

 

『捕虜が誤って()()()()ことは残念だが、捕虜に施された処置が原因であると推測できるため、今回の件は不問とする』

 

 デュランダルから直々に降りてきた処分……とも言えない辞令に、タリアは頭を抱える。営巣にぶち込むときに散々説教したところだったのに、これではタリアの立場がない。

 ――艦内の舵取りについて悩みは尽きない。これからもきっとシンの独断専行は増えるだろう……そう思うと胃が痛くなる気がした。




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