【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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パブリック・エネミー

 後に歴史に刻まれるその日、世界に激震が走る。……ただ、ごく普通の日だった。

 昼過ぎに、デュランダルが世界中の通信をジャックして放送を始めるまでは。

 すべての公共放送を乗っ取る形で放送を始め、デュランダルの顔がありとあらゆるチャンネルで放映される。

 

「地球にいるみなさん。私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです。プラントと地球軍は現在戦争状態を継続しておりますが……。このような形でメッセージを送ることになり、誠に申し訳ありません。

 どうかこの放送を聞いている皆様。今しばらく、私の声に耳を傾けていただきたい。

 ……各国の政策によって、これを知っている方は限られるかと思われますが、まずはこの映像をご覧いただきたい」

 

 表示されたのはデストロイが大暴れする映像だ。ビームで、ミサイルで、その機体が持てるありとあらゆる手段で人々を殺す映像だ。……そして、それを止めようと戦うインパルス。そして、ミーシャのフリーダム。

 その放送を携帯で見ていたミーシャの友達3人は、目を見開く。

 

「……ミーシャ……! ミーシャっていつもあんな敵と戦ってるの……!?」

 

 アイリが驚く。画面に映るデストロイは生半可な大きさではない。どんな攻撃も弾き、どんなモビルスーツも意に介さない。化け物みたいな相手と戦う親友に、目眩がしそうだった。

 

「……この機体のパイロット、物凄く小さく見えますね……」

 

 連合の非道さを強調するためか、インパルスから見たデストロイのパイロットの様子が一瞬、しかし確かに大写しになる。そして、その直後ミーシャのビームサーベルがコクピットに直撃する。

 

「……知ってたのかな、ミーシャは」

「た、戦っててそんなのわかるわけないでしょう? ミーシャは……きっと知らなかったんです」

 

 3人はそれからもハラハラし続けることになる。連絡一つ取れなくなった、プライマリスクール時代の親友の危うさのせいである。画面はデュランダルに移り、彼は再び演説に戻る。

 

「先の巨大モビルスーツによる一方的な攻撃を、地球軍は脱走兵によるテロ行為だと断定しました。我々プラントは、先のユニウスセブンの件を受けて、それを一旦受け入れます。

 テロ行為の被害に遭われた方にまず、哀悼の意を表します。……皆様に私は伝えたい。なぜ彼らはテロを起こしたのか。そして、戦争の災禍の真実を」

 

 ジブリールはプラントのトップが緊急の放送をしていると聞いて即座にロゴスのメンバーを招集した。しかし明らかに集まりが悪い。ミーシャとアズラエルは会議に参加しているが、若手以外が本当に見当たらなかった。

 

「クソッ……何を言う気だ化け物め……」

 

 ジブリールが歯噛みしていると、デュランダルはさらに話を続ける。

 

「戦争は人を傷つけ、殺し、悲劇しか生みません。愛する人を傷つけ、大切な人たちを奪い! 一方的に攻撃される! なぜ()()()()()()は我らに平和を許さない! なぜ友と手を取り、愛する人と穏やかに過ごすことすら許さない!」

 

 ヒートアップしたデュランダルを宥めるように、画面の外からラクス・クラインがすっと現れ、デュランダルの肩にそっと手を置いた。

 

「……ん……?」

 

 ミーシャはその仕草に訝しむ。いくらラクスが慈愛の人とはいえ……彼女は本来、見も知らぬザフトよりミーシャやルミナが生きている方がいいと言える女性だ。割と愛情深い人のはず。……そんな人がいくら放送とは言えキラ以外にあんな仕草するだろうか? キラはラクスとそんな関係じゃないなんて言っていたが、ラクスはバッチリその気だろう。ゴールインする気もないのに相手の両親も含めて同居する女なんてこの世に存在しない。

 ……というか今ラクスはキラのそばにいるんじゃないだろうか? クソザフト筆頭のアスランじゃあるまいし、こんなヤバイ情勢の中好きな人置いてプラントに行くか? そういえばキラはラクス共々暗殺されかかったと言っていた。だからプラントに身を寄せたのだろうか? ……いや、ラクスは前の大戦が終わって数ヶ月もしないうちに活動を再開したはず。それならそもそも時系列合わなくないか? もしかして……偽物? ミーシャはラクスを暗殺しようとした人間がうっすらわかりつつあった。偽物を本物として扱いたいなら、本物という存在はこの上なく邪魔なはずだ。

 デュランダルの誤算。それは、ラクスがキラと共に過ごしていて、暗殺されかかったということをミーシャが知っているということだった。どんな伝手があってどんな記録を見ようとしても、海の底深くに沈んだムラサメの通信記録を漁ることなどできないのだ。

 ……だから、デュランダルは知らず知らずのうちに、ミーシャに不信を抱かれた。

 

「……平和、ねぇ」

 

 ミーシャは気付いてしまった真実に顔を歪める。……本当に短い夢だったように思う。それとも、ラクスの偽物立てて本物を消そうとするのが平和に繋がるのだろうか。もしかして恒久和平の実現とは邪魔者全て殺した先に実現させるものなのか。

 

 平和、平和か。

 

 

 ――それってどんなものだっけ?

 

 

 ミーシャはデュランダルの放送を聞きながらそんなことを考える。

 

「皆様。わたくしはラクス・クラインです……ユニウスセブンや、ユーラシアの街でのテロ行為で地球の皆様は怒りや憎しみを抱いている方もたくさんおられると思います。しかし、今こそ私達は話し合わねばならないと思いませんか? お互いを滅ぼすまで戦うことが本当に正しいことなのでしょうか? 私達は憎しみのままに引き金を引く痛みを、喪う悲しみを、散々経験したのではありませんか?」

 

 そう言われて、ミーシャは親友ルミナの笑顔を思い出そうとして……出来なかった。もう、ルミナの顔は、声は、記録にしか残っていない。もう写真に写っている表情以外を思い出せない。両親の声なんてもう高かったのか低かったのかすら思い出せない有り様だ。2年という時間は残酷で、ありとあらゆる思い出を風化させ、色褪せさせる。

 

「私達は何度も間違います。けれど、もう銃を手に取ることをやめて……お互い歩み寄ることを考えてもいい時期ではないでしょうか?」

 

 ラクスがそう言うと、デュランダルはラクスの方を見て、そして演説を引き継いだ。

 

「……しかし、我々は歩み寄ることすら許されません……。――戦争に使われる武器は、防具は、兵器は、常に使用され続けます。このことに気付き、永遠に戦争が続けばいいと願った者たちがいます。……彼らの名はロゴス」

 

 ジブリールは顔を真っ青にした。嫌な予感がひしひしとする。

 

「有史以来財を築くため戦争を煽り、戦争が続くよう暗躍し続けた組織です。彼はコズミック・イラの時代でも暗躍を続けました。その結果がこれです!」

 

 そう言ってデュランダルが画面に表示したのはエクステンデッドの研究施設、ロドニアのラボの様相だった。子供の死体ばかり。大人の死体もたまに交じるそこは、慣れていない人間からするとそれだけで吐き気を催すような光景だ。慣れている人間でもここの光景はキツイ。

 

「……これはコンピューターグラフィックスではありません。実際に起きたことなのです。

 だからこそ許しがたい! 無為に喪われた命! 研究のために費やされた数多の未来! 私はこの研究を進めた彼らを決して許しはしない!」

 

 デュランダルが怒鳴る。ミーシャは()()()()()()()()の演説を聞いて、顔を曇らせる。ロドニアのラボの真実はあまりに残酷だ。ミーシャも、部下からラボでのことを聞いて本気で気分が悪くなった。世界の敵として糾弾されるのも已む無しだと思った。

 

「――皆様。ロゴスは戦争を経済活動としか思っていません。だからこそ気軽に起こせるし、だからこそずっと続けばいいと考える。――皆様、そんな見えざる支配から抜け出す時がやってきました。戦う時なのです。彼らが命じるまま、彼らの利益になる戦いではなく、彼らから解放されるための戦いです。

 ……彼ら、ロゴスと戦うための」

 

 そうデュランダルが言うと、画面いっぱいに顔写真とプロフィールが表示される。ロゴスの全メンバーの顔写真だ。そこにはアズラエルの名前もあるし……。

 

……当然、ミーシャの顔写真もある。

 

 その顔を見た人々は困惑した。ロゴスに? ミーシャが? なんで?

 

 その混乱を民衆が()()()()()()、デュランダルは答えを与える。

 

「皆様。見慣れた人物がいて、困惑しているようでしょう。彼女はミーシャ・バレンタイン。あなた方もよく知る魔弾の天使です。彼女もロゴスのメンバーではあります。しかし、彼女は亡くなった父の遺産を継いだに過ぎません。だからこそ彼女は、父が所属していた組織に属し、その組織を内から変えようと努力していました。しかし、その努力は嘲笑われた。その結果が先のモビルスーツのテロ事件です!」

 

 その言葉を聞いたジブリールがミーシャを睨む。

 

「ミーシャ・バレンタイン!! 貴様裏切ったな!?」

「違うよ。グルになるならそもそもこんな組織の人間だってことを隠してほしいもん」

 

 ミーシャの偽らざる本音である。そして、仲間ではあってもミーシャとデュランダルは繋がりがない。ミーシャは情報を一切提供しなかったし、デュランダルも特にミーシャに配慮したりしなかった。元々の演説からしてこういうシナリオだったのだ。やはり地球のナチュラル相手にミーシャのネガティブキャンペーンをやるにはデュランダルの人となりがあまりに知られていない。大人気のミーシャを貶めて不信感を持たれるよりかは、あえてミーシャを持ち上げることで自分の信用を上げる。デュランダルはこういう手管を好む男である。

 

 英雄の穢れた真実……よりかは、英雄は人知れず巨悪と戦っていた。今はこういうシナリオの方が受けがいいのだ。

 

「皆様。英雄と同じように立ち上がりましょう。あのミーシャ・バレンタインと同じように戦いましょう。あなたにできるやり方で、あなたにできる戦いを!」

 

 デュランダルは続ける。

 

「我々は、ここに、人類最後の、すべての戦争を集結させるため……ロゴスに対して、宣戦布告します!」

 

 賽は投げられた。

 

 ミーシャは困惑やら驚愕やらで大慌てのロゴスメンバーをよそに、ジブリールに宣言する。

 

「ジブリール! 世界の敵認定おめでとう!!

 実はずーーっとあなたに言いたいことがあったの!!」

 

ミーシャは満面の笑みを浮かべてジブリールに言った。やっと言える。ようやく言える。この世界の敵め。人のクローン勝手に量産して酷い目に遭わせやがって。

 

「な、なんです……!」

 

ミーシャは顔から表情を消して、心の底から殺意を乗せて宣言した。

 

 

 

「お前を殺す」

 

 

 

 ミーシャは言いたいことを言って立ち上がるとロゴスとの通信を切ってアズラエルに通信を入れる。

 

「アズラエルさん、今すぐ迎えに行く。このままだと殺されちゃう」

「デュランダルめ……! ミーシャ、セーフハウスはこっちだって用意してますよ」

「あの名簿、どうやって入手したかはわからないけど……セーフハウスだって安全かどうかわかんないよ。うちで匿う。ロゴスに対する戦争の民間協力者ってことにすれば堂々と連れ込める」

「……なるほど。しかし私はワシントンですよ? 一体どうやって」

 

 ミーシャは笑う。汚いやり方は散々勉強したのだ。

 

「フリーダムで行くよ」

「大問題になりますよ? 軍から命令は出させることはできるので地球軍に妨害されたりとかはないと思いますが……この情勢で民衆を敵に回す気ですか?」

「アズラエルさん、フェイズシフト装甲って便利だよね」

「……?」

「塗り替えしなくても色変えれるんだからさ」

 

 ミーシャは行動を開始した。

 

――白いフリーダム……3隻同盟のフリーダムがワシントンDCに突如として現れ、ロゴスの1人を誘拐した件は大々的に報道され……そして、キラたちはいきなり追加された自分たちの悪行に目を見開いた。

 

 民衆達は行動を開始する。わかりやすく提示された世界の敵。そしてターゲットの情報。彼らが自らの意思で立ち上がり……誰の指示も受けていないのに彼らを殺すべく動き始めた。まだ彼らはロゴスというわかりやすい敵がいる。だが、彼らがいなくなったあと、この民衆の熱はどこに行くのか。この時世界の誰もそれを知る由はなかった。

 

「……私達大丈夫、かなぁ……?」

 

 ミーシャの親友3人が通うミドルスクールは資産家達が多く通う私立学校だ。午後はデュランダルの演説についてで持ち切りで……どのようにして身を守るかという話題が積極的に交わされた。……まだ、彼らの身に危険は迫っていない。

 

 それから数日後。地球軍大西洋連邦は一部の部隊がデュランダルの提唱したロゴスに対する戦争に参加することを表明。大西洋連邦軍はもはや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、先のデストロイでのテロ行為はロゴスの仕業だったとするしか道は残されていない。デュランダルからデストロイが脱走兵によるテロではなく、正規兵の作戦であったことを突きつけられたのだ。上がロゴスに操られていた……そういうことにしないと、今度こそ大西洋連邦は終わる。苦渋の選択だった。

 

――一方、ミネルバは下された命令に困惑する他なかった。ジブラルタルへの帰還命令は一旦中止。索敵中の味方と連携し……アークエンジェルを討て、と。オペレーション・ エンジェルダウンと表された命令書を前に、タリアは思案を巡らせる。

 もうすでに上には命令の再考、撤回を何度も要請した。しかし、プラント本国の指示に変更はない。タリアの脳裏には自分の愛しい男の顔が浮かんでいた。

 

「艦長」

 

 艦長室に、シンを連れたアスランが入室してきた。彼が何を言うか、聞かなくてもわかる。

 

「命令のこと、聞きました。なぜアークエンジェルを討つのです? キラは……白いフリーダムは敵じゃない」

「――そう上は取らなかったのよ。シン、あなたも同じ意見かしら?」

 

 この場にシンがいるのは意外だった。彼はフリーダムを倒すのに反対する理由はないと思っていたのだが。

 

「俺は……。ベルリンで、フリーダムと一緒に戦ってて……本当に敵なのか、自信がありません」

 

 白いフリーダムには、ミーシャのフリーダムと違って殺気がない。殺そうとしてこないのだ。まるでこちらが悪いことをしてるから叱りつけるように攻撃してくるところはイラつくが、敵として殺すほどとは思えなかった。

 

「シン。ミネルバは彼に被害を受けてるの。タンホイザーの爆発に巻き込まれて何人死んだか……」

「あ……」

 

 シンも、アスランも、そのことを思い出して苦い顔をする。

 

「……私だって納得してるわけじゃないわ。でも上に何度問い合わせてもダメなのよ。――よっぽど邪魔なのね」

 

 ボソリと、呟くようにタリアは言う。

 

「えっ?」

「なんでもないわ。……シン、この艦はあなた頼りよ。あなたにかかってるの。でもそれは下された命令を反故にしていい理由にはならないの」

 

 タリアはそう言うと、シンの言葉を待った。長い間、シンは何かを考えているようだった。それから、シンはタリアに顔を向けると、敬礼した。

 

「……了解しました。命令に従い、フリーダムを討ちます」

「シン!」

「アスラン」

 

 シンはその場で反転し、部屋を退出した。シンを追おうとするアスランを、タリアが止める。

 

「なぜ止めるんです? あいつは敵でないものを討とうとしている!」

「それを判断するのは私達ではないわ。

 アスラン、あなた彼に自分勝手に戦うなと言ったそうね。私もその言葉は正しいと思うわ。――シンに正しいことをさせてあげてちょうだい」

 

 タリアが言うと、アスランは苦い顔をして黙りこくる。

 

「……キラを討つことが、正しいと言うのか……?」

「少なくとも、ザフトにおいてはね」

 

 タリアの言葉に、アスランは何も言わなかった。間違っていることを言っているわけではないからだ。

 

「……失礼します」

 

 アスランは敬礼すると、艦長室から出る。話をしないと。アスランはシンを探して歩き出した。

 

 ……シンは自室でレイと一緒にシミュレーションをしていた。

 

「……白いフリーダムは同じフリーダムでも魔弾の悪魔とは戦闘スタイルが全く違う」

「確かに。魔弾の悪魔は滅多に敵に近付かない」

 

 それこそデストロイ相手にするときなど、必要にならなければめちゃくちゃ距離を取ってくるのがミーシャのフリーダムだ。しかし、キラのフリーダムは違う。

 

「両者の技量は拮抗している。機体制御は白いフリーダムが大幅に優勢で、射撃の精度は魔弾の悪魔が優勢だ」

 

 レイの分析にシンは頷く。彼女の射撃は恐ろしい。的確かつ悪辣。その場にいる殺せる人間を殺し尽くすのが彼女の戦闘である。だが、それに比べると白いフリーダムは随分と優しく思える。

 

「戦闘に対する信条も全く異なる。魔弾の悪魔が狙うのはコクピットのみ。彼が狙うのは決まってメインカメラか武装。あるいは推進装置だ。精密射撃をするため、彼は近距離、もしくは中距離から戦うことを好む。彼はおそらく人を殺したくないのだろう。……そこに勝機がある」

 

 人を殺したくない。戦場に出ておいて、そんなことを言うなんて馬鹿げてる。――それに。それなら、なんでタンホイザーを撃ったんだ。

 

「普通の機体ならこれらの損傷は致命傷だ。しかし、唯一の例外が存在する」

「……俺のインパルス」

 

 シンはレイから示された戦闘プランに感心する。手足、武装、推進装置。キラが優先的に狙うそれらは全て、インパルスなら戦場で調達、換装できる。

 

「敵は殺そうとしてこない。ストックは山ほどある。……シン、楽ではないが勝てる戦いだ。勝つぞ」

 

 レイの力強い言葉に、シンは頷く。

 

「ああ。俺達で勝つんだ!」

 

 その時、部屋にアスランが訪ねてきた。レイが招き入れると、アスランはまずシンの個人端末の画面を目にする。フリーダム対策の情報が沢山広がっている。

 

「……シン、お前はフリーダムを……討つ気なのか?」

「当たり前ですよ。命令なんだからしょうがないじゃないですか」

「……しょうがないだと……? シン! お前は白いフリーダムとベルリンで一緒に戦っただろう! そんなあいつを敵だと言って討つのか!?」

 

 シンは言葉に詰まる。シンだってそんなことはしたくない。何を言おうかと考えていたところ、レイがシンとの間に入る。彼の表情は厳しく、アスランを批難するような視線で見ていた。

 

「アスラン。シンは討ちたくて討つわけではありません。しなければならないから討つのです。アスランが戦うわけでもないのに、戦う決意を鈍らせるような言葉は控えてください」

「……それは……! だが!」

「我らはプラントの敵を討つための『力』です。味方を討てと言われたならともかく……。そうでないならそこまで反対する理由はないのでは?」

 

 レイの言葉はどこまでも正論である。アスランは歯噛みしてレイを見る。

 

「言われるままに敵だと決めて……それで戦うのが正しいのか?」

「はい、そうです。我らはそれが正しい行いなのです」

「アスラン。アスランだってあいつに機体やられてるのに……なんでそんなに庇うんです?」

「――違う、俺は庇ってなんかない。お前が……お前が、間違った方向へいかないように……」

 

 ――なんのために戦うのか。誰かに言われるままに殺し、誰かの思惑通りに戦うことが、正しいのか。それを考えないと、思考停止した殺戮兵器と化してしまう。

 そう言った言葉を言う前に、シンが爆発した。

 

「俺が間違っているって言うんですか。何が間違っているんですか。あんたが言ったんだろ! 勝手なことをするな、命令に従えって! あんたのあのときの言葉は……! 自分の都合の良い命令だけ聞いてろって、そういう意味だって言うのかよ!」

「そうじゃない! 誰もそんなこと言ってない!」

「なら邪魔すんなよ! 俺達は訓練するんだ、アスランは出てってくれ!」

 

 シンは強い言葉でアスランを追い出す。部屋の外に追い出されたアスランは、握り拳を作って悔しさに歯噛みする。

 

「……俺は……俺達はどうすればいいんだ……」

 

 アスランは、迷う。混迷の時にいた。




 言わせたかったセリフをようやく言わせられました。生存フラグではないです。
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