【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy 作:丹寺 錯視屋
取り逃がした。ミーシャは戦闘終了後、制圧された司令部から上がってきた報告を聞いて歯噛みした。まさか戦闘開始前に尻尾巻いて逃げ出すとは。隊長室で同じ報告を聞いたネオが呆れたような声を上げた。
「どうするよ、隊長」
戦闘が終わって、部下達はゆっくり休養を取らせている。今頃思い思いに休んでいるはずだ。ミーシャとネオは残業である。管理職は辛いよね、なんてとりとめもないことを考える。
「私、あいつの顔写真を辞書に載せてやるんだ。臆病者の体現者としてね」
「キレていらっしゃる」
ネオは肩を竦める。ミーシャは頭を右手で掻きながら考える。
「まず……居場所がわからないことには動きようがない」
「そうだな。だがウチはホントに余裕がないぞ。ただでさえ少ない戦力をデストロイで削られた。モビルスーツは無事でもそれを乗せる船が減らされたんじゃな……」
「わかってる。まず……冷静に考えていこう。あいつを匿える場所はそんなに多いわけじゃない……はず。多分」
ミーシャは印刷した紙を机に広げる。まずは1枚目。ロゴスのメンバーリストだ。
「ジブリールこそ取り逃がしたけど、ロゴスのメンバーは粗方捕まえた」
もう死んだヤツと、死ぬことが決まってるヤツをミーシャはバツ印で消していく。すると残ったのは……ミーシャとアズラエル、そしてジブリールだけだった。あとはみんな死ぬか捕まった。栄華を極めた資産家達の集まりがデュランダルの鶴の一声で壊滅。世の中の儚さをミーシャは知った。
「……すげぇな、こりゃ」
「パパが何考えてこんなとこ入ってたのかは知らないけど、まさか私の代でほぼ全滅するとはね」
捕まえたロゴスも近々裁判を執り行ってから処刑するらしい。処刑という言葉にミーシャは酷く忌避感がある。動けない、戦えない人間を撃つのは物凄く心理的に抵抗があるのだ。……そもそもなんの罪でなんの権限があって。
ミーシャは頭に浮かんだ疑問を無視する。ここでロゴスの助命嘆願なんて無理だ。だけど、じゃあもしこの流れがロゴスに協力した関係者にまで及んだら……そうなった時自分はどう動く? どう動けばいい?
理屈と感情がせめぎ合うのを感じる。ロゴスを討つ。そんな簡単に決めてもよいものだったのか。ミーシャはしばらく頭の中でぐるぐる考える。
「……おい、ミーシャ?」
「あ……大丈夫、ネオ。ちょっとボーっとしただけ」
「休むか?」
「いい。――で、次に。ジブリールの主要取引先……はいくつかあるけど……その中で最も金も権力も持ってるのは二つ」
「セイラン家と……クレイモア家か。セイランはオーブで……クレイモアってなんだ? 剣の名前だろ?」
ミーシャは頷く。
「そうだよ。クレイモア一筋で財を作って……そっから成り上がった家。アイリのおうち」
アイリ・クレイモア。ミーシャの親友で、今はワシントンDCでミドルスクールに通っているはずだ。通っていてほしい。
「……嬢ちゃんの友達か。どっちから当たる?」
「アイリから。セイランの方は……まぁ、なくはないと思うけど、ユウナ様もいくらなんでもこの情勢でチキンオブチキン、ジブリール・ザ・チキンを受け入れたりしないでしょ」
「それもそうだな……」
ミーシャは頷く。まさかユウナがアークエンジェルのときにザフトを追い返したときと全く同じ手口で追い返すから大丈夫! なんて考えて無責任に匿っているとは思うまい。ユウナもその父親も、ジブリールの口車に乗るレベルで物事を深く考えないのだ。
「ワシントンDCなら私の庭みたいなものだし、伝手もある。アイリの所にクソ野郎ジブリールが潜り込んでないかだけ確認したら、また情報集めよう」
「了解」
ネオに異論はなかった。ネオも生来は資産家の生まれである。しかしそもそもネオは死んだ人間で、知り合いもほとんどいない。……もしかしたらフラガ家のほうを当たれる可能性はなきにしも非ずだったが……ムウの死亡通知は実家に行っているはずだし、興味もない。
「じゃあ、ナタルさんとも相談して、ワシントンDCの教導隊基地にいこっか」
「そこから先はどうする?」
「私とステラが行こうかな。もしかしたらそのままアイリのお家行ってジブリール確保することになるからね。スティングは不良っぽいし、アウルは……悪い子じゃないんだけどね、アイリには会わせたくないなぁって」
アウルは悪くない。スティングとステラがファントムペインにいるには善良過ぎるだけで。しかしアウルの数々の言動を思い出すと……。正直、あんまり友達には会わせたくない。アウルが危害を加えると思っているわけではない。アウトローなアウルにもし惚れ込んでしまったら大変だ。そして13歳という年齢は年上のワルに憧れてしまう年頃なのだ。
「その間俺達はどうする?」
ネオは最初っから会う気はないようだった。それも当然、仮面を付けた成人男性がミドルスクールに通う女の子と会っている所を見られたらそれだけで通報される。
「休暇でいいと思うよ。戦闘の後だし、喫緊の出撃も予定ないし」
「了解」
敬礼するネオにミーシャは頷くと立ち上がる。
「じゃ、ナタルさんに相談してくる」
「頼んだぜ、俺達の休暇のためにな」
ミーシャはクスリと笑う。
「職業軍人満喫してるじゃん」
「……まぁ、俺は元々軍人だからな」
ミーシャは部屋の外に出るとブリッジに向かう。スエズまで戻って、それからワシントン……結構なルートだが、今はなし崩し的にザフトと半ば停戦状態にある。偶発的遭遇で殺し合うことにはならないはずだ。
「ナタルさーん。相談あるんだけどー」
ニコニコと笑顔でミーシャがブリッジに入ってきた。ナタルは振り向くと厳しい表情でミーシャに小言を言い始める。
「バジルール大佐だ。全く。馴染んだらすぐこれだ。いかな任務についていようとこういう小さいところから軍規の乱れが――」
「ごめんなさい! わかったから叱らないでよ、バジルール大佐」
叱られているというのに、ミーシャはほんのりと笑顔だった。悪戯をして叱られるような気分なのだろう。ナタルもそれがわかっているから本気で怒れない。彼女はもうそれなりの立場になってしまった。両親も亡くし、果たして彼女を叱る事ができる人間は果たして何人いるのか。甘えているといえばそうなのだが……。アークエンジェル時代の彼女を知るナタルは、甘えるなと突き放す事はしたくなかった。
「……まったく。――それで、相談とはなんだ?」
「んー、ジブリールが逃げた先が二つに絞れてさ」
「――ヤツが逃げてから半日も経ってないんだぞ。どうやってだ」
「私はロゴスのデータあるし……あいつの主要取引先くらい知ってる。そん中であいつ匿えるだけの金とコネ持ってる人なんてそんなにいないと思って調べてみたらさ、友達のアイリのおうちと、ユウナ様がヒットしたの。先に友達の方を確認したい。私とステラで」
しばらくナタルは考える。
「……オーブは他国ゆえ確認するなら時間がかかるな……。いいだろう、スエズで補給を受けたあとはワシントンDCだな」
「うん。どれくらいで着くかな?」
「ふむ……。補給で1日、そこから出発して……4日あれば着く」
「じゃあ、補給に予備日設けて、日程も時間持たせて一週間で計画立てるよ」
ミーシャはそう言ってブリッジから去ろうとする。その背にナタルが声をかける。
「待て」
「え、どうしたの?」
「私も一緒にやろう」
「いいの?」
ナタルはふっと微笑んで艦長席から立ち上がる。
「この艦の運航についてだからな」
ミーシャは嬉しそうに目を細める。
「じゃ、艦長室で作業しよ!」
「ああ。――おい、引っ張るな」
全く、書類仕事を喜ぶなど、変なやつだな。ナタルは微笑を浮かべながらそう思った。
――アイリは深いため息を吐いた。このところ物騒なんてものじゃないくらい身の危険を感じることが多くなった。友達のフロンとリリスも同じ気持ちだろう。
「……私達、別に戦争なんてしてほしいなんて思ってないのに」
ロゴスだけに向かっていた害意は、ロゴスメンバーを始末したことでさらに範囲を広げることとなった。……ただ金を持っている資産家を狙い始めたのだ。民衆は自分が望むように世界を見る。ロゴスと取引をしていた資産家達もロゴスの同類だと見做すのにそう時間はかからなかった。流石にロゴス相手のように襲撃をして暗殺する……というレベルにはなっていない。しかし、そうなるのも時間の問題のように思える。
「……怖い」
命を狙われてるかもしれない。そう思うだけで心の底からどうしようもない恐怖が湧き上がってくる。もし自分を殺した時人々はきっと喝采を上げるのだろう。その光景を想像して、アイリはブルリと体を震わせた。
「……えっ」
いつ訃報が聞こえてくるか、あるいは助けが求められるかもしれない。そう思ったアイリはスマホを手放せなくなっていた。自分のスマホにメールが来た。差出人はミーシャだった。
「会いたい」
アイリはメールの文面を読んで、そう呟いた。彼女が指定してきたのは次の土日。奇しくもアイリだけでなく3人全員が空いている日だった。
「……会うよ、ミーシャ」
アイリは返信を送ると、自分のベッドに身体を投げ出す。
……長い事会っていない。メールも電話もなかったのに、どうしてだろう。アイリは疑問に思いながらも、会える日を心待ちにした。
――アイリ、フロン、リリスの3人はワシントンDCにある個室のレストランに来ていた。ミーシャの指定がその店だったのだ。いくら資産家の令嬢とはいえ、こういう畏まった店に普段から行くことはない。
名前を言うと個室に通された時も妙に緊張した。通された部屋には大きくておしゃれな真っ白なテーブルがあり、そこには先に白色の士官服に身を包んだミーシャと……ピンク色の制服を来た知らない女性が座っていた。その女性はこの場にいる誰よりも緊張していて、カチコチだった。
「久しぶり、みんな。元気してた?」
「う、うん。その、その人は?」
アイリが席に着きながら聞く。リリスとフロンも同じように席に着いた。
「紹介するね。私の部下のルーシェ少尉。えーっと、こういうレストランも経験させてあげたくて連れてきたよ。ステラ、私の友達のアイリ、フロン、リリス」
「……は、はじめまして。ステラは、ステラ・ルーシェだよ」
ミーシャはその自己紹介を聞いて、かなり緊張していることを感じとった。よく考えたらコレ上司に連れられて上司の友達と食事会ってことか。……パワハラにならないよね?
「みんな、最近どう? パパとママは無事?」
「……なんとか」
アイリは絞り出すようにそう言った。
「……私は、先週くらいから嫌がらせが……」
リリスの顔色は随分と悪い。かなり参っている様子だった。
「ウチは学校で妹がいじめられててさ。公立のプライマリスクールなんて通わせるから……」
ミーシャは3人の顔をよく見ながら、話を始める。
「みんな大変だね。私もロゴスのせいで大変なんだ。味方の本拠地攻め入って、私のことを天使様って呼ぶ人たちを何十人と殺してさ」
ミーシャは表情を曇らせる3人をそれとなく観察する。ステラもじっと、緊張しながらも3人を見る。
「――で、そこまでやったのに標的……ロード・ジブリールは殺し損ねてね。今どこにいることやら」
ミーシャがそう言っても、3人はただ人を殺したミーシャに対して同情するような目を向けるだけで……後ろめたさや、探られていて不愉快だという顔をしなかった。
「……ま、暗い話はこんなもんにして、
ミーシャが符丁のようにそう言うと、ステラはホッとしたように緊張を和らげた。
「そんな、悪いよ」
「使い道なくて困ってるの。私を助けると思ってさ。ね?」
ミーシャは呼び鈴を鳴らす。すると、料理が運ばれてくる。
「隊長、お腹すいた」
「わかってるよ、ステラ。お腹いっぱい食べようね」
「……シンともこういうお店、行きたい」
「あいつにそんな甲斐性あるかなぁ?」
「ある、きっと」
ステラは料理を食べながら曖昧に言った。……全然足りない。そう思ったステラである。コース料理なんて初めてだった。
「ねぇミーシャ、プラント議長の映像見たよ。ミーシャ、いつもあんなでっかくて危険な敵と戦ってるの?」
アイリが不安そうに聞いた。ミーシャはまさか、と笑う。
「あんなの滅多にないよ。私強いから大丈夫」
「……強くても、死ぬときは死んでしまうのですよ?」
リリスは苦しげだった。2年前はミーシャの言葉をそっくりそのまま受け取っていた。しかし、今は違う。13歳になって世界をより正確に捉えられるようになるにつれ、ミーシャがいるところがどれほど危ないところなのか理解してしまったのだ。
「ていうか、ミーシャ、ミドルスクール通ってないよね? ユニウスセブンのときにはもう戦ってたよね?」
歯に衣着せぬ物言いでフロンが言う。ミーシャは苦い顔をして頷いた。
「まぁ、うん。そうだよ。通ってない」
「そんな! ミーシャ、もうあれから半年は経ってるのよ? 勉強遅れちゃうわ」
「すぐ取り返せるよ。前の大戦のときも1年のほとんど人殺しして過ごしてたけどなんとかなったし」
「ミドルスクールの勉強はプライマリスクールとは全然違います!」
ミーシャを心配する友達達に、ステラが不思議そうに聞く。
「ねぇ、隊長。勉強ってしなきゃだめなの?」
ステラの質問に、学生3人は絶句する。自分より遥かに年上に見える女性がそんな事を言うとは思わなかったのだ。
「ステラ、モビルスーツだって諸元覚えろとか言うでしょ? それと同じように、数式とか覚えないといけないの。――本来はステラだってね」
「でも隊長……もうずっと隊長やるんでしょ?」
「そんなのダメです! 地球軍はまさかずっとミーシャを戦場に縛り付けるつもりなんですか!?」
リリスがステラに詰め寄るように聞くと、ステラは目を白黒させる。
「わ、私そんなのわかんない……」
「わかんないって……」
「そりゃわかんないよ。だってステラ私の部下だよ? 上官の進退なんて教えられるわけ無いじゃん」
「……明らか年上の人がミーシャの部下とか感覚バグりそう……」
フロンはこめかみを抑える。ミーシャの言い分は正しいのだが、本当に年上を従えているとは思わなかった。
「……世界が平和になったら私も人殺しやめて学校に行くよ」
「それはいつ?」
「さぁ……。でも、資産家が狙われてるって本当に危ないよね」
「うん……。私達、本当に危険だと思う。この街だとまだだけど、ニューヨークとかだと酷いことになってるって……」
アイリは連日のニュースを思い出して顔を青くする。ただ金を稼いでいただけなのに、ロゴスと取引があったというだけで殺される人がいるのだ。資産家達は身を守るために武装したボディーガードを雇い……それがさらに市民たちの感情を煽る。治安の悪い地域では、一家丸ごと焼き討ちに遭った人もいるらしい。
暴走状態にある民衆を止めるには、ジブリールを殺してデュランダルが戦争終結を宣言するしかない。それで止まるかどうかはもはや賭けだった。
「……私たち、しばらく前から休学してるんです。通学が危ないから……」
「えっ? ……そんな。もしかしてあの軍オタたちも?」
「彼らは……彼らも、おそらく」
ミーシャは顔を顰める。気の良い遊び仲間だった。兵器の強さがどう、戦艦の強さがこう、と延々話しているようなやつらだった。でも、そうした話の輪に入れてもらって、ミーシャは少しだけ救われたのだ。汚れた知識も捨てたもんじゃないなと思えたのだ。だが……そんな彼らも、何もできずに家に閉じこもることしかできない。
「……正直、私達の誰かは死ぬんじゃないかと思ってる。……もしかしたら全員かも」
「そんなことない。私がジブリールを始末して、デュランダルが終戦を、宣言すれば……」
ミーシャの言葉に力はなかった。それで終わると確約できれば話は単純なのに。そもそも今暴れている彼らは自分の正義感に支配されているだけなのだ。誰から命令されたわけでもなく、止まることのない正義という快楽にどっぷりと浸かり、してはならないことを大手を振ってしている。
「……ねぇ、隊長、艦で匿ったら?」
ステラの提案はある種、普通のものだろう。ステラは自分達を強いと思っているし、隊長なんて今この世界にいるパイロットの中で上から数えて五本の指には入ると思っている。そんな人が守る艦なんて安心安全。そう心から思っている。だがミーシャはその案を即座に却下する。
「ダメ。民間人なんて戦艦に乗せられない」
「でも……その、隊長」
ステラは言いづらそうに言葉を濁す。ミーシャだってわかっている。アズラエルのことを言いたいのだろう。
「
「でも……」
「ステラ。聞き分けて」
「……了解」
ステラはペコリと頭を下げて言った。ミーシャはほう、と安堵の息を吐くと3人に向き直る。
「ごめんね、変に期待させちゃって」
「ううん。でも私も……その、死んじゃってもいいから……ミーシャに守ってもらうのも悪くないかなって思うんだけど……」
どうせ、ここにいても命の危険はあるのだ。それなら、友達に守ってもらうほうがきっといいし、もしダメならダメで諦めもつくだろう。
「ダメ。殺してくれたらマシっていう目に遭う。それに――私は守れなかったの。ルミナを……。友達を。そんなヤツに命預けるなんて……どうかしてるよ」
ミーシャは頑なに首を振る。戦場で、戦艦をただ守るなんて簡単なことではないのだ。安請け合いはしたくないし、また守りきれなかったら……そうなったら今度こそ自分は――。
「……ね、ねぇ」
その時、アイリが言った。
「本当にダメ?」
「……危険なところからもっと危険な所に行ってどうするの。ご両親が許すわけないし、艦長が許すわけないよ」
「お願い、話だけでも」
ミーシャはしばらく悩む。それから、個人端末を取り出す。
「……何その骨董品」
「ウチはコレ使ってるの」
ミーシャは嫌嫌ナタルに連絡を取る。
「こちらバジルール大佐」
「こちらバレンタイン大佐であります」
「……レストランに行くという話だったな? 何を食べた?」
「バジルール大佐に意見具申があるゆえこうしてお時間を取らせて頂いております」
やたら軍人っぽく話すミーシャを不審に思うも、ナタルは話を続ける。
「まあ、構わないが」
「私の友人が身の危険を感じているため保護を求めています。いかが致しますか」
ややあって、ナタルが答える。
「その友人というのは……プライマリスクールの時のか」
「ハッ!」
「そして、今目の前にその友人達がいる……なるほどな。バレンタイン大佐……いや、ミーシャ。今の情勢は理解しているな? 資産家の人間が暴徒に命を狙われているという状況だ。暴徒は半ば組織化され、武装している。相違ないな?」
「ハッ、認識相違ありません」
「――ならば、我ら地球連合大西洋連邦軍は、保護を求められた場合できる限りそれに応じなければならない」
まさかそんなことを言われるとは思わなくて、ミーシャは固まる。しかし、なんとか軍人ごっこを続けた。
「――り、了解しました。しかし」
ナタルから伝えられた信じられない答えに、呆然と続ける。
「戦艦に乗せるなんて……」
「……戦艦? ドミニオンに乗せると思っているのか?
基地で保護すればいいだろう」
あ。
ミーシャは完全に盲点だった点を指摘され、ぽん、と頭の中で手を打った。
「あ、あはは……そっか、そうですよね! 基地で守ればいいんですよね! 忘れてました!」
「……全く。お前のトラウマなのはわかるが、もう少し視野を広く持て。私は基地司令と話をする」
「あー、はい、任せます」
「……ごっこ遊びはほどほどにな」
「了解……」
ミーシャは照れくさそうに端末を顔から離すと、みんなに向けて言った。
「ワシントンDCにある地球軍基地で家族みんなで匿うよ。直接守ってはあげられないけど……そこにいる新兵、私が鍛えた人たちだから大船に乗ったつもりでいてね!」
ミーシャがそう言うと、3人は、安堵したようにホッとため息を付いた。
「ありがとう! さっきのミーシャ本当に軍人さんみたいだった! いつもあんな感じなの?」
「いつもは違うよ。みんながいるからちょっとそれっぽくやっただけ」
「……隊長、いつもはこんな感じ……」
「そうなんですか? あ、そういえばルーシェさんも普通に話していますね」
リリスの言葉に、ステラは頷いた。
「隊長が、そうしてって言ったから」
「まぁ、年上に敬語使われるってなんか変な感じだよね」
フロンの言葉にミーシャは全力で頷いた。
「……そういえばミーシャ、好きな人できた? 軍でなんか素敵な恋バナある?」
――これからミーシャ達は本当の意味で雑談に入る。幸せなひとときを、友人達と過ごすのだ。
「あるよー、とっておきのが。ここにいるステラ、なんと敵軍の男の事が好きなんだ!」
「敵……ザフトと? どういう繋がりなの?」
「それがもうロマンチックでさ……ステラ、話してあげて」
「え……うん、わかった」
促され、ステラは照れくさそうに……それでも嬉しそうに、語りだした。
つかの間の幸せがここにあった。
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