【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy 作:丹寺 錯視屋
「作戦を決めよう、ラクス、カガリ」
ミーシャは月に向かうまでの僅かな時間で、隊長室で通信していた。オーブとの通信が繋がるのはひとえに月の近くにオーブ宇宙軍がいるからである。
「はい。私とアークエンジェルはステーションワン……第一中継コロニーの撃破に向かいます」
「オーブ宇宙軍は地球軍の残存戦力と共にダイダロス基地を攻める」
「え……地球軍のざんと――残存戦力がオーブのそばにいるなんて聞いてないよ」
危うく残党と言いかけた。危ない。……だが、実際の戦力は残党レベルしか残っていないのだ。オーブの傍と言えばコペルニクスか。あそこにいたんだ。……言ってくれてもよかったのに。
「もうまともに全体の統制を取れる人間がいないんだ」
「……そっか。そんな状況で、勝たないと世界が終わるんだね」
ミーシャは暗く表情を曇らせる。次に撃たれるのはオーブか、ワシントンか。どっちにも大事な人がいる。もし失敗したら、自分ではない誰かが死ぬ。辛すぎて、苦しくて、どうにかなりそうだった。
「ミーシャ、お願いがある。お前には地球軍と合流して残存戦力をまとめ上げて欲しい」
複数の艦隊をまとめ上げる。自分の大佐という身分だけではきっとどうにもならず……カリスマとか、そういうのが必要になる場面である。13歳の自分にできるとは思えなかった。
「わ、私にはきっと無理だよ」
「ミーシャ」
「……嫌。そんなの怖いよ。わ、私の命令で沢山の人が死地に向かうんだよ? 命令もないのに人をまとめ上げて戦うなんて……そんなの怖い」
オーブと同盟を組んで戦った時とは違う重圧が彼女にはかかっていた。あの時は命令だった。相手だって一隻で、かかっている命も限られていた。あの場にいる全員、ミーシャが指揮を執ることを事前に知ったうえで来ていたのだ。
――だがもはや彼女に命令する者は誰もいない。ここにナタルがいないということは、ナタルすらミーシャの方針を受け入れるということ他ならない。上との連絡はおろか、ミーシャは今自分の上に誰がいるのかすら把握していない。……そしてそれは残存戦力全員が思っていることだろう。ここでミーシャが『私が指揮を執る』と言えば全員が納得するほど、現場は混乱している。たとえその『大佐』が13歳の女の子だろうと、指揮ができて戦えるなら、従うのに否やはないだろう。
だからこそ、怖い。すべての責任を、自分が負うことに他ならないのだ。
「ミーシャ……」
カガリは強く言うことはできない。その重圧の重さはよくわかっている。生まれたときからそうあれと育てられた自分と違ってミーシャはつい2年前までただの子供だったのだ。責任を持つ事ができるのだってせいぜいが命令の範囲内だけ。もはや命令はなく、彼女の意思が地球軍全ての意志となりつつある。
「ミーシャ、酷なことを言っているのはわかってる。だが、頭がいなければ軍は動かない。動けないんだ」
「……全滅したらどうするの。わ、私が信じられないバカやってみんなを殺したら! 大佐の仕事じゃない! そ、そうだナタルさん! ナタルさんにやってもらえばいい!」
「……ミーシャ……。そう、だな。バジル―ル大佐ならきっとよく指揮してくれるだろうな」
「カガリ……ごめんなさい、私……!」
これではコープランドを笑えない。信じられない重圧だ。失敗したらどれだけの人が死ぬんだ。どれだけの未来が閉ざされる。なんてことだ。実際にはこんなにも重いなんて。……それをナタルさんに押し付けてしまった。
――成長が彼女を怯えさせる。命令系統も、軍の意義すらあやふやだったかつてとは違い、ミーシャは大佐としての教育を受けた。受けたからこそ、今の状況が恐ろしい。本来なら上に将官がいるはずなのだ。だがその将官など宇宙のどこにも見当たらない。ダイダロスで死に、アルザッヘルでは大統領すら死んだ。ナタルか、ミーシャか。どちらかしかいないというのにミーシャは逃げてしまった。……そう本人は思っている。
「気にするな。バジル―ル大佐も、気にしないだろう」
誰か命令してほしい。いきなり少将とかが生きてて、急に現れてきてくれてドミニオンに命令を下したりしないだろうか。そんな現実逃避すら頭に浮かぶ。
「……わか、った。ちょっと、ナタルさんのところに行ってくる……もしナタルさんが嫌って言ったら、私がやる」
ミーシャの目は澄んでいた。ミーシャは決めた。どんな命も背負うと。心が張り裂けてぶっ壊れちゃっても大丈夫。またカウンセリングを受けて薬を飲めば、どんな傷だっていつか治る。
――そんな無茶苦茶なことを、彼女は頭から信じ込んだ。
「カガリ、オーブの頭は誰がやるの?」
「キサカ一佐だ」
「ちゃんと仲良くしようって伝えといてね」
「もちろんだ」
ミーシャは頷くと通信を切ろうとする。その前に、ラクスが声をかけた。
「この戦い、あなただけで戦っているのではありません。私も、カガリさんも、あなたと共に戦うのです。失敗の責は、私も背負います」
ミーシャは微笑む。
「……ありがとう、ラクス。ホント、いい人だよね。なんでキラは手出さないんだろうね」
無理矢理、ミーシャは話題を変えた。明るく振る舞うにはもう少し元気が必要だった。最強無敵のパイロット、魔弾の天使になるにはもう少し勇気がほしい。……失敗したらみんなが死ぬ。その重圧があまりに重くて、歴戦の彼女をして怯える気持ちが抑えられない。
そんな気持ちが、ラクスには痛いほどわかる。だから普通ならやんわり窘めるところを、付き合うことにした。そうするべきだと思ったからだ。今のミーシャに高く澄ました顔で接するのは、違うと思ったから。……それに、戦いの重圧が怖いと思うのは、彼女も同じ。
「――私、キラとはそばにいるだけで満たされるのです。たとえキラが自分で食事することもトイレに行くことができなかったとしても……そばで支え続けます」
「素敵な愛だね」
「ええ。――でも確かに、時折寂しくはあります。恥ずかしながら、私も若い女なのです」
「キラは多分迫られるのがトラウマになってるんじゃないかな。フレイの時、そんな感じだったし」
「……そうですか」
「死人に嫉妬してもしょうがないよ」
「いえ……やはり、私はあなたが羨ましいのです。共に戦えるあなたが」
ラクスのあけすけな言葉にミーシャは驚く。ここまで胸の内を打ち明けてくれるとは思ってもいなかった。ラクスがグッと身近に感じる。
「そりゃ、嫉妬すると思うよ。元カノなんてさ。でもさ、きっとキラは何よりラクスを信じてると思う」
「そうでしょうか」
「じゃなきゃ、キラはとっくに潰れてるよ。キラは……生きていても地獄で、死んだあとも地獄に行くのがふさわしいって思ってたんだからね」
「……そんな……」
ミーシャは微笑む。
「きっと今は思ってないと思う。ラクスがいるから」
元気出た、とミーシャは立ち上がる。から元気なところはある。だがそのから元気すら出なかった時とだいぶ違う。
「ラクス、カガリ、この戦争終わってちょっとマシになったら……みんなで打ち上げ女子会しよ」
「女子会。経験ないな」
「まぁ。久々ですわ」
ミーシャは笑う。
「友達も誘っていい? みんなを紹介したいんだ」
「ええ。ミーシャのお友達なら是非」
「お前の友達か……会いたいな」
「そのためにも、生き残らないとね、みんなで」
3人は頷き合う。ミーシャは通信を切るとブリッジに向かう。
「どうでした、アバズ……歌姫様は。お歌の力であの兵器をなんとかできるといいのですがね」
「アズラエル理事」
「まず、私達はオーブと一緒に向かってきてる地球軍の残存戦力と合流するよ。ステーションワン……第一中継コロニーはアークエンジェルとエターナルが受け持ってくれる」
「共倒れ……冗談です、冗談。朗報ですよ。残存戦力で最も階級が高い人間は少佐です」
「悲報なんだけど。ねえ、バジル―ル大佐、残存戦力をまとめ上げて指揮するの……頼んでも、いいかな?」
恐る恐る、ミーシャが聞く。まるで頼みづらい仕事を頼むかのような様子に、ナタルはふっとほほ笑む。
「その程度、容易い」
ナタルはなんでもないことのように言い切った。その内心はおくびにも出さず、ミーシャをいたわるような表情すらする。
「お前は今まで通り、自分の任務と部隊のことだけを考えろ。細かいことは私がやろう」
「……ありがとう。大好きだよ」
「私もだよ」
もう覚悟は決まった。ミーシャは自分の頬を気合を入れるように何度か叩くと、そこには笑顔が浮かんでいた。
「よし、バジルール大佐、進路を味方に。レクイエムを落とそう!」
「了解、バレンタイン大佐。機関最大!」
「機関最大!」
ミーシャ達ドミニオンはオーブ、地球軍同盟軍へ向かう。
――ミネルバでは、最高戦力のシンとレイが小惑星機動要塞メサイアに呼び出しを受けていた。格納庫へ向かう前に、シンはルナを探していた。
「……ルナ!」
「シン!」
ミネルバの通路を歩くルナマリアを、シンが呼び止める。
「ルナ、どうしたんだよ。レイが追い払ってから様子が変だぞ?」
事の発端はレイとシンがデスティニープランについて話していたころ。同じ要件できていたルナマリアをレイが追い払ったのだ。それからルナマリアとシンは妙にぎくしゃくしている。
「別に。その、二人がFAITHってのは知ってるけど……なんか急に除け者にされたような気がして」
「大丈夫だよ。俺がルナを仲間外れにするもんか」
「……調子いいこと言って。ステラって子にも同じようなこと言うんでしょ?」
シンは言われている意味がわからず眉をひそめる。
「なんでステラが出てくるんだよ?」
「ジブラルタルで会ったときベタベタデレデレしちゃって……! ねぇ、シン、はっきりさせてよ。シンはステラって子のこと――」
シンはルナに最後まで言わせなかった。ルナを抱きしめると、その背をあやす様に撫でたのだ。
「えっ……」
「――ステラとは……友達だ。大切な友達。だけどルナは……ルナは、彼女だ」
「シン……」
――始まりはいつだっただろうか。上司と妹をいっぺんに亡くした時だった。命令だから仕方ないと痛む心をねじ伏せて、シンを労った。その時、シンは黙って胸を貸してくれた。きっとその時だ。命令で討った。……妹の仇が目の前にいる。お互いに複雑な感情を抱えたまま同じ時を過ごしていくうち……いつしか、惹かれ合っていた。お互いに失った哀しみを埋めるように近付いて。そして、今シンはハッキリと気持ちを示した。
ステラにまだ未練がないとは言わない。だが彼女は地球軍で……きっとまた殺し合う。ステラのこともきっと好きなのかもしれない。でもシンは、ルナを選んだ。
「……ねぇ、シン」
「なんだ?」
「ステラ、殺しちゃだめよ」
「……殺したくない」
「そうよ、それでいいの。だって私……ライバルが死んで喜ぶような女にだけはなりたくないから。だから、絶対、ステラを殺しちゃダメよ」
「うん、大丈夫。ミーシャはわかってくれる」
ミーシャは敵には恐ろしいが味方にはびっくりするほど優しい。ステラとシンをぶつけるようなことはしないだろう。
「……俺、行ってくる。議長と、議長の世界を守らないと」
「シン……」
ルナは目を閉じる。シンはそれ以上何も言わず、唇を合わせた。
――小惑星を改造して作られたメサイアの利点と言えば、御大層な装甲材を比較的少量で製造可能という点だろう。ユニウスセブンを砕いた時にミーシャ達が死ぬほど苦労したように、ただの岩石も分厚くなればちょっとやそっとの攻撃でも砕けたりしない。武装と防御装置、そして推進装置を付ければ、どこへでも行ける小惑星要塞の完成である。デュランダルはその中心部、メサイア司令室の司令官席に座ってレイとシンと話していた。
「実に、困ったものだよ」
デュランダルはほとほと困り果てた様子で二人に言う。
「アルザッヘルをレクイエムで撃ったことを口実に、アークエンジェルとエターナルがステーションワンへ攻撃を仕掛けるようだ。もう戦いたくなどないのだが……向かってくるのなら、立ち向かわざるを得ないだろう」
「議長の世界を否定することは人類の未来を閉ざす行為。許されざることです」
レイがすかさず言う。シンは困惑する。これは議長に媚を売った言葉なのか、本心なのか。
「……シン。ずいぶんと顔が暗いね。いや、無理もないか……。新型が奪取されてから今日まで、君たちミネルバには苦労をかけっぱなしだ」
「いえ……」
「――それとも、私の施策に不安があるのかな?」
「いえ、議長」
レイが庇うように言った。
「シンは私と同じ考えです。議長の示す未来に賛同し、議長の作る世界を……戦争のない世界を求めています」
「……そうだね。シン。世界は理不尽だと思わないか?」
ハッと、シンはデュランダルを見る。
「平和に過ごしていたらいきなり敵がやってきて自分の大切なものすべてを奪っていく……そんな非道がまかり通るのが今の世界だ。かつての大戦では核ミサイルの雨がプラントを襲うところだった。そして、ロゴスはプラントに対してレクイエムを撃ち、なんの罪もない人々を真空の宇宙にバラ撒いた。……あの宙域にはまだ、回収されることなく凍りついている人々がいるのだ」
あまりにも残酷すぎる。シンは悲痛に顔を歪める。マユが、父が、母が死んで。その死体のあまりの凄惨さに震えることしかできなかった。
「――だがもうそんな世界は終わる。誰も理不尽に奪われない、戦争のない世界がやってくるんだ。……いや、違うな。君たちが、作るんだ」
シンはデュランダルを見る。俺が、作る。戦争のない世界を。
「最初はきっと不便に感じるかもしれない。だけどやがて慣れる。戦争のない世界は、多少の不便を感じてでも実現するべきだとは思わないか?」
シンは今までの人生を振り返る。幸せな日々を。吹き飛ぶ家族を。出逢った戦友を。――今も地球軍にいる、ステラを。
戦争がなくなれば……きっとステラはもう武器を取らなくて済む。嘘をつかなくて済む。
「……はい。俺もレイと同じ意見です。たとえ不便になったって……それで不幸になる人がでたとしても。無闇に人が死ぬよりよっぽどいいと思います」
デュランダルは心から微笑んだ。
「――そうか。ありがとう。私達の理想のために、是非その力を貸して欲しい」
「はい!」
シンも、レイも、元気に敬礼して、そう答えた。
――
「地球軍残存戦力に告ぐ。本官はナタル・バジル―ル大佐である」
ナタルの演説はドミニオンから、そんなふうに始まった。
「一応、自己紹介と行こう。第81独立機動群所属バレンタイン隊旗艦、ドミニオン艦長である。指揮官不在のため、地球軍残存戦力は第81独立機動群に一時的に統合。本官の指揮下で動いてもらう。異論は認めていないため、各員了承するように」
ダイダロス基地に向かう艦隊の動きに乱れはない。いきなり脱走をかますロックな艦はないらしい。取り敢えずミーシャは胸を撫で下ろす。
「我々の任務は大量破壊兵器レクイエムの撃破だ。元は地球軍の物だがあのような大量破壊兵器、この世には必要ない。我々のやることはそれだけでいい。あとの小難しいことは全て本官が担当する」
ナタルは胸を張って宣言する。
「本官は自由を阻む全てと戦う! ……欺瞞と詐術で世界を騙すギルバート・デュランダルと! これは世界を護るための戦いである。各員の奮闘に期待する。以上!」
通信が次々入ってくる。
「バジル―ル大佐、我らガーランド隊、大佐の指揮下に入ります」
「シャムシール隊、共に戦いましょう! 天使様と共に戦えるなら!」
その場にいる戦艦全てから肯定的な通信が入ってくる。ミーシャはこの数をしっかりと掌握できたことをひとまず喜んだ。
「……第一段階は異常なく終わったな」
「……んー、そうだね。やっぱり……この数を命令もなしになんて無理だよ。嫌なこと押し付けちゃってごめんなさい」
ミーシャの謝罪は小さく消え入りそうだった。ナタルは気の毒そうな顔をして、そして頷いた。
「何を言っている。お前とは年季が違うのだ。この程度、難しい仕事ではない」
「うん、ありがとう。バジル―ル大佐、行ってきます」
ミーシャは元気に頷くと、格納庫へと向かっていった。
「……中々辛いものですね、命令もなしに命を背負うなど。――大佐のやることではない」
「前の大戦の時から思っていましたけど、あなたやるときはやるタイプですね」
「……本来なら彼女を戦わせることすら、やめさせたいのだが」
「それは私もですよ」
二人は揃ってため息をつく。世界は不条理で理不尽だ。自由を求め運命を決められたくないからと、彼女を矢面に立たせる。罪深さを感じずにはいられない。
――
ミーシャは新型、バスターフリーダムのコクピットの中で部下と通信していた。
「隊長、ネオをアークエンジェルにやってホントによかったのか?」
「アークエンジェル、キラとアスラン以外にまともな戦力ないし」
ミーシャはなんでもないように言った。正直アークエンジェルの戦力は不安が残る。カガリからネオはアカツキを借りてるらしいし、そのままアークエンジェルを守ってもらおう。色々アークエンジェルには苦労させられたが、今オーブ船籍で正式な同盟軍の戦艦なら、戦力を貸すことに不安はない。……本人が望んでいることだし。
「出向ねぇ……どうせ隊長に言ったんだろ、あのおっさん。美人艦長に釣られたんじゃないだろうな?」
アウルの的を射た言葉に思わずミーシャは笑う。
「アハハ……その通りだよアウル。ネオはアークエンジェルの艦長さんにぞっこんなの」
「まじかよ。じゃあオーブとの同盟内心喜んでたってことか?」
「まぁ最終的にはそうかもね」
「帰ってきたらからかってやろっと」
「私もからかう!」
ミーシャは楽しげに話す。緊張が解れる。感じていた重圧が嘘のように軽く感じる。やっぱり戦争にはユーモアだ。ヘラヘラ笑いながらでもなきゃ戦争なんてやってられない。
「いーなーみんな。私、これからシンと戦うかもしれないのに」
「そうならないよう配置するから」
ミーシャはコンソールに表示されている時計を見る。そろそろ作戦開始時間だ。
「よーし、そろそろ時間だよ。全機報告」
「カオス、オールグリーン、久々の宇宙だ、暴れさせてもらうぜ」
「アビス、問題なし! ゲシュパンマジ便利だよね! 海で速くてビームを曲げる!」
「
ゲシュマイディッヒ・パンツァーを装備するアビスはともかく、流石に地上がなくて変形機構がまるまる死ぬガイアより、乗り手のいなくなったフリーダムの方が遥かに強くて使いやすい。火力も申し分ないし、何より信頼性がある。
「ステラはずるいぜ。隊長からフリーダム譲ってもらうなんてよ」
「僕はおさがりなんて絶対嫌だけどね。海ならアビスの方が強いし」
「ここは宇宙だよ、アウル」
「わかってるって、宇宙でもフリーダムより強い!」
「みんなその意気だよ。よーし、バレンタイン隊、勝つよ! 全機出撃!」
ミーシャの号令で、バレンタイン隊が出撃していく。
「スティング・オークレー、カオス、出撃する!」
「アウル・ニーダ、アビス行くよ!」
「ステラ・ルーシェ、フリーダム、出る!」
3人の部下が出撃したあと、ミーシャはブリッジのナタルと話す。
「……戦ってくるね。バジル―ル大佐」
「ああ、行ってくるといい、バレンタイン大佐」
ミーシャは頷く。……きっとこの戦いですべてが終わる。
「ミーシャ・ バレンタイン、バスターフリーダム、行ってきます!!」
宇宙空間に出て、ミーシャは気合を入れ直す。
やることは多い。やらなきゃ友達みんな死ぬ。
決意と使命感を胸に、ミーシャは征く。
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