【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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最終決戦

 デュランダル率いるザフト軍はここがすべての分水嶺と言っていい。最高評議会議長が乗り込む機動要塞が向かってきており、さらにはレクイエムまである。月面近くを航行するオーブ地球軍同盟軍を護衛するようにドミニオンが月高高度を航行していた。すでにダイダロス基地やメサイアからは防衛戦力のモビルスーツ隊と戦艦、空母などの大戦力が各々の脅威に向けて出撃している。ここを抜かれたらもうザフトに戦力はなく……敗北するしかない。しかし、それはオーブ以外の全陣営同じだった。

 その大戦力が守るステーションワンに寡兵で突っ込むのはアークエンジェルとエターナルである。

 

「ステーションワンを守るザフト兵に告げます。わたくしはラクス・クラインです。わたくしたちは、その無用な大量破壊兵器を破壊するためにここにいます」

 

 ラクス・クライン。その名と声を聞いてザフト兵はあからさまに動揺する。その声は確かにラクス・クラインだと確信できる何かがあった。胸の内に響くような、脳髄に染み入るような、聞いているだけで落ち着くようなそんな声。忘れるはずもなかった。本物のラクスだ。あの歌姫が、プラントの姫君が自分たちを批難している。それだけで末端の兵士にとってしてみれば絶望だ。

 

「その兵器は身を守るために必要でもなければ、戦うのに必要な物でもありません。ただ徒に命を奪うその兵器を守ることが貴方がたの大義なのですか?」

 

 ラクスは攻撃の手が緩んだことから、畳み掛けるように語りかける。

 

「貴方がたが真に平和を望み、民を守らんとその軍服を身に纏ったという誇りがあるのなら――道を開けなさい!」

 

 エターナルとアークエンジェルは進む。ミーティアを装備したストライクフリーダムとインフィニットジャスティスが先行し、凄まじい速度でステーションワンへ向かう。撃つことを躊躇った兵たちの間を通って、悠々と、まるでラクスが女王であるかのように。

 

「――何をしている! 彼女は……! 彼女はロゴスの残党だ! 古巣と利権を守るべく襲ってきているだけだ! 殺せ! 命令だ!」

 

 ステーションワンの防衛部隊司令官が通信で全部隊に通達する。ここでラクスを素通しなんてできるわけがない。だからこその苦しい言い訳のような言葉だった。躊躇いがちに、戦闘が開始された。

 

 ――一方、月低軌道でレクイエム本体を護るザフト兵にとって……その機体は見慣れない機体だった。新型か。ナチュラルが小生意気な。……そんなことを言ったザフト兵は次の瞬間には爆散していた。……遠くに、フリーダムを改造したような見た目のモビルスーツが見えた。

 

「あったま痛い……! キラもムウもクルーゼもレイもこんなの動かしてんの!?」

 

 キラキラとスラスターの光を纏わせながら、十個のシールドドラグーンがバスターフリーダムの周囲をくるくると回る。

 

「いっけー! リフレクタードラグーン!」

 

 ミーシャがシールドドラグーンの渾名を叫びながら機能をオンにする。小型のミラージュコロイドで姿を隠し、アビスの強化時に開発した小型化したゲシュマイディッヒ・パンツァーを積んだシールドドラグーンは、防御力の向上以上に、彼女に全く新しい攻撃手段を提供する。

 ミーシャは配置についたリフレクタードラグーンに向けて両手のビームライフルをデタラメに乱射する。あらぬ方向へ向けられた銃口から放たれたビームは虚空を切るかに思われた。途中で縦横無尽に曲がり、くねり、それはやがてザクのコクピットに命中した。バラエーナも同じように真っ直ぐ撃ったかと思うと途中でカーブして、想像もできないような軌道をたどって着弾する。回避行動を取るどころではなく、ロックオンアラートが鳴ってもどこから攻撃が来るのか全く想像できない。どのような方向に、どんな風に引き金を引いても必ず当たる。それはまさしく――

 

「ま……」

「魔弾――」

 

 ――まさしく、魔弾。

 リフレクタードラグーンはミラージュコロイドで隠れていて発見は困難。ビームの雨が縦横無尽に駆け回り着弾するのだ。ただでさえ恐ろしい魔弾の悪魔が、本物の魔弾を携えてやってきた。恐ろしい。オーブだって魔弾と戦ったっていうのになんで味方になっているんだ。そんな理不尽な文句すら湧いてくる。だが、リフレクタードラグーンは弱点もある。それも割と致命的なものが。

 

「も、戻った! アレが戻ったぞ!」

 

 稼働時間が著しく短いのだ。スラスター、ミラージュコロイド、ゲシュマイディッヒ・パンツァー。電力食いの能力をもりもり積んでいるのだ、攻撃用途で使えばあっという間に内蔵電力を使い果たしてしまう。ミーシャの『魔弾』を作るために必要なエネルギーはあまりにも大きい。ミラージュコロイドを切って防御だけに使えばそれなりに保つのだが、こればかりはしょうがない。核動力の本体から電源供給を受けて繰り返し使えるのだけが救いと言える。

 

「……あたまいたい」

 

 しかも幼いミーシャにとっては負荷が高すぎて使う度に頭痛がする。我慢できるレベルだが痛いものは痛い。

 リフレクタードラグーンが待機状態になって今が好機と睨んだザフト達がミーシャに向かう。しかし。

 

「……私別に『魔弾』で強くなったわけじゃないからね!」

 

 しかし、彼女の真骨頂はむしろ正確な射撃なのだ。フリーダムから二門増えた砲塔は一度に始末できる敵の数を増やし、接近されてもミサイルとシールドドラグーンで防げる。『魔弾』として使わなければ新装備は中々の使い心地である。いっペんに使うから頭も痛むし継戦能力も落ちる。だが常に一枚か二枚だけ使うなら純粋に強化されていると言えるだろう。

 

「――使い方なのかなぁ」

 

 戦闘中に戦闘方法を模索するなどとんでもないことである。だが彼女は問題なく生き残っている。

 ――それに、見た目のインパクトというのは存外侮れない。

 その二つ名に恥じぬ新しい攻撃方法に味方は沸き立ち、敵は恐れ慄く。ビームを使い、技術の粋を集めたモビルスーツを使う時代になっても、威圧効果というのは実際の性能以上に戦場で役に立つ。――気合で負けた方が死ぬのだ。メンタルで負けていて勝てるのなんてそれこそキラくらいである。

 

「みんな、調子はどう?」

「敵が多い! どんだけいるんだよ!」

「ゲシュパンなかったら何度か死んでる! ……でもあるから生きてる! ハハハ! 残念だったねぇ!」

「こんなの隊長動かしてたの……!? でも、フリーダムはやっぱり強い!」

 

 部下もまだ元気だった。だが状況は膠着状態だ。ミーシャが次から次へと殺しているが、とにかく数が多い。

 

「……!」

 

 ミーシャは歯噛みする。レーダーに映る敵を示すアイコンは信じられないほど多く、まさしくレーダーを埋め尽くすほど。体力が持つか。……間に合うか。ミーシャは部下に指示を出す。

 

「焦ったらだめだよみんな……! 連携を意識して、孤立しないでね!」

 

 ミーシャの脳裏にはカガリに殺されたオルガが思い浮かんでいた。彼が撃墜される瞬間、ミーシャはクサナギに撃たれていてフォローできなかったし、シャニもクロトも遠くで戦っていた。……もうあんなことにはさせない。

 

「了解! ……でも間に合うのかよ!?」

「無茶のしどきなんじゃない? ……それで死んじゃってもさ!」

「隊長、私達死ぬ覚悟、できてるよ!」

「みんな……! でもダメ! ここで優秀な戦力なくすわけにはいかないの!」

 

 玉砕覚悟と、無茶な突撃は全く別物だ。……辛い戦いが続く。

 

 ――ステーション・ワン宙域ではアスランとキラが協力して敵機を撃破、無力化して突き進んでいた。前線から少し離れたところに、イザーク・ジュールが乗るヴェサリウスがいた。

 

「……レクイエムか」

「どうしますか?」

 

 イザークの隣にいるシホ・ハーネンフースが聞いた。彼女の言葉にしばらく悩みながら、イザークは戦況を見る。

 

「俺が今文句を言って殴りたい奴は一人だ。……俺が出る!」

「私も行きます」

「――だが……。いや、わかった。いいか、お前ら前に出るなよ! 死ぬぞ!」

 

 イザークはブリッジから出ながら部下に指示を出す。格納庫に向かい、自分のザクファントムに乗ったイザークは僚機のシホと通信する。

 

「どちらの援護をするんです?」

 

 シホの言葉にイザークは呆気にとられる。……普通の軍人なら、ザフトの支援をするのが当たり前である。だが……。イザークは彼女が自分と近い考えをしてくれたことに思わず笑みがこぼれる。まるで……まるで、魔弾に討たれたかつての友のように感じたのだ。

 

「ただ、俺は脱走兵の一般人と話に行くだけだ」

「了解」

 

 ――ステーション・ワンの防衛に向かったミネルバは苦戦を強いられていた。そもそも残っているモビルスーツがインパルスしかないのだ。貴重な戦力をメサイア防衛に取られたのでは守れるものも守れない。――だが、やらねばならないのが軍人の辛いところである。タリアは状況の悪さに拳をギリギリと握りしめる。

 

「――アーサー、インパルスを出して。このままだとステーション・ワンが墜とされるわ」

 

 最悪の状況はもうすぐやってくる。ストライクフリーダムとジャスティスが装備しているミーティアは拠点攻めに最適だ。たった2機だが、その2機があればコロニーの1つや2つ、簡単に落ちるだろう。それに乗っているのはキラとアスランだ。

 

「……アスラン……」

 

 タリアは半ば絶望しつつそう言った。キラと戦っていた時はまるで違う動きに、落胆する様な失望する様な、そんな気持ちを抱く。――仲間だと思っていたのに。確かに意見の違いはあったかもしれない。だが、それでもまさか本当にザフトを攻撃することを躊躇わないなんて。キラを討つのは躊躇っても、ザフトを討つのは躊躇わないのだろうか。……そんなことはないと、思いたいのだが。

 

「ルナマリア・ホーク、インパルス、行くわよ!」

 

 ルナマリアが出撃し、フォースインパルスに合体して前線へ飛び込んでいく。タリアは自分の頭に浮かんだ弱音を振り払うと、敵艦2隻を睨む。エターナルとアークエンジェル。今度こそ墜とす。

 

「トリスタン、イゾルデ照準! 目標アークエンジェル!」

 

 まずはアークエンジェルから沈める。タリアは過酷な戦闘を覚悟した。

 対するアークエンジェルも余裕はない。ネオ……ムウがアカツキで戦ってくれているが、やはり少ない。あとはムラサメが二個小隊ほどと、ドムトルーパーが3機。地球軍時代と比べれば贅沢なくらい多いが、コロニーを墜とすとなると途端に頼りなく感じる。……だがこの戦力でやるしかない。

 

「ホントに隊長には感謝だな……!」

 

 ムウは背部にマウントされたドラグーンで6機を同時に撃墜しながら言う。自分がいなければきっとアークエンジェルもエターナルもずっと危機的状況だった。ミーシャと違ってドラグーンを全て使っても頭痛が起こるなんてこともなく、それどころか周囲の戦況を細かく確認する余裕すらある。少し遠い場所にある月低軌道……レクイエム撃破組の戦闘もこちらから何とか視認できる。

 

「……誰も死ぬんじゃないぞ……!」

 

 自分がいなくなったせいであの気のいい奴らが死んだら、ムウは悔やんでも悔やみきれないだろう。だがここは戦場。絶対なんてことはありえない。……だからと言ってアークエンジェルから離れる気はなかった。守らなければ。ようやく守れるようになったのだから。

 

「タンホイザー起動!」

 

 ムウはミネルバがタンホイザーの銃口が展開される数秒前にはアークエンジェルに向けて進路を取っていた。刹那の閃きが、陽電子砲に撃たれるアークエンジェルを見せたのだ。射線上にはエターナルがいる。こういう状況なら、自分の惚れた女は盾になることを選択する。

 

 ――そんなことはさせない!

 

 タンホイザーの光の前に、ムウは自分の機体を割り込ませ、盾を構えて庇った。……全くあの時と同じだ。だが、あの時とは機体が違う。

 

「……化け物……!」

 

 タリアがそう呟くのも無理はないだろう。アカツキは戦艦の陽電子砲をあっさり防ぐとビームライフルで反撃してきたのだ。タンホイザーが貫かれ、爆散。もう虎の子の切り札は使えなくなった。対するアカツキは塗装が焦げた様子も見当たらない。追撃のトリスタンでの射撃もアカツキのドラグーンが展開するビームシールドに阻まれ、無傷。

 

「――!!」

 

 ズルい。口に出すことはなかったが、タリアはそう思った。

 

「やっぱり俺って、不可能を可能にする男だね。……全部終わらせるぞ、マリュー!」

「ええ、ムウ!」

 

 ムウは笑いながら戦闘を続ける。愛する女を護るため、愛する女との未来を護るために。

 

 

 エターナルに向かっていたインパルス……ルナマリアは迷いながら銃口をエターナルに向ける。

 

「……これで、いいのよね」

 

 命令だ。命令だからしょうがない。そうだ、ミーシャ・バレンタインだって命令なら味方だって殺すじゃないか。――だから、そう、これはそういうものだ。ルナマリアは敵の理屈すら使って自分を納得させようとする。だが、照準は合っているのに引き金を引くことができない。

 

「これでいいのよね、シン!」

 

 彼が、言ったから。彼氏が、守りたいと言ったものを護る。……それでいいと思いたかった。だが、その決意を突き崩すように通信が入る。

 

「お姉ちゃん!」

 

 死んだと思っていた肉親の声。アスランが生きていたのだから生きているとは思っていたが、こうして声を聞けるなんて思っていなかった。――聞きたくなかった。今から撃ち落とそうとしている戦艦の中からなんて、聞こえてほしくなかった!

 

「なんでメイリンが!」

「お姉ちゃん! どっちが正しいか、ホントにわからないの!?」

「そんなの……! そんなのわかってるわよ!」

 

 でも自分じゃ止められない。今からアスランみたいに裏切ればそれが正しいのか? 何が正しいのか? ……そう悩んでいるうちにエターナルの直掩をしていたドム3機に補足され、襲われる。

 

「待って! ヒルダさん! お姉ちゃんなの!」

「なんだって……!? お前ら! 追っ払うだけにするんだよ!」

「難しい注文を……! 了解!」

「しょうがないか……!」

 

 メイリンの悲鳴のような懇願に、ドムに乗るヒルダは部下に命じる。元々3対1だ。手加減は難しいものではない。

 

「くっ……!」

 

 手加減されているとわかっていても、ルナとしてはその命を拾うしかない。エターナルから退避する様な機動をすると、ドムはそれ以上追ってこようとはしなかった。

 

「こんなの……!」

 

 屈辱だ。……だが、もし手を抜いてもらえなければ死んでいたかも。3対1でも勝てるくらい強ければ。シンみたいに、強ければこんな思いをすることはなかったのかな。……そう思いながら、ルナはステーション・ワンを見る。そこには、すぐそばまでたどり着いている2機のミーティアが見えた。

 

 

 ……アスランは呆然とする。殺到するミサイルに対応しようとしたところ、水色に塗装されたザクファントム……イザークに助けられたのだ。

 

「貴様! 今度はこんなところで何やってる!」

 

 イザークの怒鳴り声が聞こえる。

 

「……なんで」

「隊長、勘違いされますよ? 我々は同じ目的でしょう?」

 

 知らない女性の声が聞こえる。……確か、シホと言っただろうか。イザークの部下だったはず。彼女もイザークと同じ気持ちなのだろうか?

 

「皆まで言うな! 俺はそういうことを言っているのではない!」

「ですが、アレを止めるのでしょう?」

「……明言するでないわ! こういうのはやり方というものがあるのだ馬鹿者!」

 

 イザークも、シホも、好き好んで大量破壊兵器を護って虐殺者の片棒を担ぐ気はない。止められるなら止めたい。

 ……だがそれはザフトに対する裏切りでもある。堂々と言うのは流石に憚られる。それに気づいたシホはハッとなってイザークに謝る。

 

「それは……すみません」

「真面目に謝るな! ……行くぞ!」

 

 イザーク、シホの援護でアスランはステーション・ワンに取り付いた。ちょうどキラも同じように配置に着いたらしい。ミーティアの大型ビームサーベルでステーション・ワンを切り裂いていく。円筒形をしている為、コロニーの外壁の厚さはそこまでではない。高出力のビームサーベルがあれば、真っ二つにできる。

 コロニーが両断され、ステーション・ワンの撃破を確認したアスランとキラは、そのままレクイエムに向かおうとした。

 だが、そこに、月の影からやってきた巨大な構造物があった。小惑星機動要塞メサイアが戦場に辿り着いたのだ。

 

 ――デュランダルはメサイアの中でレイとシンの二人と話していた。

 

「ステーション・ワンが落ちた。ミネルバも奮闘したようだが……流石に、戦力をこちらにもらいすぎてしまったようだ。私の采配ミスだな……」

 

 デュランダルはショックを受けているシンに声をかける。

 

「安心するといい。ルナマリア・ホークは無事だよ。いくら敵とは言え、ラクス・クラインの優しさには助けられたね」

 

 彼の言葉に、シンは明らかにホッとする顔をした。それから、慌てて取り繕うように言った。

 

「いえ! ……それでも、自分たちは戦わないといけないと思います。……戦争のない世界を作るために」

 

 シンの言葉に、デュランダルもレイも満足そうに微笑んだ。

 

「心強い言葉だ。今こちらに向かっているアークエンジェルとエターナルを背後からミネルバに追ってもらっている。挟撃するんだ」

「了解」

 

 レイとシンは敬礼して格納庫へ向かう。

 

「……よかった。ルナが生きてて」

「シン、お前はルナと共に戦え」

「え?」

 

 歩きながら、レイとシンは会話する。レイの言葉に、シンは思わず聞き返した。レイはルナの実力を認めているとは思っていなかったからだ。

 

「彼女なのだろう? 守ってやれ。……俺はキラ・ヤマトを討つ」

「でも」

「俺が討たねばならないんだ。ミーシャ・バレンタインも……」

「……レイ、お前も、生き残れよ」

 

 シンはまるで死にに行くような顔をしているレイにそう言った。レイは不思議そうな顔をする。

 

「なぜだ? どうせ長くない」

「……今日明日ってわけじゃないんだろ? たとえ半年だったとしてもさ、俺はレイと一緒にいたいよ」

 

 レイは目を見開いて、足を止める。……そんなことを言ってもらえるとは、思わなかった。未来。……未来。たとえ短くとも、未来がある。そう思うと、心がふっと軽くなったような感覚がした。

 

「……お前は、変な奴だな」

「なんでだよ?」

「クローンの俺に、そんなこと言うなんて」

「馬鹿言うなよ。俺が知ってるのはレイ・ザ・バレルってやつで……どっかの誰かのクローンなんかじゃない」

 

 シンの言葉に、レイはほほ笑む。そうか。そう言ってくれるのか。

 

「……なら、生きないとな。短くとも、俺の命を」

「ああ! 生き残るぞ!」

 

 シンはレイの背を叩いて励ます。レイは格納庫に辿り着いて自分のモビルスーツに乗った時も、微笑みが顔に浮かんでいた。キラを殺すことにこだわるのはやめだ。なんだか、バカバカしく思えてしまった。――そう、俺はシン・アスカの友達で戦友、レイ・ザ・バレル。それでいいのだと、そう言ってくれた友がいるのなら、それでいい。今のレイにはキラを殺すことよりもはるかにしたいことが、しなければならないことがあった。

 

 ――何よりも、シンを生かそう。そのためなら死ぬのも悪くない。……いや、きっと最高の死に方だ。

 

 二人はメサイアから出撃した。二人も、最後の戦いに臨む。




 本作のシンは原作シンよりも精神的に追い詰められていないのでレイを気遣う余裕があります。なのでめっちゃ強いです。

 そんなシンにつられて、レイにも大きく変化があります。

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